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転生者はスキル《魔力操作》で楽しく暮らしたい!  作者: 遥響
第一章 転生少女の生きる道

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11/12

10話 じゃあね。

家出するのは誕生日を迎える早春に決めた。


大雪の中を歩いていくのは流石に足もとられるし戦闘もしずらいからね。


◼️


「流石だな、エリヤ。腕に関してはもう一人前以上じゃろう。」


「ありがとうございます、ダルガさん。」


「今後も研鑽を続けるんじゃぞ。」


「はい。頑張ります。」


片手剣と盾を持ったダルガさんとの真剣勝負についに勝った。


下手な野盗だって追い返して、時には殺すことだってあった。


道中で最低限身を守るだけの力は身についたはず。


「姉ちゃん、練習付き合ってくれよ。」


実は私が早くから無茶して練習を始めた影響なのかラウルも5歳になって練習を始めてる。


「わかったわよ。じゃ、今日は間合いの練習ね。」


「よし、今日こそは姉ちゃんに勝つんだ!」


「ふっふー私に勝つなんて10年は早いわ!」


「意外と短いんじゃな。」


「どうしても体格差と膂力差は成長されちゃうと埋め難いじゃないですか。」


「ふ、お主ならそれでも余裕で伸してそうじゃがの。」


「あはは」


晩秋、冷え込んだ風が頬を撫で背へと抜けていく。


葉を落とした木々に、木の葉が舞い、グレーホークが鳴いてそらを飛んでいく。


日向でもちょっと冷えるようなそんな季節に私たちは剣を振るう。


「もうちょっと動きに無駄を減らせると良いよ。こことか。」


「こうか?」


「あと腰をもうちょっと落として。」


「ほっ。ああ、なるほど!わかった。姉ちゃん。」


「よし、じゃあもう一戦行くわよ!」


「え〜〜!」


ぶーたれてもし〜らない!


気合いを入れて教え込んでおく。


いつ、何がきても大丈夫なように。


「は〜、相変わらず姉ちゃんはキツすぎるよ…。」


「どうした?私を倒すんでしょ?まだいけるって。」


「そこらへんにしとかんか。」


「ま、そうですね。今日はここまでで良いわよ。なんとなく気が向いたからちょっとお肉持ってきたから焼いて食べるわよ?」


「やったーー!姉ちゃん肉捌きは父ちゃんにも母ちゃんにも負けねえからな!」


「それ褒めてる?」


「褒めてるよ?」


「なら、ありがと。火おこしの練習してみる?」


「やるやる!」


まだ力も弱くてなかなか火打石から火花を出せないのをちょっと手伝う。


「今度こそ!」


「おっ。できたね!えらいえらい、よしよし。」


「やった!でも剣でも褒めてよ。」


「剣は甘い世界じゃないからまともに使えるようになるまでは言えないよ。」


「え〜。」


「命がかかってるからね。まぁ、上達は早いから落ち込むことはないけどね。」


「そうなのか?」


「ええ、そこは誇って良いわよ。これからも頑張るのよ。」


「おう。」


「二人とも、焼けておるぞ。」


「あ、そうだ。ありがとうございます。よかったらどうぞ。」


「じゃあ、もらおうかの。」


血抜きしたグレーウルフの肉に塩。


素朴ながらやはり美味しい。


「やっぱうまいよこれ!」


「そうじゃの。本当なんでこうも血の気の多い子になってしまったのか…。」


「それダルガさんがいいます?」


「そりゃワシの責任もあるからこそじゃよ。」


「あ、はい。」


「ま、これからも引っ張ってやってくれ。お主のおかげで少しばかり村は平和じゃからな。」


「そうですね。」


「美味しかった!また食わせてくれよ!」


「取れたらね。」


「やったー!姉ちゃんはほぼ毎日一体は狩ってくるから食えるのと同然だよ!」


「あはは…」


その純粋で、かわいい笑顔に応えられない。


どうしても、曖昧に笑って誤魔化すことしかできなかった。


◼️


「エリヤ、夕飯よ。」


「わかった。」


「今日はアフラがブラックベアーを狩ったからちょっと豪華ね。」


「やったね。」


「どうだエリヤ、俺だってやる時はやるんだよ!」


「元から兄さんだって結構腕は立つしちゃんと父さんの手伝いもしててすごいじゃない。」


「そうだけどお前の方が狩りがうまくてちょっと兄としての矜持ってやつを見せつけないとと思ってな。」


「あはは、私は兄さんのこと尊敬してるよ?」


「嘘だろ?わかってるぞお前俺より狩りうまいっていうの自慢に思ってるだろ。」


「ソ、ソンナコトハナイヨー」


「ほら!カタコトじゃねぇか!」


「あは。」


「まあ、いいさ。」


「兄ちゃんはすごいよ?」


「ありがとうな〜ラウル。」


「でも教えるのは姉ちゃんの方がうまいけど。」


「グハッ!ラウル…。」


「ラウルにはお姉ちゃんしないとだからね!」


「だいぶ成長したな、アフラ、エリヤ。」


「おう。」


「ありがとう、父さん。」


「エリヤは無茶しすぎですよ、もうちょっと落ち着きなさい。」


「ギク。」


「まあそうだな。そろそろお前も将来のことを考えないとだからな。」


「わ、わかってるよ〜」


「本当か?ま、ちゃんと考えておいてくれ。」


「はい…」


「たべる」


リーファが可愛い声でご飯を催促した。


「そうだな。いただきます。」


「「「「いただきます。」」」」


リーファも前よりもスープをこぼすことが少なくなったし、ラウルは、まあ剣術で元気を発散できているのか家だと若干落ち着いてきたような気がする。


いや昼間剣術で扱きすぎてるだけかもだけど…。


「おかわり。」


「わかったわ。ほら、どうぞ。」


リーファは起きる時間も結構定まってきてよく食べるようになった。


「おねえ、ちゃん?」


「なあに?」


「どう、したの?」


「?!いいや、リーファは可愛いと思っただけだよ。」


「?」


一瞬心を見透かされたのかとびっくりしちゃった。


◼️


冬も深くなっていく。


終わりゆく日々を噛み締めるように。


悔いのないように。


家族との最後になるかも時間を過ごす。


そんな気持ちとは裏腹に、時は残酷に、等しく流れていった。


◼️


早春、私の11歳の誕生日。


特に大きく祝う誕生日ではないけれど、ちょっと夕飯が豪華だ。


「エリヤ、誕生日おめでとう。」


「ありがとう、お母さん。」


「今日くらいはゆっくりしてくれてもよかったのよ?」


「そうだぞ、甘えん坊は困るがお前は逆にあまりに甘えるのが下手すぎる。夜に山に一人で行くとかそんなことする前に相談しておけ。」


「あなた、誕生日に説教は野暮というものですよ。」


「おう、そうだな。誕生日おめでとう。」


「ありがと。」


「本当にエリヤが生まれてきてくれて嬉しいわよ。」


「私もお母さんの娘でよかったと思うよ。」


「あら、嬉しい。」


「へえ、お前らしくもないじゃないか。」


「らしくないって何よ…私だって感謝とかそういう気持ちは持ってるんだけど。」


「はは、あんまり口にしていうことがないからなお前は。」


「それは…そうかも。」


「もうちょっと尊敬してくれてもいいだぜ?」


「尊敬してるよ、兄さん。」


頑張って作り笑いを張って応える。


暖かい家に、笑顔の食卓。


ああ、きっと、こういうのを幸せって言うんだろうね。


こんな幸せで、満ちた顔をした弟と妹から、その笑顔を奪ってしまうようで、兄から憎めない妹を消してしまうようで、両親を悲しませてしまうようで、心が張り裂けそうな心地がして、思わず顔をくしゃくしゃにしてしまいたくなるのをひたすら堪えている。


ああ、私はどこまでも、弱い。


もう、戻ってこられるかもわからない。


きっと、幸福だった記憶として、遠く彼方に埋もれていく。


でもどうしても、いかないといけないんだ。私が私として生きるために。


こんなに弱くて、罪深くて、どうしようもないお姉ちゃんを、妹を、娘を、どうか、どうか、許してほしい。


◼️


雪解けが進んだ、誕生日一週間後。


そらに浮かぶ蒼月が完全に満ちた青き満月。


窓から降り注ぐ光に静かに照らされた寝室。


手芸の手伝いでつくったぬいぐるみとちょっとしたカゴを飾った棚。


質素だけど心地よい私のベッド。


ちょっとした作業をするのに使った木の机と椅子。


もう、二度と使われなくなる、そんな部屋。


悲しみに、決意も、思いも揺らぎそうだけど、もう、戻らないんだ。


「結局話せなかったな…。」


置き手紙だけは残しておこうと思ったのだけど、最後の言葉は色々悩んだ。


どうしても何も言っても、それが言い訳がましく、未練がましく聞こえて、私の声じゃないような気がして、書けなかった。


だからただ、


「ありがとう、この家族に生まれて幸せでした。そしてさようなら」


と、だけ。


こっそりつくったローブに身を包み、最低限の荷物を詰めた袋の中身を最終確認。


つくった魔石とか魔道具とか布とか。


大丈夫だね。


本当に今までありがとう。


私は、この家に生まれて幸せだったよ。


それくらい、私はもうここでの家族と暮らしが好きだった。


でも、だからこそ、余計なことは言えなかった。


本当のことを言えなかった。


家族皆を巻き込んで危険な目に遭わせるかもしれないなんて、考えるだけで身震いがする。


私がもっと活躍していけばいずれ権力者に狙われるかもしれない。


私が連れ去られるだけならまだ構わない。


けれど私を利用するために家族が拉致されるかもしれない。


ウェリラの村が焼かれるかもしれない。


そんなことをする覚悟も、信頼する勇気も、私は持ち合わせてなどいなかった。


この村で普通に生きるという道もあっただろう。


狩りが得意な女の子として、母親として、結婚して家庭を築くみたいな、そういう人生。


でも、私はそう言う人生に向いていないと言うことを痛いほどよくわかっている。


それにはあまりに私は他人に対して無関心すぎたんだ。


仲間や家族は別だけど、どこまで行っても、興味か、べき論や義務、世間の目によってしか、他者と関わることをしなかった。


真実を隠して去っていくことにどれほど心を痛めるか、私にはわからないけど、そんな私ですらこんなに息が苦しいんだ。


みんなはきっともっと苦しいんだと思う。


それでもどうしようもなく、私は私だったんだ。


だからせめて、みんなは自身を責めないでほしい。


私のことは忘れて幸せに暮らしてほしい。


わざわざお姉ちゃんをしたのは残酷なのかもしれないけれど、せめてもの償いとでも思っていてほしいんだ。


じゃあね。


窓から、空を駆けて塀を越えた。


雲ひとつない夜空に綺麗に星が瞬いている。


いつか、私もあの星の一つになるのかな。


……


そうだね。


足跡をわざとつけて、手首を切って血を残す。


今日、今ここに、エリヤという少女は死んだ。


私はエスタ。


ただの、一人の少女だ。

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