疑問:肝心な時に、私は手が届かない?
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
「おやすみ。アリス。」
「おやすみー。」
イザベルに返事を返して、布団にもぐる。
やっぱり、一人で入るには大きいベッドなので、無意識に、ベッドの端へ寄ってしまう。
今日の午後、イザベルと話していた時に、裏庭を横切った何か。
それが妙に引っかかって、あの後しばらく窓から外を眺めてみたけど、何も見当たらなかった。
あれって、なんだったんだろう?
気のせいかな?
そういえば圭さんやフィフさんも、あれからまだ戻って来なかった。
そんなちょっとしたことなのかも知れないけれど、気になってしまってる。
窓の景色が目に映る。
木の上の方が少し光ってるけど、穏やかな明るさは眩しくない。
自分の布団の音。
微かな風の音。
音のない夜が、部屋を満たしている。
今日は、ここに来て何日目の夜だろう?
少し相談所が、懐かしくなってきている。
しばらく尚弥さんにも会えてない。
入院したと聞いてから、少し前にお見舞いに行った時は、頭に包帯をしていたけど、笑顔で出迎えてくれた。
もう退院したのかな?
死神の世界で、尚弥さんが死んだかも知れないと思った。
それが現実にならなかったことが、何よりも嬉しい。
このまま会えないってことは、きっと無いと思うけど、会えるのはいつ頃になるんだろう。
≪寂しそうな顔。帰りたいの?≫
ん?
何か聞こえた。
ベッドの中から、顔を上げて部屋を見渡す。
特に変わった様子はない。
再び、毛布の中へ潜る。
≪ここよー≫
また声がしたので、声のする方向に目を向ける。
窓の外?
何かが顔を出してる。
イザベルは、気が付かない?
≪その子には、聞こえないみたいね。でもあなたには、聞こえてる。≫
な、なんだろう。
大丈夫かな?
気安く近づかない方がいいかもしれない。
≪おーい。聞こえてるでしょー?≫
頭の中で声が響く。
しばらく無視してたら、諦めてくれるかな?
≪ねぇねぇ。ねぇねぇ。ちょっとだけー、お話しましょうよー。≫
声は、大人びた女の人。
窓の方を見ると、半透明の緑色の長い髪が、風もないのにゆらゆら揺れていた。
輪郭は人の形をしているのに、肌も服もどこか曖昧で、月明かりの中に溶けかけているみたい。
その女の人が、私に向かって手を振っていた。
完全に目が合った。
≪大丈夫よ。あなた達に何かしたら、怒られちゃうわ。≫
「・・・絶対に何もしません?」
≪何もしないわ。約束する。≫
本当だろうか?
月明かりに溶けるような、半透明の人影がそこにあった。
そもそも人間には見えない。
半透明の綺麗な女の人。
まるで・・・
「・・・もしかして精霊さんですか?」
≪そうよー。風の精霊さんよー。≫
それは、ずっと気になってた。
このまま話してみたいけど、イザベルを起こしてしまうのは良くないし、静かにベッドを出る。
一階の裏庭の窓なら、大丈夫かな?
一階におりて、裏庭の窓から外を眺めていると、さっきの精霊が降りてきてくれた。
≪降りてきてくれたのね。ありがとう≫
「精霊さん。本当にいたんですね。」
≪ここはそういう世界だからね。あなたの気配、最初は人の子達に紛れていたけど、ようやく輪郭が見えてきたの。お話できて嬉しいわ≫
なるほど。
もしかして世界が違う生き物だったから、お互いに見えなかったってことなのかな?
「こんな夜中にどうしたんですか?」
≪あなた、魂の形が少し気になっていたの。≫
「魂の形?」
≪ええ。あなたの中、流れているところと、止まっているところがあるの。
生きている人の魂は、もっとひとつづきに揺れるのよ。
でもあなたは、途中で水たまりみたいに静かな場所がある。≫
「・・・それはきっと、イヴさんってwalkerの方の魂だったから。」
魂。
言葉としては理解してるけど、それは幽霊のようなイメージに近くて・・・
「精霊さんには、魂ってそうやって見えるんですか?」
≪見えるわよ。顔より先に、そっちが見えるもの。≫
顔よりも魂。
見え方そのものが、私達とは違うってことだよね。
≪それは知ってるけど、それだけじゃないの。あなたの魂、輪郭が人間ほど固くないのよ。≫
「輪郭?」
≪ええ。ちゃんと生きているのに、こっちのものが触れやすい感じ。≫
精霊さんはちょっと考えるように、ふよふよと空中を漂う。
≪少し違う気がするけど、死者にも近い不思議な感じ。だから、あなたに伝えておこうと思って。≫
死者にも近い。
それは一度死んでいるからという感じなのかな・・・?
「・・・何をでしょうか?」
≪ここは風や水、火、土などの魂が彷徨う世界。≫
風とかの魂・・・それが、精霊と呼ばれているのかな?
風の精霊さんが、微笑みながら近寄ってきた。
≪あなたはきっと、ここにいる精霊だけでなく、それ以外のモノにも引っ張られやすい。≫
引っ張られる?
≪そういえばこの間、水の精霊の流れに魂を引かれていたでしょう?≫
精霊に会ったのは、今が初めてのはず・・・
水の精霊はまだ会った事がないと思う、けれど。
「…?ちょっとついて行けてません。」
≪ふーむ。≫
≪共感しすぎるな。お前の魂は、ちゃんと魔法使いの形をしている。だから余計なものまで拾う。≫
「!」
風の精霊の横で、空気がふっと赤く灯った。
そこから、燃え残りみたいな赤い光をまとった男の精霊が姿を現す。
「・・・つ、つまり、意思をしっかり持ちなさい・・・っていう感じでしょうか?」
≪うーん。ひとまず、そういうことで良いわ~≫
≪あとは、旅人に任せた方がいいだろう。あまり口出しすると、怒られるからな。≫
≪分かったわよ。とにかく注意はしたわよー≫
≪魔法の子。邪魔をした。よく眠れるといい。≫
そういうと二つの精霊は、静かに空気にほどけるように消えて行った。
共感性が高いって、確かフィーにも言われたけど・・・
私自身は、あんまり相手の気持ちが分かっているとは、到底思えないんだよね。
二人の精霊が、消えてしまった後には、静かな風の音だけ。
「・・・ふぁ。」
寝よう。
明日からは、早く起きるんだから。
静かにベッドへ戻り、改めて毛布にもぐる。
精霊さんに会えたのは嬉しいけど、何を言っているのかが分からなかった。
忠告ってことだったと思うけど、具体的に何をどうすればいいのか・・・
誰かに相談したけど、この場合誰に・・・
静まり返る空気の中、ゆっくりと意識が沈んでいく。
・・・
・・
・
沈んだはずの意識が、ふっとどこかで引っかかった。
景色が・・・白い?
ん・・・
–ここは通路の途中。
–だけど、足は前に進まない。
声?
この声。
これって・・・
「・・・」
正面には、橋のような物が見える。
真っ白な橋。
白すぎる。
これってまるで、スズの通路みたい。
そう思った途端、私の脇を誰かが通り過ぎた。
スズ?
久しぶりに見たスズの姿。
細身の姿に小さいリュックを背負って、正面の白い橋を渡り始めた。
どこへ行くのだろうか?
なんとなく、スズについていく。
–何をまたいでいる橋なのだろうか。
また、スズの声が響く。
思考が響くって、ここって精霊の世界なのかな?
それとも夢の中?
でもスズには、私が見えてなさそう。
–白という色は、どんな色だっただろうか。
ドア越しじゃないスズの声。
久しぶりに、ちゃんと聞いた気がする。
そんなスズの右側を一緒に歩いていると、スズが急に体勢を崩した。
–・・・っ
–こける。
あ!
とっさにこけそうになったスズの手を掴んだ。
冷たい。
でも、確かにそこにいる。
え?感触がある!
え?
これって現実?
目の前で、スズも不思議そうに、今私が掴んだ自分の右手を見ている。
なんだろう?
なんだか夢・・・ではなさそう?
「君は夢のような、状態だろうな。」
「!」
後ろからの男の人の声に驚いて、振り返る。
頬のこけた、病的な顔。
身長が高く、アリスの体の私では、倍ぐらい大きい。
この人は、フィーの夢の中。
そして、アルファーさんの家で直接見たことのある男の人。
「アディール・クラーレンさん・・・。」
「久しぶりだね。どうして君がここにいるのだろうか。」
「・・・わかりません。ここはどこですか?」
ちょっと声が、きつくなっていることは分かっている。
残念ながら、この人の事を好きになる事は難しい。
「歩き始めたね。」
クラーレンがそういうと、確かにスズが再び前に進みだした。
それを小走りに追いかける。
その後ろを、クラーレンもゆっくりとついて来た。
「スズに何もしないでください。」
「私はただ観察しているだけだ。」
観察?
クラーレンは確かに近づき過ぎず、スズと私から数メートル離れた距離を、ただついてくる。
スズには、私のこともクラーレンも見えていないようだし、声も聞こえてないみたい。
そういえば、なんだか・・・スズの姿が、少し薄く見える気がする。
何でだろう?
これが夢だと思うには、不思議な状況。
この間のフィフさんを見ていた時の様な感じもする。
「急がないと、この橋は長くは持たない。」
「?!それは、どういう・・・」
クラーレンが後ろでそうつぶやくのが聞こえて、振り向いた。
『ねぇいつ死ぬの?』
さっき話した精霊の声とはまた違う。
頭の中を、キンと嫌な感じに反響する声。
この声・・・
最近、どこかで聞いた気がする。
–イヴの声に聞こえた。
「死なないよ。」
スズの心の声と声に出して言った言葉。
両方が耳に入る。
・・・この女の人の声は、イヴさんなの?
–今はまだ、その時じゃない。
再びスズの心の声。
スズの声は、どこか切羽詰まった雰囲気がする。
もしもこれが今実際に起きていることなのだとしたら、スズは一体どこへ向かっているの?
この歩いている白い橋は、いつものスズの通路とは明らかに違う。
–ここが通路から外れてしまっているのだとしたら、私はどこに立っている事になるのだろうか?
ここが、通路から外れている場所?
スズは、さっきよりも少しだけふらついて見える。
クラーレンも気になるけど、そんなスズの様子があまりに不安定に見えて、目を離せない。
–白いだけの景色に、遠いも近いもあるのだろうか?
『この中に・・・いるのね?』
再び、冷たい声がキンと響く。
この声が、イヴさんの声なのだとしても、何を言っているのか分からない。
中に・・?何が?
–最近思い出す機会が多かったせいだろうか?
『あ。ほら。いたわ。』
少し嬉しそうに響く声。
それと反対に、顔色が悪くなるスズ。
「こ!この声、何なんですか?」
嫌な感じしかしない。
つい知っていそうな、クラーレンの方に振り返って聞く。
「walkerの通路は、本人の深いところを映すことがある。」
深層心理?
–人間に・・・なろうとしていたもの・・・
「っ・・・。」
–ゴッ
スズがふらついて、私の体をすり抜けて、橋の手すりに右手をぶつけた。
クラーレンの方を向いてしまっていたので、見逃してしまった。
大丈夫!?
スズの方に近寄る。
「はぁ・・・。」
スズは、橋の手すりを背に座り込む。
スズの方からは、私には触れられないみたい。
それにしても、顔色が悪すぎる。
このまま進まずに戻って欲しい。
でも、これって、どうやったら伝えられるだろう・・・
クラーレンの方を見ても、表情も変えずこちらをただ眺めているだけ。
–ここから落ちたらどうなるんだろうか?
スズの声。
そんな疑問、今は止めて欲しい。
スズが休んでいる様子を見て、再びクラーレンの方に視線を移す。
「さっき、この橋は長く持たないって言ってましたが、どういう意味ですか?」
「ここは、世界という座標を持たない。それだけに不安定な場所なのだよ。」
世界じゃない場所。
だからこんなに、足元が落ち着かないのだろうか。
スズたちの使う通路に似ているのに、これは、まるで違う。
もっと曖昧で、消えそうで、嫌な感じがする。
「橋が壊れるってことですか?」
「壊れるというより、消える。ここではその方が正確だ。」
横目で確認していたスズが再び、立ち上がった。
このまま、行かないで欲しい。
「それを、スズに・・・伝える方法はありますか?」
スズは、さっきよりも急ぎ足で、進み始めてしまった。
一緒に進むしかない。
「どうだろうね。君がここにいる理由次第なのかもしれない。」
私がここにいる理由?
そもそもここは、本当になんなの?
スズの方が現実で、私が夢だとしたら・・・
–…視線がある気がする。
「…おや。感知はしているのかもしれない。」
「!・・・スズ!!」
視線を感じてるのなら、どうにか声も届かないだろうか?
「スズ!スーズー!」
横から呼び続けてみたが、気が付く気配はない。
そして・・・
何となく、だんだんと変な感じがしている。
胸の奥が、先の方へ引っ張られているみたいだった。
嫌なのに、知っている場所へ近づいている感じがする。
・・・多分。
この先に――私がいる。
・・・・何となく、そんな感じがする。
それって・・・
どういうこと?
スズと進みながら、橋の先のほうを見つめる。
かなり奥の方が、少しだけだけど暗くなった気がした。
あ。
これきっとダメ。
とっさにスズを掴もうと、手を伸ばす。
スズの薄い上着に、指が引っ掛かった。
「なぜ君は、彼女に触れられるんだろうか?」
そんなことは知らない。
けれど、とにかくスズに止まって欲しい。
「・・・」
–終わりが近い?
そう思ったのにスズは再び、前に進もうとする。
ダメだって!
もう一度、しっかり上着を引っ張る。
「・・・!」
橋が、奥の方から崩れ始めたのが見えた。
スズにもそれが見えたようで、急いで逆走し始めた。
良かった。
スズを追いかけて走る。
やっぱりスズには見えていないみたいで、クラーレンを気にせず追い越して、走っていく。
スズ…やっぱり足早い!
でも、なぜか今は私の体も軽い。
なんとか追いつくことができそう。
走りながらスズは、時々後ろを気にしている。
ここまで、どのぐらい進んだのか覚えてない。
戻る橋の先は、まだ見えない。
後ろの橋は、どんどん崩れていっている。
急いで!スズ!
『早く。死んで?』
「っ!」
またイヴさんの声。
その声が聞こえた途端、
スズの足がもつれ、橋から・・・
スズ!
わたしも――落ちる!?
あれ?
浮いてる?
いや、と!とにかくスズ!
スズに手を伸ばそうとしたけれど、届かない。
落下していくスズ。
何故か、橋が崩れた先へは私の体は落ちていかない。
スズ!!!!!
指先だけが、何にも触れない。
肝心な時に、届かない。
遠ざかっていくスズの姿が、小さくなっていく。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




