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全てを奪われたヒロインは転生悪女に復讐する  作者: 鈴木べにこ


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6.失った居場所〜過去5〜

発明発表会から三日。


 リリアへの扱いは、さらに悪化した。



「盗作女。」

「詐欺師。」

「カテリーナ様を傷付けた最低女。」



 廊下を歩けば罵声。


 教室へ入れば机にゴミ。


 教科書はズタズタに破かれ、インクをぶちまけられるのは日常茶飯事だった。


 それでもリリアは諦めなかった。



「お、おはようございます!」



 今日も笑顔で挨拶する。


 返事は無い。


 どころか女子生徒が露骨に顔をしかめた。



「まだ来るんだ。」

「普通恥ずかしくて来れないでしょ。」

「神経図太すぎ。」



 クスクス笑われる。


 胸が痛い。


 でもリリアは笑顔を崩さなかった。



「(大丈夫。ちゃんと説明すれば分かってもらえる。)」


 そう信じていた。


 だが、その希望は日に日に削られていく。






「村に証拠があるんです!」



 リリアは教師へ必死に訴えた。



「本当に私が昔から考えていた物で・・・!」


「だからその証拠は?」


「そ、それは・・・。」


「提出できない以上、君の主張は認められない。」



 冷たい返答。


 教師達は誰も信じてくれない。


 むしろ、見苦しい言い訳を見るような目だった。



「カテリーナ嬢は以前から優秀な研究成果を残している。」


「ですが——」


「もうやめなさい。」



 ぴしゃりと言い切られる。



「これ以上カテリーナ嬢を困らせるな。」



 リリアは唇を震わせた。


 何故、どうして誰も話を聞いてくれないのか。


 その時だった。



「まぁ、まだ盗作を否定してますの?」



 聞こえてきたのは女子生徒達の声。


 リリアを見る目は侮蔑に満ちている。



「往生際悪い。」

「カテリーナ様が可哀想。」

「平民って怖いわね。」



 笑い声。


 リリアは逃げるようにその場を離れた。


 だが悪意は学園の外にも広がっていた。



「見ろよ、盗作女だ。」

「うわ、本当にピンク髪だ。」

「最低よね。」



 王都の通り。


 知らない人々までリリアを知っていた。


 買い物へ行けば店員に追い返される。



「うちは盗人に売る商品はありません。」


「・・・っ。」



 市場では野菜を投げつけられた。


 子ども達ですら石を投げてくる。



「盗作女ー!!」


「帰れー!!」



 リリアは逃げるように走った。


 涙で前が見えない。



「(どうして・・・。)」



 何故ここまで?


 何故知らない人達にまで憎まれるの?


 理解できない。


 怖い。


 まるで世界全てが自分を拒絶しているみたいだった。



 そしてある日の授業中。


 リリアの机に一枚の紙が置かれていた。



『消えろ』



 真っ赤な文字。


 その下には無数の悪口が並んでいた。



『男好き』

『盗作者』

『悪魔』

『カテリーナ様の敵』



 リリアの指先が震える。


 その時、後ろから髪を引っ張られた。



「きゃっ!?」


「調子乗んなよ。」



 ノアだった。



「お前のせいでカテリーナ様泣いてるんですよ。」


「わ、私は・・・!」


「黙れ。」



 腹を蹴られる。



「っ・・・!!」



 椅子ごと倒れ込む。


 痛い。


 苦しい。


 周囲は笑っていた。


 教師ですら見て見ぬふり。



「やめて・・・。」



 リリアは震える声を漏らした。



「お願いだから・・・。」


「被害者面しないでください。」


「そうよ。」

「最低女。」



 —誰も助けてくれない。


 その現実を改めて実感する。


 



 そして発表会から三日後


 リリアは学園長室へ呼び出された。


 重厚な扉。


 冷たい空気。


 そこには学園長と複数の教師達、そしてライアス達六人がいた。


 嫌な予感がした。



「リリア・ナーシアス。」



 学園長が重々しく口を開く。



「君への処分が正式に決定した。」



 リリアの喉が鳴る。



「・・・処分?」


「君を王立学園から追放する。」



 一瞬。


 言葉の意味が理解できなかった。



「・・・え?」


「盗作騒動に加え、他生徒との度重なるトラブル。」



 淡々と告げられる。



「学園の秩序を著しく乱した責任は重い。」


「ち、違います・・・!」



 リリアは慌てて叫んだ。



「私は何も——」


「まだ言い訳をするのか。」



 ライアスが冷たく言う。



「見苦しいぞ。」


「っ・・・・。」


「おまえがいる限り、カテリーナは安心して学園生活を送れない。」



 アルベルトも続ける。



「危険因子は排除すべきだ。」



 ルイスはリリアを見下すように言った。


 危険因子。


 その言葉にリリアは目を見開いた。



「(私が?)」



 何もしてないのに。


 ずっと。なのに。どうして。



「お願いです!」



 リリアは涙を流しながら頭を下げた。



「私、本当に盗作なんてしてません!皆さんと仲良くしたかっただけで——」



「黙りなさい。」



 学園長の一喝。


 リリアの身体が震える。



「これ以上騒ぎを起こすな。」


「・・・そんな。」


「処分は決定事項だ。」



 絶望だった。


 何を言っても届かない。


 何をしても無意味。


 その時。


 カテリーナがリリアの前にでる。



「・・・申し訳ありません。」



 カテリーナが悲しそうに俯いた。



「本当はこんな事したくありませんでした。」



 まるで自分が被害者みたいに。


 苦しそうにそう言った。


 周囲はそんな彼女へ同情の目を向ける。



「カテリーナ様は優しすぎる。」


「こんなの庇わなくていいのに。」



 リリアは呆然とカテリーナを見る。


 理解できなかった。


 怖かった。


 この人は何なんだろう。


 本当に。


 何を知っているのだろう。


 その瞬間。


 ぞわり、と背筋に寒気が走った。


 まるで得体の知れない“何か”が。


 ずっと自分の人生を見下ろして笑っているような感覚だった。





 その日の夕方。


 リリアは荷物を抱えて学園を出た。


 半年。


 たった半年で全て終わった。


 夢も。


 未来も。


 居場所も。


 全部失った。


 校門の前では、生徒達がこちらを見ていた。



「やっと消える。」

「せいせいした。」

「二度と来るな。」



 罵声。


 嘲笑。


 誰一人悲しんでいない。


 リリアは唇を噛み締めた。


 振り返った先。


 遠くの校舎の窓から、カテリーナがこちらを見ていた。


 その紅い瞳と、一瞬だけ目が合う。


 そして。


 カテリーナは微笑んだ。


 勝者のように。

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