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転生者はスキル《魔力操作》で楽しく暮らしたい!  作者: 遥響
第一章 転生少女の生きる道

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7話 夜明け

呼吸を整える。


冷たい夜風にも関わらず胸の奥は熱かった。


乱れそうな息をなんとか鎮めていく。


傷口がじくじくと痛んで虫が蠢くように不快で粘つくような感じがするけどこれ以上は気にしないことにして治癒を止める。


歯を食いしばって耐える。


魔力障壁を破られた以上守りは意味をなさないのだからとにかく速さと力強さだけが重要だ。


腕と足に力が入って動かせるならそれで十分。


木の陰から出て正面から向き直る。


赫の月光に照らされた異形の姿がそこにあった。


黒い鎧に兜を被る、人の形をしたもの。


しかし鎧からのぞく毛深い四肢と長い尾が人ならざるものであることを物語る。


相手は動いてこない。


こちらを観察する構えだ。


冷静に、見極めるように。


相手には余裕もあるようだしわざわざ正面から戦う道理もないのだろう。


自らの無力に口を噛む。


短剣に魔力を通して構える。


戦いの舞台は整った。


風が吹き森がさざめく。


…いい加減攻めてきて欲しいんだけど…。


「来なよ」


軽く言い放って手を前に出して挑発する。


思ったより声が低く出た。


すると異形の黒の大剣に魔力が集中していく。


さっきと同じ侵食系。


大ぶりな大剣による斬撃が飛んでくる。


魔力刃を横に跳んで避けていく。


前いた場所の木肌が大きく裂けた。


「って嘘!?」


一発で終わりじゃなかった。


二発目、三発目、そのままの勢いで振り回して連続して飛んでくる。


飛んで行った先の木々を切り裂き、バサバサと枝葉が落ちていく。


しかも全部に同じだけの侵食の魔力がこもっている。


木を足場に跳んで、身を捻り、無理なものだけ掠っても侵食を受けないレベルに魔力を固めて無理やり密度で相殺する。


あんなにド派手に攻撃したにも関わらず相手はほぼ損耗なしのように見えた。


3秒に一回飛んでくる魔力刃。


あまりの速さに飲まれていく。


もう5回は掠って相殺にさせられてる。


身に増えるばかりの傷がやはり痛む。


「わっ!」


今度は魔力を込めたまま切り掛かってきた。


短剣を重ねてなんとか受けるが…


重い、重すぎる。


「…ジリ貧がすぎるね。」


後先を考える場合じゃない。


もう賭けにでるしかなかった。


エリヤが勝てる可能性があるとすれば魔法だけ。


目指すは刺突と同時に体内から火炎魔法。


あとは効くか引いてくれることを祈るのみ。


「ついてこられるかな!」


足と右手にほぼ半分の魔力を込めて威力増加に回す。


大剣を弾いた反動で動けないうちに…!


「うわ!?」


半身だけ横に躱された…!


体が体勢を崩してーーーー


ガン!


左手で万が一のカウンターに備えていてなんとか体に受けずに済んだけど、


鈍い衝撃が腕ごと体を貫いた。


「うっ…」


弾き飛ばされる。


背中から木々にぶつかり、跳ね、斜面を転がり落ちていく。


枝が頬を裂き岩に打ちつけた腰が痛む。


天地が何度もひっくり返って幹に全身を打ちつけてようやく止まった。


息が苦しい。


口に鉄の味がひろがる。


それでも、まだ、生きている。


「身体強化が切れてたら死んでた…」


急いでかけ直し最低限の治癒を回す。


こんなところで死ぬ気はない。


魔力はもうほぼ残っていないけれど、まだ使える。


あの日死に際に気づいた、「奥の魔力」。


命の核に指を触れるような感覚を覚え、本能が接触を拒む生命の根幹と思しきもの。


引き摺り出す反動は凄まじいがそんなことは今となってはどうでもいい。


使えるものは全てを。


私を仕留めに上から異形が飛んで降りてくる。


「よっ!」


異形が私めがけて一直線に大剣に振り下ろしてきたのをかろうじて避ける。


それは地面を真っ二つに切り裂いた。


そのまま間合いが詰まってまた斬り結ぶ。


右に、左に、波が如く押し寄せる刃の応酬。


大剣が暇なく迫ってくる。


受け流し、避けて、また避ける。


が近づけない。


2本あるとはいえ間合いは圧倒的に不利。


ブラフでもなんでもいい。


もう使わずに死ぬくらいなら今ここで


「生きて帰るんだよ!!」


意識を保てるだけの魔力をありったけ持ってくる!


凄まじい疲労感と睡魔に襲われるがそんなことは知ったことではない。


このまま永遠の眠りにつく気はないからね!


歯を食いしばり、痛みに意識を繋ぎ止める。


斬り合いの攻防の間でなんとか集中力を集めていく。


魔力を変換し火炎を形成、大きく、宙にとどめ制御…!


宙に浮かぶは5つの火球。


夜の森を静かに照らす。


それらを一気に周囲から飛ばしていく。


「くらえ!」


「****」


異形は引く。


つまり効くっていうことだ!


「こっちが本命だよ!」


炎は囮。


本命の決死の突撃。


私は全力で地を蹴った。


火炎に変換するための魔力を通した短剣を握り炎の陰から一直線に。


これで終わらせる。


せめて届かせる。


距離が縮み、異形の輪郭が大きくなる。


しかし。


異形は大きく後ろに飛び退いて当てることは叶わなかった。


伸ばした剣先は紙一重に届かない。


それでも、異形は追撃してはこなかった。


着地した先で大剣をおろし、静かにこちらを睨んでいた。


私という存在を推しはかろうとするかのように。


やがて


「……******」


意味はわからない。


ただ、その響きだけが妙に耳に残った。


その刹那。


夜の影に溶けるが如く、その姿が消え失せた。


夜風が優しく、頬を撫でた。


今、生きてたっている。


それが全てだ。


「ゔ…」


次の瞬間、押さえ込んでいた凄まじい痛みと眠気を全身に受けて倒れ込んだ。


だめだ、夜に外で寝てしまえば魔物の格好の餌になる。


異形のおかげで周囲の一帯から魔物がいなくなっていたことをあまりに疲れが故に私は失念していた。


とにかく食い殺されるのは真っ平だとなんとか体にいうことを聞かせ、無理を通して歩いて戻る。


一歩、一歩が文字通り死ぬほど重い。


足を前に出すたびに傷が開くかのように痛みと不快感が走る。


息を吸えば胸が痛み、吐けば今度は喉の奥から血の味が戻ってきた。


ぜえぜえと息が切れ、身体中がじくじく痛み、手足は無理な強化で痺れていた。


それでもなんとか山道を戻っていく。


永劫にも思われた苦痛の時間の果てに、ようやく村が見えてきた。


少し空が白んできている。


とりあえずベッドに潜ろう。


もうそのあとは一旦忘れよう。


足を引きずって家に戻る。


階段を登って自分の部屋に入る。


気力がわかない…もう何も考えられない…。


そのままベッドに入ると同時に私は意識を手放した。

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