答え:それが私の、掌中の珠
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
昼食の後、今回のことをフィフと話そうと席を立つ。
玄関へ向かう前に、和とアリスに呼び止められた。
日向たちは少し不思議そうな顔をしたが、ソファの方で黙って様子を見ることにしたらしい。
「ここで話して問題ないだろう?」
「…分かった。」
「おやおや。心配性な彼氏を持つと大変だねぇ。」
「フィフ。ちょっと黙れよ。」
和とフィフは、少なくとも表面上はいつも通りらしい。
和からコーヒーを受け取る。
フィフと目が合う。
「アリスからの話は、聞いたよ。」
「なら、認識はほぼ同じだろ。」
フィフもアリスから既に聞いているはずだ。
認識のずれは、あまりないだろう。
「そう。」
「問題は、再検証だな。」
考えていた可能性を口にする。
「予想される条件は、時間制限。または、条件不足。」
「その通路と通路の間を繋ぐ空間に、時間制限があったのか。もしくはまだ条件が足りていないかってことだな。」
和が、補足を入れる。
「んー。アリスちゃんが介入したことと、クラーレンの言葉から考えて、まずは時間制限に絞っていいだろ。」
「分かった。フィフは渡った?」
あの時、私の通路と座標を重ねていたフィフの通路は、どうだったのだろうか。
「いや、渡ってない。お前が渡り始める時のメッセージを見て、しばらく橋の前で待ってた。そしたら崩れ始めて、橋は消えた。」
つまり、私たちが渡ったことそのものが原因で、崩れた可能性は低い。
「時間制限の場合、橋の長さが分からない。体感では、徒歩10分くらいは進んだと思うけれど、それでも橋の先は見えなかった。」
「アリスちゃんも、そのぐらいの時間?」
「!・・・じゅ、10分。え・・と、そうですね。ちょっとだけ止まったり、急いだりもありましたけれど、それぐらいだと思います。」
アリスの感覚でも、そこまで違いはないのだとしたら。
「10分以内かぁ。短いな。」
あの橋を10分走った場合、橋の先に辿り着くかどうかは分からない。
5分走ってみて、様子を見ても良いけれど、和とアリスは嫌がりそうだ。
フィフは苦笑している。
「あとは、橋の長さ。通路と同じルールなら、繋がれた先までの距離に、比例すると考えられる。」
「スズ達は、通路の長さを測ったことはあるのか?」
和の質問が入る。
「そんな面倒くさいことすると思う?」
「フィフは分かった。スズも?」
「一度歩幅で、数えた事はある。でも、距離は繋ぐ世界毎ではなくて、目的の位置によってもブレるから、途中で私も止めた。」
「基本世界の日本からブラジルまで移動したら、どのぐらいになるんだ?」
「短いな。」
「5メートルもしないはず。」
和の意見は、橋の距離を予測する上では確かに的を射ている。
「小僧。良い案なんだけどな。世界毎のブレの変動が、一定じゃない。再度同じ扉から、同じ目的の場所に繋げても、同じ距離とは限らない。」
昔、何かを理由に、確かに一度調べようとしたことがあった気がする。
「・・・なるほど。通路の距離は、単純にその世界間の距離だけが、反映している訳ではない、ってことになるかな?」
「多分な。繋がりやすさなのか、時間なのか。他にもあるのか。それをちゃんと調べた事はない。」
その時も、私はそうやって調査を止めたんだったか。
「でも短い世界間移動の距離は、通路も短い。つまり、ブレ幅はそこまで広くない?」
フィフが、私に向かって「コイツマジ?」、という顔をして呆れている。
代わりに、昔のことを思い出しながら和に返事を返す。
「長い通路を調べた事はないから、おおよその感覚だけど5%~7%程度だとは思うよ。」
「A世界とB世界の距離の中心値プラマイばらつきを計算するとして…。
今回重複に使った時の通路の距離を測り、中央値を求めた場合、橋の長さの予測は立てられないだろうか?」
フィフは呆れたように黙り、アリスは考えることを半ば放棄したような顔をしている。
「今、和も言った通り中央値からの計算になることと、ばらつきが仮に7%あったとした場合、距離が延びるごとに予測は立てづらくなる。
目安とするには、いいのかもしれないけれど、今回の10分の移動を、単純に約1キロ進んだと仮定する。
それでも反対側は見えていなかった。橋の全長が1.5~2キロ以上あるなら、目安を立てても数分単位の誤差が出る可能性がある。」
「ん・・・。確かにそうか。分からない空間である以上は、当てにしづらいしな。」
「でもその方法は、場合によっては調べてみても良いと思う。含めて考えてみるよ。」
時間制限と距離か。
またはやっぱり、条件も気になる。
何かが足りず、そもそも辿り着けない可能性もある。
「んじゃ、俺も何となく考えておくよ。」
「フィフ。」
フィフが玄関を出るのと一緒に、外に出た。
ヒナやアリスたちも出かけるようで、後からみんなで玄関外の階段を下りてきた。
賑やかに森の奥へ進んでいくヒナたちを見送り、あたりが再び静かになるのを待つ。
フィフは、言葉を飲み込んだまま、しばらく何も言わなかった。
階段から少し歩いた先で、フィフが足を止めた。
こちらに背中を向けたまま、片手で自分の首の後ろを掴む。
何かを飲み込むみたいに、肩だけが、押し殺した波のようにわずかに上下していた。
–何も言ってない。
–そう。
フィフは振り向かないまま、そう言った。
私の通路の中でのことが、どこまでアリスに伝わっているのか分からない。
アリスはさっき、イヴのことを聞いてこなかった。
–俺は、そこまでしてあの橋を渡る必要があるのかって思う。
–そう。
リスクに対して、まだ不明確なことも多い。
–あー、こういうの嫌い。
–…フィフ。
フィフは勢いよく振り返る。
–その続きは、いらない。
地面を蹴る音が一歩で詰まる。
次の瞬間には、もう目の前にいた。
–お前は、それで良いのかもしれないけどな。
–フィフ。
私の襟首を右手で掴んできた。
怒っているはずなのに、表情はできるだけ抑えようとしているように見えた。
–俺は良くない。
–分かった。
–分かってない。
–…おいてかない。
首元を握る手が、震えている。
–おいていこうと、したようなもんだろ!
–そうだね。
フィフの右手に力がこもる。
続けて飛んできた左拳を、上半身を引いて避けた。
–は。避けるのかよ!
–避けるよ。
避けた勢いのまま、半歩後ろへ下がる。
間合いを切る前に、フィフが踏み込んできた。
–おいていこうとしたよ。それで?
–お前はそうだろうよ。
今度は右足が飛んでくるのを見て、避ける。
蹴りを紙一重で外しながら、体を捻る。
–そうだろう?
–お前の優先順位と俺の優先順位は違う。
フィフが空振りした右足を引き戻し、そのまま足元を払うように蹴ってくる。
後ろ足で地面を蹴り、浮くように回避する。
着地した瞬間には、もう間合いを詰められていた。
そこへ、フィフの左手が伸びてくる。
–それぞれ過ごしている以上、環境は違う。
–だから、俺が失いたくないって思うことは、後回しか?
私の右肩の服を、肩ごと握り込む。
–分かってる。
–分かってない!分からないと思ってんのか!
引き寄せられる勢いのまま、体が前に流れる。
次の瞬間、そのまま強引に引かれ、体勢を崩したまま地面へ叩きつけられた。
–意識がハッキリしてなかった。それでも・・・
–んだよ!
上から右拳が振り下ろされる。
首を捻って急所は外すが、拳が頬を掠めた。
そのまま肩口を押さえつけられる。
–フィフが、ずっと鳴らしてきた通知を覚えてる。
–は?意味わかんねぇ!
口の中に、錆びたような味がゆっくり滲んでいく。
頭を横に滑らせるように動かし、直撃を外す。
それでもフィフの拳が、見えない視界の端を掠める。
–私一人では、戻れなかった。
–俺の通知で戻れたから、次も戻れるかもって?お前が、そんな楽観視なわけねぇよな!?
フィフの重心がわずかにずれる。
両足で地面を蹴り、腰を跳ね上げる。
上に乗っていたフィフの体がずれた。
その隙に、肩をねじ込むように体を滑り込ませる。
–楽観視はしない。二度は無いと思う。
何とかずれたフィフの下から、転がり抜ける。
–じゃあもう良いだろ!
–良くない。
フィフも立ち上がり、こちらへ向かってくる。
–なんで?なんでそこまで、あのガキにこだわる?!
–何もしなければ、あの子は何も変わらない。解決だって起こりえない。
避けようと動いた瞬間、頭が揺れる。
体の中心を蹴られる。
玄関前の階段に、吹き飛ばされた。
–それこそ、お前が言う。その時代のやつらの問題だろ!
息が詰まる。
揺れる頭を無理やり持ち上げる。
–…他の世界の問題だから、彼女を一人にすることはできない。
–そうやって、全部手を貸していくつもりか?
–…できる範囲は判断してる。
階段に手をかけ、立ち上がる。
足元の感覚が、少し遅れる。
まだ、完全に戻りきってはいない。
–甘すぎる!今も殴り返してこないお前は、甘すぎる!
–フィフが、思うことを否定する気はない。
フィフが、私の右側を回る。
左目が追いきれない。
–は!このまま俺がぶっ殺しても、そう言うだろうな。
–全て、私にとって大事。
視線の端でなんとか捉え、フィフの右腕が動くのを見る。
そちらに意識を引かれた瞬間、
–イヴにもそう言った!で?どうなったよ!
–上手くいかなかったことは、分かってる・・っ。
右脇に衝撃が入る。
本命は、視界の外から回ってきた左腕だった。
–結局、切り捨てた方が早かっただろ!
また、右から来る気がする。
来るはずの軌道に合わせて、右手を空中に伸ばす。
–何もせず、切り捨てるくらいなら・・・
その瞬間、衝撃と一緒に“足”が手に触れた。
逃がさないように握り込み、強く引く。
掴んだのは、フィフの左足だった。
引き上げると同時に、踏み込む。
体重を乗せて、内側から刈る。
フィフの重心が浮く。
そのまま、地面へ叩き落とした。
–っこの!
今度は私が、フィフの上に乗る。
–なぜか、他の世界の移動ができる方法を持つ。なぜか、人生を引き継いで生まれ変わる。
–・・・
フィフの目が、そこで初めて私から逸れた。
そこで初めて、目の奥の張りつめたものが崩れた。
その目からこぼれた涙が、地面に落ちる。
–そんな私が、何もしないままただ見ているだけで過ごすことに、何の意味がある?
–・・・
フィフの右手が伸び、顔に当たる。
さっきより勢いはない。
–どうしたって終わらないのに、意味もなく生き続けることに、何の意味がある?
–お前が・・・いなくなったら・・・
フィフの左手が伸びる。
それはただ、顔に触れるように当たった。
–もう、フィーと俺だけだ・・・
やっと少し落ち着いたフィフを見つめた。
フィフが泣くのを見るのは、ひどく久しぶりだった。
–お前の言ってる意味とか・・・分かるけど・・・分からん。
フィフの襟元を掴み、無理やり視線を上げさせる。
血の味が染みる。
けれど、ちゃんと伝えないといけない言葉がある。
「…はぁ。私を見ろ。」
「・・・っ。ずっと見てるだろ。」
荒い息だけが、しばらく二人の間に残った。
フィフの顔を無理矢理寄せて、目を合わせる。
「戻ってくる。」
「はっ!さっきお前が言っただろ。二度は無いんだろうが。」
「理由要る?フィフ。私は戻ってくる。」
言い切ったあとで、自分でもその言葉の重さが残った。
「……要るだろ。なんでこういう時は、裏付けもなく押し切ろうとすんだよ。」
あの場所に落ちた時。
何か理由なんかつけて、戻ってこれた訳じゃない。
もちろん確証はない。
けれど、ここで曖昧にしたくない。
「なら、フィフとフィーがいるから。戻ってくる。」
「結局、確証じゃねぇ・・・」
確かに、絶対とは言えない。
今の私は、前と同じだけの確実さを自分に置けない。
それでも、止まるつもりはない。
「私は、そのつもりで動いてる。だから、助けてくれるとありがたい。」
フィフの表情が、一瞬だけ完全に止まった。
「…は?」
フィフに、手を弾かれる。
「はぁ・・・マジ変わんねぇ。」
「フィフ」
「もう一発。」
「顔はやめて欲しい。」
同時に立ち上がる。
「もう遅いだろ、頬腫れてる。」
「口も切れてるし、痛い。」
フィフが、体勢を落とす。
避けようかと思って、やめた。
これで最後にする。
目を閉じた。
–ゴッ!!
お腹に衝撃を受けて、膝が落ちた。
「次は、ないからな!」
そう言い捨てて、フィフは自分の家の方へ戻っていった。
「…分かった。」
フィフを見送って、自分の姿を見直す。
できることなら、このまま相談所に戻りたい。
でも、アリスとの約束もある。
「…はぁ。」
ゆっくり玄関への階段を上る。
ドアノブが重い。
–カチャ
「か、ず・・・。」
テーブルに座った和。
そのテーブルの上には、既に氷水が入った桶と手ぬぐい。
あれだけ騒いで、和が気が付かないわけがないか。
「服脱いで、そこに座って。」
「…分かった。」
階段にぶつけた肘が痛い。
「お前って俺の時もそうだけど、避けるだけで絶対に殴り返さないな。」
「私が、殴る理由はない。」
「…だから余計、フィフも腹が立つんだろうな。」
手ぬぐいを受け取って、左頬に当てる。
「殴られてるんだから、理由はあるだろ。」
「殴られた理由で殴り返したら、繰り返しになるだけ。」
「…そうだけども。」
右目の眼帯もずれてる。
一度外そうか。
瞼が重い。
「これは痣になるな。お腹の調子は?」
「吐き気はない。」
大きな怪我はなさそうで、手当てはすぐに終わりそうだった。
体が落ち着くにつれて、眠気が戻ってくる。
「今回は、俺よりフィフとアリスさんの方が怒ってるから、あんまり言う気はないけど。」
「ん…」
「それでも行こうとするあたり、ある意味お前の根性の方が強すぎるな。」
「根性…」
一通り終わったようなので、手ぬぐいを桶に戻して、脱いだ服を手に取る。
「そういえば着替えあるのか?」
「…ない。」
「ズボンはないけど、上はこっちを着ればいい。」
テーブルの端に置いてあった、大きめのグレーの長袖Tシャツ。
「ん。ありがとう。」
「…もしかして眠い?」
「眠い。」
でも、時間が中途半端。
「そっちで、30分ぐらい寝れば?」
「そうする。和は他に何かある?」
考えることは山のようにあるけれど、今は頭が回らない。
考える前に、体が止まりかけている。
ソファの方へ歩く。
「無いけど、洗濯でもしようかと・・・?」
眠い。
和に向かって、手招きする。
「そこでは、寝ないぞ?」
「じゃあ。膝枕で。」
「…30分だからな。」
「ん。」
和をソファに座らせて、頭を乗せる。
「お疲れ。」
「…ん。」
自業自得とはいえ、休めるタイミングがほとんど無かったと思う。
早く回収はしたい…
戻ったら、ガルシアに一度連絡…「そうなると考えられる理由としては、十分だと思う。
山本梓の魂を回収できれば、今アリスと梓で混ざっている問題を、少し切り分けられるかもしれない。
そうなれば、フォーラス達が見ている“イヴの再現”も、そのままでは成立しにくくなる。」
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




