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第13話 約束違反


 次の日、予定もないまま惰性のように公園へ行った。誰もいないか、いてもユナちゃんとマキちゃんだけかもしれないと思いながら。


 しかし、みどりさんはいた。


 左手にカード、右手にストロングゼロを握りしめるようにしていた。明るく突き抜けるような晴天だというのに、その表情は暗かった。

 ユナちゃんとマキちゃんが遊んでいても、みどりさんはベンチに座ったままだった。僕はカードを書きかけて、途中でやめた。どのみち約束は守れないのだから。


「みどりさん」


 声に出して呼ぶと、彼女は、びくりと身を震わせていた。臆病なウサギみたいだ。昨日、2番の約束を破り、いままた1番の約束も破ってしまった。このままでは3番の約束も破ることになりそうだ。このままでは。


「みどりさん。名前を教えてください」


 問いかけても返事はなく、横目で見ていると、少し震えながら白い手がカードを書いて差し出してきた。そこには、


 教えたくない。カードに書いて。話しかけないで。


と書かれていた。でも、僕はカードを差し出すのを拒否した。話したかった。声を聞かせてほしかった。病気なのだとしても。


 ケージの隅で震える白いウサギのような姿に腹が立って仕方がなかった。憂いを帯びた嘆願するような表情にも、右手のストロングゼロにも名付け難い怒りを覚えた。


「なんで教えてくれないんですか。どこに住んでいるんですか。どうして引っ越すんですか」


 返事はない。吹き続けていた風が止んだようだった。ぴりりと張りつめた雰囲気を感じながらも、黙ることができなかった。


「みどりさん。昼間っから飲むのはやめたらどうですか。格好悪いですよ」


 そう言った時、立ち上がったみどりさんにカードをぶつけられた。うるさい、うるさい、うるさいと書かれたカードを何枚も、何枚も。


 ばらばらと落ちたカードが悲しそうだった。


 その日を最後に、みどりさんも幼い姉妹も公園に来なくなった。3番の約束も守れそうにない。


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