其れが問題だ
「じゃあ、人前式にするの?」
美奈が、祐一の持ってきた手土産のチョコレートを摘みながら、へえ~という顔になる。
「そのままハワイで挙式するかと思ってたよ。やべえ水着新調しなくちゃって思ってたわ。でもまあ神様ねえ〜言われたら確かに・・・」
コッチの神様ルールに振り回される身としては、わからない事も無いな、と思う美奈。
「じゃあ、8月まで待たなくても、さっさと籍入れちゃって一緒に住んだらいいじゃん。でさ、パーティーだけでオープンのビュッフェとかで知り合いだけ呼べば? 先生も今ならドレス位ちょいちょいで作れちゃうしさ〜」
木田が苦笑いをしながら
「そうだねえ、最速で1週間てとこかな。余裕を持って2週間かな。麗奈ちゃんは美奈と体型がほぼ同じだからね。美奈のトルソーが使えるからね」
「先生、そこまで頑張って頂かなくても・・・」
麗奈が慌てて止めに入る。
「会場を自分達で探すか、代理店のプランナーさんに任すかってとこで止まってます。実際俺の里で人前式やっちゃったんで、あっちはさっさと婚姻届を出してこいって感じですね」
「何ていうか凄いね、君の実家」
木田は呆れ顔だ。
「いえ、もう実家だけじゃなくて地域全体がってことです。爺婆が偉くって・・・」
遠い目になる祐一。
「でもまあ、麗奈さんが、ウェディングドレスも着たいんじゃないかなって思って」
「君、マジでよく売れ残ってたね・・・その顔とスタイルで、中身もイケメンとか・・・」
木田が、珍獣を見るような目で祐一を見る。
「は?」
「祐一さんてさ、普段ダサい眼鏡で顔を誤魔化してるんだよ〜だから目立たないんだよ先生。メチャクチャダサいんだから」
「えー、そんなことないよ。だって私、祐一さんがその眼鏡かけてる時に一目惚れしたもん」
麗奈が非常に不満そうである。
「ほらあ、この程度だもん!」
いきなり、祐一の胸ポケットから、歪んでしまった黒縁眼鏡を引っ張り出す。
「「・・・・」」
「麗奈ちゃん、凄いね。超能力者だったの?」
木田が、なんとも言えない顔でそう言った。
×××
「それよりさ、結婚式に誰を呼びたいかって事も大事だと思うんだよ」
木田が考え考え、そう言った。
「ウ~ン、お姉ちゃん友達皆外国だしね。こっちだと会社の同僚くらいじゃないの?」
美奈は大学はイギリスに留学していた。
日本より目立たないので誘拐の危険が少ないという理由である。
俗に言う木は森の中に隠せというヤツだ。
アチラはハーフの子供などは意外に多く、美奈の容姿は普通に受け容れられやすい。
「俺の方もそんなもんだね。秘書室の皆と桜田と大塚部長位かな? 里の連中は呼ばなくても勝手に覗きに来るし。後は家族かな? 弟が前回はいなかったし」
「あー、3番目の祐一さんに似てるって噂の?」
美奈が、クロを撫でながら考える。
「俺、っていうか母親似だね。今は、アメリカ。もうすぐ夏だから帰ってくるけど。犬連れて留学してる」
「「「は?」」」
何だか変わった弟君のようである。
「じゃあさあ、どこでもいいんなら、ウチでやっちゃう?」
木田が急に言い出した。
「麗奈ちゃんと美奈は僕にとっては娘に等しいくらいなんだよね。だから特別にここで人前式やっちゃう? ガーデンウェディングもいいし、ここの4階はホールだからさ」
美奈が、ニコニコしながら、
「あ、そういやそうだね。先生の家って4階が写真スタジオとホールなんだよね。ショーのリハーサルする場所なんだよ」
と、クロをムギュっと抱いくと
「ニギャッ!」
と、黒猫が驚いた様な声で鳴いた。