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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第一部 第三章 理解は救いにならない
130/201

疑問:たとえ魂が同じでも、私は私?

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

「××!!」

「は?どうしたの?アリス。」


毛布をはねのけて、体を起こした。

イザベルは、急な私の大声に驚いてこっちを見た。


「え?私、今なんて言った?」

「…ど、どうしたの?なんて言ったか、よく聞こえなかったわ。」


口に手を当てる。


・・・何が?


落ち着いて、もう一度その言葉を口にする。


「・・・××。」

「?・・・なに?もう一度言ってくれる?」


なんで?


聞こえてない?


「だから、××だよ!××!」

「・・・?」


言えているはずなのに、その名前だけ世界の手前で零れ落ちるみたいだった。

イザベルにも、聞こえてない?


胸の奥だけが、その名前を知っている。

なのに、世界の方が受け取ってくれない。


「イザベル?」

「何よ?」


なんで?


起きたばかりで暖かいはずの布団の中で、一気に汗が冷える。


「私の名前は・・・?」

「は?アリスでしょ?それとも梓って意味?」


イザベルは、ちゃんと答えてくれた。


「ううん。アリスで大丈夫。えっと、だから3番目のwalkerの名前は?」

「・・・3番目?どういう意味?walkerは4番目と5番目しか、もういないでしょう?

3番目なんて、そもそも知らないわよ。」


?


「・・・・」


な・・・なんで?


どうして?

待って!


布団を蹴り上げ、寝巻のまま、部屋を飛び出した。

階段を駆け下りて、台所に立っていた和さんが目に入る。


「和さん!!」

「あ。アリスさん。おはようございます。」


「和さん、××のこと・・・・分かりますよね!?」


私の様子が変だとは思ってくれてるみたいだけど、和さんの反応はそれだけだった。


「?…えっと、何でしょう?どうしたんですか?すみません。今言ったこと、もう一度聞いても良いですか?」


走ってきたのに、更に体温が下がった気がした。


「・・・・な。」


言葉が出ない。


どういうこと?


「ふぁぁアリス。うるさいよぉ?朝からどうしたのぉ?」

「おはようぅぅ?アリスゥ?」


日向と秀人が、後ろから階段を降りてきた。


「・・・ふ、二人とも!××・・・!えっと、相談所の所長の名前は?」

「相談所の所長?和じゃん。どうしたの?」

「ちょっとお休み中だけど、流石にそこにいるし?」


和さんが、所長?

いや、今はそんなことじゃない。


「アリスさん、本当にどうしたんですか?」


みんなから、距離を離すように足が後ろに下がる。


昨日まで、ずっと一緒に過ごしてきた人達なのに、急に遠い感覚になる。

一人分だけ、ぽっかり何かが抜け落ちているのに、誰もそれに気づいていない。


その穴だけを、私一人が見ている。


どうすれば・・・


そういえば、あの人は?


再び、急いで玄関のドアノブに手をかける。


「おっと!危ないよ?」

「フィフさん!!」


そのまま裸足で、玄関の扉を勢いよく開く。

その正面には、入口の階段を上っている途中のフィフさんがいた。


「どうしたの?」

「・・・ああ!・・・あの!フィフさん・・・、××のこと・・・。」


これでフィフさんも知らなかったら、どうすればいいか分からない。

自信が無くなって、声が小さくなっていく。


フィフさんからの反応がない。


やっぱりフィフさんも・・・?


「・・・・・・あーあ。そういう事か。」

「フィフさん?」


さっきまで笑顔だったフィフさんの表情が、急に消えた。


「・・・というか何で、アリスちゃんは覚えてるの?」


これは、つまり・・・


「フィフさんは・・・覚えてるんですね・・・?」

「そりゃそうだよ。俺たちは忘れない。」


その言い方は、慰めじゃなかった。

ただ事実を言っているだけみたいだった。


でもその一言で、喉に張りついていた息が少しだけ戻った。


「アリスさんもフィフさんも、どうかしましたか?」


私の後ろから、和さんが声をかけてきた。


「なんでもないよ。ちょっとアリスちゃん借りるよ。」

「え?はい。大丈夫ですか?」

「俺の家で、話をするだけだよ。」

「?…わかりました。」


フィフさんは、上り途中の階段を下りて、地面に戻る。

何も考えられないまま、ひとまず靴を履いてついて行く。


「・・・まったく。」


そのままフィフさんが言った通りに隣の家に、お邪魔した。


フィフさんは、入って早々にテーブルに座り、スマホで何かをし始める。


「・・・フィフ・・・さん?」


一人、玄関先で立ち尽くす。


「ひとまず座りな。少しだけ待って。鬼電とメッセージを入れまくっておく。・・・繋がってるうちに。」


フィフさんはそう言って、スマホをいじりながらも、片手間でお茶を用意し始めてくれた。

リビングの中央にある、丸いテーブルへ静かに座る。


静かにお茶を差し出されて、受け取る。

温かい。


「あ、りがとうございます・・・。」

「んで?何でアリスちゃんは、あいつのこと覚えてるの?」


スマホをいじりながら、話し始める。


「覚え・・・というより、なんで、みんな忘れてるんですか・・・?」


フィフさんが、少しだけスマホから目線を上げて、私を見る。


「昨日、俺はちょっと出かけてたんだけど、アリスちゃんは何かあった?」


昨日の事と言われれば、日中のイザベルと話したぐらい。

でも、明確に何かが起こったと言われれば、思い当たるのは一つある。


「あの・・・私には、夢かどうか、良く分かっていないのですが・・・。」


昨日の夢で起こった出来事を、フィフさんに話し始めた。


白い橋。

スズの事。

アディール・クラーレンの事。

そして、橋が崩れてスズが落ちていってしまった事。


フィフさんは、たまにスマホをいじりながらも、じっとこちらの話を聞いている。


「・・・とそういう感じで、さっき起きたら・・・。」


みんなが彼女の事を、なぜか覚えていない。

そして、その名前はみんなの耳に届いていない。


「はぁ・・・。」


フィフさんが、溜息と共に天井を見上げる。


「なるほどね・・・。世界が消滅した時と、同じことが起こってるよ。」

「世界が消滅?あった事も忘れてしまう・・・ってことですか?」


少し前に、魔法世界でアルファーが教えてくれた。

あったはずの世界が無かった事になる。


それが、消えたことに気が付かない・・・


その言葉を思い出した途端、胸の奥まで冷えていく。


「めんどくさ・・・確かに座標以外の場所にいたわけだから、その可能性はあるだろうな。」


座標とかは、正直あまり良く分かってない。


でも、多分・・・


「あの橋から落ちたせいってこと・・・ですか?」

「その可能性が高い。昨日、世界とは違う場所を探す為に、俺とあいつは通路を使っていた。

その時に、アリスちゃんが入ってきた理由も、なんとなく分かった。」


フィフさんが、昨日のことについて教えてくれた。


内容は、スズと一緒に、少し前から調べていた事について。

山本梓の魂の場所についての、スズの仮説を元にして色々試行錯誤していた事。

その為に通路を色々な世界に繫いで、重ねさせてみたりしながら、繰り返していた事。


そして、フィフさんの予想では、最後確認したあの橋の先に、山本梓の魂があるからこそ、私が共鳴して、あの場所に引き寄せられたのではないかと・・・


「・・・××・・・。彼女が落ちた先は、どこなんでしょうか?」

「座標以外の場所。としか、俺にも分からないな。」


聞きたくないけど、最悪の状況が思考とともに口に出る。


「・・・もしも、戻ってこれなかったら・・・」


「このまま、誰にも認知されないまま消える。」


さも当然というように、フィフさんは口にした。


このまま消える・・・?


「そ、そ・・・そんなの!」

「アリスが知らないだけで、世界が消えるってそういう事だ。」

「っ・・・」


確かに、私は今まで知らなかった。

気が付きもしなかった。


でも・・・

でも、それを「はい、そうですか」って、終われるわけがない。


そんな・・・


湯呑を持つ手が、小さく震えて止まらない。


「そ、嫌・・・どうにか・・・。どうにか・・・。」


フィフさんは、またスマホをいじっている。


「そんな!スマホいじってる場合じゃ!」


感情が出る。


「まぁ、落ち着け。」

「無理です!」


息が苦しい。


あの時。


自分の手を見下ろす。


掴めなかった自分の手。


どうして、落ちる彼女の手を掴めなかったの?


手を掴めたんだから!

洋服を引っ張れたんだから!


掴めたはずなのに!!


「そうだな。目の前で見ていたから、どうにかできたかもしれないと、考えるのも分かるよ。」


フィフさんが、スマホをテーブルに置いた。


「まだ、通信がなぜか繋がっている。」


何を言ってるんだろう?


「・・・・?」

「完全に切れてないってことだ。」


滲む視界の中でも、スマホの画面に「送信完了」と出ているのだけは見えた。


「これが届いていればいいけれど。」

「これって・・・?」


彼女に、送ってるってこと?


「俺一人じゃ、あの橋がもう一度出せるかは、分からない。

それにお前が言うには、クラーレンもそこにいたんだろう。」


そう。

アディール・クラーレンも私と同じく、彼女が落ちるのを見ていた。


「今動けるwalkerが、俺一人である以上。下手に試して、俺まで落ちる訳にもいかない。」


ぼやける目が、フィフさんと合う。


「お前が、心配してることもちゃんと送ったよ。」


「・・・」


フィフさんは再び、スマホを持ち上げて、操作し始めた。


「ひとまず、落ち着け。魂が完全に消滅した場合、正直どうしようもない。」


そこで一度、フィフさんは言葉を切った。


「でも、もし何かの形で残っていた場合、あいつなら戻ってくる気がする。」


私も、そう思いたかった。

名前は届かないのに、完全にいなくなった感じはしない。

どこかで、まだ手が届きそうな気がしてしまう。


一人焦って、動揺していたせいでまったく気が付かなかった。


フィフさんも、ほんのわずかに指先が震えていた。

でも、目が諦めてない。


「・・・ごめんなさい。」

「気にすんな。」


フィフさんは、少し笑った。


「…あいつが言ったんだ。今は座標があるって。」


座標。


「座標って世界の場所・・・ってことですか?」

「そういう意味もあるな。俺たちが繋ぐ通路は、その座標を設置できる。」


静かにフィフさんが続ける。

その声に耳を傾ける。


何も変わってないけど、少しだけ落ち着けた気がする。


「でも、そういう世界の座標とは別に、魂にも座標があるって考えてるんだ。

でも、俺たちwalkerは普通の魂とは違うらしいから、その座標がどうなってるかは知らない。」


魂にも座標・・・?


その言葉だけで、胸の奥に少しだけ引っかかるものがあった。


「帰る場所・・・魂にもあるんですね・・・。」


「もしかしたら、これからどうなるかも分からない。のらりくらりな俺たちには、そんな座標はないのかもしれない。」


フィフさんの笑顔はいつもの、軽い笑顔ではなく、寂しそうな笑顔。


「決まって帰る場所なんて、ないのかもしれない。」


それは名前の通り、歩いてるだけ・・・


続けるフィフさんは少しだけ、いつもの笑顔になる。


「でもさ。あいつは、その座標が今はあるんだと。つまりかなり遠回しに言ってるけど、戻る場所があるって言ってるんだよ。」


戻る場所がある。

その言葉だけで、息が少ししやすくなった。


同じ魂だとしても、同じ願いになるわけじゃない。

イヴさんが彼女を死へ寄せたとしても、私は戻ってきてほしい。


それだけは、はっきりしてる。


「言葉足らずなあいつが、珍しくそんなことを言った時は驚いたけど、そういうぐらいには、戻る気があるんだろ。」


「・・・凄いです。」


遠回しすぎる。

でも、彼女らしい。


「それだけ、長い付き合いってことだな。」


テーブルのお茶は冷めてしまっているけど、やっと飲めた。


「忘れてるからって、あいつらが悪い訳じゃない。とにかく、今は落ち着いて戻って安心させてやれよ。」


「・・・そうでした。」


急に、忘れてしまったイザベルや和さん、日向や秀人が離れた存在に見えてしまったけど、みんな忘れたくて忘れたわけじゃない。


「あと、忘れずに一つだけ良い情報だな。」

「?」


「あの場所には、高い確率で山本梓の魂があるって事は、回収はどうあれ、どうにかなれば、お前の周りの事も少しは落ち着くだろう?」


そうだった。

さっき、その話もしてくれていたのに、すっかり流れてしまっていた。


「そうすれば、あいつも一区切りつくだろうし、晴れて仲直りできることを祈ってるよ。」


「・・・頑張ります。」


フィフさんのおかげで、彼女が戻ってくる事を願える自分がいる。

勝手に絶望するには、まだ早すぎる。


「ムカつくなら、ぶん殴ればいいさ。」

「いえ、それはやめておきます。」


意外と、こういう雑な励まし方は、和さんっぽい気がする。


「あの坊主も朝飯作って待ってるだろ。アリスちゃんも寝巻のままだし、戻ろう。」

「はい。」


まずは、イザベルに謝らなきゃ。


フィフさんの家を出て、隣の家へ向かって歩く。


「でも、実際のところ彼女頼みってことですよね・・・?」

「そういう言い方もあるな。」


だからといって、焦って行動するのは良くないけども。


「あ。戻ってきましたね。大丈夫ですか?」


玄関を開けると、和さんが出迎えてくれた。

心配そうな顔をしているみんなに、まずは謝った。

みんなからしたら、私の方が変に心配をさせてしまった。


でも、みんなもそうだけど、やっぱり和さんが彼女の事を忘れてしまうことは、本当に嫌。


本当に消えてしまったみたいで、怖い。

それでも私は、まだどこかにいる気がしてしまう。


早く戻ってきて・・・


あなたが誰だったとしても、私はあなたに戻ってきてほしい。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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