答え:生きていれば、万事塞翁が馬
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
和からの連絡を確認し、会社から急いで帰宅した。
しかもタイミングが悪く、精霊の世界は真夜中だった。
先に倒れたと聞いていたアリスの方を確認しに、アリスの部屋へ向かう。
静かに、彼女の部屋の扉を開く。
さすがに寝ている時間なので、様子だけでもと思ったが・・・
寝ている女性の部屋に入るのは、ヒナ達に怒られそうだ。
もう何日も顔も見ていなかったので、つい気になってしまっていた。
広すぎるベッドの端に、そっと立つ。
アリスの顔色は悪くはなさそう。
和も大丈夫だとは言っていた。
それでも、彼女を取り巻く環境の変化は激しい。
そして、私のせいで心配させている状態が続いている事は、分かっている。
近寄りすぎて、少し毛布を引っ張ってしまった。
「・・・ん。」
アリスが少し動く。
…まだ寝てていい。
眠りを邪魔しないように、目元にそっと手を添える。
…朝はまだ遠い。
…ごめん。
ごめんなさい。
もう少しだけ、時間をくれると嬉しい。
彼女の呼吸が深くなった気がした。
手を離し、静かに部屋を出る。
–カチャ
「へぇ?そりゃ面白い。」
「…は?何が?話聞いてました?」
「ははっ!だって、これが可愛い女の子ならまだしも、お前魔法使いではそこそこ生きてる小僧じゃん?」
「あ?何が言いたい?」
「つまりは、自分の未熟さに甘えてるんだろ?俺なんかにイライラしてるぐらいだからな。もう少し余裕持ちたまえ。若造。」
「すげぇ・・・ムカつく。」
「あっはは!」
「…なんだ。元気そうだな。」
フィフはベッドの真ん中で、腹を抱えて笑っていた。
和は端っこに座って、やや不貞腐れた顔をして、二人とも普通に喋っていた。
「お?スーよく来るな。」
「…そうだな。話を聞きに来た。」
「あぁ。お前からの忠告もあったし、一応気を付けてたんだけどな。」
「まぁ仕方ない。和。アリスの方は?」
「あぁ。それは・・・」
「それも説明する。ちょっと注意もしないといけないし、外に出よう。」
「大丈夫ですか?」
「問題ない問題ない。お前の心配性は俺でも発動するのか。まぁ嫌いじゃない。
もうすぐ夜明けも近い。邪魔したな。」
フィフが、ベッドから立ち上がる。
私を通り過ぎて階段を下りていった。
「和も今日は、お疲れ様。遅い時間に悪かった。私もフィフと話してそのまま帰るから、寝て問題ない。」
「…分かった。スズもちゃんと休め。」
「そうだね。」
部屋の扉を閉めて、私も階段を下りて玄関を出る。
夜明けが近いとはいえ、外はまだ薄暗い。
「スー。フォーラスは早く切り捨てろ。」
「・・・」
フィフは、割り切る時は割り切る。
「お前も分かってるだろ?」
「・・・」
和と話していた時の表情から笑いを消し、真っ直ぐこちらを射抜く目になる。
「お前が、その時代の人間に判断を委ねるのを優先する姿勢は分かってる。」
アディール・クラーレンをきっかけに、魔法使い達が他の世界を知り始めている。
それは大きな変化だ。
だが、その良し悪しを今の時点で、私が決めるべきではないとも思っている。
「これがただの一つの変化に収まると、お前は思うのか?」
「世界を消滅させた人間すら、世界は消していない。」
それ自体が、一つの判断だ。
「そうだな。だが、その判断を待っているうちに、お前は後悔する。」
「…それも結果だろう。」
「本当にそれで良いのか?」
「今、あくまで影響を受けている、私達とアリス・フォーラス、そして山本梓。
アリス・フォーラスと山本梓に関しては、対応しているつもり。」
「それ以外の種族は?」
「それぞれの種族、それぞれの世界の判断に任せる。最終的には、そうなる。」
彼らがその存在に行きつくのか、それともその前に、その存在によって判断されるのか。
「・・・お前は、ほんと変わんないな。」
フィフが、私から視線を外す。
玄関外の階段を下りる。
「あの小僧のせいで、自分を切り捨てられないなら、俺を使えばいい。」
「そんなことしない。そんな選択するぐらいなら、自分でやる。」
「この先、場合によっては、戻れなくなる。」
「分かってる。」
「…分かってる顔じゃない。」
「それでも進める。」
フィフが、大きなため息をする。
「・・・まぁ。お前だしな。」
両手を上げた。
「分かった。俺の負けだ。…ちゃんと付き合うよ。」
「すまん。」
「ただし。やる時は言え、あのクラーレンもどきのガキには、痛い目を見せた方が良い。」
結構、フォーラスに怒っているらしい。
「分かった。それでアリスは?」
「あぁ。今回、精霊と同期して行動してたんだよ。」
≪怒られちゃったけどね。≫
精霊が、姿を現す。
「アリス・フォーラス。こいつが、あの娘と相性が良かったらしい。
ブルース・フォーラスとのやり取りの最中、彼女の意識が俺の意識に重なって見えてしまったんだろ。」
≪ずっと見てたけど。彼女すごく合うの。そのまま連れて行きたいわ≫
「ダメだ。彼女を引っ張らないで。もし連れて行ったら、俺もスーも怒るよ。」
≪怒る?絶対に?≫
「うん。ダメ。」
若い風の精霊が、アリスとの相性が良かったのだろう。
その精霊がアリスの意識を引き寄せて、同期していたフィフの意識を見せたという事らしい。
しばらく、二人のやりとりを眺める。
なかなか諦めが悪いようで、長くやり取りは続いたが、数分するとなんとか話はまとまったようだ。
名残を引きずるように、森の奥へ消えていった。
「はぁ…全く、抜け目がないな。」
風が抜けていく先で、森の空気がわずかに歪む。
空間が揺れた。
「…彼らの性分。」
「保険で連れて行ったけど、連れて行くやつを間違えたな。」
フィフが、私の後ろに視線を送る。
玄関の向こうに、誰かがいる気配がする。
「とにかくそっちの状況も分かった。あの時のまさにクラーレンそのもの。
・・・ったく、こっちからすれば、いい加減にしろってんだ。」
「おかげで、動きは読みやすくはなる。だが、確実に知識を増やしている事にもなる。」
–ドサ
フィフが、勢いよく地面に座る。
後ろの気配が動く。
「あんなの二人も三人もいらないよ。」
「そうだな。クラーレンの方で手綱を握ってくれれば良いけれど、その様子も見ておいた方が良いだろう。」
玄関の向こうにいるのは、多分・・・アリスだろう。
前に階段上にいた時の様な、そんな気がした。
「それで?お前の検証の方はどうだった?」
「少し条件が見えた気がする。もう一度タイミングを見てお願いしたい。」
今回、私の通路の検証と合わせて、フィフにも少しお願いをしていた。
そのおかげで、少しづつ気になる事が見えてきた。
「あー・・・やるしかないか。」
「指定の場所がある。」
「どこ?」
「・・・」
一つ気になる事を、試したかった。
だが、この場所はリスクもある。
そして、後ろにいるであろう彼女に、この事を伝えた事はなかった。
どちらの理由も重なり、私は言葉を詰まらせる。
だが、これも事実の一つ。
いずれ分かってしまうことなら――
「…私がイヴを殺した場所。」
「…げ。」
室内から階段を上る音が聞こえる。
「わりぃ。」
「いい。」
「その場所だとは、予想してなかった。そんで、後ろにいるのが嬢ちゃんだとも。」
「気にしなくていい。」
フィフが、気まずそうに顏をかく。
「なんでそこ?」
「クラーレンが、通路の起点としている可能性が高い。」
「条件って・・・重複?」
「あぁ。だけど、完全重複はできなかった。でも部分重複は確認できた。」
私とフィフの通路の部分重複により、通路に変化が見られたこと。
だけど、仮説の条件には足りない。
――クラーレンの観測領域。
つまり可能性ではあるものの、クラーレンの疑似通路との重複をしてみる必要がある。
「なるほどね。だが、クラーレンと接触する可能性があるのか。」
「そう。だから、対応は考えておく必要がある。
または、クラーレンを別の場所に移動させて、通路を使っていないタイミングを計るか。
もしくは、フォーラス側が恐らく使っていると思われる、別の疑似通路で検証をするか。」
「俺。その場所って聞いて、もう一つ違う方法を思いついた。」
つまり、重複以外の条件案。
「聞きたい。」
「イヴのあの小屋な。あの場所は条件を満たす扉が、確か三つか四つあるんだ。」
「…同時発生。」
「そ。試す価値あるんじゃない?」
確かに無意味すぎて、考えた事もなかった。
一つの鍵で、複数の通路の設定をする事を。
「二つ目を設定した時点で、一つ目が消えるかどうかなんて試した事なかった。」
「俺は、昔一度だけ消し忘れた時に確認した。ただ、時間経過で消えるみたいだけどね。」
「時間制限は確か、1時間。近くに条件が揃う扉さえあれば、それなりに設定できるはず。」
「あんまり、俺達じゃ気にしなかったからなぁ。」
こういう事は私達の中では、ファストが見つけるのが上手かった。
「そうだね。でも助かる。」
「いんや。こっちも圭の手を借りられて助かってる。」
夜の端が、わずかにほどけ始めている。
「ひとまずありがとう。疲れてるところ、悪かった。フィフも休んで。」
「お互いに。」
フィフが腰を上げて、自分の木の方へ向かっていった。
「んじゃ。」
「おやすみ。」
–パタン
フィフを見送る。
溜息をつく。
次の移動先に向かう為、フィフが入った扉に鍵を差す。
戻れなくなる。か。
どこかで行き詰まることはあるのだろうか。
…この先が、まだ見えない。
どちらにしても、私にできることは少ない。
切り捨てるとなった場合。
–カチャ
「失礼。」
少し冷たい風が、通路の中へ流れ込む。
静かな裏道に出る。
家の軒下からこちらを見ている老婆。
隣の二階には猫の姿も見える。
気にせずに目的の駄菓子屋へ向かう。
古い木造平屋。
入口の引き戸を引く。
–ガララ
「失礼。」
「来たか。」
「ここにいるのは久しぶり?」
くたびれたシャツとズボンを着た中年の男。
「そうだなぁ。最近は嫁さんや娘達が店番してくれてる。」
「それはそれは。」
男は新聞を読みながら、こちらに挨拶を返してくる。
「それで?」
「まぁまぁ。茶ぐらいある。そこらへんに座って待ってくれ。」
新聞を畳み、奥の居間に入る。
椅子になりそうなものと言えば、その辺に転がっている木箱ぐらい。
その中でも少しは綺麗そうな木箱を引っ張り出して、座る。
店の中は、時間が止まったままのような、昭和の駄菓子屋。
正面から半分が店、奥に住居。
駄菓子も子供の高さに合わせて、綺麗に並んでいる。
「ほら。」
「どうも。」
男が湯呑を手渡ししてくるので、熱さに気を付けて受け取る。
–ガサ
男が再び新聞を広げた。
「・・・」
「そう睨むな。少しゆっくりするぐらいいいだろう?」
「用が無いのなら・・・」
–ガタ
「うぉい!待て待て。」
立ち上がろうとした所を、止められる。
「まったく。前に呼んだ時は無視したんだ、ちょっとぐらいやり返させろ。」
「急に呼ばれても、こちらにも都合がある。」
男は私が座るのを確認して、再び視線を新聞に戻した。
「死神は、内部の抗争で話しを進めるどころじゃないのさ。」
「内部の抗争?」
「落ち着くまでは、お前は顔を出さない方が良い。」
「…その間、こっちにもトラブルが来ないなら、それでいい。」
–ガサ
男が新聞をめくる。
「それどころじゃないとは思うが、何とも言えないな。」
「それで?」
「そのまま落ちて行けば、あっちはいずれ上が動く。」
「・・・」
男の視線は新聞に落ちたまま。
だが、完全にこちらを向いているのが分かる。
「消えた人間。」
声のトーンが変わった。
「っ・・・。」
「世界に認識されない存在。」
ただの駄菓子屋の風景。
それなのに、まるで通路の中に一人で歩いている様な…
世界から切り離されたような感覚。
「お前が選んだ。」
「選んでない。」
「そう判断された。」
…判断された?
喉の奥が、氷を飲み込んだみたいに冷える。
その言い方では、まるで私の選択そのものが原因だったみたいだ。
「わ…たしが選んだから、消されたと言いたいのか。」
男が初めてこちらに目を向ける。
「事実だ。」
目が合う。
「私達は、私達のルールを知らない。」
「そうだな。」
だからこそ、今でもあの時の判断が正しかったのか分からない。
男の目は動かない。
手に力を入れる。
「だが、お前の了承などいらない。」
「そう、だろう、な・・・」
ここはどこだ?
私は・・・
男が目線を外す。
手に力を入れる。
「っは・・・!死んだだけで、終わりの筈。同じ人間は生まれない。」
「俺に言ってどうする。」
力がこもる。
「…以上?」
–ガサ
男は再び、新聞をめくる。
「それ持っていけ。」
男が指すレジの台の上に、何かが乗ってる。
立ち上がり、向かう。
「この細道を抜けた先に、夜にだけ開く商店街がある。」
麻袋。
中には、知らない通貨。
「おつかい?」
「いや、買いたいものがないなら、そのまま捨てて良い。」
「…分かった。機会があったら。」
–ガラ
「まぁ悪い話じゃない。行ってみな。」
「どうも。」
–ガララ
扉を閉めて、来た道を、迷いなく戻っていく。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




