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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第一部 第三章 理解は救いにならない
128/201

疑問:肝心な時に、私は手が届かない?

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

「おやすみ。アリス。」

「おやすみー。」


イザベルに返事を返して、布団にもぐる。

やっぱり、一人で入るには大きいベッドなので、無意識に、ベッドの端へ寄ってしまう。


今日の午後、イザベルと話していた時に、裏庭を横切った何か。

それが妙に引っかかって、あの後しばらく窓から外を眺めてみたけど、何も見当たらなかった。


あれって、なんだったんだろう?

気のせいかな?


そういえば圭さんやフィフさんも、あれからまだ戻って来なかった。

そんなちょっとしたことなのかも知れないけれど、気になってしまってる。


窓の景色が目に映る。

木の上の方が少し光ってるけど、穏やかな明るさは眩しくない。

自分の布団の音。

微かな風の音。


音のない夜が、部屋を満たしている。


今日は、ここに来て何日目の夜だろう?


少し相談所が、懐かしくなってきている。

しばらく尚弥さんにも会えてない。

入院したと聞いてから、少し前にお見舞いに行った時は、頭に包帯をしていたけど、笑顔で出迎えてくれた。


もう退院したのかな?


死神の世界で、尚弥さんが死んだかも知れないと思った。

それが現実にならなかったことが、何よりも嬉しい。


このまま会えないってことは、きっと無いと思うけど、会えるのはいつ頃になるんだろう。


≪寂しそうな顔。帰りたいの?≫


ん?


何か聞こえた。

ベッドの中から、顔を上げて部屋を見渡す。

特に変わった様子はない。

再び、毛布の中へ潜る。


≪ここよー≫


また声がしたので、声のする方向に目を向ける。


窓の外?

何かが顔を出してる。


イザベルは、気が付かない?


≪その子には、聞こえないみたいね。でもあなたには、聞こえてる。≫


な、なんだろう。


大丈夫かな?

気安く近づかない方がいいかもしれない。


≪おーい。聞こえてるでしょー?≫


頭の中で声が響く。

しばらく無視してたら、諦めてくれるかな?


≪ねぇねぇ。ねぇねぇ。ちょっとだけー、お話しましょうよー。≫


声は、大人びた女の人。

窓の方を見ると、半透明の緑色の長い髪が、風もないのにゆらゆら揺れていた。

輪郭は人の形をしているのに、肌も服もどこか曖昧で、月明かりの中に溶けかけているみたい。

その女の人が、私に向かって手を振っていた。


完全に目が合った。


≪大丈夫よ。あなた達に何かしたら、怒られちゃうわ。≫


「・・・絶対に何もしません?」


≪何もしないわ。約束する。≫


本当だろうか?


月明かりに溶けるような、半透明の人影がそこにあった。


そもそも人間には見えない。

半透明の綺麗な女の人。

まるで・・・


「・・・もしかして精霊さんですか?」


≪そうよー。風の精霊さんよー。≫


それは、ずっと気になってた。

このまま話してみたいけど、イザベルを起こしてしまうのは良くないし、静かにベッドを出る。


一階の裏庭の窓なら、大丈夫かな?


一階におりて、裏庭の窓から外を眺めていると、さっきの精霊が降りてきてくれた。


≪降りてきてくれたのね。ありがとう≫

「精霊さん。本当にいたんですね。」

≪ここはそういう世界だからね。あなたの気配、最初は人の子達に紛れていたけど、ようやく輪郭が見えてきたの。お話できて嬉しいわ≫


なるほど。

もしかして世界が違う生き物だったから、お互いに見えなかったってことなのかな?


「こんな夜中にどうしたんですか?」

≪あなた、魂の形が少し気になっていたの。≫


「魂の形?」

≪ええ。あなたの中、流れているところと、止まっているところがあるの。

生きている人の魂は、もっとひとつづきに揺れるのよ。

でもあなたは、途中で水たまりみたいに静かな場所がある。≫


「・・・それはきっと、イヴさんってwalkerの方の魂だったから。」


魂。

言葉としては理解してるけど、それは幽霊のようなイメージに近くて・・・


「精霊さんには、魂ってそうやって見えるんですか?」

≪見えるわよ。顔より先に、そっちが見えるもの。≫


顔よりも魂。

見え方そのものが、私達とは違うってことだよね。


≪それは知ってるけど、それだけじゃないの。あなたの魂、輪郭が人間ほど固くないのよ。≫


「輪郭?」

≪ええ。ちゃんと生きているのに、こっちのものが触れやすい感じ。≫


精霊さんはちょっと考えるように、ふよふよと空中を漂う。


≪少し違う気がするけど、死者にも近い不思議な感じ。だから、あなたに伝えておこうと思って。≫


死者にも近い。

それは一度死んでいるからという感じなのかな・・・?


「・・・何をでしょうか?」

≪ここは風や水、火、土などの魂が彷徨う世界。≫


風とかの魂・・・それが、精霊と呼ばれているのかな?


風の精霊さんが、微笑みながら近寄ってきた。


≪あなたはきっと、ここにいる精霊だけでなく、それ以外のモノにも引っ張られやすい。≫


引っ張られる?


≪そういえばこの間、水の精霊の流れに魂を引かれていたでしょう?≫


精霊に会ったのは、今が初めてのはず・・・

水の精霊はまだ会った事がないと思う、けれど。


「…?ちょっとついて行けてません。」

≪ふーむ。≫

≪共感しすぎるな。お前の魂は、ちゃんと魔法使いの形をしている。だから余計なものまで拾う。≫

「!」


風の精霊の横で、空気がふっと赤く灯った。

そこから、燃え残りみたいな赤い光をまとった男の精霊が姿を現す。


「・・・つ、つまり、意思をしっかり持ちなさい・・・っていう感じでしょうか?」

≪うーん。ひとまず、そういうことで良いわ~≫

≪あとは、旅人に任せた方がいいだろう。あまり口出しすると、怒られるからな。≫


≪分かったわよ。とにかく注意はしたわよー≫

≪魔法の子。邪魔をした。よく眠れるといい。≫


そういうと二つの精霊は、静かに空気にほどけるように消えて行った。

共感性が高いって、確かフィーにも言われたけど・・・

私自身は、あんまり相手の気持ちが分かっているとは、到底思えないんだよね。


二人の精霊が、消えてしまった後には、静かな風の音だけ。


「・・・ふぁ。」


寝よう。

明日からは、早く起きるんだから。


静かにベッドへ戻り、改めて毛布にもぐる。

精霊さんに会えたのは嬉しいけど、何を言っているのかが分からなかった。


忠告ってことだったと思うけど、具体的に何をどうすればいいのか・・・

誰かに相談したけど、この場合誰に・・・


静まり返る空気の中、ゆっくりと意識が沈んでいく。


・・・

・・

・


沈んだはずの意識が、ふっとどこかで引っかかった。


景色が・・・白い?


ん・・・


–ここは通路の途中。

–だけど、足は前に進まない。


声?

この声。

これって・・・


「・・・」


正面には、橋のような物が見える。

真っ白な橋。

白すぎる。


これってまるで、スズの通路みたい。

そう思った途端、私の脇を誰かが通り過ぎた。


スズ?


久しぶりに見たスズの姿。

細身の姿に小さいリュックを背負って、正面の白い橋を渡り始めた。


どこへ行くのだろうか?


なんとなく、スズについていく。


–何をまたいでいる橋なのだろうか。


また、スズの声が響く。

思考が響くって、ここって精霊の世界なのかな?

それとも夢の中?

でもスズには、私が見えてなさそう。


–白という色は、どんな色だっただろうか。


ドア越しじゃないスズの声。

久しぶりに、ちゃんと聞いた気がする。

そんなスズの右側を一緒に歩いていると、スズが急に体勢を崩した。


–・・・っ

–こける。


あ!


とっさにこけそうになったスズの手を掴んだ。


冷たい。

でも、確かにそこにいる。


え?感触がある!


え?

これって現実?


目の前で、スズも不思議そうに、今私が掴んだ自分の右手を見ている。


なんだろう?

なんだか夢・・・ではなさそう?


「君は夢のような、状態だろうな。」

「!」


後ろからの男の人の声に驚いて、振り返る。


頬のこけた、病的な顔。

身長が高く、アリスの体の私では、倍ぐらい大きい。


この人は、フィーの夢の中。

そして、アルファーさんの家で直接見たことのある男の人。


「アディール・クラーレンさん・・・。」

「久しぶりだね。どうして君がここにいるのだろうか。」


「・・・わかりません。ここはどこですか?」


ちょっと声が、きつくなっていることは分かっている。

残念ながら、この人の事を好きになる事は難しい。


「歩き始めたね。」


クラーレンがそういうと、確かにスズが再び前に進みだした。

それを小走りに追いかける。

その後ろを、クラーレンもゆっくりとついて来た。


「スズに何もしないでください。」

「私はただ観察しているだけだ。」


観察?


クラーレンは確かに近づき過ぎず、スズと私から数メートル離れた距離を、ただついてくる。

スズには、私のこともクラーレンも見えていないようだし、声も聞こえてないみたい。


そういえば、なんだか・・・スズの姿が、少し薄く見える気がする。


何でだろう?


これが夢だと思うには、不思議な状況。

この間のフィフさんを見ていた時の様な感じもする。


「急がないと、この橋は長くは持たない。」


「?!それは、どういう・・・」


クラーレンが後ろでそうつぶやくのが聞こえて、振り向いた。


『ねぇいつ死ぬの?』


さっき話した精霊の声とはまた違う。

頭の中を、キンと嫌な感じに反響する声。


この声・・・


最近、どこかで聞いた気がする。


–イヴの声に聞こえた。


「死なないよ。」


スズの心の声と声に出して言った言葉。

両方が耳に入る。


・・・この女の人の声は、イヴさんなの?


–今はまだ、その時じゃない。


再びスズの心の声。

スズの声は、どこか切羽詰まった雰囲気がする。

もしもこれが今実際に起きていることなのだとしたら、スズは一体どこへ向かっているの?


この歩いている白い橋は、いつものスズの通路とは明らかに違う。


–ここが通路から外れてしまっているのだとしたら、私はどこに立っている事になるのだろうか?


ここが、通路から外れている場所?


スズは、さっきよりも少しだけふらついて見える。

クラーレンも気になるけど、そんなスズの様子があまりに不安定に見えて、目を離せない。


–白いだけの景色に、遠いも近いもあるのだろうか?


『この中に・・・いるのね?』


再び、冷たい声がキンと響く。

この声が、イヴさんの声なのだとしても、何を言っているのか分からない。


中に・・?何が?


–最近思い出す機会が多かったせいだろうか?


『あ。ほら。いたわ。』


少し嬉しそうに響く声。

それと反対に、顔色が悪くなるスズ。


「こ!この声、何なんですか?」


嫌な感じしかしない。

つい知っていそうな、クラーレンの方に振り返って聞く。


「walkerの通路は、本人の深いところを映すことがある。」


深層心理?


–人間に・・・なろうとしていたもの・・・


「っ・・・。」


–ゴッ


スズがふらついて、私の体をすり抜けて、橋の手すりに右手をぶつけた。

クラーレンの方を向いてしまっていたので、見逃してしまった。


大丈夫!?


スズの方に近寄る。


「はぁ・・・。」


スズは、橋の手すりを背に座り込む。

スズの方からは、私には触れられないみたい。

それにしても、顔色が悪すぎる。

このまま進まずに戻って欲しい。


でも、これって、どうやったら伝えられるだろう・・・


クラーレンの方を見ても、表情も変えずこちらをただ眺めているだけ。


–ここから落ちたらどうなるんだろうか?


スズの声。

そんな疑問、今は止めて欲しい。

スズが休んでいる様子を見て、再びクラーレンの方に視線を移す。


「さっき、この橋は長く持たないって言ってましたが、どういう意味ですか?」

「ここは、世界という座標を持たない。それだけに不安定な場所なのだよ。」


世界じゃない場所。

だからこんなに、足元が落ち着かないのだろうか。

スズたちの使う通路に似ているのに、これは、まるで違う。

もっと曖昧で、消えそうで、嫌な感じがする。


「橋が壊れるってことですか?」

「壊れるというより、消える。ここではその方が正確だ。」


横目で確認していたスズが再び、立ち上がった。

このまま、行かないで欲しい。


「それを、スズに・・・伝える方法はありますか?」


スズは、さっきよりも急ぎ足で、進み始めてしまった。

一緒に進むしかない。


「どうだろうね。君がここにいる理由次第なのかもしれない。」


私がここにいる理由?


そもそもここは、本当になんなの?

スズの方が現実で、私が夢だとしたら・・・


–…視線がある気がする。


「…おや。感知はしているのかもしれない。」

「!・・・スズ!!」


視線を感じてるのなら、どうにか声も届かないだろうか?


「スズ!スーズー!」


横から呼び続けてみたが、気が付く気配はない。


そして・・・


何となく、だんだんと変な感じがしている。


胸の奥が、先の方へ引っ張られているみたいだった。

嫌なのに、知っている場所へ近づいている感じがする。


・・・多分。


この先に――私がいる。


・・・・何となく、そんな感じがする。


それって・・・

どういうこと?


スズと進みながら、橋の先のほうを見つめる。

かなり奥の方が、少しだけだけど暗くなった気がした。


あ。

これきっとダメ。


とっさにスズを掴もうと、手を伸ばす。


スズの薄い上着に、指が引っ掛かった。


「なぜ君は、彼女に触れられるんだろうか?」


そんなことは知らない。

けれど、とにかくスズに止まって欲しい。


「・・・」


–終わりが近い?


そう思ったのにスズは再び、前に進もうとする。


ダメだって!


もう一度、しっかり上着を引っ張る。


「・・・!」


橋が、奥の方から崩れ始めたのが見えた。

スズにもそれが見えたようで、急いで逆走し始めた。


良かった。


スズを追いかけて走る。

やっぱりスズには見えていないみたいで、クラーレンを気にせず追い越して、走っていく。


スズ…やっぱり足早い!


でも、なぜか今は私の体も軽い。

なんとか追いつくことができそう。


走りながらスズは、時々後ろを気にしている。

ここまで、どのぐらい進んだのか覚えてない。

戻る橋の先は、まだ見えない。

後ろの橋は、どんどん崩れていっている。


急いで!スズ!


『早く。死んで?』

「っ!」


またイヴさんの声。

その声が聞こえた途端、

スズの足がもつれ、橋から・・・


スズ!


わたしも――落ちる!?


あれ?

浮いてる?


いや、と!とにかくスズ!


スズに手を伸ばそうとしたけれど、届かない。

落下していくスズ。

何故か、橋が崩れた先へは私の体は落ちていかない。


スズ!!!!!


指先だけが、何にも触れない。

肝心な時に、届かない。


遠ざかっていくスズの姿が、小さくなっていく。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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