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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第一部 第三章 理解は救いにならない
107/122

答え:弘法にも筆の誤りがあるのだから

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

ガーディとのやりとりの後、責任者への公式確認に回ることになり、今は印鑑が揃うのを待っている状態だった。


しばらく時間をおいても、その後の動きが見られなかったため、連絡を入れた上で死神の世界に顔を出した。

仕事場のビルではなく、少し離れた喫茶店でガルシアと待ち合わせしていたところ、何故かガルシアの後ろから、情報部部長のアリーがついてきた。


「おやおや。今は可愛いお嬢さんなんだね。」

「久しぶり。」


アリーはバレンとは少し違った、好好爺という印象を受けるだろう。

ややお人好しすぎるというか、祖父として孫を甘やかせるようなイメージを受ける、穏やかな死神。


「あなたと話がしたいと、言っていたので一緒に来ました。」

「そう。ならまずはそっちの要件から聞くよ。」


二人は、私と反対側の席に並んで席についた。


「ガーディと何があった?」


「…アリー。答える必要はないはず。」


今回、相談役としてガーディが入ってきたこともあり、以前イヴの時にも情報部を担当していたアリーなら感づくこともあるだろう。


「秩序を優先することに固執しているあの男が、条件付きとはいえ二つの死亡履歴に載るはずの魂の片方を、容認する案件を推薦。

そこに君が同席したということは、私からは違和感でしかない。」


「ガーディは、過去の実績を反映したいわけではないのだろう。」


イヴの時は、イヴの魂を回収するという条件で、ガーディはそれを容認して終了させた。

今回は内容は違えど、その時のイヴの魂が再び戻ってくる事に対して、何かを止めようとしていると考えられる。

その本意は図れないけれど、イヴの魂を再起させない方法として、バレンの案は賛成派に立つのは納得できる。


「アリス・フォーラスへの意向確認。」

「…そこまで分かっているのなら、尚更のこと、答える必要はないはず。」


私の意図は、アリーも分かっている。


「もしもそちらの見直しが入れば、彼女が不利になる事は、確実だろう。」

「…彼女は、それを答える土台にいない。」


何を選ばされているのか。

その選択で何を失い、何が残るのか。

彼女はまだ、その前提を知らない。

それでは、答えを求める側の方が先に立ちすぎている。


アリーが再び、その検討案を出してくるということは、未だ印鑑を押さない責任者の中に、その検討案を進めたいと考えている者がいるのだろう。


「アリス・フォーラスは、我々死神の事情も知らないだろうねぇ。」

「そして、まだアリス・フォーラスとしての認識が戻ったばかりでもある。」


それでも、こちらが時間をかけて説明さえすれば、彼女は自分の選択をするだけの判断力はある。


感情で動くことはあっても、理解できないわけではない。

むしろ理解した上で、自分を後回しにする方を選べてしまう。


あくまで、今は時間が足りない。

死神のこと。

クラーレンやフォーラスのこと。

そして、魔法世界での彼女の立ち位置。


彼女に全てを一気に説明して、判断させるのは混乱もあるだろうし、今は負担でしかない。


「それなら、一つ手助けをしたいのだが、どうだろうか?」

「意図が分からない。」


印鑑を押させることが、できるなら最初からしているだろう。

それなら、印鑑以外の形での手助けということになるが、アリーのメリットが見えない。


「あの魂を、私は一度容認した。その結果、後に保管対象となっていた魂を奪われてしまった。」


あの魂、イヴのこと。

当初イヴは死神に対して、輪廻転生に回さず保管対象となった。

そのアディール・クラーレンの魂に対して、何度かやりとりをしていた。

その時、主に対応していたのが、目の前の死神であるアリー。


「あの魂が再び、こうした形で戻ってくることは、私にとっても・・・悲しいことなのだよ。」


悔恨が、アリーの表情に静かに滲んでいる。


「既に新たな命として生きている魂なのだから、もう自由にするべきだろう。私はそう思う。」


事件前のイヴを一時的にでも容認していたことが、アリーにとっては大きな後悔だったのだろうか。


「他の責任者への誘導は残念ながら、今の私には力不足だと感じている。」


古い担当者であるアリーへの評価はあれど、イヴのことについては無責任者という見られ方をしているものも多い。


「そして、未だ検討案にもかかわらず、先に彼女から言質をとろうとする若者が見られる。」

「…止めきれない、と?」


それはあくまで死神側の問題。

だが、結果としてアリスに影響がきては、死神の管轄を超える。


「以前お話させて頂いた、山本梓の回収担当。レイ・チェジールが、内部の手によって姿をくらましています。」


ガルシアが挟んできた。

ブラッド・オルティースだけでなく、よりにもよって、山本梓の回収担当という明らかに情報を持っている死神が逃げたのか。


「謹慎処分中のメールやデータは解析しているので、急いで居場所を探してますが、その形跡から、明らかにアリス・フォーラスへの接触を試みようとしていると読み取れます。」

「逃走中の死神が、基本世界に来るのは難しいとは思うけれど、協力者は?」


基本世界へは、死亡履歴に載った人間の担当にあたった死神しか、本来は立ち入れない。


「そちらも調査中ですが、魔法世界の者である可能性が高く、あなたが追いかけているフォーラスかどうかは分かりません。」


魔法世界を挟んだ場合、魔法世界も本来は基本世界同様に立ち入る条件に変わりないけれど、魔法世界の人間の場合は、招き入れる手段を持つ者がいる。


「状況は分かった。つまり、ヒアリングをしてくる死神の接触の可能性について、アリーは何を検討している?」

「今の私ができるのは、彼女の情報の土台をつくる手助けぐらいだろう。」


死神の情報は、今の彼女が何よりも欲しているものだろう。

けれど、それは最終的に彼女に何の得にもならない。


「死神の情報を与えるのはそちらの自由だが、それより彼女自身の本を見せてあげる方が、今は有益だと思う。」

「彼女が望むのなら、その許可は出そう。」


一気に整理できない記憶だけで、アリス・フォーラスとして生きようとする彼女にとっては、今後の選択をする上でも大事な外部情報。

少なくとも、自分が何者としてここにいるのかを、他人の言葉だけでなく自分の記録で確かめられる。

それは選択の前提になる。


「それなら助かる。アリーはそれでいいのか?」

「あの時の魂を救済できなかった死神として、少しでも罪滅ぼしになるのなら、この立場が終わったとしても、それが良いと思っているよ。」


アリーは、生者を平等にみている数少ない死神だろうな。


「あまり、2番目のことを負い続けなくていい。あくまで死神としての範囲で、私としてはあなたのような死神に、失敗を成功として引き継いで貰えることを祈っている。」


「…これは、君に対してでもある。」


手元のコーヒーから、アリーへ視線を向ける。

アリーの言葉には、制度の話だけではない私情が混じっている。

だからこそ、軽くは受け取れない。


「気持ちは、受け取らせてもらう。」

「はは。さて、私の要件は以上だから、先に失礼しよう。お邪魔したね。」


アリーは伝票を持って、会計に向かった。

イヴの時も何度かやり取りをした程度で、あまり深く話したことはなかった。

ガーディが議長の時からの死神だから、もう少し固いイメージだったが、なにかをきっかけにか少し落ち着いたのかもしれない。


「とはいえ、私が伝えるべきことは、先ほど伝えた内容です。」


一方でガルシアは、あくまで現状と危険だけを切り分けて話す。

その実務的な距離感は、彼女らしい。


「レイ・チェジールの場合は、すでにこちらで調べている事も多いので、早ければ数日で回収できると思います。

ですが、アリス・フォーラスの方については、念のためご注意をお願いします。」

「死神の介入に関しては、私達側ではなかなか対応しづらい。

アリス・フォーラスの位置情報はガルシアだけで良いから、確認しておいて貰えると助かる。」


死神の影移動は、魔法等ではない以上、和や圭では追いかけきれない。


「はい。それはもちろんです。」

「ガルシアも、付き合ってくれて助かるよ。」

「バレンやアリーにも頼まれましたし、今さら投げ出すなんてことはしません。」


固いけど真面目な、ガルシアらしい返事。


「あとは、一日でも早くアリスの方針の確定が、進むことを頼む。」

「そちらばかりは、私より上の責任者次第なので、進捗をお伝えすることしかできません。」

「そうだね。私の方は山本梓の魂回収を急ぐ、もし滞るようならそれを提出条件にまた来る。」


そういうと、ガルシアは眉を顰める。


「良い方法ですが、本来死神側で回収すべき魂である以上、回収できるよう努めます。」

「こちらも情報が出次第、連絡する。」


ガルシアからの進捗も確認できたので、ひとまず相談所へ戻ろうか。


「彼女達のことは頼む。」


「・・・それは本来の魂が2番目だからこそでしょうか?」


喫茶店を出て、別れる直前。

最後にガルシアにそう伝えると、彼女は少し考えるように質問した。


「イヴ。2番目のことが全く関係ないとは言わないけど、アリスも梓として、そして生者でも死者でも、だと私は思う。」


「・・・そうですね。失礼しました。」


ガルシアは、ビルの方へ向かって去って行った。


相談所の地下に戻り、スケジュール通りにミーティングを進めていく。


–ブブブ


その最中に、圭からメッセージが送られてきた。

リュースが、明日相談所の近くに立ち寄る可能性がありそう。だという内容。

動きが、小さな棘のような違和感が、抜けずに残っている。


交渉人として相談に乗る範囲を、少し越え始めている気がする。

それが善意だけならいいのだが。


いくつかミーティングを終えた後に、空いた時間で電話をかけてみる。


–プルルルル、プルルルル


タイミングが合わないのかもしれない。

しばらく待って、電話を切る。


「・・・」


ただの気まぐれならいい。

今日の話と重なって、気になってしまっているだけかもしれない。

和にも伝えてあるし、あまり気にしなくてもいいのかもしれない。


–ブブブ、ブブブ


折り返しの電話が来た。

すぐに電話を手にする。


『もしもし?』

「折り返しありがとう。」

『スズから電話なんて、珍しいですね。どうかしましたか?』


普段通りのリュースの声。


「先日、珍しく相談所に来たみたいだね。」

『えぇ。たまたま近くに寄ったものですから、カイルさんに最近のその辺りの進捗情報を聞いたんですよ。…少し気になってしまって。』


理由は無難。

「こっちの進捗?」

『えぇ。僕の担当は距離が近いですから、類似するトラブルがあることも多いですから。』


「何か、気になる事でもある?」

『僕の担当では、魔法世界のトラブルが増えていたので、ちょっと気になって程度ですかね。』


内容も無難そう。

椅子の背もたれに、重心を寄せる。


「どんなトラブルが?」

『内容は、そこまで変なことはないですよ。気になります?一応報告書は上げてるので、カイルさんに確認してみて貰えれば・・・』

「それなら、たまには直接話を聞きたいかな。明日の予定は?」


少し踏み込んでみようか。


『急ですねぇ。しばらくは日本に戻る予定がないですよ?どっかで調整しますか?』

「失礼。明日なら私に少しタイミングがあったから、一応聞いただけ。リュースが次に来るタイミングで、問題ない。」


『…分かりました。じゃあ、また連絡しますね。』

「急に悪かった。よろしく。」


電話はそれだけだった。


圭のメッセージはまだ、来る可能性がありそう。ということだった。

判断材料としては弱い。

電話では、表情も見えない。


それに、本当にアリスとただ話しているだけなら、むやみに彼女の交流を遮るようなことはしたくない。

和も圭も一応は気にしてくれている以上は、ひとまず様子を見よう。

それよりも、今は山本梓の魂の場所について、次の行動を考える方を優先するべきだろう。


死神の動きが停滞している今、逃亡したレイ・チェジール以外にも、アリスへ接触を図ろうとする死神が出てこないとも限らない。

アリーの提案は嬉しいが、そうならないようにできれば進めたい。


本来は生者や死者関係なく、輪廻転生する側が死神と関わる必要などない。

彼女が自分の今後のことに対して、死神の議題を問題視すること自体がおかしな話。


それなのに今の彼女は、自分の人生を選ぶ前に、死神側の都合を知らなければならない位置にいる。

その状況自体が、既に歪だ。


それもこれも、あの時の問題のせい。


彼女を死神の世界に連れて行ったことは、アリスの肉体を見つける上で採用したけれど・・・


終わったことを嘆いても仕方ない。


歪んでしまった順番を、できるだけ元に戻す。

今は、次に向かって進める。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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