答え:今鳴いた烏が、笑ってくれれば嬉しい
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
気が付けば、白い通路の中に立っていた。
まるで何もなかったみたいに、そこに戻されていた。
どう見ても、自分の通路に見える。
「・・・はぁ」
むやみに体に籠っていた力が抜けて、息が漏れる。
まずは休みたいところだけれど、ひとまず出口はどっちだろうか。
–ブブブ
スマホが震えている。
意識がぼんやりしている時も、ずっと震えていた気がする。
通路を歩きながら、スマホを確認する。
電話、メール、ショートメッセージと沢山の通知件数が三桁になっている。
フィフだけではなく、アリスからもきている。
まずは一番近い、数分前のメールに返事を返そうと操作しているところで、電話がきた。
「はい。」
『・・・・は!?わわわわわ?・・・え?え?!なんで?もももももしもし!?』
久しぶりに、アリスの声を聞いた気がする。
それだけで、ようやく現実に戻ってこられた気がした。
「アリス。落ち着いて。」
『あああ!!スズ!スズの声だよね!本当にスズ!?え?スズ?あ!スズ!名前がちゃんと言えてる!!』
名前が言えてる――か。
この言葉からすると、やっぱり私は認知の外にいたらしい。
「心配かけて、ごめん。」
『ほんっとに!本当に心配したんだからぁぁぁ!!フィフさぁぁん!!』
フィフも近くにいるらしい。
–カチャ
ひとまず開いた扉の先は、無事に怪異の世界にある自分の家のようだ。
「そっちの状況は?」
『私はスズの心配してただけだよ!!バカー!!!アホー!!!』
「ごめん。間違えた。ひとまずそっちに行くよ。もう少し待ってて。」
『・・・本当に?この電話切ったら、また名前が言えなくなったりしない?』
「大丈夫。このまま電話を繋いでいてもいいよ。」
通知が多すぎて、スマホのバッテリー容量が残りわずか。
途中で電源が落ちるかもしれないけれど、急いで向かえば問題ないだろう。
『・・・久しぶり。ずび。』
「久しぶり。」
扉に鍵を差して、精霊の世界のフィフの家の扉に繫ぐ。
『みんな忘れちゃって、驚いた・・・。』
「驚かせてごめん。」
『スズが、橋を落ちて驚いた・・・。』
「・・・?そういえば、それも変だね。話を聞きたい。」
通知はフィフだけでなく、アリスからもあった。
アリスは、私が橋から落ちたことを知っている?
『もう少し、感情に浸らせて・・・。』
「…ご、ごめん。」
明らかに、言葉を間違えた。
再び扉に入って、白い通路を進んでいく。
『死神のことは聞かないから、話がしたいの。』
「うん。」
まだ少し、アリスの声が震えている気がする。
和達が忘れてしまっている中で、彼女だけが私のことを覚えていたのかもしれない。
『怪我は?』
「無いよ。アリスは?」
『おかげさまで、元気だよ。』
「それなら、良かった。」
『スズは、私が元気だと嬉しい?』
「嬉しい。」
もうすぐ目的の扉が見えるだろう。
『どうして?』
「大切な人が元気だと、嬉しい。」
『・・・そういうのは素直なんだね。だから和さんに、直球過ぎるって言われたんじゃない?』
「あんまり言葉を選ぶと、私の場合は伝わらないらしい。だから、そのまま受け取ってくれればいい。」
『なるほど。私も、スズが、戻ってきてくれて・・・嬉しいの。』
「ありがとう。直接話そう。」
目の前の、扉を開く。
フィフの家のリビング。
正面のテーブルに座っているフィフと目が合う。
–何とか、なったようで。
–心配かけた。
その隣でアリスが座っていた椅子を倒して立ち上がり、飛び込んできた。
「本当に!!!バカー!!」
今は小柄な体を、そのまま抱きとめて持ち上げる。
「うぅぅぅぅぅ!子供じゃないぃぃ」
「気にしないでいい。」
震えながら私の首元を強く握る様子を見て、かなり心配させてしまったのだと、改めて思い知った。
アリスを抱えたまま、手前の椅子に座る。
–フィフもありがとう。
–戻ってこなかったら・・・どうしてやろうかと思ったよ。
フィフの表情が崩れかけているのを見て、初めて時間の長さを理解した。
–ごめん。
アリスも泣きじゃくっているので、色々と聞くのは後にしよう。
小さな背中をさする。
–一度認知外に行った後に戻ってきた場合、和達は大丈夫そう?
それだけは、先に確認しておきたかった。
–…俺も初めて見たけど、多少前後の記憶に違和感はある様子だったけど、しばらくすれば普通に戻っていたよ。
–それなら良かった。
–少しは、話をした方が良い。俺は、上で休んでくるよ。
–分かった。ありがとう。
フィフは席を外して、正面の階段を上がっていった。
フィフもだいぶ寝不足そうに見えた。
私が思っているより、長い時間が過ぎているのかもしれない。
アリスの背中をさする。
–すっごくすっごく・・・心配だった。
アリスの力が強くなる。
–うん。ごめん。
–別にスズが悪いわけじゃない・・・でも、もう二度と話せないかもって思った・・・。
アリスの体温が伝わる。
–…うん。ありがとう。
–戻ってきて、良かった・・・
–遅かった?
アリスが、真っ赤な顔を上げた。
「遅かったよ!スズは悪くないけれど!!二日もずっと寝られなかった!とにかくずっとドキドキしてた!スズは悪くないけれど!!」
「ご、ごめん。」
「…今日、一緒に寝て。」
「分かった。」
アリスは私の返事を聞いて、再び肩に顔を沈めてきたので、その頭をゆっくり撫でる。
精霊の世界は時間の流れが遅い事を考えても、丸一日経っているのか。
しばらく静かにしていると、アリスから寝息が聞こえてきた。
アリスも寝不足だと言っていたし、眠かったのだろう。
静かに持ち上げて、フィフの家を出る。
まだ外は、夜が明けたばかりのようで、足元の草には朝露が光っている。
フィフの家の階段を下りて、隣の家に入る。
「失礼。」
アリスを起こさないように、静かに声をかける。
「…?どういう状況?」
「ちょっと色々あった。」
和が、朝ごはんを作っていたようだ。
私が抱いている寝ているアリスを見て、静かに声をかけてきたけれど、困惑を顏に浮かべている。
「まぁ一旦いい。・・・アリスさん、寝てるんだよな?」
「そう。部屋に運んでくる。」
アリスの部屋は、前回黙って入ったので場所は分かる。
階段を上り部屋へ向かう。
「サーズ?・・・!っていうか、アリスどこにいたのよ?」
部屋に入ると、イザベルがいた。
「最近アリスが一人行動していたのだとしたら、ちょっと大目に見てあげてもらえると嬉しい。」
「・・・何かあったのね。・・・分かったわよ。後で説明してよね。」
「分かった。」
アリスをゆっくりベッドへ降ろす。
目の隈も気になるけれど、かなり泣いていたから、後で顔が腫れそうだ。
濡れタオルでも持ってこよう。
掛け布団をかけて、ベッドから離れようとした。
–ぐい
「!」
後ろに倒れそうになる。
アリスが、私の服の端を掴んでいたようだ。
「・・・」
アリスは、私が橋から落ちたことを知っていた。
もしかすると、あの時に後ろから私の服を引っ張ったのは、アリスだったのだろうか。
あの細い力が、まだ服の端に残っている気がした。
「ヒナ達は?」
「まだ寝てるかな。」
一階のリビングまで降りる。
「それで?」
「…色々あった。」
和が胡散臭そうな目を向けてくる。
「俺もスマホの履歴が、変な気がするんだけど?」
「私とは、数日分無いからな。」
「で?」
「…一言では説明しにくい。」
和がため息をつく。
オニオンスープとサラダ。
オムレツ、クロワッサン。
「言えないことなのか、言いたくないことなのか。アリスさんも、ここ最近の様子が変だった。」
「それが一応ひと段落したということ。いただきます」
「どうぞ。つまり、最近の様子が変だった理由は、スズが関わってるんだな?」
それは、その通り。
サラダから手を付ける。
「そして、なぜか俺はその間、お前と何のやりとりもしていない。謎の空白があるな。」
久しぶりに、和の作りたての食事。
「最後のやりとりは、座標を重複させた通路の検証だったな。」
温かいスープも美味しい。
「今日は基本世界の日曜日だな。明日は確か、祝日だったはず。」
オムレツは、丁度良い具合に半熟感があって良い。
「日向達も寂しがってたし、今日ぐらい時間を取っても良いんじゃないだろうか?」
「…分かった。」
時間があるうちに、フィフとアリスの話を聞いて、次の行動を考えたいところ。
「ふーん?通路の検証なら、なんでアリスさんが関わってるんだろうな。」
クロワッサンも焼き目があって、バターの香ばしさがある。
「仕方ない。アリスさんに、聞いてみようか。」
「…説明はちゃんとする。コーヒーをお願いします。」
今回のことは、私にもまだ分からない部分があるけれど、アリスにも迷惑がかかったことは確かだろう。
完全に想定外のトラブルとはいえ、ここは怒られるしかない。
なんとか、横から詰められ続ける朝ごはんを終え、コーヒーを口にする。
「まだ全体の状況は分からない。だけれど、アリスとフィフに、心配をかけてしまっているから、二人は今休んでる最中。二人とも今日は、そのまま休ませてもらえると嬉しい。」
「通路のことだから、フィフ分かるけど、なんでアリスさん?」
「そこはその二人に、私も確認したい部分。」
ひとまず、私の視点の状況を説明していく。
そして、認知消失について伝えた瞬間、和の動きが止まった。
「・・・・・」
「なので、最初にも伝えた通り。二人にはかなり心配をかけてしまった。」
橋から落ちて、戻ってくるまでの完全な経緯は、途中途中の記憶が虫食い状態になっているので、曖昧な説明になってしまった。
それでも、フィフやアリスの反応を見る限りでも、大まかな認識は間違っていないはず。
「ごめん。」
その一言では、足りないことは分かっている。
和はテーブルに手をついて、下を向いている。
反応が、ない理由は想像はつく。
「・・・本当に、無かったことに、・・・なるんだな。」
朝の静かな空間で、和のかすれる声が響く。
「個人の消失については、私も初めての事だけれど、世界の消失と同様のことが起きていたことは確かだと思う。」
「今までの・・・関係もなかったことになるのか・・・。」
「その存在そのものが無くなる。過去の記憶に支障が出ない範囲で、調整される。」
「今回、お前が戻ってこれたのは・・・。」
どこかを歩き続けたという認識は、なんとなくある。
それでも最初の方で、何度か行き先を見失っていた気がする。
そんな時、目についた黄色い何か。
ぼんやりとした記憶なので、それが何だったのかも正直よく分からない。
けれど、その黄色い何かが行く先が、なんとなく行くべき先だと思えた気がした。
それも、途中で消えてしまったけれど。
何も見えない真っ暗な中で、もしかしたらこのまま消えるのかもしれないと感じた。
どうしようもないのに、どうにかしなくてはならない。
どうすればいいのか。
そんな時にも・・・
「…色々手助けがあった。そのおかげで、元の場所に戻れたとそう思ってる。」
「世界の座標の外で、手助け・・・?外にも誰かが存在しているのか?」
存在。
”誰か”が“いる”と、考えていいのかどうか、それすら私には分からない。
「消失した世界は、元々存在していたものだった。それが、認知の外に出た先を、私は正確には良く分かっていない。」
「そ・・うか。でも、偶然戻って来られたと、いう感じに聞こえる。」
偶然。
そういうには、都合が良すぎる気がする。
それに、偶然だったというのは・・・
「分からない。でもそうなのかもしれない。もう一度落ちた場合に、戻ってこられる保障はないとは思う。」
偶然ではなかったとしても。
あの黄色い・・・何かは、多分もう二度と現れない。
明確な理由もないのに、そう感じている。
そうすれば、あの暗い森の様な場所を、私はきっと抜けられない。
「お前。また行くんだろう?」
「これは、アリスとフィフに確認してからだけれど、今回アリスが関与してきた理由として、予想できるのは・・・」
「山本梓の魂・・・か。」
和が眉間にしわを寄せて、言葉を引き継ぐ。
「…と、いうのが一番シンプルな理由になると思う。」
つまりあの橋の先には、あったのだろう。
山本梓の魂が。
けれど、途中で崩れていく様子を見るに、通路の条件が完全に達成できていないか、もしくは時間の条件があるのかもしれない。
そして、イヴの声。
あれは、私の記憶の再現なのだろうか。
少なくとも、ただの雑音ではない。
あの声は、イヴに結びついた私自身の記憶かもしれない。
あるいは、あの空間が勝手に拾い上げた再現なのかもしれない。
橋を渡っていた私は、精神的に安定しているとは、言い難い状態だった。
アリスが精神体として介入してきていたのだとしたら、
あの空間は、普段使っている通路のような現実的な場所ではなく、現実と夢の間のような、交わった空間だったのかもしれない。
それがアディール・クラーレンの疑似通路の性質によるものなのか。
あるいは、座標と座標の間を繋ぐ橋そのものが持つ性質なのか。
「…おい。」
「ん。あぁだから、もう一度行く価値はある。」
少し考え込んでしまった。
「残念ながら、今回の場所は私にとっても初めての事が多い。
できるだけ、予測は立てて動くつもりはあるけれど、予想外の出来事はあると思う。」
「山本梓の魂を・・・諦めるって選択は、ないのか?」
「アリス・フォーラスには、死者と生者を行き来した故の個別の特性がある。
でも、フォーラスとクラーレンにとって大きいのは、イヴの再現だ。
それを目的ごと破綻させる方法としては、山本梓の魂を回収する以外、今のところ思いつかない。」
そして、死神への交渉材料としても。
「…今回、偶然戻ってこられたと分かっている状態で、二度目、三度目を試すと言われて、じゃあまた偶然戻ってこられると、期待できると思うか?」
認知外で消失する。
それは、walkerとしての生まれ変わりが、発生するのかも分からない。
「一つだけ、気になる事がある。」
「…なんだよ?」
もしも、今回の事をあの男も知っているのだとしたら、という仮定になるけれど。
「私がする行動は、アディール・クラーレンも予想の範囲内のはず。
あの男が、現状稼働している私やフィフという観察対象を、そう易々と手放すようなことをするのだろうか。」
私がもしもこのまま消失した場合。
クラーレンにとって、今観察できるwalkerはフィフのみになる。
ましてや、フィフも状況次第では、消失した可能性すらある。
それをクラーレンは、許容するのだろうか?
あの男が、ただ見ていただけとは思いにくい。
「あの男は、スズが戻ってこられると踏んでいた、と思うって言いたいのか?」
「…それは、分からない。」
完全に知らなかったのだとすれば、関係無い話だけれど、あの用心深い男が?
「・・・とにかく。山本梓の魂を回収するにしても、他の方法を・・・見つけたいんだ・・・。俺は・・・」
「…今回は、場所が限定的過ぎる。クラーレンにとっても手放したくないモノである以上、交渉するとしても、そっちもかなり厳しい条件になると思う。」
「・・・・。」
絶対に戻れる保障か。
今回、アリスにもフィフにも、心配をかけている。
他の手段が思いつかないとはいえ、危険な橋を渡ったことは分かってる。
「分かってる。同じ失敗を繰り返すのは私も願い下げ。それにまずは、フィフやアリスの話も聞きたい。一度、方法を考える。」
「・・・あぁ。」
そんな顔を、させたいわけじゃない。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




