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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第一部 第三章 理解は救いにならない
111/122

答え:失敗は成功の基が、腑に落ちるかは別

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

一通り住居エリアを回った。

夜の底が薄くなり始めた頃、再び最初の住居へ戻った。


既にブライアンもヴェラもいない様子だった。

普通に入って扉を確認したが、walkerの通路への条件にはやはり合わない。

下手に入って、また別の場所へ飛ばされるのも困る。

しかも、ここより悪い場所といえば、今のところ悪魔の世界ぐらいしか思いつかなかった。

ギャンブルとしてもあまり賭けたくはない。


再び道路に出る。


気配に気がついたのは、同時だった。


「・・・」


お互いに一瞬の間。


「なるほど。君だったのか。何をしてるんだね?」

「探索」


「奇遇だね。私も似たようなことをしている。安定しない通路というのは、なかなか厄介でね。出口が固定されない上に、条件も一つではないらしい。

見つけるだけならまだしも、再現できなければ意味がない。」


既に数時間歩き回っていたから、気が抜けてしまっていただろうか。


「君は魔法使いでもないというのに、よくこんな場所に気が付くものですね。」

「魔法使いじゃないからこそ、気がつくこともある。」


距離はおよそ3メートルといったところ。

魔法を放たれれば、進む為に壁にできそうなのは古びた電柱ぐらい。


「そうですか。そういえばあなたに是非聞いてみたかったことがあるのですが。」

「短く。」

「おや?今回は聞いてくださるんですか?」

「前回、自分がどういう誘い方をしたのか覚えてる?」


見た目はまったくの別人。

もしクラーレンの記憶移動が成功した例だというのなら、前回の記憶は引き継がれているのだろうか。


「あなたとはゆっくり話をしたかっただけですよ。」

「…で?」


だが、ねじが外れた悪趣味変人には変わりないようだ。


「walkerで私が知りうる女性は3名。2番目・3番目、そして4番目。」


こいつがフィーにしたことも、悪趣味と言わざるを得ない。


「ですが、2番目の方とはお会いしたことがないのですが、どのような方だったのでしょうか?」

「分かっている事を、わざわざ聞くのはどうかと思う。そちらの長女と大差ないのでは?」


数時間前、ブライアンの口から出た名前。

シャロン・フォーラス。


「これは失礼。彼女の記述を読めば読むほど、彼女こそ仲良くなれそうな気がしてきてしまって、シャロンのような中途半端な欲求と比べるのは失礼かと思っておりました。」


中途半端ね。

フォーラス家は、やはりそれぞれが求める欲の向かう先が違いそうだ。


「人それぞれ。それを比較することは無理な話。」

「君も不思議だね。walkerはその経験や長さから、人間の基準から外れいずれは離れるケースが多い様子だけど、君だけは全くその反対に見える。」


そもそも個体数が多いわけではない。統計を取ること自体に無理がある。


「ブラッドにでも聞けばいい。彼らからすれば大差がないようだよ。」

「あれは私達とは目的が違うからね。もう少し早めに気が付きたかったですよ。」


死神のブラッド・オルティースは、前回アディール・クラーレンと一緒に現れた。

やはり今は、フォーラス家と行動を共にしていないのだろうか。


「あれは、人間と同じ軸ではないからね。」

「そういえば、君も知り合いでしたね。彼の提案に乗ったのが、今では良かったのか悪かったのか・・・まぁおかげでクラーレンがいらした事は、こちらとしては幸いでしたが。」


ブラッド・オルティースの提案・・・


「どうせ君は逃げてしまうだろうから、最後に一ついいでしょうか?」

「・・・」

「普通の人間の死を見届けてきた君にとって、あれの魂の喪失はどのように考えているんだい?」


あれの魂の喪失?


何か見落としている・・・


この男の話は、私がまるで既に何かを知っている前提で話が進められている。


「…死によって、記憶をそのまま持ち続けるのはwalkerしか私は知らない。結局は死も喪失も受け入れる上では同じ事。」


「・・・なるほど。では、謝罪は不要のようだね。

君は興味深い。今ここで壊すのは少し惜しい。

こちらも今は、安定しない通路の調査で手が離せないのでね。余計な順番違いをする気もない。それでは失礼するよ。」


ブルースは私の前を通り過ぎ、そのまま歩き続けていった。

謝罪?


そして何事もなく去っていくのか。

あちらにとっても急だったから、そうなのかもしれないが、フォーラス家と関わった中では、異様なほど静かな接触だった。


もう一つ、ブルースがここにいた経路も気になった。

恐らく彼らは、ここへ来る為に扉を使っていない。

だとすれば、別の出入口が近くにある。


ブルースが来た道に入る。

そのまま行けば、畑が並ぶ場所へ出るだろう。

そしてその先にあった鳥居。


妖怪の活動時間は種族によって違うが、比較的、夜に活動するものが多い。

畑に出ると障害物が殆どないので、朝を待った方がいいだろう。


近くの住居に入り、日が昇るのを待つ。


ブルースは、以前に会った時よりも大人しい印象だった。

猟奇的な雰囲気は薄れているが、根本の考え方は変わっていない。


経験という記憶だけを引き継いだ、別の個体。

そんな印象が、一番近かった。


今回の会話で感じたのは、調査ではなく観察。

魂の理論を探る質問ではなく、私の感想や認識を測る内容が多かった。


まるで――アディール・クラーレンのやり方に近い。


そしてもう一つ。

会話から推測すると、ブルースはブラッド・オルティースと接触した際に、何らかの提案を受けている。

アディールとの接触に繋がった経緯を考えると、それは事件前、あるいは事件当時の可能性が高い。


もしそうなら――


魂の喪失。


ブラッドの提案によって、特定の個体を意図的に選んだ可能性がある。

アリス・フォーラスでも山本梓でもない、三人目。


そしてその喪失に対する、私への謝罪。


死ではなく「喪失」という言葉を使った時点で、それは直接の知人ではない。

生まれ変わりか、あるいはその魂の系譜。


あの時、消えた世界。


――そこに繋がる。


「・・・」


日が昇る。


住居を出て、辺りの様子を伺いながら畑を走り抜ける。


そのまま鳥居をくぐってみるが変化はない。


何か条件?


もう一歩、石段の先へ踏み込んだ瞬間。

乾いた枝を踏むような音が、足元ではなく、空気の奥で鳴った。


まずい。


山の中の気配が、一斉にこちらへ向いた気がした。

反射的に鳥居の外へ下がる。


だが遅い。

草の擦れる音が、左右の奥で続けて鳴った。


「おやおや。何か来たかと思ったが、お前は人間だな。」

「!」


振り返ると男が立っていた。

気配や足音は聞こえなかった。


「何しに来た?」

「…帰り道を探している。」


一見普通の男。

服装こそ、室町時代のような小袖だが、ここでは普通なのだろう。


「迷っているのかい。」

「はい。」


明確な敵意や今すぐ食べようとする様子はないが、逃げられるだろうか。


「そこはさっき閉まったようだね。夜まで開くことはない。

うかつに覗いたせいで、山の連中にも気づかれたようだが。」


時間の条件。

朝まで待ったのが失敗だったか。


「ありがとうございます。」

「まだ日が昇ったばかりだ、暇ならおいで。」


「…いえ。その辺で過ごします。お手数おかけしました。」


流石について行くという選択はない。


「迷い込んだ人間だというのに、お前は分かっているようだ。だが私も折角あった人間をそのまま逃がすという事はしない。」

「・・・」


男がほほ笑む。一歩引く。


「そもそも逃げられる訳がない。」

「そうですね。」


男が近づいてくる。


「・・・おや?お前、加護をもっているのか。何者だ?」


「…普通の人間。」


生臭神のささやかな加護でも、妖怪は気が付くらしい。


「普通の人間ねぇ。だが、流石に神への捧げ物の場合、頂くわけにはいかないか。」

「逃がしてくれるなら、助かる。」


「滅多にこんな僻地に人間が来ることはないから、それも勿体ない。」


「…この場所に再び来る事ができるなら、その時は手土産でも用意できる。」


何も手持ちがない以上、それぐらいしか提案がない。


「なるほどね。それでは酒でも持って来てくれると嬉しいが、少しだけでも駄目かな?」


「…この肉体が削れては困ります。」

「不思議な言い方をするねぇ。話せば話すほど、普通に見えないから不思議だ。」


男が山道に向かって歩き出す。


「ついてきなさい。どうせこの辺にいればいつかは別のモノに見つかる。」

「・・・」


こちらから迂闊に情報を投げるわけにもいかず、その男が何の妖怪なのかも、未だに掴めない。

こうして背を向けても、私を逃がさない自信があるのだろう、黙ってついて行くか。


「家のモノは寝ているから、静かにしていれば問題ない。こちらから入ろう。」


しばらく山道を登ったところで、男がいつの間にか持っていた物を振る。


–ビュオォォ


大きな風が吹き、瞬きをする。


目の前には、大きな屋敷が現れる。


「さぁおいで。」

「・・・」


屋敷は、平安時代の貴族の建物のような高床式で壁が殆どない、寝殿造。

庭から入りその廊下へ上がる。

中は言われた通り寝静まっているようで、気配は薄い。


壁に並んだ鼻の長い人物が描かれた画や小物。

そして先ほど男が手にしていた扇。


天狗。


山の神とも言われる、力のある大妖怪。

長命で、個体によっては慎重だと聞く。

話をする前に襲ってこなかったのも、その性質ゆえかもしれない。


「何か食べるかい?」

「いえ。頂きません。」

「残念だ。」


どの世界でも注意するべき事だが、その世界の飲食は基本的に控えた方がいい。

ウーノ達がそうであったように、その世界の食べ物を口にするという事は、その世界に近寄る事になる。


「さてさて、それにしてもこうして、見ていてもやっぱり普通の人間のようだ。

折角だ。お前の事を教えてくれないかな?」


庭の方へ足を向けて、廊下に座る。


初めて会った妖怪に、利益になる情報は選べない。

不利益にならない事に注意しながら、自分の事を説明していく。


男は時折驚いた顔を見せたり、納得する顔をしたり、表情は豊かに変えていく。

そして最初に会った時同様に敵意は見えず、あからさまに餌にしようとする様子は薄い。

「walker」の説明にも驚いてはいたが、それ以上に、どこか納得したような顔をしていた。


「こんなところでしょうか。」

「面白い。そんなお前・・・いや、精神的には私より長生きということか。」


男は座敷の入口で柱に背をかけながら、笑っている。


「…そうですね。」


「名前はスズといったか。では、スズはこの世界へも、何度か来た事があるという事か?」

「はい。最近では一か月前ほどに。」

「ほう?では、役職持ちなら、お前の知り合いがいるという事だったのか。」

「…多少は、出入りの許可をいただく程度ですが。」


正式な世界への入口に入るには、許可が必要になる。

つまりはある程度、そういった許可を出せる人間との面識がないと無理な話。


「これは下手に食わなくて正解だったか。そういう事は先に言え。」

「…失礼しました。」


怪異の世界では、基本世界や魔法世界と繋がる正式ではない出入口も多い。

そういう事についてまでは、役職側は管理できないので、基本放置と聞いていたので、交渉材料になると思っていなかった。


「なるほど。それでさっきはまた来ることができるなら、と言っていたのか。あの鳥居からなら帰れるのか?」

「その可能性があると思い確認してました。あそこはどこに繋がりますか?」

「あれは妖怪では通れない、なので放置している。私も知らんな。」


それは残念。

この屋敷は、条件の合う・・・どころか扉がそもそも少なそうだ。


「あの先が帰れる場所に繋がるのでしたら、改めて酒の用意はしましょう。」

「ああ。それはそれで期待している。しかし・・・」


男が柱から離れ、少しこちらに近寄る。


「時代の旅人というもの。確かに聞いたことがあったが、本当にいたのか。」


廊下に身を乗り出し、こちらをじっと眺めてくる。


「証明はできませんので、信じる信じないはお任せします。」

「確かにな。」


じっと眺めてくる。


「不思議だ。お前はまだ若いな。少しの生気はどうだ?」


「…少しの量が分かりません。」


急に婆にされては、かなわない。


「人間の5年分ぐらいでどうだ?」

「それで今回、見逃してくれる条件として下さいますか?」


5年は決して軽くない。


軽くはない。

だが、5年程度なら和に気づかれるほどではないだろうし、そもそも寿命を全うするケース自体がほとんどない。

腑に落ちる取引ではないが、ここで詰むより良い。


「いいよ。どうせ食べれなさそうだし、ちょっと旅人の味って気になる。」

「体は普通の人間ですので、変わりないかと。

その条件はあなたの関係するこの家の方も含めてください。帰れないと意味がありませんので。」

「はいよ。流石分かってるねぇ。そりゃ普通の人間より変なわけだ。」


男が再び近づいてくる。


「5年分までです。こちらでは正確に計測できませんが、明らかに抜きすぎと分かった場合は酒もなし。」

「それは契約だ。守るとも。」


ただ疲れるのとは違う。

体ではなく、もっと内側を撫で取られたような感覚だった。


立っていられないほどではない。

それでも、戻らない何かを渡した感触だけが残った。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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