祐一の嫌がる理由
「つまりは他の4人が来てほしいって言ってるって事ですよね」
祐一がものすごーく微妙な顔になったのに、その場の全員が気がついた。
「うんまあ、そうなんだけどね。当然ディレクターとか脚本家とかその辺りも祐一君には会いたがってるよ」
「でも、俺はあの人達にはあんまり会いたくないんです。特に主役連中には。向こうはどういうつもりで俺と会いたいのか理解出来無いです」
祐一、渋面が凄い・・・
「仲が悪かったんですか」
祐一の表情を見て、心配する麗奈。
「仲悪いっていうか」
高崎もびっくりした顔になる。
「え、仲悪かったっけ?」
「兎に角、彼奴等にはニ度と会いたくないですね」
「もう言っちゃったら〜? なんで兄貴はそこで我慢すんだよ〜」
祥三がシロを撫でながら高崎を睨む。
「兄貴は彼奴等に嵌められて喰われそうになったんだよっ! だからこっちの芸能界にはいい印象がないのさ」
×××
祐一はまあ、顔もスタイルも良かったし、性格も昔は素直で純情だった。
芸能界に身を置こうという興味もなく番組終了後には一切ノータッチで生きて行くつもりでいた。だからなのか、他の4人から見ると余裕があるように見えたのかもしれない。
番組の最終話を取り終えた日に、打ち上げと称して他の4人に誘われてホテルの個室で飲み会をすることになった。
「これで最後だな、って思ってノコノコ行った俺も甘かったんでしょうけど」
そこで飲まされた酒に何やら仕込まれたらしく
「まあ、かぜ薬辺りですかね? 変に苦味ったですから」
気分が悪くなり目が回ってしまい、そのホテルに泊まっていくように言われたらしい。
「でも、なんかおかしいって思ったんですよ」
まあその辺りは忍者の勘であろうか。
真夜中過ぎに大物俳優が部屋に現れたのだが、その直前に祐一はその部屋からトンズラして、窓の外から一部始終を見たのだという。
「そいつが、電話をかけて約束が違うって言ってたんですけど、直ぐにホワイトとレッド役の奴らがやってきて、俺に薬は飲ませて確実に泊まった筈だって言い訳してましたね」
昔の番組の出演者の醜聞を聞かされた高崎は真っ青である。
「2人は探してこいって言われて出ていきましたけど、そいつは残ってそのまま電話をして、推薦は取り消すからって4人の名前を告げてました。ああ、俺の身体を売って彼奴等、仕事を回してもらおうとしたんだなって気がついたんですよ。俺の携帯が部屋で鳴ってたけど、その俳優が出てましたね。いるわけ無いだろうって怒ってましたから、多分4人のうちの誰かでしょうね」
祐一は肩を竦めた。
「翌日、携帯は警察に紛失届けを出しておきましたけど、帰って来ませんでしたね。まああの4人の番号とスタッフ以外の連絡先は登録してなかったので。それとクランクアップ後には処分するつもりだったんで、携帯はどうでもいいんですけどね」
麗奈が心配そうに、そっと隣の祐一の手に自分の手を添えると、その手を祐一はギュッと握った。
「取り敢えず俺は無事でしたけど、なんで彼奴等が俺に会いたがってるのか訳がわからないですね」
高崎に向けられた祐一の目は冷たかった・・・
×××
「高崎さんも全然知らなかったんですね」
麗奈は祐一の様子を助手席から伺う。
「あの人は知らないね。彼奴等が勝手に俺を餌にしようとしただけさ。ちゃんと調べたから分かってる」
「調べたの?」
美奈が後部座席で驚いた声を上げた。
「美奈ちゃん、俺たち忍者だよ」
呆れた声で祥三が隣に座る美奈に言う。
「そんなの朝飯前だよ」
「ワン!」
「そっか・・・。でもさ、私達は祐一さんと、あの番組に支えられたけどさ、中でそんな事があったって知ったら複雑な気分だよ」
美奈が困った顔になる。
「まあ、俺は彼奴等と違って芸能事務所がバックに無くて、スタントの養成所の推薦だけで、高崎さんが直接連れてきた素人だから、やっかみもあったんだろ」
祐一が、ため息交じりになってそう言うと、祥三が
「他にも色々あったんだぜ、俺は知ってるから」
「コラ」
祥三の言葉に慌てて祐一が反応する。
「なになに? 教えて!」
美奈が、雰囲気を読み取ってちょっとだけはしゃぐ。
「ホワイト役とピンク役が兄貴を取り合って毎回喧嘩になったりさー、レッド役の奴が兄貴にヤキモチ焼いて嫌がらせしたり、ブラック役が年中無休で兄貴に朝起こされてたり・・・」
「あ〜もう、止めろ」
「成程。Ninjaグリーン様以外はアタシにとっては糞だった理由が、今日分かって良かったわ」
美奈がいい笑顔で言った。
「やっぱ子供心にさ、この人がヒーローだっ!って、涙流して感動したの間違いじゃ無かったよ。まあ、他はカ●って本気で思ったのも間違いじゃ無かったんだけどさー・・・」
美奈・・・やっぱり辛辣だと思うのだが、惚れてしまうとその辺りは全て『カワイイ』に変換されてしまうのが神谷の男の性なのか、全くもって気にならない祥三。
『美奈ちゃん! 怒った顔もやっぱり可愛い!』
とまあ、頭の中は兄の祐一と一緒で、お花畑一面に花が咲いているようだ。
・・・実に平和である。




