女神効果と厄払い
「何だかトントン拍子で決まってないかな?」
帰りの車の中で、祐一が麗奈に言う。
「祐一さん、わかってないな〜これが女神効果だよ〜」
後部座席に座る美奈が呆れた口調でそう言った。
「最近さ、タイミングいいなーとかさ、やたら人気が出たなー、とか、ツイてる! って思うこと多いんじゃない?」
ニヤニヤする美奈。
「そういえば・・・増えたかも知れない」
「アタシやおねーちゃん、勿論ママは当たり前なんだけどさ、こう、何ていうか身内になるっていうのかさ、信頼関係が出来るとこっちの人の運みたいなもんが変わるみたいなんだよね、気がついたのは随分前なんだけどさ」
「そういえば、そんな気がするわね・・・」
姉を呆れ顔で見る美奈。
「お姉ちゃんは、昔っからボーっとしてるから、よく拐われそうになってたけどさ、あれって欲の深い連中がどうしても手に入れたくなっちゃう、『魅力』みたいなもんでさ、」
美奈が、言うには彼女達には女神の祝福のようなものが生まれつき備わっていて、彼女達に気に入られると強運になるらしい。
アイーシャはなにも言わないが、彼女と隼雄が結婚してから会社が急成長を遂げたらしい。其れは祖父である辰夫が気が付いたという。
木田も美奈と専属契約してからあっという間に有名デザイナーになったという。ミューズというのもあながち嘘では無いとのこと。
祐一も今は秘書室勤務で定時上がりの花形職だが、麗奈に出会うまでは名前ばかりの役職付きでサビ残続きで平社員よりブラック勤務だった・・・
うう~ん。思い当たる節があリすぎる・・・
ただ、全ての運が一気に変わるため、その分トラブルと思えるような事も増えるらしい。但しその場合も個人の処理能力を上回るようなものはやって来ないと言う。
「まあ、幸せが増える分、厄払い的な出来事が増えるって感じだと思うよ」
美奈によると、木田も結構な頻度でトラブルに見舞われたらしいが、トラブルを解決する度にどんどん名声が上がったらしい。
父である隼雄も同様で、曽祖父の代は小さな商店を家族でやっていたのだそうだ。
「でもね、元々運が悪いっていうか、努力しないっていうのかなあ、妬みとか嫉みが多い人が問題でさ、そういう人って私達みたいな恩恵を与える連中を自然と見つけて捕まえようとするらしいんだよね。そのせいなのか、お姉ちゃん小さい時によく誘拐されそうになってたんだよ」
美奈は麗奈を見て育って来たため、簡単には人を信じなかったらしい。
「お姉ちゃんお人好しでさ、困ってる人をほっとけないんだよね。私が止めても全然耳を貸さずにさー、見ず知らずの人を道案内したり、お遣いしてみたりして、私がどんだけ走り回って助けてたか・・・」
昔を思い出したようで、突然目が座った美奈。
「私が『狂犬』て樹叔父さんに言われるようになったのだって、元を正せばお姉ちゃんのボケをカバーするためだったんだからねっ!」
「ごめんなさい・・・」
真っ赤になって、謝る麗奈。
「まあ、今はさ、祐一さんが守ってくれるし。後さ、祐一さんのお陰でお姉ちゃんも強くなってると思うんだよね〜」
「「?」」
「会社の祐一さんのファンの女子社員をやっつけてるらしいじゃん! それって昔のお姉ちゃんではあり得ないことだからね~」
足りない部分を補い合う相手だという証拠だと美奈は言う。
「運命の相手って事よね〜」
ニヤニヤ笑いの美奈の膝の上でクロが
「ぐるニャアーン!」
と鳴いた。
成程な、そういうことかと聞けば聞くほど納得出来る。
「そういえば、昨晩の玲子さんの事もそうですよね。昔の私なら、きっと何もできずにオロオロするだけだったかも」
「え、何? 何かあったの?」
×××
「何だよ、その先輩ってヤリ●ン野郎。元サヤ女もそうだけどさー。ソイツが1番の糞だね! でもさー、その玲子って祐一さんの元カノもどうかと思うんだけどさ、桜田って人が焚き付けたってわけでも無いんだよね〜? じゃあさあ、玲子さんて人、多分ずっとコレじゃ駄目だってどっかで思ってたんだよきっと」
祐一と付き合っていたのに二股を掛けた玲子は因果応報で二股をかけられた。
祐一が麗奈と幸せになったために、細く繋がっていた玲子と祐一の縁が完全に切れた。
そのせいで不安定になった繋がりは玲子と先輩の縁に歪みを齎し彼氏は元サヤに戻るという行動に出た。
すると煽りを喰らった形になった玲子は安定する為に自然と祐一と元サヤに収まろうという行動に出るがその席には既に麗奈がいて、入れない。
あぶれた状態の玲子の魂は自立せざるを得なくなる為、悪縁である今カレだった先輩との縁を断ち切る事になる。
「綺麗に縁が全部切れたから、今度は良い人が現れたら良いけどね。でもまあ、ずっと独りがいいやって思えるようになるまでは良いご縁はないだろうね〜」
ヘラヘラ笑う美奈。
「どうしてそこまで詳しいの美奈ちゃん?」
「ああ、私はずっとお祖父ちゃんと一緒にいて色々教わったんだよね。手のつけられない『狂犬』にならないように理をこの子には教えとこうって思ったんだってさ。ま、お祖父ちゃんはさ異世界だと大賢者だもん。色んなことずっと考えてるみたいだね」
辰夫会長、侮り難しであった・・・




