疑問:たとえ魂が同じでも、私は私?
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
「××!!」
「は?どうしたの?アリス。」
毛布をはねのけて、体を起こした。
イザベルは、急な私の大声に驚いてこっちを見た。
「え?私、今なんて言った?」
「…ど、どうしたの?なんて言ったか、よく聞こえなかったわ。」
口に手を当てる。
・・・何が?
落ち着いて、もう一度その言葉を口にする。
「・・・××。」
「?・・・なに?もう一度言ってくれる?」
なんで?
聞こえてない?
「だから、××だよ!××!」
「・・・?」
言えているはずなのに、その名前だけ世界の手前で零れ落ちるみたいだった。
イザベルにも、聞こえてない?
胸の奥だけが、その名前を知っている。
なのに、世界の方が受け取ってくれない。
「イザベル?」
「何よ?」
なんで?
起きたばかりで暖かいはずの布団の中で、一気に汗が冷える。
「私の名前は・・・?」
「は?アリスでしょ?それとも梓って意味?」
イザベルは、ちゃんと答えてくれた。
「ううん。アリスで大丈夫。えっと、だから3番目のwalkerの名前は?」
「・・・3番目?どういう意味?walkerは4番目と5番目しか、もういないでしょう?
3番目なんて、そもそも知らないわよ。」
?
「・・・・」
な・・・なんで?
どうして?
待って!
布団を蹴り上げ、寝巻のまま、部屋を飛び出した。
階段を駆け下りて、台所に立っていた和さんが目に入る。
「和さん!!」
「あ。アリスさん。おはようございます。」
「和さん、××のこと・・・・分かりますよね!?」
私の様子が変だとは思ってくれてるみたいだけど、和さんの反応はそれだけだった。
「?…えっと、何でしょう?どうしたんですか?すみません。今言ったこと、もう一度聞いても良いですか?」
走ってきたのに、更に体温が下がった気がした。
「・・・・な。」
言葉が出ない。
どういうこと?
「ふぁぁアリス。うるさいよぉ?朝からどうしたのぉ?」
「おはようぅぅ?アリスゥ?」
日向と秀人が、後ろから階段を降りてきた。
「・・・ふ、二人とも!××・・・!えっと、相談所の所長の名前は?」
「相談所の所長?和じゃん。どうしたの?」
「ちょっとお休み中だけど、流石にそこにいるし?」
和さんが、所長?
いや、今はそんなことじゃない。
「アリスさん、本当にどうしたんですか?」
みんなから、距離を離すように足が後ろに下がる。
昨日まで、ずっと一緒に過ごしてきた人達なのに、急に遠い感覚になる。
一人分だけ、ぽっかり何かが抜け落ちているのに、誰もそれに気づいていない。
その穴だけを、私一人が見ている。
どうすれば・・・
そういえば、あの人は?
再び、急いで玄関のドアノブに手をかける。
「おっと!危ないよ?」
「フィフさん!!」
そのまま裸足で、玄関の扉を勢いよく開く。
その正面には、入口の階段を上っている途中のフィフさんがいた。
「どうしたの?」
「・・・ああ!・・・あの!フィフさん・・・、××のこと・・・。」
これでフィフさんも知らなかったら、どうすればいいか分からない。
自信が無くなって、声が小さくなっていく。
フィフさんからの反応がない。
やっぱりフィフさんも・・・?
「・・・・・・あーあ。そういう事か。」
「フィフさん?」
さっきまで笑顔だったフィフさんの表情が、急に消えた。
「・・・というか何で、アリスちゃんは覚えてるの?」
これは、つまり・・・
「フィフさんは・・・覚えてるんですね・・・?」
「そりゃそうだよ。俺たちは忘れない。」
その言い方は、慰めじゃなかった。
ただ事実を言っているだけみたいだった。
でもその一言で、喉に張りついていた息が少しだけ戻った。
「アリスさんもフィフさんも、どうかしましたか?」
私の後ろから、和さんが声をかけてきた。
「なんでもないよ。ちょっとアリスちゃん借りるよ。」
「え?はい。大丈夫ですか?」
「俺の家で、話をするだけだよ。」
「?…わかりました。」
フィフさんは、上り途中の階段を下りて、地面に戻る。
何も考えられないまま、ひとまず靴を履いてついて行く。
「・・・まったく。」
そのままフィフさんが言った通りに隣の家に、お邪魔した。
フィフさんは、入って早々にテーブルに座り、スマホで何かをし始める。
「・・・フィフ・・・さん?」
一人、玄関先で立ち尽くす。
「ひとまず座りな。少しだけ待って。鬼電とメッセージを入れまくっておく。・・・繋がってるうちに。」
フィフさんはそう言って、スマホをいじりながらも、片手間でお茶を用意し始めてくれた。
リビングの中央にある、丸いテーブルへ静かに座る。
静かにお茶を差し出されて、受け取る。
温かい。
「あ、りがとうございます・・・。」
「んで?何でアリスちゃんは、あいつのこと覚えてるの?」
スマホをいじりながら、話し始める。
「覚え・・・というより、なんで、みんな忘れてるんですか・・・?」
フィフさんが、少しだけスマホから目線を上げて、私を見る。
「昨日、俺はちょっと出かけてたんだけど、アリスちゃんは何かあった?」
昨日の事と言われれば、日中のイザベルと話したぐらい。
でも、明確に何かが起こったと言われれば、思い当たるのは一つある。
「あの・・・私には、夢かどうか、良く分かっていないのですが・・・。」
昨日の夢で起こった出来事を、フィフさんに話し始めた。
白い橋。
スズの事。
アディール・クラーレンの事。
そして、橋が崩れてスズが落ちていってしまった事。
フィフさんは、たまにスマホをいじりながらも、じっとこちらの話を聞いている。
「・・・とそういう感じで、さっき起きたら・・・。」
みんなが彼女の事を、なぜか覚えていない。
そして、その名前はみんなの耳に届いていない。
「はぁ・・・。」
フィフさんが、溜息と共に天井を見上げる。
「なるほどね・・・。世界が消滅した時と、同じことが起こってるよ。」
「世界が消滅?あった事も忘れてしまう・・・ってことですか?」
少し前に、魔法世界でアルファーが教えてくれた。
あったはずの世界が無かった事になる。
それが、消えたことに気が付かない・・・
その言葉を思い出した途端、胸の奥まで冷えていく。
「めんどくさ・・・確かに座標以外の場所にいたわけだから、その可能性はあるだろうな。」
座標とかは、正直あまり良く分かってない。
でも、多分・・・
「あの橋から落ちたせいってこと・・・ですか?」
「その可能性が高い。昨日、世界とは違う場所を探す為に、俺とあいつは通路を使っていた。
その時に、アリスちゃんが入ってきた理由も、なんとなく分かった。」
フィフさんが、昨日のことについて教えてくれた。
内容は、スズと一緒に、少し前から調べていた事について。
山本梓の魂の場所についての、スズの仮説を元にして色々試行錯誤していた事。
その為に通路を色々な世界に繫いで、重ねさせてみたりしながら、繰り返していた事。
そして、フィフさんの予想では、最後確認したあの橋の先に、山本梓の魂があるからこそ、私が共鳴して、あの場所に引き寄せられたのではないかと・・・
「・・・××・・・。彼女が落ちた先は、どこなんでしょうか?」
「座標以外の場所。としか、俺にも分からないな。」
聞きたくないけど、最悪の状況が思考とともに口に出る。
「・・・もしも、戻ってこれなかったら・・・」
「このまま、誰にも認知されないまま消える。」
さも当然というように、フィフさんは口にした。
このまま消える・・・?
「そ、そ・・・そんなの!」
「アリスが知らないだけで、世界が消えるってそういう事だ。」
「っ・・・」
確かに、私は今まで知らなかった。
気が付きもしなかった。
でも・・・
でも、それを「はい、そうですか」って、終われるわけがない。
そんな・・・
湯呑を持つ手が、小さく震えて止まらない。
「そ、嫌・・・どうにか・・・。どうにか・・・。」
フィフさんは、またスマホをいじっている。
「そんな!スマホいじってる場合じゃ!」
感情が出る。
「まぁ、落ち着け。」
「無理です!」
息が苦しい。
あの時。
自分の手を見下ろす。
掴めなかった自分の手。
どうして、落ちる彼女の手を掴めなかったの?
手を掴めたんだから!
洋服を引っ張れたんだから!
掴めたはずなのに!!
「そうだな。目の前で見ていたから、どうにかできたかもしれないと、考えるのも分かるよ。」
フィフさんが、スマホをテーブルに置いた。
「まだ、通信がなぜか繋がっている。」
何を言ってるんだろう?
「・・・・?」
「完全に切れてないってことだ。」
滲む視界の中でも、スマホの画面に「送信完了」と出ているのだけは見えた。
「これが届いていればいいけれど。」
「これって・・・?」
彼女に、送ってるってこと?
「俺一人じゃ、あの橋がもう一度出せるかは、分からない。
それにお前が言うには、クラーレンもそこにいたんだろう。」
そう。
アディール・クラーレンも私と同じく、彼女が落ちるのを見ていた。
「今動けるwalkerが、俺一人である以上。下手に試して、俺まで落ちる訳にもいかない。」
ぼやける目が、フィフさんと合う。
「お前が、心配してることもちゃんと送ったよ。」
「・・・」
フィフさんは再び、スマホを持ち上げて、操作し始めた。
「ひとまず、落ち着け。魂が完全に消滅した場合、正直どうしようもない。」
そこで一度、フィフさんは言葉を切った。
「でも、もし何かの形で残っていた場合、あいつなら戻ってくる気がする。」
私も、そう思いたかった。
名前は届かないのに、完全にいなくなった感じはしない。
どこかで、まだ手が届きそうな気がしてしまう。
一人焦って、動揺していたせいでまったく気が付かなかった。
フィフさんも、ほんのわずかに指先が震えていた。
でも、目が諦めてない。
「・・・ごめんなさい。」
「気にすんな。」
フィフさんは、少し笑った。
「…あいつが言ったんだ。今は座標があるって。」
座標。
「座標って世界の場所・・・ってことですか?」
「そういう意味もあるな。俺たちが繋ぐ通路は、その座標を設置できる。」
静かにフィフさんが続ける。
その声に耳を傾ける。
何も変わってないけど、少しだけ落ち着けた気がする。
「でも、そういう世界の座標とは別に、魂にも座標があるって考えてるんだ。
でも、俺たちwalkerは普通の魂とは違うらしいから、その座標がどうなってるかは知らない。」
魂にも座標・・・?
その言葉だけで、胸の奥に少しだけ引っかかるものがあった。
「帰る場所・・・魂にもあるんですね・・・。」
「もしかしたら、これからどうなるかも分からない。のらりくらりな俺たちには、そんな座標はないのかもしれない。」
フィフさんの笑顔はいつもの、軽い笑顔ではなく、寂しそうな笑顔。
「決まって帰る場所なんて、ないのかもしれない。」
それは名前の通り、歩いてるだけ・・・
続けるフィフさんは少しだけ、いつもの笑顔になる。
「でもさ。あいつは、その座標が今はあるんだと。つまりかなり遠回しに言ってるけど、戻る場所があるって言ってるんだよ。」
戻る場所がある。
その言葉だけで、息が少ししやすくなった。
同じ魂だとしても、同じ願いになるわけじゃない。
イヴさんが彼女を死へ寄せたとしても、私は戻ってきてほしい。
それだけは、はっきりしてる。
「言葉足らずなあいつが、珍しくそんなことを言った時は驚いたけど、そういうぐらいには、戻る気があるんだろ。」
「・・・凄いです。」
遠回しすぎる。
でも、彼女らしい。
「それだけ、長い付き合いってことだな。」
テーブルのお茶は冷めてしまっているけど、やっと飲めた。
「忘れてるからって、あいつらが悪い訳じゃない。とにかく、今は落ち着いて戻って安心させてやれよ。」
「・・・そうでした。」
急に、忘れてしまったイザベルや和さん、日向や秀人が離れた存在に見えてしまったけど、みんな忘れたくて忘れたわけじゃない。
「あと、忘れずに一つだけ良い情報だな。」
「?」
「あの場所には、高い確率で山本梓の魂があるって事は、回収はどうあれ、どうにかなれば、お前の周りの事も少しは落ち着くだろう?」
そうだった。
さっき、その話もしてくれていたのに、すっかり流れてしまっていた。
「そうすれば、あいつも一区切りつくだろうし、晴れて仲直りできることを祈ってるよ。」
「・・・頑張ります。」
フィフさんのおかげで、彼女が戻ってくる事を願える自分がいる。
勝手に絶望するには、まだ早すぎる。
「ムカつくなら、ぶん殴ればいいさ。」
「いえ、それはやめておきます。」
意外と、こういう雑な励まし方は、和さんっぽい気がする。
「あの坊主も朝飯作って待ってるだろ。アリスちゃんも寝巻のままだし、戻ろう。」
「はい。」
まずは、イザベルに謝らなきゃ。
フィフさんの家を出て、隣の家へ向かって歩く。
「でも、実際のところ彼女頼みってことですよね・・・?」
「そういう言い方もあるな。」
だからといって、焦って行動するのは良くないけども。
「あ。戻ってきましたね。大丈夫ですか?」
玄関を開けると、和さんが出迎えてくれた。
心配そうな顔をしているみんなに、まずは謝った。
みんなからしたら、私の方が変に心配をさせてしまった。
でも、みんなもそうだけど、やっぱり和さんが彼女の事を忘れてしまうことは、本当に嫌。
本当に消えてしまったみたいで、怖い。
それでも私は、まだどこかにいる気がしてしまう。
早く戻ってきて・・・
あなたが誰だったとしても、私はあなたに戻ってきてほしい。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




