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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第一部 第三章 理解は救いにならない
106/122

疑問:とにかくやれるだけやる?

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

「朝来てたスケジュール変更の相談について、調整できてます。」

「ありがとうございます。助かりました。」


明日予定していたお客様から急に日程変更の相談が来ていたので、対応できたことを和さんに伝える。


「いつもありがとうございます。僕は買い出しに行ってくるので、アリスさんは自由にしていて大丈夫ですよ。」

「分かりました。…あの・・・少し・・・」

「和ー!これ確認してー。」


和さんに声をかけようと、言葉を選んでいると階段の下から秀人の声が響いた。


「?…どうしましたか?アリスさん。」

「あ・・・いえ!大丈夫です。」


呼ばれている和さんを引き留めるのはためらわれて、そのまま笑ってごまかした。


「…何かあれば、いつでも聞いてください。」


和さんも笑顔を返してくれて、階段を下りて行った。

私もいつもぎっしりのスズのスケジュールを最後に確認して、パソコンを閉じた。


仕事には慣れてきたと思う。

でも、今知りたいことの答えには、何一つ近づけていない気がした。


「ひとまず急ぎの対応は終わったし、英語の勉強でもしようかな・・・。」

「それなら、下が騒がしいから、六階にでも上がりましょう。」


確かに、日向や秀人達の声が響いてる。

イザベルに言われた通り、仕事フロアの二階から六階へ上がる。


–ピロン


階段を上っている途中、ポケットの中で音が鳴った。


リュース「死神の人について何人か当てがあるので、直接話せそうな相手を探してみますか?」


リュースさんからのメッセージだった。


「うーん。できればイザベルという、女性の死神の方を知っている方がいれば・・・」


口に出しながら、リュースさんに返事を返す。


リュース「聞いてみますね。アリスさんの今の事情について伺いたいんですよね?」

アリス「そう・・ですね。多分ガルシアさんが、一番良いかなぁと・・・。」


ガルシアさんは、少なくとも私をあからさまに突き放したことはなかった。

死神の中で、今の私が一番“聞いてもいいかもしれない”と思える相手だと思う。


–ピロン


六階に着くと、再びメッセージ。


リュース「今少しだけ、お電話できますか?」


電話?

特に問題ないので、返事を返す。

電話はすぐにきた。

六階の本を読む場所として置いてある、隅っこの一人掛けのソファに座って、電話をとった。


「もしもし」

『こんにちは。アリスさん。急にすみません。』


リュースさんのゆったりとした声。


「いえ、どうしたんですか?」

『いえ、死神と話をしたいということなので、念の為にちゃんと説明しておいたほうが良いと思ったので・・・』


説明?


『急がせたいわけじゃないんです。ただ、相手が死神なら、知らないまま動く方が危ないので。

死神は本来、こちらから深く関わるのに向いた相手ではありません。魂を管理する側ですから。』


確かに、死者の魂を回収する死神の方が、生者とあんまり関わるのは良くないよね。


「すみません。そしたらあんまり会って話したいって良くないですよね。」

『いえいえ、まずは前提のことです。混乱させてしまってすみません。

今回のアリスさんの件は、かなりイレギュラーですし、死神側にしか分からない事ですから仕方ありませんよ。』


・・・スズが教えてくれないのであれば、思いつく相手は死神の人しかいない。


「そう・・・なんですけど。あんまり良くないって事も分かります・・・。」

『そうなんですよ。だから、ガルシアという死神と既に何度か関わっているアリスさんの場合は、既に関わりのあるガルシアさんに直接踏み込むより、まずは別の死神から話を聞けた方が、少しは動きやすいかもしれません。』


ガルシアさん以外・・・


それは、前回死神の世界に行った時の雰囲気を思い出すと、不安。

スズへの敵意が強かったけど、それでも生者として私達全体が嫌われている感じだった。

その中でも、ガルシアさんやエルさんのように、普通に対応してくれる死神だったらいいのだけれど・・・


「その場合って、話して下さる死神の方っていらっしゃるんでしょうか?」

『僕の知り合いの死神でも、もちろん僕と普通に話してくれるので大丈夫ですよ。

でも、初めての人だとやっぱり嫌ですよね・・・?』


でも、言ってることも分かる。

どうしよう・・・


「う・・・すみません。ちょっと怖いとは・・・思います。あのガルシアさんに同席頂けないかだけでも聞いて貰ったりってどうでしょうか・・・?」

『そうですよね。ちょっとそれも含めて聞いてみますね。』


リュースさんの気遣いに、少し安心して、さっき和に聞こうか悩んでいた言葉が出る。


「あの、一応こういう事したいってだけでも、スズにちゃんと伝えておいた方がいいですよね・・・?」

『…そうですねぇ。でも、スズは慎重ですからね。まだ日程調整もこれからなので、調整できそうだとなった時に、カイルさんに伝えるのはどうでしょう?』


確かに、スズに伝えるのは今はしづらいし、日程が決まってから和さんに伝えても遅くはない。

不安がりすぎて、前のめりになっちゃったかな?


「そうですね。ちょっとタイミングをみて伝えてみます。こんな事まですみません。ありがとうございます。」

『いえいえ。』


リュースさんは、なんとなく相談しやすい。

話を否定せずに、でも危ないところは先に教えてくれる。

そういう距離感が、今の私にはありがたい。


電話を終えて、一息つく。

そういえば、昨日は丸一日スズの姿を見なかったなぁ。

どこかでそれをまだホッとしている自分もいるのだけれど、全く姿を見ないとそれはそれで不安も感じる。

まったく、なんてわがままな感情なんだろう。


多分私は、自分の事を知りたいと思っている反面、スズの事ももっと知りたい気がしてる。


最初に、会社の後輩として出会ったものの、その性格は全く知らない人だった。

元気で明るい、ポジティブな印象の彼女から一変して、無表情で言葉も少ない。

しっかりし過ぎて見える姿は、同じ場所で暮らしてそれなりの月日が経ったのに、どこか遠い。


和さんや日向や秀人。

それにウーノ達を見ていると、絶対に冷たいだけじゃないことも分かるし、実際にすごく考えてくれてるんだって感じる場面はいっぱいあった。


でも、それもこれもあくまで見て感じたこと・・・


実際にスズと一対一で話す機会って、正直ほとんど無い。

だから、先日の言葉を言われても、それが本音なのかどうかも分からなかった。


スズにとって、私は何なんだろう?


それからも一日に一度か二度、リュースさんとは状況確認をするみたいに、短いやり取りをしていた。

リュースさんは交渉人として、中東の方に移動することが多いらしく、中国や韓国の方では日本よりも、魔法世界とのトラブルが多いと嘆いていた。

国ごとにも、トラブルは違うのかもしれない。


死神の方とは、何回か返事がきてると言っていたけど、まだ調整には時間がかかるみたい。

やっぱり、そんなすぐ会いたいといって、会えるものでもないよね。


スズにもあれから、まだ会えてない。

今日はお昼に会社の仕事から帰ってきた後は、ミーティングが5つ入ってるみたい。

元々忙しいことは分かってるけど、1月は何かとトラブルもあって対応できないタイミングが多かったから、2月に偏ってしまったせいで、カレンダーの予定は寝る時間の見当すらつかない。


スズが手を差し伸べている相手は、何も私ひとりじゃない。


偶然出会って、基本世界に戻せないから相談所にいることになった。

もしかしたら、アイザック君みたいに戻る場所が見つかったら、すぐにここを出ることだってあるのかもしれない。

そんなのは一時的なものなのかもしれない。

ただ私が、勝手に家族みたいに感じてしまっているだけなのかもしれない。


スズにとってはただの相談者ってだけなのかも・・・


「・・・はぁ。」


今後の自分の大事なことだし、死神の人からできれば直接話を聞きたい。


でも、実際に魂の回収となって、「はい、これで終わりです」なんてなったら、私は――


結局は死神の人次第なら、こっちの意見はどこまで聞いて貰えるんだろう?


「・・・イザベル。本当は、死神に話を聞く意味はないのかもしれないよね・・・。」


今日も六階で、英語の勉強に本を開いてみたけれど、考える方向が変わってしまう。


「何よ?聞く前から、勝手に凹んでるんじゃないわよ。」


まぁそうなんだけども。


「でも極端に言えば、バレンさんの案が、採用か却下かってことになると思うんだよね。」

「それも含めて、どうなっているかが分からないわ。なんでその過程で、死神がサーズを呼んで、話をする必要があったのか。理由の予想がつく?」


まだ話が決まってないとして、スズを呼んで何の話をしたのか。


「サーズは何も言わないけれど、何かが決まった状態の場合は、こうならないと思うのよね。

それってつまり、まだ話し中とか、あるいはまだ決まってないってことだと思うのだけど?それが何なのかを、アリスは聞きたいんでしょ?」


「・・・そうだけど。私が聞いて何かが変わるかどうかと言われると・・・。」

「ぐずぐずしてるわねぇ。」


あきれ顔で、声もだるそうにイザベルは答える。


「結局どうしたいのよ?答えを待っていたいなら、待っていればいいわ。直接聞きたいなら、リュースからの日程調整を進めてみればいいじゃない。」


本当にそれ。

私は結局どうしたいんだろう。


状況が分からない事が、とにかく不安。

でも知った内容によっては、どうしようもない事もある。


「変えられることもあるけど、死神側の判断は、変えられないことなんじゃないかと思う。」

「アリスは、その結果がどうこうの前に、現状を聞いて、話せる土台につきたいんでしょう?」


話せる土台。


崩れない足場が、まず欲しかった。

今すぐ何かを変えたいというより、まずは何が起きているのかを知りたい。

知らないまま待っているのが、一番苦しい。


「・・・確かに。」

「だから、まずは情報収集したり、行動してみることが悪いことだとは、私は思わないわ。」


イザベルの客観的だけど、落ち着いた意見が、混乱した私の胸に刺さる。


「やっぱりイザベルはすごい。」

「私はアリスじゃないから、同じ立場じゃないだけよ。でも、やるだけやってみて、それでも駄目なら、その時に考えればいいじゃない。」

「そ、そうだね・・・。確かに勝手に凹んでた。」


この状態が嫌だってことに変わりはないんだから、確かにイザベルの言う通りやるだけやってみればいいか・・・


聞いてみれば、なんでスズが答えてくれないのかとかも、もしかしたら分かるかもしれない。

そういう意味でも、話せる土台が欲しいことは確かだと思う。


「ありがとう。イザベル。」

「まぁ、ポジティブに考えづらいのは分かるわ。でも、そんなのサーズだって・・・。」

「ん?」


イザベルの言葉が徐々に小さくなっていくので、後半の言葉が聞こえなかった。


「何でもないわ。スペル間違えてるわよ。」


”step”を”stap”と、書いてしまっていた。

小さくても一歩が大事だよね。


「日向?」

「あ。アリス!」


どうしたんだろう?

朝のランニングを終えて、シャワーを浴び階段を下りると、二階の階段脇に日向が立っていた。


「どうしたの?」

「お客様が来たの。今、和が対応して、秀人がお茶を持っていった所。」

「あ。そうなんだ。ごめんね。私も何か手伝う?」

「ううん。多分大丈夫。・・・ねぇそれよりスズと何かあった?」


ギク


うう…


まぁ最近、スズは全然上に上がってこないし、和さんからは喧嘩してる雰囲気はない。

なら原因が、私だと分かるのも時間の問題だったよね。

少し気まずい。


なんて説明すればいいんだろう・・・


「・・・えーと。ちょっと、喧嘩?」


なんで疑問形。

でも、自分でも良く分かってない。

だからといって、喧嘩って言葉に当てはめるのも、ちょっと変な感じ。

どちらかといえば、疎遠になった感じ?


あぁ・・・これって言葉にすると悲しい。

言葉にするとその事が、明確になっちゃう気がする。


「そっか。たまにはあるよね。内容は分からないけど、早く仲直りできるといいね。」


「・・・うん。頑張ります。」


仲直りかぁ。


できるのかな?


っていうか私ってば、ずっと疑ってばっかりになっちゃってる気がする。

なんでそんなに疑ってるんだろう。

だってスズは・・・


「アリス。スズって分かりにくい?」

「え?うーん。前はそうは思ってなかったんだけど、今はちょっとだけ?」

「じゃあ良い事教えてあげる。」

「うん?」


日向が近寄ってきて、私の耳に口を寄せる。

どうやら内緒話みたい。


「今度もし話す時に、何考えてるか分からないって思ったらね。―――」


ん?


「分かった?」

「・・・分かった。本当に?」

「ふふーん。まぁ騙されたと思ってね!」

「分かった。ありがとう。」


そう言うと、日向は私にサムズアップをして、湯煎室に行ってしまった。


今の話って、本当だろうか?


半信半疑だけど、そういう具体的な話をされると、少しだけ“話せるかもしれない”と思う。

当たっているかは分からない。

でも、何も掴めないままよりはずっと良い。


はぁ…


一応仕事のメールを確認しに、二階に上がろうかな。


「何だったの?」

「うーん?私も分かんない。」


でも、そもそも次に話せるのはいつだろう。

私からは地下にあんまり降りないほうが良いみたいだし、そうするとスズが上がってくるのを待つしかない。

結局は、タイミングはスズ次第なんだよね。


明日、近くに来る予定があるということだったので、リュースさんと会う予定になっている。

忙しいのに、死神の人との調整までさせてしまって申し訳ない。


「…あ。おかえりなさい。僕は昼ご飯でも作って来ますね。分からない事があったら聞いてください。」


二階でメールチェックしていると和さんが、階段を上がってきて、そのまま上へ向かいながら声をかけてくれた。


「ただいまです。分かりました・・・。あの和さん。」

「はい?」


つい、呼んでしまった。


「あの・・・えーと。えー・・・あの。」


「…メールは、後ででも大丈夫そうなので、一緒に上がりますか?」


「・・・はい。」


言葉が出てこず固まった私に、和さんの方が気を使ってくれました。

すみません。

ノートパソコンを閉じた。

和さんの後ろについて、三階へ上がる。


「1月も終わりなので、来週あたりからは徐々に暖かくなってきそうですね。

こたつもそろそろ片付けて良さそうですかね。」

「そうなんですか?良かったです。」


私は寒いよりは、暖かい方が好きかな。

夏の暑さはちょっと大変だけど、冬の凍える感じに比べれば、そっちの方が楽な気がする。


–コンコン


和さんはいつも通り台所の台にノックをして、道具が動き出すのを確認して、食材を冷蔵庫から取り出し始めた。


「アリスさんを困らせてる事は、自覚してますよ。」


和さんが背中を向けたまま、こちらに向かって話す。

そして、それが”誰が”と、言わなくても分かる。

黙ったまま、足の届かなくなった台所脇のカウンターに座る。


「・・・」

「まぁ僕もアリスさん側ですよ。あれの言葉が足りない事は、重々存じております。」


「・・・ですね。」


それで二人は、喧嘩している感じでしょうし。


「本当に今回は何があったんですかねぇ。」


「・・・和さんも知らないんですか?」

「えぇ。あれが自分から話さないうちは、何を聞いても答えてくれませんから。

…多分、話した時にアリスさんがどう動くかまで、先に考えてるんでしょうね。」


そうなんだ。

和さんにも言ってないんじゃ、私に言ってくれるはずないよね。


「どう見ても私自身のことなのに、その状況を本人の私が聞けないと思うと、ちょっと・・・」

「イライラしますよね。」


言いづらい言葉を、和さんが引き継ぐ。


「・・・まぁ。ちょっと?」

「そう思ったところで、いつも話がまとまったり、終わった後に申し訳なさそうにやっと言ってくるんですよ。」


「・・・う。それはやっぱり、あれですね。」

「はい。イラっとします。」


なんかあの時のフィーさんや和さんの気持ち、そして私の今の気持ちは近そう。


「…でも、残念ながら、最後に見ると外してないことが多いんです。」


「・・・・」


フィーさんもそう言ってた。

結局はスズが正しかったって、だからムカつくとも言ってたけど。


「・・・じゃあ。やっぱり何もしないで、黙って待っていた方がいいんですよね。」

「それって正直、無理じゃありません?」

「う。」


そう。

だから、ちょっと良くない事だって、分かってても動いてしまう。


「だから、僕もアリスさんを止めませんよ。」


「・・・良いんですか?」

「僕も同じ立場なら、きっと勝手にやるんで。」


凄く。

和さんの言葉はきっぱりしすぎてて、経験を語っているように見える。


「でも、アリスさん。」


「・・・はい。」

「覚悟は必要ですよ。それは自分自身で決めた行動ですから。」


「そう、ですよ・・・ね。」


正論だ。

自分で決めて、自分で行動にしてるんだから、それを誰かのせいにするのは違う。

これは私の責任なんだ。


「すみません。ちょっときつい言い方をしました。

でも、それも含めて分かっているようですが、それでもアリスさんが危険な目にあうのは、みんな嫌なのでできれば気を付けてください。」


そうなんだ。

いやいや、そうだとは自覚してる。

大切にされている事を自覚できない程、私はそこまで鈍くない。


「・・・はい。すみません。分かりました。」

「まぁ言葉足らずなのが一番悪いので、申し訳なさそうに説明してきた時には、色々言ってやれば良いと思いますよ。」


そっか。


「・・ふふ。そうやっていつも喧嘩してるんですね。」

「えぇ。それはもう数えられない程に。さて、日向達を呼んでお昼ご飯にしましょうか。」

「はい。呼んできます。」


和さんと話せて良かった。

やっぱり言いにくくしてるより、ちゃんと話してしまった方がいいんだろうなぁ。

でも、和さん曰くスズは、話さないという・・・。


それはとても難題だ。

でも、難しいからって何もしないままでいるのは、もう嫌だった。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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