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転生者はスキル《魔力操作》で楽しく暮らしたい!  作者: 遥響
第二章 新天地へ

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11話 ノルザム森林帯

「ーー、ほっ、っと。」


折れない程度に太い枝を咄嗟に見つけるのはやっぱり慣れない。


次に飛ぶ枝、その先の位置、飛ぶ勢い。考えることが多くてどうしても地面を走るより遅くなる。


それでも地面に降りずに踏んだ草や足跡、戦闘跡のような痕跡を残さない方が大事だった。


息が少し荒くなってる。


それでも冷えた夜風が優しく頬を撫でるのを感じながら、木々を跳ぶ。


今は…そこそこ南に来てるけど、ちょっと東に寄ってるか。


跳び移る合間に夜空を見上げて春の大四角形で方角を確かめる。


星は、綺麗だ。


もう帰れないし、帰らない。


◼️


遠くの山際から白んでいく東の空を左手に見ながら駆けていく。


西の空には早春に群れで渡るブルースワローが7、8羽飛んでいくのが見えた。


お腹が空いてきたので干し肉を口に咥えて走っていく。


「邪魔!」


木の上を走るのに邪魔になるブラッククローを短剣で殺さない程度にいなしていく。


仕留める方が正直楽だ。


それでも今は痕跡を残したくない。


街道ハズレの森の奥とはいえどんなスキルで追われるかもわからないし見る人が見れば人が短剣で仕留めたのもバレそうだからね。


安全策を取るに越したことはない。


今は、村から南に30キロくらいか。


まだまだ。


◼️


そういえばウェリラの村から南にぽつんと小高く見えて、ひとつ山と呼ばれていたちょっとした山があった。


どうやら、これがその山らしい。


特に何の変哲もない、木々に覆われただけの山に見えた。


「…いや。待って、なんか超でかくて赤いのいるんだけど…、ドラゴンなの、あれ?」


山肌に張り付くように見えた赤黒い巨躯。


目に魔力を集中して遠くを見た。


それだけなのに、背筋が冷える思いがする。


かなり遠くにいるはずなのに、それでもそこにいるだけで圧のある、そんな存在。


だから誰も近寄らなかったわけだ。


確かに魔物の襲撃はもっぱら北からのものばっかりだったけど、それは南側はこいつがずっといるから逆に安定してたからなのかもね。


とりあえず迂回して先に…あれ、目があった?


いや流石にこんな離れてーー。


『おい、そこの者』


ひゃいっ?!


突然心に威厳に満ちた声が聞こえてくる。


え?ドラゴンなの?!


『そうとも。こいつ呼ばわりとは感心せんな。』


しかも心の声もバッチリばれてる?!いや本当にすいません!聞いていらっしゃるとは思わず?!


『お主のような騒がしい者も珍しいがな。我の領域に来るとは何事か?』


ええと、ええと、特に何も…


『何も用もないものがこんな地にまで一人で駆けてくるわけがなかろう?』


いやその、本当に村から出てバレないようにただ走ってただけなんです……。あの、気に触ったらごめんなさい…?


『……』


嫌な沈黙が落ちる。


『……村から出てただ走っていただけだと?』


はい…?


声の温度が一気に下がった気がする。


あれ、もしかして間違えた…?


『つまらん、死ね。』


ぎゃーーーー!


とにかく逃げなきゃ!?


ドラゴンの体躯が山肌から一気に空へと飛び上がり、こちらに一目散に飛んでくる。


すぐさま低く枝を蹴って逃げに入った。


だめだ?!後ろから聞こえてくる羽音が一気に大きくなってくる?!


そんな走るまもなく頭上がドラゴンの影に覆われる。


アッ…。


鉤爪が飛んでくる。風圧だけで枝葉が吹き飛んでいく。


全力で体を捩って躱すと後ろの太い木の幹が一瞬で折れた。


嘘でしょ…?


『ほお?逃げ腰の割に避けるとはここまでくるだけのことはあるな。これはどうだ?』


ドラゴンの口に炎が集まっていく。


え?森ごといく気だねこれは?!


相殺行けるかな?!


炎が森を飲み込む壁のように迫ってきて視界が一面炎に覆われる。


何とか魔力操作で水を周囲に出して緩和していく。


暑い、重い!!


めっちゃ魔力持ってかれたって?!


かなりの怠さが襲ってくる。


『そのなりで我のブレスを打ち消すか。これは面白い獲物だな。』


獲物やめて、本当にやめて?!


さっきからずっと走ってるのに悠々と背中に追いついてくるのをやめて?!


誰か助けて!ーって誰もいないんだって!


ドラゴンが大きくその鋭い爪を両方とも高くから振り下ろしてきた。


避け、きれるわけないじゃん?!


諦めて片方は全力で身体強化で受け止めようとしてみる。


無理に決まってるよね!


腕の骨が軋んでまるごと潰されるような衝撃が走った。


前の異形よりも遥かに強い威力。


次の瞬間、景色がひっくり返って地面に叩きつけられた。


「がはっ…」


あ…奥の魔力を引き出すのも間に合わない…。


あまりの衝撃にそのまま視界が白んで、意識が暗転した。


◼️


……ん……?


何があったんだっけ…って、生きてる?あれ?


『お前、しぶといな。あと面白いものを持っている。』


ドラゴンさん?!


え、私は殺されたはずでは…?


隣にはドラゴンの巨躯があった。


体は一応…まあ、動くらしい。


というかどこかと思ったらあの山の中腹じゃん!?


ちょっと日暮れだし…。


『骸でも投げ飛ばしておこうかと思ったのだがな。これは魔法を込めた魔石であろう?こんなものを持っているのは見たことがない。うっかり面白いやつをぶっ殺してしまうところだったわ、はっはっは。』


ええ…。ええと、それは魔石に魔法を発動するイメージを込める感じで…


『イメージだけだと?詠唱はどうした?』


……あ、普通は必要なんでしたっけ?


私はその、魔力が見えると言うか直接魔法にできると言うか…。


『ほう…そのような人間のスキルや体質は聞いたことがないな。魔力を感知するには体にそのような器官をもつ魔物にしか基本できないはずなんだが…。』


どうなんでしょうか…少なくとも私は普通の人間だと思うのですが…。


『それはないな。戦闘力、判断力、機動力あたりは我が相手してきた奴らと比べてもかなりだぞ?ははは、面白いなお前。真の異常者は一般人を名乗ると言うがまさか本当だったとはな。』


そんな!ドラゴンさんに異常者認定されるなんて…。


『よし。退屈凌ぎにちょうどいい。お前、5年に一度くらい顔を出してこの治癒を込めた魔石をもってこい。いいな。』


え、あの。


『返事は?』


これは拒否権ないやつ……敗者は大人しく従います、はい。


『よくわかってるじゃないか。面白かったぞ。じゃあな、いけ。』


じゃ、じゃあさようなら…。


……痛い。


少し足を引き摺りながら山を降りていく。


だめだ、力が入らない。


荷物はまとまってて幸い残りは返してくれた。


いい感じの木を探して登る。


干し肉を食べる。


……しょっぱくて硬い…。


おいしいけど、スープが飲みたいな…。


感知魔石を起動して眠りに落ちた。


◼️


……ん……痛い……。


やっぱり木の上で寝るのは慣れないや…体がボキボキ鳴ってる…。


ちょっと腕も痺れてるし…。


でも、ドラゴンさんの領域あたりだからまだゆっくりはできないね。


今日も行かないと…。


疲労でスピードは落ちてるとはいえ、まだ追われるかもしれないのだから。


何とか今日も30キロは走りたい。


◼️


ひとつ山西方の村にて。


「赤龍さまが御乱心じゃ!」


「おいおい、それは本当なのか?俺たちの村はもうおしまいなのか?」


「急いで冒険者ギルドに連絡を!」


「うわああ一気に火を噴いてる!」


「何かを追ってるみたいじゃの?愚かなことだ…。」


かなりの大事件になっていた。


そして連絡が回る。


アストラル王国西方、セントの冒険者ギルドにて。


「ギルマス、これを。」


「……ウォルトの村付近の赤龍が一時暴れた、なお現在は沈静化しているが冒険者による確認求む…か。」


「どうされますか?」


「正直にいえばあまり対応したくはないな。赤龍を迂闊に刺激して村や隊商が焼かれたり襲われたりしてもかなわんが…確認は、必要だろうな。」


「では?」


「これは…そうだな、A級案件か。緊急のA級案件というのでだそう。ちゃんと依頼料は出ているな?」


「はい、10セタを何とか用意したと。」


「はー…本当なら最低15セタは欲しいところだが、まあ受けるやつはいるか。そうだ聖教の方での実地演習とかの予定は?」


「そうですね…あ、聖女リーヴァ様の実地訓練の予定があるというので打診が来てましたね。」


「おお、あの今代で最も優秀とも言われる彼女の実地訓練か。ちょうどいいか。よし彼女の演習を当てるか。そうだな…オルトに声をかけておけ。」


「オルト…ああ、あの大楯のA級ですか?」


「ああ、万が一の備えは必要な案件だからな。あいつがいればおそらく崩れることはないだろう。にしても何なんだよなんでこんなに面倒ごとが起きるんだ。」


「さあ…魔王勢力が勢いを増しているのはあるかもしれませんが。」


「ちくしょう…。もうちょっとゆっくりさせろっての。」


ちょっとした波紋を呼んでいたことをエスタは知らない。

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