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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第一部 第三章 理解は救いにならない
102/121

疑問:何で?どうして?

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

「スズ」

「・・・外にいたの。寒そうだ。」

「うん。結構寒いよ。おかえり?」


玄関の扉を閉めると、冷たい空気が一緒に室内に入り込んだ。

手の感覚が少しだけ鈍い。


出かけていたのは、分かっている。

どこに行っていたのかも、さっきガルシアさんから聞いた。


でも――


「・・・・ねぇ。聞いても良い?」


聞いた瞬間に、少しだけ胸の奥がざわつく。

たぶん、聞いてはいけないことなんだろうなって、どこかで分かっているのに。


スズは一瞬だけ視線を伏せた。


「今はまだ、話す段階じゃない。」

「・・・今はって、どういうこと?」


言葉は静かで、拒絶された感じはしないのに、どこかで線を引かれたのが分かった。


ああ――きっと、そういうことなんだ。


スズは、優しく言えばもしかしたら、一緒に考えさせてくれる。

でも、そうしないってことは、ここは踏み込ませない場所なんだ。


「これは、私の側の問題。」


その言い方は責めているわけでもなくて、ただ事実を置いただけみたいな声だった。


分かる。


分かるけれど・・・


胸の奥に、触れたくない温度だけが残る。


私は関係ないって、そういう意味じゃないって分かっているのに、それでも距離を感じてしまうのは、どうしてなんだろう。


「・・・そっか。」


それ以上は、聞かなかった。

聞けなかった、の方が近いかもしれない。


「スズ・・・・・・私、邪魔?」


何を聞けば、スズの考えていることに触れられるのか分からなくなって、口から出たのはそんな言葉だった。


「今は、そう思ってくれていい。」


・・・そう。だよね。


私が入って、どうにかできることなんて、きっとほとんどない。


それは分かっていたはずなのに。


スズにそう言われて、声をかけたのは私だったのに。

次に何を言われるのか聞くのが、少し怖くなった。

顔を見れなくて・・・ついそのまま、また外に出てしまった。


「・・・・。」


スズには、スズができることがある。

でも私がそこに口を出していいのか、手伝えるのかも分からない。

改めて、それを実感したような気がする。


だからもし、スズも本当にイヴさんに会いたいと思っているのだとしたら――


きっと私は、ここにはいられない。


フィーさんの望み通り、本当にイヴさんが戻ってきたら――


きっと私は、消える側なんだと思う。


私にとってはそれは・・・その先に、自分がいないような気がして。

けど、そもそも私はアリス・フォーラスとして死んでいるんだから、本来はそれが普通で――


そう望む人がいるなら――


そんなの、直接私に言えるわけがない。


スズは優しい。


「アリス。落ち着いて。」


「・・・。イザベル。私は今・・・」


落ち着いて?


別に焦ったり、混乱している訳じゃないと思う。

でも、何でだろう。


涙が・・・


「・・・アリス。もう一度落ち着いて話をするべきよ。」

「っふ・・・。話って・・・。だって、私が知る必要ないって・・・言われちゃったんだよ・・・?」


「・・・聞いてたわ。でもアリスっぽくなかったわ。それに、まだ話せてないこともあるでしょう?」


私っぽくない?

話せてないこと?

なんだっけ・・・?


私、スズに何を聞きたかったんだろう?


足元に広がる雪に交じって、涙は、雪に触れてすぐに形を失っていく。

顔は熱いのに、手や足は冷え切って温度が抜けていく。

それなのに、今は相談所の暖かい空気の中に戻るのが、なんとなく嫌だ。


「イザベルは。どうするの・・・?」


「・・・私はアリスの味方よ。どこにも行かないわ。」


でも、それはお母さんに頼まれた事で、私がもしイヴになったらそのままイヴと一緒にいるってことなのかな・・・?


そんなこと、イザベルだって直接は言えない・・・


「そっか。」


私って、一体何なんだろう?


数か月前は、山本梓として普通に生きてたのに、結局はブライアン・フォーラスが言った通り、今はアリス・フォーラスとして生きてる。

山本梓は、19歳の時に死んだ。

死神との話の中でも、山本梓の魂を先に死神に帰して、私はそのまま生きるという話がバレンさんの提案だった。


それって、本当の山本梓さんからしたら――きっと、ひどく迷惑な話だよね。


偶然私の方が肉体を得て、生きてしまったからただ生きているだけ。


もしかしたら、逆だってあり得たのかもしれない。


もしも私の人生を別の人が生きて・・・


勝手に魂を回収されてしまったら・・・


それはきっと凄く・・・


「まだ外にいたんですね、寒くないですか?」


声に振り返る。


さっき会った交渉人の、確か、リュースさん。

用が終わったのか相談所の玄関から出てきた。


「……なるほど。」

「え?」


「あぁ。いえ、すみません。気にしないで下さい。」


少しだけ視線を逸らして、リュースさんは苦笑した。


「交渉人の癖でして。つい状況を考えてしまうんです。」


「?・・・今は外にいたかったので。ご用は終わったんですか?」

「はい。ちょっとした情報交換だったので、これで終わりですので、よければどこかでお話しましょうか?」


そうだ。

さっき、そんな話をしたばかりだったのに。

少し前の事なのに、そんなことも抜けてしまっていたらしい。


「相談所の中だと、落ち着かないでしょう?」

「・・・はい。」


リュースさんは、そういうと庭の正面に向かって歩いていく。

私は黙ってついて行く。

イザベルも何も言わない。


今日初めて会った方だから、どんな人かもあまり良く分からないし、どこへ行くのかも分からない。

でも今は、少しの時間だけでも良いから、相談所から離れる理由が欲しかった。


庭を出るのは、先日電車に乗る為に、みんなと電車で移動した時以来だった。

外に出てしまえば、本当にそこは私の知っている普通の場所。

数か月前まで私が山本梓として生きていた場所。


それなのに、たった数か月で鏡一枚挟んでしまったみたいに、別の世界に見える。

出勤時間に合わせて、今は色々な人が行き交っている。


みんな自分の人生を生きている。

誰かの人生を生きているなんて人は、多分この中にはきっといない。


「ここに入りましょう。時間帯的に座っている人は少なそうです。」


「・・・はい。」


リュースさんについて案内されたお店の中に入ると、入った途端に暖かい空気と一緒にコーヒーの匂いが漂う。

お店の方が笑顔で挨拶してくれて、明るい雰囲気と忙しそうに動き回る活気を感じる。


懐かしいなぁ・・・


「僕が一緒に注文しておきますよ。何が良いですか?」

「えっ・・・あ。すみません、なんでも大丈夫です。」


奢ってくれるリュースさんの言葉に、自分で注文しようと思ったけど、そういえばお財布なんて持って来てなかった事を思い出す。


何にも考えずに、ついて来てしまった。


「分かりました。じゃあ、席をお願いしますね。」


「・・・すみません。分かりました。」


リュースさんは気にする様子もなく、レジの方へ向かっていってしまった。

私も立っていてもしょうがないので、座れそうな席を探しに行く。


といっても、朝の出勤時間は座っている人が少なかったので、席はすぐに見つかった。


「・・・・・。」


周りをあまりじろじろと見る訳にもいかないので、静かに席で待っているとリュースさんはすぐに戻って来た。


「どうぞ。」


「・・・すみません。今度お返ししますね。」

「コーヒーの一杯ぐらい気にしないでください。イザベルさんには流石にここでコーヒーをごちそうする訳にはいかないので、またの機会に。」


「・・・ニャア。」


そうだった。

イザベルは、ここでは流石に普通に喋っちゃダメだよね。

そういえば猫連れて入って大丈夫だったのかな・・・?


「大丈夫ですよ。ペット可です。」


「・・・何か色々すみません。」


リュースさんのような、会ったばかりの人にすら私の表情は分かりやすいらしい。


「それで、死神についてでしたか。」


「・・・あの。その前に、スズについて聞いても良いですか?」


そうだ。

リュースさんには、死神について聞きたいって事で声をかけたんだ。


でも、今すぐにそれを聞く勇気がでなかった。

つい別の話題をと思って、さっきまで考えてたスズの事が口から出てきてしまった。


「スズですか?」


リュースさんは、不思議な表情をする。

改めて、リュースさんを落ち着いて見てみる。

雰囲気はやっぱり男性にも女性にも近い中性的な人。

柔らかい感じは、どこか薫さんのような感じもする。


「えっと・・・。リュースさんは元々スズの知り合いなんですか?」

「まぁ。知り合いというか基本世界で交渉人をしていると、嫌でも知り合いになると言いますか。

基本世界のトラブルについては、彼女の方が詳しいので、配属されたばかりの交渉人の殆どは、最初はスズの世話になる事が多いと思いますよ。」


「そうなんですね。」

「僕の場合も、カイルとほぼ同じころに配属になったんですが、彼女にはそれなりにお世話になってきましたね。」


なるほど。

基本世界からの、魔法世界や怪異の世界の他の世界トラブルについては、少し前の様に急に相談が相談所の方に来ることもあった。

そんな風に、基本世界にいるスズの方がある意味では交渉人よりも、トラブルの対応方法に詳しいのかもしれない。


魔法の世界でも怪異の世界でも悪魔の世界でも、この間の獣が多い世界だって、そう。

多分スズなら、私よりも遥かにどの世界に連れていかれたとしても、どうすればいいか分かっている。

それに、walkerの通路が使える場所があれば、自分で帰る方法も持ってる。


そんなスズと私とでは、できる事や分かる事の量なんて、比べるまでもない。


「…スズは知りすぎていて、一人で大抵のことは何でもできるから、逆に困りますよね。」


「・・・はい。」

「だから、分からない側は、どうしても置いて行かれがちです。」


少しだけコーヒーを飲んでから、リュースさんは続けた。


「悪気はないんでしょうけどね。・・・優秀な人ほど、周りが見えなくなることもありますから。」


・・・そう。

私はまだ、スズの事をほとんど知らない。


リュースさんの言葉は、きつい言い方でもないのに、すっと胸に刺さった。


「凄く分かります。僕も自分の力不足を、いつも思い知らされますよ。」


そう。

私が何もできないのに、スズは何でもできるから、どうすればいいか分からなくなる。


「そういう時、どうしたら・・・良いんですかね。」

「そうですねぇ。」


リュースさんは、少し悩みながら上を見上げた。


「全部を相手に任せないこと、ですかね。

分からないまま待つより、自分で確かめた方が、少なくとも“自分の答え”にはなります。」


「・・・自分で?」

「はい。相談するのは簡単なんですが、まずは自分でやってみないと、やっぱり納得できない事も沢山ありますから。」


確かに、それはその通りかもしれない。


全部相談するのではなく、まずは自分でやれるだけやって、やれるかどうかも試してみないと、分からない事も納得いかない事もきっとある。


今はまだ知識も使い方も曖昧だけど、アルファーさんやイザベルからも魔法について教わって、何となくだけど分かってきた事もある。

それに、相談所に来たばかりの数か月前に比べれば、他の世界についても、少しは分かってきた・・・と思う。


「そうですね。それは私もそう思います。」

「まぁ僕でよければ、いつでも相談に乗りますよ。スズやカイルさんは、既に経験豊富な方々ですからね、経験が浅い者同士気軽にどうぞ。」


経験が浅い者同士。

そう言ってくれるリュースさんの存在は、確かにありがたかった。


「ありがとうございます。」

「一応これが、僕の連絡先です。仕事中とかで、連絡が取れない時もありますが、いつでも連絡ください。」

「あ。ありがとうございます。」


確かに、一人であのまま考えていたって、何も答えは出なかった気がする。

偶然とはいえ、今日リュースさんとお話できてよかった。


「いえいえ。スズやカイルさんには、相談しづらい事もあるでしょう?」


リュースさんが微笑む。


「そういう時は、僕みたいな外の人間の方が楽ですよ。」


確かに、相談所以外で気軽な話ができる知り合いは、あんまりいない。


「そういえば死神の事については、どうしますか?そっちも何か気になる事があったんですよね?」


「あー・・・少しだけ、考えてみます。また連絡しても良いですか?」

「分かりました。僕はいつでも大丈夫ですよ。」


このまま死神の事について、聞くこともできそうな気がするけど、自分でももう一度考えてみて、それでもまた悩みそうだったら、リュースさんに聞いてみればいい。


誰か聞ける人がいるだけで、ちょっと落ち着いて考えられるような気がする。


話ができて良かった。


「さっきより顔色も良くなっているようで良かったです。じゃあ僕はこの辺で、仕事に行かないといけないので失礼しますが、アリスさんはゆっくり戻ってください。」

「あ!あの、今日は急にお忙しいところ、本当にありがとうございました。」


そう言って、リュースさんは静かに立ち上がって出口へ向かう。


店を出る直前、リュースさんは一度だけこちらを振り返った。

私と目が合うと、柔らかい笑顔を見せて軽く手を振る。


そのまま、人混みの中に消えていった。


・・・そうだよね。


全くリュースさんの都合をお伺いしてなかったけど、次の仕事があるのに私の為に時間を取ってくださっていたんだろうなぁ。


「・・・ニャ」

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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