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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第一部 第三章 理解は救いにならない
116/122

疑問:今じゃない?でもいつだろう?

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

スズは間違ってはいない。

でも、それで納得できるわけでもない。


ちゃんと話したい。

でも今じゃない。


・・・・


気が付けば、そんな時間が数日続いていた。

その間やっぱりスズは、ほとんど三階へ上がってこなかった。


「・・・ん?」


階段を降りたところで、階段を降りかけた足が、先に気配を拾った。


四階から三階へ降りようとしたところで、階下のリビングの奥が見えた。

スズがテーブルに向かって座っている。


いつも通りの姿。

いつも通りの空気。


なのに、足が一瞬だけ止まった。


日向の声が聞こえてきた。


周りはいつも通りだった。

スズも、特にこちらを見る様子はない。


――と思った瞬間、椅子から立ち上がったスズと、ほんの一瞬だけ視線が合った。


それだけだった。


スズは、私とは逆に階段を下りていった。


何か言えたかもしれない。

でも、言葉は浮かばなかった。


「アリスーこっち手伝ってー!」


秀人に上の階から呼ばれて、私はそちらに向かう。


振り返らなかったし、今は振り返らない方がいい気がした。


でも、確かにそこにいた。

話せなかったのに、顔を見ただけで、胸の奥に沈んでいた何かが、少しだけ浮かび上がった。


それで安心してしまうあたり、やっぱり私は単純なんだと思う。

それだけで、止まっていたものが少しだけ動いた気がした。


「あ。アリスさん。」

「はい?」


秀人に呼ばれて、7階の倉庫で日用品をまとめるのを手伝っていると、和さんがやってきた。


「急にすみません。しばらく、別の場所に移動しようかと思っていまして・・・。」

「へ?」

「すぐに戻ってくるかもしれないのですが、予定が分からないので、ちょっと長期旅行ぐらいの準備をしようと進めています。」


移動?どこへ?


「それって私達もってことですか?」

「はい。一応スズ以外は、全員で移動する予定です。」


スズ以外全員?!

それは確かに急な感じ。


「・・・えっと・・・。ちなみにどこへ行くんでしょうか?」

「場所は精霊の世界です。フィフさんという5番目のwalkerのところに、しばらくお願いできればと思うのですが・・・。」


スズ以外のwalkerの人。

それはそれで驚くし、場所も精霊の世界・・・


「ど・・・どうしてですか?」

「秀人そのぐらいでいいよ。ありがとう。あとは自分の準備しておいで。」

「分かったー」


私と和さんと秀人の三人で、倉庫を出る。

秀人はそのまま階段を降りていく。


「本当に急で申し訳ありません。今、死神の事も山本梓さんの魂の事もあって、魔法使い以外で動く相手が多すぎるんです。

なので、アリスさんがここにいる事を知られ過ぎていることもあって、どちらかが落ち着くまででも、安全の為に場所を変えたいとスズに相談したんです。」


なるほど。

確かにフォーラス以外にも、アディール・クラーレンや死神の人がいる。

魔法だけで対応できるのか分からない以上、私がここにいる状況は危ない。


「・・・皆さんも移動してくださるんですか?」

「はい。日向達とウーノ達、あとはフィフさんと面識のある圭と一緒に。バース達にはしばらくは、元の世界に戻ってもらう予定です。」


でも、スズは行かない。


その事実だけが、妙に胸に引っかかった。


喧嘩中とか、気まずいとか、そういう話とは別に、皆で移動するのにひとりだけ残ると聞くと、やっぱり少し落ち着かない。


「あの。私が心配することじゃないとは思うのですが・・・、スズをおいて行って大丈夫・・・なんでしょうか?」

「精霊の世界はそこまで移動しづらい場所ではない事と、フィフさんもwalkerなので何かあってもすぐ戻る事はできるので、大丈夫ですよ。」


和さんがそう言うなら、きっと大丈夫なんだろう。

それでも、気になるものは気になってしまう。


「…分かりました。なんか色々すみません。」

「いえいえ。アリスさんが、気にすることではないんです。

こちらこそ急に移動ですみません。よければアリスさんも、荷物の準備をお願いできますか?」

「はい。分かりました。」


そう言うと和さんは、倉庫に戻っていったので、私も階段を下りて四階の自分の部屋へ向かう。

確かにスズは会社もあるし、ミーティングもいつもの場所でやった方がやりやすいとは思う。


「死神の所へ行った時も、大丈夫だったじゃない。あんまり気にしなくて良いと思うわよ。」

「うーん・・・そうだね。」


やっぱり、考えすぎなのかな。

自室に戻って、ふと気が付く。


「あれ?前にアルフさんの家に、行った時に使ったリュックどこだっけ?」

「確か、そっちの引き出しじゃないかしら?」

「そうだっけ?」


部屋の普段着を入れるたんすの隣にある、やや小さめのたんすの引き出しを上から開いていく。


「あ。あった。覚えてなかった。」

「あの時は、アリスが梓の記憶がなかったから、日向が適当に入れてたわ。」

「そう言えばそうか。」


アリスの体に戻ったばかりで、記憶が曖昧だった時だから、荷物の事なんてすっかり忘れてた。


「あ。これここにあったんだ。」


リュックのポケットの中から、前に和さんに用意してもらったネックレスが出てきた。


「そういえば、そこに入れてたんだったわ。」

「良かった。無くしちゃったかと思ってた。ありがとう。」


色々ありすぎて探す暇もなかったから、ちょっと諦めてたけどイザベルが入れておいてくれてよかった。

そういえば、今日出かけるのかな?

和さんや秀人の様子だとそんな感じがする。


荷物を詰めながら、こういう時スズなら何を持って行くんだろう、なんてどうでもいい事を考えた。

考えたところで聞けないのに。


同じ家にいるはずなのに、今日はそれが妙に遠かった。


「アリスー何か手伝うー?」


長期旅行ぐらいって言ってたから、ひとまず引き出しに入っていた一通りの下着と洋服を詰めた。

一週間分ぐらいは着まわせるくらいはあると思う。

日向が顔を出した。


「大丈夫。私は下着とか洋服ぐらいでいいのかな?」

「私もそのぐらいだよー。寒くないから薄着で良いんだってー」


そうなんだ。

まだ朝晩は冷え込む時期だけど、上着は要らないのかな?

上着は別に着て行こうかと思ったけど、一つ薄めの上着を手にとる。


「あれ?やっぱり今日行く感じ?」


日向の背中にはリュックがある。

すぐに移動する準備完了って状態だ。


「みたいみたい。急だよねー。」

「日向は精霊の世界って初めて?」

「そう!初めてなのー!こないだの電車から見た妖精とかいるのかな?」


そういえば精霊と妖精って違うのかな・・・?


「おまたせ。じゃあ行こうか。」


日向と階段を下りると三階に秀人とウーノ達。

そして台所から和さんが出てきた。

みんな荷物を持って準備できたみたい。


「じゃあ。行きましょうか。地下まで降りるよ。」


和さんの声と共にみんな階段へ降りていく。

地下って事だし、walkerの方だからスズの通路で行くのかな?

そのまま地下へ降りるとスズは既に出社済みのようで、圭さんだけ階段の下で狐2匹が入った檻を持って待っていた。


「待たせた。そのまま通路に入れば良いのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・繋いでるって。」


階段の裏側に回り、奥の扉を開く。


「えぇ?」


通路は、まるで海の中みたいだった。

水の底に沈められた世界を、透明な道だけが切り裂いているみたいだった。

不思議な光景。


前に見たスズの通路とは、全然違う。

同じwalkerでも、こんなに違うんだ。


「すごーい!何これー!?」

「水の中ー!初めて見たー。」

「キュウ!」「キーキ?」「キュキュ!」


みんなからも驚きの声が広がる。

足元は暗いけど、しっかりした固さを感じる。

でも上を見上げると少し明るい。


「凄いですね。」

「俺も他の通路に入るのは初めてなので、驚きです。」

「walker毎に、通路が違うって本当なのね。」


不思議な景色でみんなキョロキョロしながら、前に進んでいく。


「あて!」

「あれ?あ。出口みたい。」


秀人が壁にぶつかった。

まだ少ししか歩いていないのに、もう出口らしい。

不思議な光景の印象が強すぎて、私もちゃんと前を見ないと、そこが壁かどうか気が付かなさそう。


–カチャ


「おじゃまします!」

「おじゃましまーす?」

「キュウ?」「キーキ?」「キュキュ?」


日向と秀人が扉から顔を出す。

少し見える景色だと、木の中を掘って室内にしたような感じ。


「あれ?誰もいないー。」

「おじゃましまーす。」

「ん?本当だな。出掛けてるのかな?みんなはちょっと待ってて。」


和さんが日向達の間から抜けて、扉をくぐる。


–あ。あ!!すみません。ちょっと待ってください。


和さんの声が、耳じゃなくて頭の中に響いた気がした。


え?

今の何?


「そういえば!精霊の世界だから、考えてる事がそのまま伝わるんだった。」

「え?」


和さんが、再び扉に入ってきて、そう言った。

その後の和さんの説明によると、精霊の世界では考えてることが、そのまま相手に伝わるとのこと。

たしかフィーと夢の中で話した時もそうだったなぁ。

あれって慣れないと、ちょっと困る気がする。


–あ?なんだ?もう来たのか。

ん?玄関で立ち止まってないで、入るなら入ってこい。


知らない声が聞こえてきた。


「圭。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フィフ。」


和さんが圭さんを呼ぶと、圭さんが和さんの背中を押して、扉を出た。


–おー。Kじゃーん久しぶりー。元気そうだなぁ。なんだその狐?


和さんが皆に手招きする。

出て大丈夫そう?


–古いアルバムをめくり、あせた色の風景を見送っていく、写真の端はボロボロになってしまっているが・・・

–あーそうだ。分かった。Kは後でだな。

んで?これまた数が多いなぁ。ん?人間じゃないのもいるのか。


ウーノ達の後から、私とイザベルも扉をくぐる。


「わぁ。」


少し見えた景色が広がり、まさに木の中に部屋があった。


壁も床も天井も、全部が木。

削って作ったというより、最初からこの形で育ったみたいな不思議な家だった。


木の香りが濃いのに息苦しくはなくて、外の森と家の中が、ゆるく繋がっている感じがする。

声も足音も、壁に跳ね返るのではなく、木に吸い込まれていくみたいに消えていく。

相談所とは音の居場所まで違った。


確かに急にこんな大人数で来たら困りますよね。すみません。


–んー?誰が話を分かってるんだー?あ。お前か。魔法使いの男。まさに保護者って感じだな。

それ以外の奴は、まずはその階段を上って荷物片付けてきな。部屋は好きな部屋を選ぶと良い。Kは同じく降りれば地下がある。


–・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ありがと。


話し方通り、気軽そうな雰囲気を持った三十歳ぐらいの男の人。


初対面なのに距離が近い。

でも、不思議と嫌な感じはしなかった。


軽いのに、追い返すような空気がないからだと思う。


あれ?でもどっかで・・・?


「あ!」


–あ?

–?


和さんと圭さんがこっちに振り向く。


–す!すみません。

–あぁ。あんた、こないだアルフの爺さんの所にいた男ね。


–そういえばそうだった。それも後で話そうかー。ひとまず落ち着いてからだな。


–わーい!おじゃましまーす!

–どうも、おじゃましますー

–オジャマします。

–こんにちは。

–木のナカ・・・

–キュウ!

–キーキ

–キュキュ?


日向達はフィフさんの前を通り、言われた階段へと上っていく。

なので、ひとまず私とイザベルもそれに続いた。


階段の途中途中に、そのまま扉がついていたので、順々に開けていく。

一番上の部屋はかなり広そうなので、日向と秀人とウーノ達は一緒にそこにしたみたい。


–え?じゃあ私も・・・

–他にも部屋があるんだから別でもいいでしょ。こっちにしましょ。

–ええ?まぁいいけど・・・


イザベルが、少し階段を降りた先にある一応隣?の一つ下の部屋に入る。


部屋の中は、日向達の入った部屋よりは、少しだけ小さかったけど、それでも二人で使うには広い。

ベッドもキングサイズなので、私とイザベルでもかなり余る。

窓はガラスがなく、そのまま外の空気が入ってくるけど、まったく寒くはない。

むしろ木の香りも吹き抜け、春のような心地よい温度。


気持ちのいい部屋だった。


なのに、落ち着くはずの空気の中で、相談所とは違う匂いがする事に少しだけ心細くなる。

知らない場所に来たんだと、改めて思った。


外の景色が気になり近づくと、外は森の中のようだけど、その木の一つ一つが大きい。

まるでこっちが、小人になってしまったような風景が広がっている。

ひとまず片付けるのは後にして、リュックはベッドの脇に置いて、階段を下りる。


日向達の部屋からは、賑やかな声が聞こえる。


–いやぁ。流石に、こんなに来るとは思わなかったな。

–すみません。


階段を下りていくと、1階のリビングで、和さんとフィフさんが話していた。


–お前が気にすんな。俺も聞かなかったし、スーも言わなかったからな。はは!

–フィフさんって事でいいんですよね?


–あぁそうだ。さん付けだとこっちまで堅苦しくなるから、フィフでいいよ。お前は?

–カイルです。しばらくの間、宜しくお願いします。


–なるほどー。お前は固い奴なんだな。まぁそのうち何とかなるか。お?お嬢ちゃんと猫。


フィフさんが、階段から降りてきた私達に気が付いた。


–あ!初めまして!アリスと言います。

–イザベルよ。


改めて周りを見渡す。

階段の反対側に私達が入ってきた扉は、玄関のようだ。

右奥にソファとかがあるって、そっちにもテーブルのあるスペース。

左奥は台所かな。


–アリスとイザベルな。まだまだいるみたいだから、何度か聞き直すけど、よろしく。


アルフさんにも似た軽快な話し方。

それにずっと笑顔で話しかけてくれるから、こっちも緊張感が和らぐ。

でも、初めて会った時はあんまり表情は無かったから、その時の印象とは違う感じ。


–あの時は悪かったな。フィーがお前の事気にしてたから、何となく繋いだら偶然繋がったんだ。


–何となくなんだ。

–はぁ!?何よ。何となくって。


–まぁまぁ怒るな。猫ちゃん。可愛い姿なのに台無しになっちゃうだろう。


–はぁ?


普段は、基本的に口を挟まないイザベルだけど、思考までは静かにはなれないもんね。

初対面なのに、イザベルが結構ハッキリ言ってるけど大丈夫かな?

でも、フィフさんは笑い返してて、あんまり怒る様子は無さそう・・・


ほとんど初対面のはずなのに、昔から知っている人みたいな感じ。


–んで、ともかくだ。この家は好きに使ってくれていい。俺は隣に住んでるよ。地下もあるから、Kも大丈夫だろ。

飯は食材を適当に用意しておくから、それを使ってくれ。他に聞いておくことは?


–いえ、色々ありがとうございます。一通りはこちらでも一度確認してみます。

–おう。気軽にすればいい。


和さんが一度頭を下げて、改めてフィフさんに顔を上げて姿勢を正す。


–ところで、こちらの状況は分かってるって事でいいんでしょうか?


–大体聞いてるよ。クラーレンの時は俺も大変だったし、その嬢ちゃんがイヴの半分だって事も聞いてる。フィーがどうなったかも知ってる。あとは?


–…いえ。失礼しました。お世話になります。


フィフさんの表情が変わる。

ちょっとニヤニヤしてる。


–お前の事は少し聞いてるぜ?天才君。若者も色々大変だと思うが、気楽にな。


そう言って、フィフさんは席を立つ。

玄関の扉に一度ポケットから出した鍵を差し、その鍵を抜いてから玄関を出て行ってしまった。


–なんか、イラっとくるタイプね。

–あはは・・・


イザベルは、あの後から頑張って静かにしてたみたい。


–まぁまぁ。悪い人ではないようですし。


–確かに悪い人ではなさそうだけど、スズとは正反対って感じ。


悪い人ではなさそう。

でも、だからこそ“スズじゃない”事が少し目立つ。


比べるつもりなんてなかったのに。


–そうね。フィーも違ったけど、walkerも色々あるのね。


–ひとまず荷物とか、片付けましょうか。足りないものがあれば、相談所に取りに戻るかフィフに相談ですね。

–はい。わかりました。


和さんも床に置いていたショルダーバッグを持ち上げて、台所の方へ向かった。

そういえば、圭さんは既に地下にいるのかな?

この家は窓が開きっぱなしみたいなものだから、日差しがそのまま入ってきて大変そうだもんね。


相談所とは全然違う場所なのに、賑やかな声が上の階から聞こえてくるだけで、少しだけ安心する。

しばらくは、ここが、新しい居場所になる。

そう言い聞かせるみたいに、胸の奥で繰り返した。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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