疑問:これは私の気持ち?誰の気持ち?
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
スズの話を聞いてから、どうしようもないと分かっても、ずっと止める方法を考えた。
でもスズの話はどんどん進んでいく。
私の返事を待っているのに、もう結論は変わらない話し方だった。
あぁ、もうスズは決めてるんだ。
「もしできれば、アリスにも前回のように同行して欲しい。」
そうスズに言われた時、止める方向ばかりに考えていた私の思考は止まった。
でも、それが今は、私にもできることかもしれない。
少しだけそう思いつつも、前回と同じように何もできなかったらどうしよう。
そう思った瞬間、喉が詰まって返事が出なかった。
「無理にとは言わない。」
スズは、絶対に無理に進めたりはしない。
だから、このまま黙ってたらきっと、そのまま一人でまた行く。
「・・・待って。」
それは嫌。
何もできないかもしれない・・・
それでも、行かないと多分後悔する。
「アリスさん。大丈夫ですか?」
和さんが、心配そうな顔でこちらを伺う。
「・・・だい、じょうぶ・・・とは言いづらいですが、やれるだけやってみます。」
やるからには、やれるだけのことをしよう。
ちょっとみんなに見守られる中で、寝るのは緊張しつつ。
一階のソファの上で、静かに目を閉じた。
夜の静けさとはかけ離れた、緊張した空気。
正直そんな中で、まったく眠れる気がしなかった。
けれど目を閉じると、なぜか意識は沈んでいった。
魂が引き寄せられる。
それは、眠りとは少し違う“引きずられる感覚”だった。
・・・
・・
・
意識が、水の底に沈むように深く落ちていく。
前と同じように沈んだはずの意識が、ふっとどこかで引っかかった。
まぶたを開いた感覚もないまま、白だけが視界に満ちていた。
辺りを見渡すと、通路の奥からスズが歩いて来た。
いつもの黒い薄手の長袖長ズボン。
今日はリュックはなし。
多分、走りやすさを優先している気がする。
スズが私に向かって近づいて来た。
ふと止まった。
スズの視線が動く。
その視線を追って、同じ方向を見る。
――あの橋。
あの時と全く同じ。
息をのんだ。
「フィフ。橋に入る。」
スズはそう言葉にして、すぐにその橋へ向かって走り出す。
そうだった!
緊張し過ぎて、時間制限のことがすっかり抜けてた。
急いで、私もその背中を追いかけ始める。
スズは前よりも落ち着いているからなのか、かなり早いペースでどんどん進んでいく。
–ひとまず、5分走るよ。
スズの思考が頭に響く。
明らかに私を意識して、言ってくれていると分かる。
「1分。状況は変わらない。」
しばらく進むと、スズがそうつぶやく。
そういえば・・・
後ろを振り返って男の姿を探す。
あの人がいない。
前はいつの間にか、現れたあの男。
もしかしたら、今もどこかで見ているのかもしれないと思うと、夢の中だというのに皮膚の下を、冷たいものが這う。
「2分。」
特に変化はなさそう。
私の体は走ることに影響はないのか、息切れもせず走り続けられた。
スズのペースもほぼ変わらない。
今は、ついて行くことに専念しようと思った時。
『ねぇいつ死ぬの?』
また、キンと声が響いた。
イヴさん・・・
–気にしないでいい。
そう言って、スズはペースを変えずに進み続ける。
私の中では、あの話を聞いたからなのかもしれない。
その声と同時に、イヴさんの重い感情が、私の体に流れ込んだ気がした。
「3分。」
『この中に・・・いるのね?』
スズの言葉に重なるように、響く。
最初の言葉よりも、石のような感情が、内臓の奥に沈み込んで動かなくなる。
『あ。ほら。いたわ。』
白かった景色が、墨を流されたみたいに一気に沈む。
どうして?
――これは、私の気持ち?
それとも、イヴの…
私を見てくれない、のに・・・
どうして?
あなたのことは見るの?
どうして?
ねぇ。
どうして、私を見てくれないの?
ねぇスズ。
どうして・・・
「4分。」
!
その言葉に、意識が途切れた。
私・・・今、何を?
目の前には、スズの背中。
・・・何を考えてた?
ついさっきの事だというのに、まるで別人が私に入っていたたように、心の奥は沈殿しているみたいに重く冷たい。
それは、私が、イヴさんの魂の一部だから・・・?
止めよう。
その事を考えるのは、今は嫌。
相変わらず変わらない白い景色のせいで、どこまで進んだのか分からない。
でもかなりハイペースにここまできているから、多分前よりも進んでると思う。
–何か・・・
「何か、見える。」
そう言ったスズの進む橋の先に視線を向ける。
まるで合流地点のように、他の方向から繋がる4つの橋が、十字路になっていた。
「分岐点のように見える。真っすぐ進むか右か左。三方向。」
十字路で、スズが止まった。
「右は奥が・・・青暗い・・・フィフの通路かもしれない。アリス。いるかな。」
ここでスズが、聞きたいことは分かる。
そして、前と同じようにずっと感じている。
この先――
そう感じる先を示す為に、スズの服を引っ張った。
「アリスがいう方向は私の橋から正面。そのまま進む。」
正面は再び、真っ白な橋から始まった。
でも、その奥の方は灰色の石の通路のように見えた。
その所々に黒や白が混ざり、素材そのものが進むにつれて入れ替わっていくような錯覚を感じる。
「風景は、鬼の世界に近い通路に繋げる時に似ている。」
スズは最初と同じペースで進みながら、景色の説明を伝える。
「分岐点が中間点ということなら、来た時と同じ約4分30秒の距離があるのかもしれない。」
それって・・・
同じように進むと、場合によっては戻る時間が足りなくなってしまうかもしれない。
「分かってる。この先が別の通路なら、そっちで戻る方法を探す。」
恐らく、フィフさんも同じことを言ったのかもしれない。
それが分かっていても、スズのペースは変わらない。
–イヴの声がしなくなった。ここは私の通路の範囲の外なのかもしれない。
そういえば、時々聞こえたイヴさんの声がない。
『ここは、私の通路の範囲だからね。』
スズの思考に反応するように、低い男の声。
イヴさんの声と同じように通路の中を、クラーレンの声が静かにでも確実に響いた。
「お前のことを、思念体と考える意見もあるが、近そうだ。」
『そういう見方もあるだろう。』
クラーレンの姿は見えない。
『橋を落ちた先は、どこへ繋がる?』
「…世界の座標の外だとは思ってる。明確な確証はない。」
この橋を、落ちた先。
まだ崩れてくる様子はなさそうだけど、いつ崩れるか分からない。
『どうやって戻ってこれた?』
「これも明確に分からない。途中、自己同一性があったとは言い難い。」
『思い出したということか・・・?
……一度だけ、成立した可能性か。再現性は低い、と見るべきだろうな。』
自己同一性・・・って、なんだっけ?
昔、学校で習ったことがある気がするけど、言葉からすると自分のことってことかな?
「恐らくは。」
後ろからスズを追いかけ、二人の会話を聞いていた。
–・・・・い。
ん?
何か、聞こえた。
–・・・たい。
二人の声とは明らかに違う、掠れるような女性の声。
言葉が、聞き取れない。
–・・りたい。
多分同じ言葉を繰り返してる。
そして少しずつ、近づいて聞こえてきてる気がする。
–・えりたい。
誰の声?
スズでも、イヴさんでもない。
私の声とも違う。
初めて聞く気がするのに、どこかで聞いたことがあるような感じ。
–かえりたい。
繰り返す言葉がちゃんと聞こえた瞬間。
イヴさんの声が響いた時と同じように、その感情が体に響いた。
ここはどこ?
お母さん。お父さん。
ごめんなさい。
悲しい感情。
帰りたい。
圭吾・・・。
おじいちゃん。おばあちゃん。
ごめんなさい。
全然上手くできなくて、失敗ばかり。
苦しそうな声。
–私は・・・死んだの?
死・・・
あぁ・・・
多分この声は、この先にある――
・・・山本梓さん。
そう、思ってしまった。
会ったこともない。
話をしたこともない。
それでも、そう思った。
死ぬのはこわい。
こわい。
–ここはどこ?
前に死者の乗る電車で、スズが言っていた。
死者には死んだと自覚している人と自覚していない人がいる。
多分、梓さんは死んだことをどこかで分かっているけれど・・・
まだ、どこか曖昧に感じてる。
悲しい感情と混乱、恐怖。
色々なものが混ざっている。
–帰りたい。
–帰りたい。
–帰りたい。
もうすぐそこにある。
橋の全面が灰色になった先に、合流している通路が見えた。
『初めまして、山本梓さん。』
その声が頭に響くと同時に、視界がぶれた。
ぼやけた視界の正面には――ブライアン・フォーラス
そしてその隣に、どこかで見た覚えがある人。
最近もどこかで見た覚えが・・・
誰だっけ・・・?
『苦しそうですね。大丈夫ですよ。もうすぐ終わりますから。』
ブライアンは優しく微笑んで言った。
「誰ですか?」
さっきまで頭に響いた梓さんの声が、耳元で聞こえる。
『気にしないでください。それでは・・・』
ブライアンはそう言うと、背を向けて歩いていく。
「・・・誰だったんだろう?」
視界が動いて、腕時計が目に入る。
「急がなきゃ。」
少し早歩きで、ブライアンとは違う方向を進む視界。
–キキキキィィィィィィィィィィィィ!!!
–プップップップー!!!!
突如大きなブレーキ音と同時に、クラクションの音が響いた。
視界は、その音の方へ引き寄せられるように動いた。
「アリス!」
!!
視界がぶれる。
息が止まる。
今の。
スズの声。
山本梓の視界から自分の視界に戻った。
今のは?
頭が回らない。
とにかく、スズに呼ばれた。
周りを見渡す。
灰色の通路にある小さなテーブル。
その上にはペットボトルぐらいのサイズの瓶。
――やっと会えた。
――梓。
駆け寄る。
その瓶から、感じる悲しい感情。
帰りたい。
後悔。
混乱。
恐怖。
――帰ろう。
元には戻れないけれど・・・
こんな寂しい場所には置いていけない・・・
瓶を手に取る。
冷たい感触。
寂しい。
――帰ろう。
瓶を抱きしめた。
その瞬間。
どっと、感情が、堰を切った水みたいに一気に流れ込んできた。
–帰りたい。
頭ではなく、胸の奥に直接叩きつけられるような声。
苦しい。
寂しい。
怖い。
「……っ……!」
思わず息が詰まる。
これは、さっきまで聞いていた声なんかじゃない。
もっと近い。
もっと、強い。
まるで――
この中にいる人が、すぐそこにいるみたいに。
足が止まりそうになる。
それでも。
「……帰ろう。」
小さく、言い直す。
抱きしめる腕に、少しだけ力を込めた。
するとほんのわずかに、その感情の波が落ち着いた気がした。
――大丈夫。
そう伝えるように、もう一度だけ抱きしめる。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




