71.ルシウスルート2〜ヒロインを救え2〜
学園の玄関前にて。
6名の男女が1人の少女を責め立てていた。
「俺達は決してお前を愛さない!消え失せろ!」
ライアスの言葉に空気が凍った。
リリアはよく分からないが泣きたい気持ちになった。
「あ、あの・・・!」
それでも必死に声を絞り出す。
リリアは慌てて頭を下げる。
「私、皆さんに何か失礼を——」
「近付かないでください!!」
カテリーナが怯えたように叫んだ。
ビクリと肩を震わせるリリア。
カテリーナは唇を震わせながらライアスの後ろへ隠れる。
「わ、私は・・・貴女に何もするつもりは・・・。」
「その手には乗りませんわ。」
「こっちこそ!その手には乗らんぞ!悪役令嬢!」
声がした方を見ると真上に黒を基調とした制服を着た男が浮いていた。
その男はとても整った容姿をしていた。
「捕えろ!」
男の手がカテリーナと攻略対象に向けられる。
すると数人の軍服を着た男達が現れて、すぐさまカテリーナと攻略対象を石畳に押し付け捕らえた。
「どういう事!はぁ!?離して!!」
カテリーナが叫ぶ。
「離せ!!くっ!」
ライアスが身をよじる。
「姉上!!離せー!!」
「クソ!なんなんだ!?」
「こいつ等どこからでてきた!?」
「離してください!痛いです!」
それぞれ喚く、ルイス、セドリック、アルベルト、ノア。
先程までリリアに敵意を向けていた姿とは違って、情けない姿になっていた。
「何が、どうなっているの?」
リリアは学園の玄関前で待ち受けていた人物達に、よくわからない単語をぶつけられ。敵意をぶつけられ。先程まで困惑していたのにーー。
今、その敵意を向けていた人達が捕まって、石畳に押し付けられている。
「貴女がリリア・ナーシアスさんだね。」
上空から優雅に男がにこやかな笑顔で降りてくる。
そしてリリアの目の前に降り立つ。
「我はルシウス・ハイドウルフ。帝国の王をやっています。」
「「「帝王!!!??」」」
帝王を名乗る男に、全員が驚きの声を上げる。
「貴女をそこの野蛮人達から守る為にやって来ました。」
「え?」
ルシウスの言葉が理解できないリリアは首を傾ける。
ルシウスは顔を真っ赤にした。
「可愛すぎるだろ!」
ルシウス、リリアの余りの可愛さに叫ぶ。
そして攻略対象の方を向いた。
「野郎共!よくも寄ってたかってリリアさんを責め立てたな!思わなかったのか?そこの性悪女よりめちゃくちゃ可愛いと!」
野郎共は図星だったのか気まずそうにそっぽ向いた。
「貴方達!!ライアスまでッ!!!」
カテリーナ、ヒステリックにキレる。
「美しさもある!だがそれ以上に可愛い!世界中の可愛いを集めたような可愛さだ!リリアさん貴女は可愛すぎる!」
「ありがとう、ございます?」
褒められ過ぎて逆にピンとこないリリア。
「こんなに可愛すぎるリリアさんをお前達はッ!!」
ルシウスはもし自分が来なかったら、リリアの身に起きた未来の出来事を思い出し6人に殺意を抱く。
そして6人はリリアに牽制をしただけのつもりなのに、謎に必要以上に帝王の怒りを買っている事に疑問を抱く。
「ん?」
ルシウスは自分の耳に触れた。
「そうか。わかった。ご苦労。」
ライアスを見た。
「今、城の制圧が完了したとの連絡が入った。だから今この瞬間、この王国は帝国の物だ。」
「はぁ!!?」
ライアスは目を見開く。
「そして王子のお前は今から平民だ。その他の野郎共と性悪女もな。」
ライアス以外の野郎共と性悪女の目も見開く。
「私、帝国に何かした!?何故そこまで私達に酷い事を!!?」
ルシウスは押さえ付けられているカテリーナに近付く。
そして見下ろした。
長い足の間から見下ろしてくる黒曜石の冷たい瞳の迫力に、カテリーナは息をのんだ。
「リリアさんを排除しようと考えていただろ?野郎共や信者を使って。」
「・・・!!」
カテリーナは何故知っているのかと言わんばかりにその目は見開き驚いていた。
「我は知っているぞ。お前が乙女ゲーム、否・・・リリアさんの知識を使って良い思いをしているってな。発明もリリアさんの発明だ。」
「なっ!?」
その事も知っていて口を大きく開き固まる。
「お前ってリリアさんの知識がなかったら何が残るんだ?」
「ッ!!」
カテリーナは何も言い返せなかった。
「空っぽだな。」
カテリーナはキッと悔しそうにルシウスを睨む。
「何の話をしているんだ・・・?」
カテリーナの様子からとても重要な事を帝王に言われている事がわかるが、ライアスには会話の内容が理解できないでいた。
「空っぽで所詮は小物の性悪女。」
「何でそこまで言われないといけないのよ!貴方はそこの女の何!?乙女ゲームに帝国は存在だけ仄めかして出てこなかった!」
ルシウスはリリアの方を見た。
「リリアさんの未来の花婿だ。」
「「「はぁああああああ!!!??」」」
全員のはぁ?が学園中に響く。ちなみにリリアも一緒に言っていた。
「花嫁がお前達に虐げられると知ったら、助けに行くに決まっているだろ。」
当然かのように言うルシウス。
「どこをどうやったら乙女ゲームで存在だけ仄めかされた王とヒロインが出会うのよ!」
「お前達のせいだろ!いや、お前達のおかげか?」
6人のせいで闇堕ちしたヒロインが、自分を殺しに寝室に現れるなんて・・・素敵な出会いを未来の異世界の自分から見せてもらっているルシウス。
その映像を思い出し恍惚の表情を浮かべる。
そのルシウスの表情に引くリリア。
「何の話をしてるのよ!」
イラつくカテリーナ。
再び冷めた目でカテリーナを見るルシウス。
「面白いことを教えてやるよ。」
ルシウスはニヤリと笑った。
「俺は続編のメインヒーローらしいぞ。そんで続編にお前はいない。」
「はぁーーーーーーーーーーーッ!!!!!???」
カテリーナの目が今日1番見開く。
「乙女ゲームのことはよくわからんが、帝国の存在を仄めかせたのは続編への伏線だろ?考えたことなかったのか?だからお前は空っぽなんだ。」
「空っぽは関係ない!え?え?続編なんてあったの?続編ってことは前作の攻略対象は引き続き出演!?ライアスも!?イヤ!!イヤァ!!そんなのイヤァ!!しかも私続編で排除されてるじゃない!イヤァ!」
未知の可能性に顔を真っ青にするカテリーナ。
乙女ゲームを信じているからこそ、カテリーナの精神に1番効いたワードが【続編】だった。
「安心しろ。」
晴れやかなキラキラ笑顔になるルシウス。
「お前と野郎共は、今から帝国の地下牢の拷問部屋で性格矯正だ。」
「えええええ!!?何故だ!俺達はそこのヒロインに忠告したまでだ!」
ライアスは必死だった。ライアス以外の野郎共からも「そうだ!そうだ!」と声が上がる。
「あれのどこが忠告だ!一方的に数人でリリアさんを責めたて脅していただろ!お前達覚悟しておけよ!」
6人は無理やり立たされる。
野郎共はわからないことばかりだが、自分達は今は平民で尚且つ、今から帝国の拷問部屋で性格矯正をされるのだと言うことは理解でき、その表情に絶望が伺えた。
「そこの悪役令嬢の弟!!」
「僕ですか!?」
突然ルイスを指差すルシウス。
「お前が1番念入りに性格矯正してやるから覚悟しておけ!姉の『あ』の字も出ないくらいにしてやるからな!」
「何でぇ!!?」
頭にたくさんのハテナを浮かばせるルイス。
「続編・・・続編・・・じゃあ私の努力ってどうせ無駄になったって事?え?え?続編には別の悪役が?」
拷問部屋で性格矯正より、続編の事の方がショックだったカテリーナはずっとぶつぶつとつぶやいていた。
連れて行かれる6人を満足そうに見るルシウス。
「ふんっ!これでリリアさんとリリアさんのお母様を不幸にする邪魔者共は消えたな。」
ルシウスはウキウキ笑顔でリリアを見る。
そしてリリアの前に跪く。
「リリアさん、俺と結婚してください。」
デカイダイヤがついた指輪を差し出す。
リリアは一瞬固まった。
そして口を開く。
「ずっと荒唐無稽で理解不能で意味不明です。知らない人といきなり結婚する訳ないじゃないですか。」
ガーン。
ルシウス当たり前にフラれた。




