9話 ぬくぬくのための魔道具
「ちょっと…調子いい?」
深夜、寝室は静かでちょっと初夏の虫の声が聞こえるばかりだった。
そんな中、魔法の淡い光がふらりとひろがる。
火を少し指先から出してみたり、それを窓の方に投げたり、途中で消したり。
家の中の空気を風で循環させたり、自分の部屋の中を高速に吹かせたり。
いい加減夜中に一人で修練に出るのは流石にやめた。
ちょっと危機管理的にも心象的にも色々良くないし。
だから家の中で魔法を発動する訓練を一人静かにするようにした。
そうしてから感じたことがある。
前よりも魔力を変換して魔法として発動するのがやりやすくなった気がする。
より直感的に、思うように動かせる。
悪いことはないように思えたのでとりあえずは気にしないことにした。
ちょっと疲れたので水魔法で水をつくりだしてそれを飲む。
魔法についてはまだまだ気になることは多いけど、今の最優先事項は旅に出たときに必要なものを考えてこっそり揃えておくこと、あといなくなった後も困らないようにするものを作っておくことが最優先かな。
魔物に野盗、疫病、あと地震、暴風とかの自然災害に近いものも割とあるそんな世界で齢10前後の女子が一人で森を抜けていくのだから準備は抜かりなくしておかないと初日にお陀仏しそうだしね。
できれば魔道具とかで必要物資を減らせたりとかできれば良いかな、身体強化ができるとは言え戦闘スタイルからして機動性と休む時間の確保が一番重要になるだろうから。
「そういえば魔力がそのまま魔法になるわけじゃないならいつ魔法になるんだろう。」
魔道具を作ろうと思った時、疑問に思ったのはそれだった。
魔道具は基本魔石で駆動している。
魔石には魔力が含まれているし、そこから魔法が発動するというのはなんとなくそういうものと思っていたが、いざ作る段になるとどう発動するのかの具体的説明について私は一切の情報を持っていなかった。
うーん?
水袋をバラしたこと、そういえばなかったね?
というわけでこっそり水袋その2の方をばらすことにした。
理解できれば自分で作れるはずだし…。
なお魔道具は一個一個割と洒落にならないコストがかかるので村の生活ではかなり腕の立つエリヤが頑張らないと普通に買えないレベルの代物なのだが彼女は失念していたりする。
確か構造としてはそこに小さい魔石が埋め込まれてたと思うんだけど…あった。
ええと…あれ?袋を開いたらずっと水でっぱなしに…壊れちゃった…?
いや、まだだ?!リバースできれば…確かこういう縫い合わせだったからこうして…あ、治った、よかったよかった…。
うーん…?
袋全体に魔力は…ああ、一応纏ってるのか。
ちょっと適当に水を試しに追加してみると…普通に溢れるのね。
じゃあ出してから元に戻すと…うん、水が一定量に戻っている。
じゃあ一気に出して、水を半分くらい魔法で生成したら…ああ、一定量に戻った。
うん、多分袋の中の水の量を魔力を使って測ってて、一定値を割っている限り水を生成し続けるっていう感じだね。
じゃあ測定をする魔法が常時発動してて、不足してたら水を生成する魔法も発動する…という感じかな。
袋を開けてでっぱなしになったのは多分水が満ちてないってことになっちゃったから…。
もう一回開けて水生成魔法が発動されてる様子をもっとよくみてみようか。
縫い目を解く…いや、これは外でやった方が良さそうかな。いくら火魔法と風魔法で乾燥させることができると言ってもドライヤー程度の性能が限界だしね。
というわけでせっかく(?)なので屋根に上がった。
今夜は快晴、蒼月が満ちて、赫月が半分くらいで空に浮かんだ、満点の星空にちょっとした感動を思い出した。
ここら辺はあかりもあまり普及してないから本当に夜空がきれいだ。
首都圏住みだった前世は光害って言われるくらい明るくて、一等星二等星くらいしか印象に残らなかったからね。
っと、実験実験。
縫い目を解いて…水の滴る魔石を見てみる。
魔力がどう動いてるんだろう…?
目を凝らす。
だんだん目が慣れてきた、そんな気がしたとき、視界に小さな、本当に小さな粒みたいなものが、魔石からでているような気がした。
なんだろう?これ。
その粒は魔石から離れてすぐに消失してしまっていた。
代わりにそこの魔力が使われて水が出ているような…。
「もしかして、これかな?」
とりあえず水袋を戻してちゃんと機能するかを確認した。
うん、おいし。
今度はもっと遠くで風魔法を起こすイメージで。
せっかくだし思いっきり強く…ってうわっ?
風を強く出しすぎた!
いったい…
バランスを崩してうっかり屋根から落ちるとは…でも、それは見えた。
確実に私が魔法を放とうとした場所に向かって粒子が飛んでいる。
よし、これで魔法の発動原理はだいたいわかった。
手元で火を作っても、移動距離と色味が本当に薄いから気づけなかっただけで、実際はそれが媒介しているみたいだ。
ただスキル《魔力操作》で視力を高める?みたいなことをしないと知覚することすらできてなかったから今までは全く見えてなかったんだろうね。
なら魔石から命令粒子が出ることも確認できたわけだし魔道具を作るのは多分できるはず。
この粒子にどういう情報がどういう形で乗ってるのか理解できればあとはその粒子を再現できれば同じ魔法を発動し続けられるんじゃないかな。
今日は魔法について理解が深まったし、良い加減寝ておく。
おやすみ…。
◼️
「魔石を!よこせ!この!」
かなり荒っぽくブラックウルフの首筋に一突き。
絶命したのでさっさと解体して魔石の大きさを確認する。
魔石は魔物から取れるものと地下から発掘されるものの二つがある。
多分地下のものも元を辿れば過去の魔物が埋まってできたものっぽいのでまぁ木と石炭みたいな関係性と考えていいんじゃないかな。
魔道具を作りたい!となれば必然的に魔石が欲しいのでこうして魔物を狩りまくっているわけなんだけど…
「ようやくまともな大きさの4個目…一体どれだけ狩ればいいの…」
おそらく過去一で全力で狩りをしまくっていた。
グレーウルフでは性能が足りないしブラックウルフやベアー系は数がそこまで多くなかった。
しかも必ず良いものが取れるというわけでもなく…。
家族は肉と素材に喜んで入るけどそうじゃないんですーー!!
魔道具作りに!使える!魔石を落とせーーーー!!
というわけでなんとなく決めた目標量20個を集めるのに2週間かかってしまった…。
とりあえず集まったのでよし!
ちなみにオルトさん曰く最近街の素材価格が崩壊したらしい。え?
…気にしない気にしない私のせいじゃないから多分きっとそうだそうだようんうん。
◼️
そんなことは一旦置いておいてとりあえず夜になったので実験をば。
魔石に私の魔法と同じような命令粒子を出すようにするにはどうすれば良いかな?
そのためには一回色々魔法を発動してみてどういう粒子が出ているかみてみる…?
いや視覚に頼って判別は前やった時には無理そうだったし…。
ん、魔石を通じて発動さえればその軌跡を記録できたりしない?
というわけで集めた魔石のうち8つを使って火魔法、風魔法を別の火力と形で発動した。
…ぱっと見わからん…。
うーん、適当に魔力を…って、発動した?!
無変換の魔力を適当に流してみたらなんとさっきと同じ魔法が発動した。
多分、魔力か魔石には記憶する性質がある。
なら、一回魔法を作ってそれを魔石に通すようにしたらあとは生の魔力を通してあげれば良いってことかな。
魔石を持って使うやり方は魔力を吸い出してるけど実は中に入れ込むっていう方法もできるのか…面白いね。
ちなみに水袋とかについてた魔石を観察したら全く別の知らない言語のような、模様のような何かが刻まれて発動していたみたいだったからそっちは参考にならなかったのはここだけのお話。
とまれ、これで魔道具を作ることはできる。
あとは、必要なものを考えて作るだけ。
◼️
「こういう感じ…?」
いつも感覚でやっていたことをそのまま発動させるというのが魔石の記憶の性質っぽいから適当に入れておけば良いのではとも思ったら、結構リソース配分を考えて大きさや使用魔力量をなんとなくで調整することが多いことに気づいた。
そのせいでどう決めておくか悩む…。
ま、魔石の魔力量は割とあるしそのほかの用途で使う気もないから大きめにしておこうかな。
そう調子で魔石に魔力感知、魔法障壁、治癒を発動する。
確認っと…よし、感知は手に持てばいつもみたいに感じられるね。治癒も発動してる。
大丈夫そうだね。
あとはこういう感じで色々やってこうっと。
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「感知石、コンロ用魔石、保温布のローブ、風と温風での乾燥魔石、あと緊急用の治癒魔石…このくらいかな?」
半年も経って季節は晩秋になっちゃって吹く風もすっかり冷たく山模様も黄色くなっちゃったけど、こっそりと作った魔道具は性能と持ち運びを考慮して選び抜いたものは大体作れた。
家出した後もみんなが使う分も作っておいた。
基本夜しかできないし勝手に使うと普通に残量で気づかれかねないから結構隠すのに苦労したね…。
魔石を練り込んだ布を作って魔法を通すのは砕きすぎてうまくいかなかったり硬すぎてきてられなかったり結構苦労した。
まさか旅の前に治癒魔石にお世話になる日が来るとは思ってなかったけど…ちょっと油断した。
でも治癒に魔力を取られないのは本当に大きい。
間違いなくほぼ常に魔力を使い続けることになるだろうから。
家族の全員分のローブに、コンロ用の魔石…一応ラウルとリーファの分はかなり大きめに作ったけど、そう遠くないうちに使えなくなっちゃいそうだね、大きめとかなり大きめの2着は用意したけど。
それでもとりあえずできることはしたかな。
あと、少し。




