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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第一部 第二章 交わる影、揺れる心
101/122

答え:李下に冠を正さず

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

ガーディ・エバンズ元議長。


過去イヴの問題時に責任者として動いていた人物だが、現在はその席を下り引退している。

だが、わざわざ今ここに来るという事は、アリス・フォーラスの件だろう。


そのガーディに呼ばれ、死神の世界の彼の執務室に入る。


「…座りなさい。君と話すのは久しぶりだな。」

「あまり長居するわけにもいかないので、要件を伺います。」

「はは。相変わらずだな、君は。」


この男もあまり変わりがないようだ。

上層部のバレン同様に赤いスーツを着こなし、ネクタイも歪ませずに。

まるで完璧に出来上がったマネキンのようだ。

呼吸だけが、辛うじて人間だと教えてくる。


「では率直に言おう。

現在の上層部は、前回の会議でバレンが持ち上げた案を覆すための材料集めに必死なようでね。」


ガーディの視線がテーブルにある書類に向く。

見ろという事らしい。

それを手に取り目を落とす。

議事録か報告書か、アリス・フォーラスに関する会議内の様々な提案詳細とその案に対するやりとりがまとめられている。


多種多様、中には意味が分からない方針案が連なる中で、可決に進みつつある大きな方針の内の一つに目が行く。


――暫定方針案

以下を現アリス・フォーラスへ直接的な確認を行う。

・魂の帰属判定の為、本人の意向。

・前問題(2番目のwalker回収)後の完了確認の為、その意思の確認。

・倫理的配慮の認識について、本人の意向。


「・・・これを本人に確認する事については、彼女の管理者である私が認めない。」


これは一見すると、アリスの意向を汲む方針案のように見える。


――だが、実際はその逆。


助ける為の方針案ではなく、アリスに問題があると判断する材料を得る為の方針案。

つまりこの方針が通り、彼らがアリスに直接確認した場合…

彼女が喋った瞬間に全てが終わる。


彼女に選ばせた瞬間に・・・彼女の逃げ道がなくなる。


「その方針を進めるかどうか、今まさに上で判断を待たせていてね。」

「・・・条件を聞く。」


ガーディは確かに要件を伝えてきた。

つまりこの方針案を否決させたかったら、何か条件、あるいは報酬を寄こせと。


「相変わらず話が早くて助かる。私からの提案は3つある。そのうちのどれを選ぶかは君次第だ。

1つ目は君が知っていることを、公式には“語らない”こと。ただそれだけだ。」

「・・・明確に。」


ガーディが言う事はこうだ。

・フォーラスの4001~4014年の実験について

・アディール・クラーレンの記憶という観点からの魂の扱いについて

・山本梓とアリス・フォーラスに関する死神の介入について


つまり、今のフォーカス家とあの男の問題を、仮に私がすべて調べ上げたとしても、歴史には残すなということだ。

時間の流れと一緒に、なかったことにして消せということ。


それは私達の存在に対しての否定とすら感じる。

そして、過去の問題を見なかったことにして未来に繋げない行動は、過去の被害者や犠牲者に対しての冒涜行為だと…


――つまり、私は嘘つく事になる。


「残りを確認する。」


「2つ目は次にこのような問題が起きた時、あの時の様に“別の誰か”を差し出せ。」


誰か・・・その指定はない。

つまりそれが死神の裏切り者だろうが、無関係者な人間だろうが・・・私だろうが、誰でも良いという事だろう。


今回この条件をのむ事は今後の死神の観点からは、「前回と同じ選択肢を選んだ」として扱われる可能性が高い。

つまりこの一度で済むと考えるのは、あまりに楽観的な予想になる。


――今後問題が起こるたび、喉元を締める見えない首輪。


「3つ目は簡単だ。次にwalker案件が起きたら、君は死神側に立て。」

「・・・・・。」


3つ目は今の問題への回避としては、最も選びやすい選択だろう。

だが、未来の問題が起きた時には、私の選択を私自身が選べなくなる。


この三つの選択肢は、どれを選んでも何かを失う。

あるいは、何かを壊す。

まさに死神側の元管理者である、ガーディならではの条件だろう。

ここで基本世界の正しさを選ぶことは不可能…


そして、この選択肢の中で、私に背負える選択肢は実質一つしかない。


「本当はゆっくり選ばせてあげたいのだけど、現在の議長ではない私では残念ながら、待ってもらえる時間は長くない。

彼らが短気というのは、君も良く分かっているだろう?」


それも分かって、わざとこのタイミングで会いに来たのだろう。


だが、言う通り今ここで答えなければ…

何も選ばないという選択が、一番残酷な結果を生む。


彼女から最後の選択肢まで奪うべきじゃない。


そう・・・


喉の奥が固くなる。


私が黙れば済むのなら、それが・・・それでいい。


–コンコン


「ガーディさん。あ。すみません・・・お客様でしたか。」

「構わないよ。どうしたんだい?」

「・・・議長が・・・あの。」


わざとらしい演出。

この男は私に選ばせる気なんて最初からなかった。


「ガーディ。」

「・・・おや。もうすぐ向かうとだけ伝えてくれ。」

「・・・・・分かりました。」


–パタン


扉が閉まり、再び空間を支配するものが二人分になったところで


――条件を口にする。


反論はない。

ある筈がない。


「…なるほど。」


声は低く、感情はない。

淡々としたままガーディは続ける。


「君はいつもそうだな。一番こちらが困らない答えを選ぶ。」


こいつのシナリオ通りだという事は分かっている。


「管理する側としては、非常に扱いやすい。」


ここで初めて、ガーディは少し笑みを見せる。


「黙る人間は、いつの時代も長く生き残る。きみは・・・」

「これ以上用はないなら、この件はこれで終わりだ。」


「…あぁ。もちろんだ。彼女からは手を引くように私も助言しよう。

約束は守るよ。……我々は死神だからね。」


――その後


暫定方針案の可決内容については、改めて書類を起こすということだったので、立ち会い確認の上、大まかな流れはバレンの案を元に進めていく内容である事を確認。

そして、山本梓の魂の回収立ち合いについても、現在やりとりをしているガルシアと引き続き、調整を進める流れで問題ないという事を確認。


あの時と同じく、ここがまた重要な部分になる。

後から妙な言い訳で話を戻されないよう、全員の認識を一つずつ確認していく。

そんなこんなと色々な確認を重ね、正式な書類送付は後日送ってもらう事が決まった事で、やっと帰宅に進む。


「スズ。」


「…バレンか。」

「・・・ガーディと何があった。」


建物を出て、帰ろうとしたところでバレンが後ろから追いかけてきた。


「何も。」

「…まぁそう答えるだろう。何かあった事は予想がつく。」

「ガーディの傍にいるものには注意を。」

「…分かった。」


この場で納得できる回答が得られない事は、バレンも分かっているだろう。

そして、このタイミングで死神側で危険視するべきなのは、こういった大きな動きの時の小さな見逃しだ。

裏切りサイドなら確実に動く場面になる。


バレンにも伝わったようだ。


そうしていつもの通路をくぐり、ようやく相談所の扉を開いた。

まだ空気は暗いままだが、窓の外には朝の明るさが滲んでいた。


「スズ」

「・・・外にいたの。寒そうだ。」

「うん。結構寒いよ。おかえり?」


1階に上がるとアリスが玄関から入って来た。

出かけていたことを知っているという事は、恐らくは私がどこに居たのかも知っているのだろう。


「・・・・ねぇ。聞いても良い?」


彼女が聞きたいことは分かっている。

ここで正直に答えようものなら、さっきの選択は全部ご破算だ。


「今はまだ、話す段階じゃない。」

「・・・今はって、どういうこと?」


優しく言えば、彼女は協力を望むだろう。

だが、ここで彼女との間に区切りをつけなければ、意味がない。


そうか。


私は・・・また同じことをしているのか・・・


「これは、私の側の問題。」


そう。

彼らの視点は、結局のところwalkerに対してイヴをどう処理するか、そこにある。

梓とアリスはその被害を被った人間ということではあるけれど、彼女達がその責任を負う必要はない。


今の言葉で彼女が傷ついたことは、表情も、手の動きも、仕草の一つ一つも全部語っていた。


「……そっか。」


あの時のフィーと重なる。


『スー・・・』

「スズ・・・」

『「・・・私、邪魔?」』


そして、再び同じ言葉で返す。

今度は逃がすためじゃない。

突き放すために。


「今は、そう思ってくれていい。」


――私は黙る事を選んだ。


つまり、もう彼女に対して今までと同じではいられない。


私はアリスには何も語れない。


それはつまり、彼女に疑われる未来を、私が受け入れたということだ。


だが、彼女はフィーじゃない。

いつか謝りたいなんて…

前に一度アリスに対して思った言葉が再び現れる。


謝る資格があるのかも分からない。


――合わせる顔がない

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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