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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第一部 第三章 理解は救いにならない
134/201

疑問:ゆっくりしている場合じゃない?

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

夕方、日向達と家に戻った。

ちゃんと家にいるスズの姿に安心すると同時に、視界に飛び込んできたのは、左頬に浮かぶ不自然な膨らみだった。


「わ!?顔どうしたの?」

「うわぁ!結構痛そう・・・。」

「和、顔を殴ったの?」


「キュウ!?」


日向と秀人と続き、セイもびっくりした声を上げる。


「俺じゃない。」

「和じゃないよ。フィフとちょっと喧嘩した。」


あー・・・フィフさんかぁ・・・

私にはだいたい落ち着いて見えたけど、やっぱり相当怒ってたんだろうなぁ。


「うへぇ。お風呂染みそう。」

「仕方ない。」


スズも、いつもより少しだけ渋い表情をしている気がした。


「夕飯もうすぐできるから、どっちか風呂済ませてきな。」

「じゃあ。スズも行く?そういえばそれ和の服?」

「行こうか。着替え持ってきてないからね。」

「あ!良いのあるよ!アリス先に、スズと入っててー。」


日向がそういうと、階段を駆けあがっていった。


「じゃあ。行こうか。」

「キュウ!」「キュキュ」

「一緒に入ル。」


セイと一緒にクワとドゥエも返事して、スズが私にも目を向ける。


「うん。そうだね。」

「いってらっしゃーい。」


相談所ほど広い脱衣所ではないけど、セイとクワ、そしてイザベルは小さい。

スズと同じくらいのドゥエと三人分並んでも、気兼ねなく服を脱げるだけの広さがある。


「うわ。スズ、痣もできてる。」

「所々ぶつけたから。しょうがない。」


服を脱ぐスズの背中が目に入ると、肘とかが青くなっているのが目立つ。

思ったより、大喧嘩だったのかもしれない。


「平和主義と思いきや、サーズは怒らせることが多いのね。」

「行動を起こす、ってことはそういう事も増える。」


スズが問題なく動いている様子を見る限り、骨折まではなさそうだけど。

確かにスズって結構生傷が絶えないかも。

お風呂場に入って体を洗っていたら、後から日向も入ってきた。


「スズの服用意したよー。下着は私のだけどー。ちゃんと洗濯したやつだから!」

「ありがとう。」


スズとドゥエ、セイが先に湯船に入る。

クワも後は流せば終わりかな?


「スズ、明日すぐ帰るのー?」

「そうだね。」


「そっかぁ。私達はー?」

「もう少しだけ、ここでお願いしたい。」

「キュウ・・・」

「ごめん。」


日向との会話を聞きながら、セイが少ししょんぼりしている。

問題は、まだ何も解決してないもんね・・・

その為にも、あの橋かぁ。


しばらくみんなで湯船でお喋りしていたら、秀人が外から「お腹すいたー」と呼んできた。

それを聞いて、ようやくお風呂を上がった。


「これって、日向の服?」

「ふっふっふっ。これは、アリス達と少し前に買った。スズ用の服!」


日向はニヤっと笑いながら、着替えてる。

少し前に買った?

スズの手の中の服を見て、思い出す。


「あぁ。日向、持ってきたんだ?」

「空気圧縮して、ほとんどの洋服をリュックに詰めてきてたからね!

今はスズの着る服がないし、選択肢はないでしょー?

それに緩めの服だから、そのまま寝れると思うよ?」


時期的に春に向けて、水色の少し大きいダボっとした薄手の長袖。

重ね着用にいくつか選んだうちの、部屋着にもいけそうと選んだ服だった。


「ありがとう?わざわざ買ったの?」

「どういたしましてー。たまには選びたかったのー。」


スズは特に、気にせず袖を通してくれた。

普段明るい色の服を、ほとんど着ることが無いから、ちょっと違和感は感じる。

でも、たまにはこういう印象も良い感じだと思う!


「ふーん?良いじゃない。」


イザベルも同意してくれた。


「外出用もあるから、それは今度だね!」

「そんなに買ったの?」


お風呂上りの雰囲気もあって、普段のやや固い印象が柔らかく見える。


「みんなの好みが、それなりに分かれたから、確か3~4着ぐらい?」

「私は自分でも持ってるんだから、自分たちの服を買いなよ。でも、ありがとう。」


あんまり嫌そうな反応も無さそうだし、良かった。


「だってスズ、いつもグレーとか黒とかばっかりなんだもん!たまにはねー。」

「うん。似合ってる!秀人達にも見せてみよ。」


「あ。やっと出てきた。遅いーもう食べ始めちゃってるからー。」

「待たせたー。」


リビングに戻ると秀人と和さん、ウーノ達はすでに食卓についていた。

玄関側の席にみんな並んで座って、和さんが台所側の一人席。


「スズ、いつもト服が違ウ。明るイ。」

「青イロ、イイ。」

「キーキ。」


「ありがとう。日向達が選んでくれた服。」


ウーノ達の印象も良さそう。

サイズも大丈夫そうだし、これは外出用で選んだ服の方も、似合いそう。

私達も階段側の席に並んで、ご飯の入ったお椀を受け取っていく。


「いっただきまーす。」


みんなで席について、夕食を頂き始めたけど何の反応もない一人が気になる。

和さんからのコメント、なにか無いかなぁ?


日向達も、チラチラと和さんを見てる。


「カイルはどうなのよ?」


「…何が?」


ここでズバリ言ってくれるのが、イザベル。


「スズ、似合うでしょー?かずー?あ。こっちは塩からあげー。」

「うんうん。色が違うだけで、印象は変わるねー。こっちは醤油だったー。」


そして、日向と秀人も乗っかる。


「まぁ…たまには違う色も良いと思うよ。」


「「「・・・・」」」


うーん。

きっとみんなとしては、もう一声って感じ?

イザベルと日向と秀人の視線が、交差する。


「まぁ普段は、汚れが目立たない色を選んでるから。」


和さんと私の間の席で、スズはいつも通り。


「そうだな。でもそれも似合ってるよ。」

「ありがとう。日向達もありがとう。」


私としては、こんな感じだろうなぁって思うけどなぁ?

でも、日向は少し嬉しそうではあるけど、どこか惜しそうな顔をしてる。


「うーん。まぁ・・・今日は部屋着だし、今度は外出の時だね。イザベル。」

「今回は偶然、着る機会があっただけだからね。サーズ、今度はちゃんと整えるわよ。」


「…?どこか出掛けるの?」


確かに、スズからすれば、二人の話は意味が分からないよね。

もう少し髪が伸びれば、いじったりもできそうだし、それはそれで楽しそう。


「今度、みんなで一緒に出掛けよう?」

「分かった。そういえば、アイザックも会いたがってたよ。」


「「え!?アイザックに会ったの?」」

「キュウ?」「キーキ?」「キュ!」


アイザック君。

久しぶりの名前だ。


「少し前に魔法世界に立ち寄ったら、街中で会った。」

「ん?アイザックの家、遠くないか?」

「今は、親戚の家に居ると言っていた。魔法省から出てすぐの場所で会った。」


スズは味噌汁を口にした後、和さんの質問に答える。


「そうなんだ。遊びに行けるなら、会いたいね。」

「うん!今度行ってもいい?」

「会いたいねー。」


アイザック君、元気かな?

まだ二か月ぐらいしか経ってないけど、こうして名前を聞くと会いたくなる。


「もう少し落ち着いたら、考えとくよ。」

「絶対だよー!」

「約束ー!」


そうして、賑やかな夕飯を終えて、少し落ち着いた頃にスズと私が今使っている部屋に向かった。

日向達には少し羨ましそうな声を頂いてしまったけど、それには「また今後」ってスズが返事をした。

それもさっきのお出掛けの約束と一緒に未来の約束が重なっていく。

その事が、少しだけ嬉しくなった。


未来の約束が増えるたび、胸の奥に小さな灯りが増えていく気がした。


–パタン


スズが部屋の奥の方へ進んで、ベッドの反対側から入るのを見て、私も手前から入る。


な、なんだか。

・・・ちょっと恥ずかしい感じ。


さっきまで日向達がいた騒がしさから一変。

夜の空気が、音を吸い込むように静かに満ちていく。

イザベルも寝る時の定位置にしている、ベッドの下の方に上がる。


「アリス、何ギクシャクしてるのよ?新婚夫婦じゃないんだから。」

「のあ!」


イザベルは、どんな場面でも剛速球を投げてくる。


「昼間は、私が勝手に潜り込んだからね。」


そうそう。

改めて一緒にベッドに入るとなると、少し状況が違うじゃん?


「ううう。失礼します。」


スズが反対側から、毛布を持ち上げてくれたので、その空間に近寄って潜る。


「サーズは、カイルともたまに寝てるんでしょ?」


イザベルさん!?

そこ突っ込むの??


「最近はそうだね。昔はヒナとヒデと寝ることの方が多かった。」


スズは至って普通に、返事を返す。

確かに、どこか慣れてる感あるかも。


「今は違うのね。」

「確か、何のきっかけか忘れたけれど、和がヒナとヒデの部屋を分けた方が良いって言った。だから、今のあの建物を、一軒家から作り変えることになった。」

「カイルなら言いそうね。想像はできるわ。」


確かにそういうことを言い出すとしたら、和さんだよね。

スズが毛布の上から、私の背中を優しく叩く。

子供じゃないけど、安心する。


「スズ・・・。」

「うん」


どうしよう。

スズのちょっと低めの体温と背中からの振動で、少しずつ落ち着いてきたけれど、なんかまだ少しだけ緊張が残る。


静かになったぶん、昼間は飲み込めていたことまで、浮かんできてしまう。


「あの・・・。」

「うん。」


「・・・」


イザベルが呆れてる気配がする。


「・・・・えと・・・これって聞いて良いのか、分からない・・・んだけど。」

「イヴのことかな。」


スズが言ってくれた言葉にドキッとする。

多分体も反応したから、スズにもバレたと思う。


「・・・・」

「どこまで、見たりしたのかな?」


イヴさんのこと、ずっと気になってた。

でも特に気になったのは、あの冷たい声。


「少し前に、フィフさんのことを見る前に・・・」


フィフさんの視界を見る前に聞いた声。

スズが通路を進んでる時に聞いた声。


どれも死んでほしいと願う、冷たい言葉ばかり。


「・・・あれは・・・スズに向かって、言った言葉・・・?」

「そうだね。」


肯定する言葉。

スズはいつも単刀直入に返す。

だから、分からない・・・


「・・・なんで、イヴさんはそんなことを言ったの?」


私が、踏み込んで良いことなのか分からない。

でも、他の人に聞くのはもっと違う気がする。


「…眠る前に話す寝物語としては、あまりふさわしい内容じゃないけれど。」


窓の外からの柔らかい光がスズの背後からあたって、表情はよく見えない。

今では少し見慣れたけれど、やっぱり右目の眼帯が気になる。


声は普段話す時よりも、一段と静か。

本当に子供に絵本を読み聞かせるように、言葉を続けた。


「イヴは、ファストっていう1番目のwalkerのことを、とても大切にしていた。」


かなり前に、一度聞いた気がする。

その人がいなくなって、イヴさんが不安定になったって・・・


「だけどファストは、少し快楽的に生きる人間だった。」


快楽的に、色々な女性に目移りするファストさん。

それでも自分を見て欲しくて、愛し続けるイヴさん。


それは、お互いに噛み合わないことも、きっと多い・・・


「そんなある日、何を思ったのかファストは…」


スズの声のトーンが、さらに低く落ちていく。

聞かせたい話ではないのだと、その声だけで分かった。


そうして、続いていく話。

ファストさんが、夜に何度もスズの部屋に入って、何をしたかを聞いた瞬間。


――体も思考も止まった。


「・・・は・・・?」


イザベルも声が漏れる。


スズは、更に声を低くして、その後の出来事をささやくように続けた。

気が付いた時には、スズの中にいた子。

それに気がついたイヴさんが、お腹の子供と一緒に殺したこと。

まるで他人事のように、続けていく。


そしてその後も、続いていったこと・・・


静かに耳だけ寄せながら、手が震える。


「…ごめん。」


ふと、続いていたスズの話が止まった。

その手が、私の目元に触れる。

気が付けば、こぼれ落ちていた。


イヴさんの言葉が蘇る。


『ねぇいつ死ぬの?』


まるで呪うような言葉。


『早く。死んで?』


氷のような声。


「そういうこともあって、私はイヴに好かれていたとは言い難い。憎まれていた。」

「にく・・・でもそれって、逆恨みじゃない・・・」


イザベルが返す。

私は言葉が出ない。

何を言えばいいのか分からない。


「それは受け取り手によるけれど、イヴからすれば仕方ないことでもある。」


当事者であるスズがそう言ってしまうことに、また言葉より先に、熱だけが頬を伝って落ちた。

昨日会った時と同じようにスズの胸元にもぐり込み、洋服を握る。

スズは、私の背中を優しく叩いてくれている。


「・・・・だ、から・・・スズも、・・・イヴさんを?」


「…それはその時よりも、もっとずっと最近の話になる。」


そっか・・・


今の話は、きっとすごく昔の話なのかもしれない。


「だけど、これはこれでちょっと重たい話。また今度にしよう。」

「うぅ・・・。すびっ」


確かに今の話だけで、私はもういっぱいいっぱい。


イヴさんの言葉は、スズが渡ったあの橋の上でも響いてた。

クラーレンの言葉ではあるけれど、深層心理。


それはつまり、スズにとっても、あのイヴさんの言葉は――


「ごめん。あんまり気にしないで欲しい。これは、私とイヴの問題だから。」


そのスズの言葉を聞いて、少し前に突き放されたと感じた時の言葉を思い出した。


『これは、私の側の問題。』


あの場で、それを聞いたあの瞬間。

その言葉は”私には関係ない”のだと、勝手に距離を離されたように感じた。

でも、ほとんど同じ今の言葉は、私を遠ざけるためじゃなく、これ以上背負わせないために言ってくれているように感じた。


・・・やっぱり、スズって言葉が足りない。


でもちょっと、分かった。

私だって、きっと言葉にできない。

そんな簡単なことじゃない。


最初に話した時のフィフさんの言葉も、今さら分かった気がする。


教えてってわがままに答えを聞こうとする私は、本当にただの子供。

その答えが、救いになるとは限らない。

だから、スズはきっと言わないこともある。


「・・・ごめんなさい。スズ。ごめん・・・。」

「謝らなくていい。」


「・・・じゃあスズも。」


「…分かった。」


そして言葉が終わると、静かな毛布の音と風の音。

背中をゆっくり叩かれる感覚に意識が向く。


–とんとん


「…おやすみ」


微かな声でスズがそう言った。

重くなっていく意識の中で、口が動かない。


どんどんと沈んでいく意識。


少し低いけど、確かにここにある体温。


落ちかける中で、その体温が僅かに動いた気がした。


・・・・ま・・・って・・・

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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