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転生者はスキル《魔力操作》で楽しく暮らしたい!  作者: 遥響
第一章 転生少女の生きる道

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8話 反省

…ん…、おはよう…かな…?


だんだんと意識が上ってくる。


外から刺す光がだいぶ明るい。結構寝ちゃったのかな?


「!おはよう、お姉ちゃん…!」


「ん?おはよう、ラウル。」


すぐ横から声が聞こえて、そちらを見ると引っ張ってきた椅子にちょこんと座ってこちらを見上げていた。


なんでラウルがここにいるんだろう?


とりあえず頑張って腕を伸ばして撫でておく。


…撫でるのが限界…。


「お姉ちゃん、ずっと寝てたね。」


「え…それは、ごめん?」


ラウルがちょっと首を傾げた。


腕が鉛みたいに重いし体に力が入らない。


というかお腹が空いたな…喉も乾いてるし…。


「ママ、呼んでくるね!」


「あ、うん…」


起きれ…ないよね〜…そりゃ前ですら2日間もまともに動けなかったんだから今度はもっと酷いに決まってるよねそりゃ…。


めちゃくちゃ頑張れば立てなくはない気がするけど今は身体強化すらまともに発動できそうにないから多分すぐに倒れることになりそう…。


奥の魔力の方はなんとか回復しているみたいだからこれが完全回復すれば体に巡る魔力の方も戻りそうだけど…これは下手したらまともに一週間は動けないかも…。


うーんそこそこ蓄え自体はあったはずだから家計崩壊とかはしないはず…。


と、そこで違和感を覚えた。


まって帰った時には相当酷い格好だったはず…。


血と汚れに塗れて服もボロボロ、傷も多くついていた気がするんだけど…体は清潔にされてるし傷も治ってる、というかちゃんと寝巻きになっている…。


…え。


…もしかして、やっちゃった?


ドタドタと階段を上がる音、そして次の瞬間、勢いよく扉が開いた。


「エリヤ!?起きたの!」


「おはよ、お母さん…」


母さんが部屋に飛び込んできた。


目の下に隈ができてて若干やつれているような…。


「…!よかった…生きててくれたのね。もう3日も寝込むなんて…本当に。」


「ごめんなさい、お母さん…。」


抱き抱えられて寝巻きの肩口が濡れた。


「はぁ…とりあえずお水持ってくるわね。」


声が枯れたみたいになってたみたいだ。


ありがたいな…。


というか待って3日?!


3日って言った?!


意識が完全に飛んでる状態で3日…しかももう少し寝て回復を待たないといけないの…?


これは…本当に使っちゃダメなやつ…。


少しまた眠りに落ちそうになって母さんが戻ってきた。


「ほら、お水。ゆっくり飲んで。」


「ありがと…」


こぼさないようにゆっくりコップから飲む。


よく冷えて澄んだ水。


体に染み渡るみたい。


「おいし」


コップを返す。


「あまりに起きてこなくて起こしに行ったら、ベッドで血まみれになりながら服もボロボロの状態のままベッドに倒れ込んでたから本当にびっくりしたのよ。息はあったたから着替えと一緒に体も洗っておいて村で治癒魔法の使えるジェルパに傷はある程度治してもらったけど、2日も起きないままでもうこのまま起きなかったらどうしようって…。」


低い、怒っているわけではない、静かな声が響く。


「うん…」


「本当に怖かったのよ…」


胸がちくりと痛む。


「何があったの?」


「ええと、山でなんか強い魔物に遭って、何とか撒いて逃げ帰ってきたっていう…感じ 。」


「一人で?」


「まぁ…。」


「どうして?」


「それは…」


視線を逸らす。


ちょっと悩んで、こう言った。


「…私が、まだ弱いから。」


母さんは静かに思案げな顔をした。


「…エリヤ。」


「うん」


「あなたはいつも頑張って狩りをしたりお手伝いをしてくれて、本当にいつも助かっている。ラウルやリーファの面倒だってみてくれているわ。」


言葉を切って、母さんは私の頭をそっと撫でた。


久しぶりの感覚だな。


いや、まだ子供だから不思議ではないだけど。


「でも、あなたが先にいなくなっては意味がないのよ。」


「…」


「あなたはいつも一人で生き急いでる感じがするわ。もっと周囲を頼っていいのよ。戦えるのはあなただけじゃない。」


返す言葉がない。


ラウルが不安そうに扉からこちらをのぞいていた。


胸が痛い。


そうだね。


強くなろうと頑張るのはいいとしてもそれで逆に大怪我して心配させるなんて本末転倒がすぎるし世話ないね。


ラウルにだって元気に生きていて欲しいし守りたいとは思う。


リーファのことも思えば村で生きていくこともできるだろうしそこまで悪いことになるとも思わない。


ただ、私には、少し窮屈で、退屈で、生きづらかったんだ。


転生してから早5年。


それでも、どこまで行っても私は私だった。


だから、せめてもの、罪滅ぼしのように。


せめて今だけはと、そう願って。


「……ごめん。」


それ以上は言葉が出なかった。


母さんは息を小さく吐いた。


「今はとりあえずこれでいいわ。一週間くらいはかかるとジェルパは言ってたし、とにかく水を飲んで食べられるだけ食べて、ちゃんと休みなさい。」


「……怒らないの?」


「怒ってるわよ。」


デスヨネー。


「でも叱るのは元気になってからにするわ。」


「元気になった矢先にまた元気じゃなくなりそうな予感」


「当然でしょう。とりあえず今は休むのね。スープ持ってくるわ。」


少し部屋の空気が緩む。


母さんがラウルを抱き抱えて階下に降りて行った。


高く登った日から窓に注ぐ心地よい春の日差しに、暖かさを覚える。


開いた窓から吹き抜ける風が、ちょっと涼しく、心地いい。


私は…幸せ者だなぁ…。


こんな日常が壊れないならいいのに。


それで思い出すのはあの日の異形だ。


あれは明らかに知性を持ってあそこにいた。


こんな村の近くの山の中で。


戦い方は洗練されていて、しかも使う攻撃は生半可な人間を瞬殺できるであろう異次元の存在。


そう思うと、うかうかしていられないという気になってくる。


私は、弱い。


しばらくして階下から上ってくる足音が聞こえてきて、立ち昇ってくるスープの匂いに鼻がくすぐられた。


扉を開けて母さんがお盆を持って入ってくる。


「はい、これね。ゆっくりお食べ。」


「ありがとう。いただきます。」


匙で少し掬って飲む。


…こんなに美味しかったっけ?


グレーウルフのもも肉と塩胡椒のいつものスープのはずなのに、今日は格別に美味しく感じる。


よっぽど限界だったのかも…。


「おいしい!」


「よかったわね。」


今日に限っては爆速で食べ終わったというかまだ全然お腹が膨れてないねこれは…。


「お母さん、もう一杯もらえる?」


「わかったわ。流石に丸二日も食べてなかったらそうなるわよね。よそってくるから待ってて。」


ということでもう一杯もらってあっという間に平らげた。


「ご馳走様。」


「しばらくはご飯になったら持ってくるわね。早く元気になってね。」


◼️


それから丸3日はほぼ寝たきりに近い生活を送ることになった。


魔力がまともに使えないのもあって足に力が入らない…。


私は今までほぼ常に魔力で身体強化をしていてその反動で体が根を上げていたのかも?


身体強化で疲れた体をさらなる魔力で回復して支えるみたいなことをしていたから何とかなってたけど。


魔力残量に応じた安全確保は考えないといざという時命を刈り取られる予感がするから気をつけておこうかな。


起きてから4日目になって、ようやく奥の魔力が満ちてきてまともに体に魔力が巡る感覚を取り戻してきた。


早速前の戦闘で受けた傷のうち侵食で大きく損傷した部分の治癒に集中する。


治癒魔法は自然治癒能力の加速がイメージとして近い気がする。


損傷した組織を吸収し新たな組織で埋め合わせていく。


鈍い痛みを堪えながら魔力で回復させていき一通り確認していく。


…よし。大方受けた傷はこれで元に戻ったかな。


足にも力が入るようになってようやく歩けそうだ。


そして5日目。


「おはよ〜」


「あら、おはよう、エリヤ。結構治ってきたのね?」


「うん。なんとか歩くとか日常生活はできそうだよ。」


「そうか。ようやくお前が元気そうな姿を見られて嬉しいよ。」


「おはよう、お父さ…ん…!?」


突然雰囲気が変わった。


父さんの顔は笑っているがなんか怖い。。


いや、隣にいる母さんもにこやかな笑顔を顔に貼り付けているがこっちも全く目が笑っていない。


「元気になったってことはようやく落ち着いて話ができるということだな?」


父が穏やかな声色で言う。


「あ…」


そういえばお説教は元気になってからって言ってたね…?


「ええ、そうですよね、エリヤ?」


「はい…」


私のお説教タイムが決定した…。


ちなみにこのときのお説教はよく覚えていない。


おそらく人生最大のものを食らったのだと思う。


印象に残っているのは笑顔を全く崩さないまま冷静な口調のまま親心の語りとお説教をする母さんと詰将棋の如く一切の逃げを許さず詰めてくる父さんに対する底抜けの恐怖だった。


本当に、ごめんなさい…。

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