第二十六話:凍結された裏口座と、公爵家の包囲網
「ギルバートは何をしている! アイラを早く差し出さねば――」
執務室で苛立つ現当主のもとに届いたのは、娘の身柄ではなく、公爵家崩壊を告げる怒涛の凶報ラッシュでした。
金も、法も、防壁も、すべて学徒たちによって掌握済み。
守られる側から狩る側へ回ったアイラが、堂々と実家の玉座を引きずり下ろしにかかります!
圧倒的なスピード感で進むクーデター劇をお見逃しなく!
帝都を取り囲む巨大な外郭門。親父派の私兵や検問が厳重に敷かれている。
セナの案内により、警備の巡回周期の盲点となっている地下水路・旧物資搬入口から、足音一つ立てずに6人全員が潜入成功する。
「帝都の裏ルートは昔から私の庭〜。どれだけ検問を増やしても無駄無駄〜!」
とセナは得意げに言う。
歓楽街の外れにある、公爵家の息がかかっていない廃倉庫を前線指揮所に設定。
ノアが魔導端末を複数接続し、部屋全体に電磁ジャマーと魔力遮断の二重結界を展開。
「帝都中央の魔導探知網からこの拠点を完全に隠蔽しました。通信傍受・逆探知の心配はゼロです」
窓の隙間から、遠くに聳え立つヴァルハイト公爵家本邸の威容を見つめる。
懐かしさや感傷は一切なく、あるのは「獲物を狙う支配者」としての冷徹な眼差し。
「相変わらず趣味の悪い城ね。あの無駄に豪華な本邸も、今夜限りであの親父の手から奪い取ってやるわ」
タクトが作戦図を広げ、メンバーの装備状態を確認する。
「会長、潜入と拠点の防諜は完了しました。いつでも動けます」
私は不敵な笑みを浮かべ、指揮杖を軽く回す。
「よし。まずは親父の『金』と『法』の逃げ道を塞ぐわよ。セリア、リサ、行きなさい!」
帝都の高級歓楽街にある、公爵家御用達の裏サロン。
親父派の資金洗浄を一手に担う闇商人が、セリアの調合した「無臭・即効性の自白薬(真実の香)」を吸わされ、あっけなく全身の自由を奪われる。
セリアは優雅に微笑みながら
「あら、そんなに怯えなくても大丈夫よ。公爵家の裏帳簿のありかさえ教えてくれれば、解毒剤をあげるから」
と言う。
金庫から他国との禁術取引・軍事利権の裏帳簿、貴族たちへの贈賄リストを押収する。
ノアの遠隔ハッキングと連動し、公爵家が隠し持っていた裏口座の暗証コードをすべて書き換えて資産を完全凍結させた。
「ふふ、これで親父さんの『お財布』はすっからかん。私兵への給料も払えなくなっちゃったわね」
アジトで待機するリサが、押収されたデータを瞬時に分析。
帝国貴族法に照らし合わせ、逃げ道のない完璧な「当主罷免および公爵家資産差し押さえの告発状」を仕上げる。
かつて学園の生徒会で築いた「帝国法務官僚の子息・令嬢ネットワーク」を使い、明朝一番で貴族院へ告発状が一斉受理されるよう手配を完了。
リサはメガネを光らせて言う。
「現当主の容疑は密輸、反逆予備、背任横領の計十二件。法的手続きにおいて、彼の政治的生命はすでに終わりました」
戻ってきたセリアとリサが、アイラに作戦成功の合図を送る。
「上出来よ。これで親父は金も味方も失った。次はあの屋敷の『結界と扉』をこじ開けるわよ!」
公爵家本邸を取り囲む、古代魔導仕掛けの三重防壁。
外壁の死角に張り付いたノアが、携帯型魔導端末を壁面に直接バイパス接続する。
「防衛結界の波長パターン、完全に把握しました。帝都のインフラと同じ旧式アルゴリズムです。……書き換え完了、生徒会メンバーの魔力波長のみ『当主直属の最高権限』として登録しました」
警報を一切鳴らすことなく、不可侵の結界に無害な通り道を作成する。
結界の隙間からセナが先行潜入。
巡回する私兵部隊のシフトの穴を縫い、当主執務室へ直通する使用人用隠し階段の鍵を魔導ピッキングで即座に解錠する。
セナは通信機越しに
「執務室への最短ルート確保〜!警備ゴーレムの起動キーも抜いたから、ただの人形になってるよん」
と得意げに言う。
万が一の奇襲や反撃に備え、タクトが偏向障壁の指向性を絞り込んで両拳に圧縮待機。
「退路も確保しました。これで本邸の防壁は完全に俺たちの味方です」
公爵家が誇る堅牢な要塞が、生徒会の技術と機動力の前にわずか数十分で「丸裸の檻」と化す。
外堀(金・法・防壁)の完全掌握を確認したアイラが、黄金の魔導指揮杖を手に前進。
「手はず通りね。それじゃあ――我が愚父に、引退勧告を突きつけに行きましょうか」
ヴァルハイト公爵家本邸・最深部の当主執務室。
豪華な革張りの椅子に座る父親(現当主)が、机を苛立たしげに叩く。
「ギルバートの奴は何をしている! たかが小娘一人連れ戻すのにどれだけ時間をかけているのだ! 早く隣国へ差し出さねば、我が家の負債が――」
執務室の豪奢な扉が乱暴に開かれ、青ざめた家令が転がり込んでくる。
「だ、旦那様! 大変です! 帝都内の裏口座が全て何者かに凍結され、私兵への給与支払いが停止しました!」
立て続けに伝令が駆け込み、絶望的な報告を叫ぶ。
「貴族院より緊急召喚状! 我が家の密輸・反逆予備の証拠が十二件、完璧な書式で受理されたとのことです!」
金、法、防壁――すべての生命線が瞬時に断ち切られ、父親は目を剥いて狼狽する。
「な、何が起きている!? 一体誰がこんな真似を……!」
「――私がやってあげたのよ、お父様」
澄んだ声とともに、分厚い執務室の両開き扉がタクトの衝撃波によって内側へ豪快に吹き飛ぶ。
立ち込める煙の中から現れたのは、真紅の魔導指揮杖を優雅に携えたアイラと、腕章を誇らしげにつけた生徒会メンバーたちだ。
呆然と腰を抜かす父親を見下ろし、私が冷酷で美しい笑みを浮かべて指揮杖の切っ先を玉座へ突きつける。
「ヴァルハイト公爵家現当主――あんたの業務怠慢と不正は全て精査済みよ。……大人しくその席を、私に譲りなさい」
逃亡者から一転、実家を完全包囲した支配者アイラの圧倒的な勝利宣言だ。
この生徒会怖いものないんじゃないかな(白目)
お兄様の名前を決めてなかったので決めました。
後ほど前エピソードも修正加えます。




