答え:私の上の星は見えない
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
フィフに協力してもらい、二つのwalkerの通路座標を重ねる作業を進めている。
まず必要なのは、座標の整理だった。
相談所の扉である基本世界を入口にした場合、距離的に近い世界は多い。
その分、組み合わせの数も増える。
それらを無作為に探すほど無謀なやり方は取らない。
それでも候補となる座標は多く、可能性が高い順に、仮説が立ちそうな組み合わせから、消去法で進めていった。
フィフの通路も考え、精霊の世界と基本世界を起点に、魔法世界、怪異、妖精、神獣の世界など、いくつかの座標を順に当たっていった。
その過程で、何度も通路を出入りすることになった。
そんな作業を、4~5日ほど続ける中で、ブライアンに会うといったトラブルもあった。
そして、それとは別に、以前クラーレンと会った時の違和感も、何度か再現された。
その違和感は、何度も繰り返し現れた。
足なのか、意識なのか分からないが、意識とは別の何かが、別の方向へ足を引こうとしている。
その感覚の先が、扉ではない時もあった。
だが、壁の先へは進めない。
でも、その先の座標に何かがあるのかもしれない。
そして、その違和感の先が、アディール・クラーレンの通路と重なる場所なら、確認しておきたい。
行くタイミングについては、「今夜でどうか」とフィフに確認を入れてある。
ひとまずは返答待ち。
死神側にも不穏な動きはある。
だが数日前のガルシアとアリー、そして昨日会った“神の声を受ける男”の言葉を踏まえるなら、あれは今、下手に触れるべき領域ではない。
「・・・」
巫女の男の事を思い出す。
あの男は、あくまで神からの声を聞くことができるだけ。
だが、その男が言うのだから、山本梓とアリス・フォーラスの死亡履歴を、書き換える為の三人目の人間の選定には、神が関わっているのだろう。
そしてその選定理由は、私が選んだからだと。
何百年も昔に死んだ男。
それを今さら、私が選んだと言われたところで実感が薄い。
人外の彼らには時間という感覚がほとんどないから、あくまでただ単に良いタイミングだとでも思っただけなのかもしれない。
いずれにしても、予測はできなかっただろう。
そんな、人間の魂を消滅させるに至ったフォーラスは、あくまで操り人形だったということだろうか。
まぁそれでも、それだけのことを達成させられる土台の上にいたことは確か…
そこまで考えて、思考が止まる。
操られていたから仕方がない、で済ませる気もない。
だからといって、全部を本人の意思だったと断じたいわけでもない。
責任と誘導。
悪意と利用。
どこまでが本人で、どこからが他者なのか。
理屈で切り分けようとするほど、感情だけが取り残される。
私は、何に対して感情を抱けばいいのだろう。
怒るべきなのか。
哀れむべきなのか。
それとも、何も感じないのが正しいのか。
どれを選んでも、違う気がした。
選べないまま、ここにいる。
–ブブブ、ブブブ、ブブブ
電話のようだ。
スマホの画面を確認すると「非通知」
–ブブブ、ブブブ
電話を取るか悩む。
–ブブブ
「はい。」
返事はない。
耳を澄ませるが、何も聞こえない。
電話は確かに繋がっている。
「どなたですか?」
返事はない。
電話の先からは、呼吸音も環境音も、何も聞こえない。
音はない。
それなのに、なぜか、切ってはいけない気がした。
音はない。
それでも、“何かだけがそこにいる”。
どこか懐かしいような、知っているはずのないものに触れているような――妙な感覚だけが残る。
「・・・」
スマホから耳を離し、改めて画面を確認する。
電話は、繋がっている。
なんだろうか?
しばらく様子をみたが、やっぱり何も聞こえず、数分すると電話は切れた。
一応履歴を圭に送っておく。
その後、数件のミーティングを済ませている間に、フィフから了承の返事が来た。
ミーティングが終了してすぐに、着替えて移動の準備を始める。
一つの仮説による検証なので、そもそも間違えている可能性もある。
だけど合っていた場合、山本梓の魂の場所に行きつける。
同時にアディール・クラーレンの妨害も起こりえるので、携帯食料と水なども用意する。
荷物を確認していると、美弥が地上への階段の中間で、こちらを見下ろしていた。
「スズ、本当に戻ってこれるの?」
「戻る前提で動いてる。」
「・・・そうじゃなくて。」
美弥は、少し言葉を探すように黙る。
「もっと嫌な感じ。」
「……?」
「道じゃないのに、帰れる気がしちゃうところ。戻る方角が、方角じゃなくなるの。」
「道?」
「・・・うん。だから、行くならできれば時間を決めて。感覚が鈍くなる前に戻ってきて。」
「分かった。」
「あと・・・」
美弥は、少しだけ言いづらそうに目を伏せた。
「向こうで呼ばれても、返事しないで。」
「分かった。」
リュックを持ち、walkerの扉を同時に設定ができる環境のある、怪異の自分の家に向かう。
–カチャ
扉の条件は一つ。
過去にイヴを殺した場所であり、今はアディール・クラーレンがいるであろう、あの小屋。
怪異の世界の家の中にある三つの扉。
平屋の寝室。
客室二つ。
その三つの扉にそれぞれ鍵を差し、目的先を設定する。
フィフに、完了した連絡を入れる。
静かな空気が流れる。
怪異の世界の夕方は、基本世界の人間にとっての朝明け。
怪異の生き物たちは、これから動き出してくる時間になる。
この世界とはそれなりに関わってきたが、環境が厳しい為、提案が上手くいかないことが多い。
フォーラスや交渉人が、距離や環境的に、逃げ込む場所として選びやすい世界だということは分かっている。
だが、交渉の土台につく為には、迫害されている圭の力を借りる以外に、今は選択肢がない。
それも、どこかでは他の方法を考えるべきだろう。
–ブブブ
フィフの返事を確認して、寝室への扉へ入る。
フィフには扉の設定のみお願いして、通路へは入らなくていいと伝えているが、どうだろうか。
白い通路の中を見渡す。
景色はいつもと変わらない。
通路を進む。
怪異の世界からも、あの小屋はそこまで遠い距離ではない。
しばらくすれば、出口の扉が見えてくるはず・・・
足が止まる。
ここは、本来なら通路の途中のはずだった。
だけど、足は前に進まない。
ふと、無意識に右側へ視線が滑った。
「……」
本来なら何もないはずの通路の途中に、右へ伸びる橋があった。
白い通路の中に、同じ白で塗りつぶされた橋。
境目が曖昧で、最初は分岐だと思った。
けれど違う。
あれは、どこかをまたいで架けられている。
足はそちらにすんなりと向かう。
橋に足をかける。
手すりも白。柱も白。
何をまたいでいる橋なのだろうか。
歩き進めると、景色にノイズが入る。
白の中に、さらに白いノイズが重なる。
白という色は、どんな色だっただろうか。
歩く足がぶれる。
「・・・っ」
足の踏み出した高さが、ずれる。
こける。
――何かに、右手を支えられた。
人の手のようにも思えたが、確信は持てない。
それでも、そのおかげで踏みとどまった。
改めて立て直して、手を取られたはずの右手を確認する。
何もいない。
辺りを見渡しても、何も見えない。
進むしかないか。
再び、橋の上を気をつけながら渡っていく。
ノイズは、次第に増えている気がする。
白に白が重なっても、濃くも薄くもならない。
ただ白いままだ。
「ねぇいつ死ぬの?」
耳元で、あの声が囁く。
それは、イヴの声に聞こえた。
そう認識しただけで、本当にそうだったのかは分からない。
「死なないよ。」
今はまだ、その時じゃない。
橋は続いていく。
先が見えない。
本来設置したはずのあの小屋なら、とっくに到着している距離。
ここが通路から外れてしまっているのだとしたら、私はどこに立っている事になるのだろうか?
視界に映る半分だけの景色が遠い。
白いだけの景色に、遠いも近いもあるのだろうか?
「この中に・・・いるのね?」
再び、イヴの声が響く。
最近思い出す機会が多かったせいだろうか?
「あ。ほら。いたわ。」
最後の光景が、勝手に重なる。
血まみれの手。
持ち上げられたもの。
人間になろうとしていた…
「っ・・・。」
赤い。
小さな頭。
小さな手になろうとしていた部分。
–ゴッ
右手が、手すりにぶつかる。
痛みで、意識が上がる。
気絶しかけていた事に気が付く。
「はぁ・・・。」
手すりを背に座り込む。
正面に広がる景色。
反対側の手すりがみえる。
その手すりの先もどこまでも白い。
ここから落ちたらどうなるんだろうか?
ノイズが増えてきている。
気のせいではない。
長くここにいれば、意識の輪郭そのものが削られる気がした。
そうなれば、帰路を認識できなくなる。
戻るという発想ごと、失う。
急がなければならない。
足に力を入れて、立ち上がり、再び橋を進む。
手すりに手をかけたまま、できるだけ急ぐ。
「・・・」
…視線がある気がする。
どこからかは分からない。
橋は続いていく。
心臓の音が聞こえてくる。
ここは、静かすぎる。
まるで…
――何かが、私の服を引っ張った。
後ろを振り返っても、何も見えない。
何かがいるのかもしれない。
でも何故か、それは敵意ではない気がする。
「・・・」
橋の先はまだ見えない。
ノイズが増えていく。
終わりが近い?
さらに足を速く進めようと…足を踏み込む。
――再び何かが、私の服を強く引っ張った。
その瞬間。
「・・・!」
ノイズが乱れだし、進む先の橋が崩れていく。
とっさに振り返り、もと来た道を走る。
走る。
走る。
崩れる音は聞こえない。
後ろの様子が気になり、走りながらも視線を向けた。
やはり橋は崩れていっている。
走る速さを上げる。
「早く。死んで?」
「っ!」
足が…っ!
足がもつれた途端、足元の橋が崩れる。
とっさに近くの手すりを掴んだが、それも崩れる。
掴む場所がなくなった。
体が落ちていくのを、はっきりと自覚する。
白い風景はノイズだらけになり、次第に意識も削られる。
感じていた視線も薄くなっていく。
どこに・・・落ちるのだろうか?
終わりの見えない落下が続く。
そんな感覚――
次に認識したのは、薄く光る地面だった。
これは草?
ここは……森?
淡い光が転々と舞う。
正面にあるぼんやりとした光は、どこかに繋がっているようだ。
覆い茂った木の葉は、上からの光を拒み、足元の光だけが漂う。
この光の先が気になる。
どこへ続くのだろうか?
暗くはない。
明るくもない。
なんとなく、進む先はこっちだと思う。
何故だろうか?
光が先へ先へ続く。
弱々しい光が、確実に前へと続いていく。
何かが揺れる。
どこかで揺れている。
森の奥は青い水の中のような色を帯びて、こちらを見ている。
何が見ている?
何を見ている?
何?
そういえば・・・・・・・・
――考えているのは、何だ?
そこで、“私”は途切れた。
そこから先は、“私”ではなかった。
森の中を、黒いものが進んでいく。
黒いモノは、目の前の光を追いかける。
その中央で、何かが揺れる。
足元で光が舞う。
ただ進み続ける黒いモノは、周りが見ていることにも気が付く様子はない。
鬱蒼と茂った草や花は、ただ見ているだけ。
黄色い花が笑っている。
赤い花が睨んでいる。
青い花は眺めている。
白い花は蔑んでいる。
黒いモノは、気が付いていない。
ただただ光の先へ向かって、のそのそと進み続ける。
一つの木が話しかける。止まらない。
次にある木が忠告する。止まらない。
三つ目の木は怒りだす。止まらない。
聞こえていない。
光の先へ、のそのそと進み続ける。
ざわざわと喋りだす。
がさがさと喚きだす。
わさわさと響きだす。
それでも、見えていない。
光の先をのそのそと進み続ける。
黒いモノの正面の光は続く。
青い森の中を進んでいく。
ただ先へ、ただ奥へ。
ふと
青い森の奥から、まるで風のように、黄色い光が飛んできた。
黄色い光は黒いモノを見つけ、ゆっくり近づく。
黒いモノの周りを、様子を伺うように漂う。
黒いモノは進んでいく。
黄色い光は、寂しそうにしながら、その後を追う。
青い森はただ、その二つを見つめている。
桃色の花は、黄色い光に尋ねる。
–何してるの?
黄色い光は、答える。
–気が付いてほしい。
黄色い光は、黒いモノの周りを漂う。
大きな木は、黄色い光に忠告する。
–ほうっておきなさい。
黄色い光は、答える。
–このままにはしておけない。
黄色い光は気が付いて貰えるように、光を強くする。
黒いモノは、進み続ける。
黄色い光は、更に光を強くする。
黒いモノは、進み続ける。
黄色い光は、更にさらに光を強くする。
光るたびに、少しずつ薄くなる。
それでも、やめない。
黒いモノは・・・動きを止めた。
黄色い光が、黒い目に映る。
黄色い光は、ぴょんぴょんと跳ねるように喜んだ。
けれど、光り続けた黄色い光は、光る力を失ってしまった。
今にも消えそうな黄色い光。
黒いモノは、消えそうな黄色い光を見つめる。
消えそうな黄色い光は、嬉しそうに黒いモノを誘導する。
–こっち
黒いモノは迷っている。
正面の光を進むか、黄色い光の方へ行くのか。
行き先が違う。
黒いモノは動かない。
–こっちだよ
黒いモノは、少しだけ黄色い光の方へ進む。
–こっちだよ
黒いモノは、黄色い光の方へ進む。
進む。
進む。
正面に続いていた光はいつの間にか、地面に沈むように消えた。
黒いモノは、黄色い光の方へ進み続ける。
青い森はただ、その二つを見つめている。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




