表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全てを奪われたヒロインは転生悪女に復讐する  作者: 鈴木べにこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
55/78

54.しぶとい女〜ヒロインと悪役令嬢〜

「お客様~! 私を選んでくれてありが――って、アンタか。」



 部屋へ入ってきたリリアの姿を見た途端、派手な化粧をしたカテリーナは露骨に眉をひそめた。


 リリアは静かに彼女を見つめる。



「ライアスが死んだわ。」


「へぇ。」



 あまりにも淡白な反応だった。


 リリアは思わず眉を上げる。



「それだけ?」


「それだけよ。」



 カテリーナはリリアに背を向ける。



「私を助けようともしなかった男に、今さら泣く理由なんてないわ。」



 そして面倒そうに手を振る。



「用が済んだなら帰って。仕事の邪魔。」



 その態度に、リリアは思わず苦笑した。



「本当にしぶといわね。」


「褒め言葉かしら?」


「全部失ったのに。」



 カテリーナは鼻で笑った。



「ハッ!全部じゃないわ。」



 キセルに火をつける。


 ゆっくり煙を吐き出した。



「私はまだ生きてる。」



 その言葉に、リリアは少しだけ目を細める。



「・・・そう。」


「一度に何人も相手した事あるけど、アンタのお母さんみたいに死ななかったしね。」



 その一言に、空気が冷えた。


 だがリリアは怒らなかった。ただ静かに聞いている。


 カテリーナは続けた。



「惨めでも何でもいいわ。生き残った者が勝ちよ。」



 リリアはため息をついた。



「本当に変わらないわね。反省とかないの?」


「今さら変わると思った?反省する理由なんてないもの。」



 リリアは無表情ではあるが、内心唖然としていた。



「それよりライアンは?」



 リリアは少し驚いた。



「気になるの?」


「一応息子だもの。」


「安心しなさい。」



 リリアは答える。



「私の管理する場所で働いてるわ。危険な仕事はさせてない。いじめもない。」



 カテリーナは小さく頷いた。



「そう。」



 それ以上は聞かなかった。


 しばらく沈黙が流れる。


 やがてカテリーナが口を開く。



「それで?今日は何しに来たの?」



 リリアは少し考えてから答えた。



「特に理由はないわ。ただ、どんな顔をして生きてるのか見に来ただけ。」



 カテリーナは吹き出した。



「あはは!暇人ね!」



 そして胸を張る。



「今の私はこの店の人気者よ。昔は王太子妃だったのにね。プライドを捨てたら案外どうにでもなるものだわ。」



 リリアは呆れたようにジト目でカテリーナを見る。



「貴女、本当に図太い。」


「褒め言葉ね。」



 カテリーナは得意げだった。


 そして真顔になる。



「でも勘違いしないで。」



 キセルに火をつける。



「私はどんな酷い目に遭っても絶対謝らない。反省もしない。今までも。これからも。」



 リリアは黙って聞いている。



「私は自分を守るためにアンタを排除した。後悔はしてない。もし同じ状況なら、また同じことをする。それが私よ。」



 その言葉を聞いて。


 リリアは数秒沈黙した後――


 突然吹き出した。



「あははははは!」



 声を上げて笑う。



「本当に変わらない!ここまで来ると逆に感心するわ!王太子妃じゃなくなって夫も処刑されたのに!息子だって今は私ものみたいなものなのに!あははは!」



 カテリーナは不満そうに顔をしかめた。



「笑うこと?」


「笑うわよ。」



 リリアは涙を拭った。



「だって全部失ったのに、その性格だけは何やっても全然折れてないんだもの。」


「当たり前でしょ。」



 カテリーナは鼻を鳴らす。



「私だもの。」



 二人の視線が交わる。


 そして――


 リリアは背を向けた。



「もう行くわ。」


「二度と来ないで。」


「そのつもり。」



 リリアは扉へ向かう。



「さよなら、カテリーナ。」


「ええ。」



 カテリーナはキセルをくわえながら手を振った。



「さよなら。」



 それが最後だった。


 二人が再び会うことはなかった。


 カテリーナはその後も生き残った。


 どんな環境でも適応し、やがて店を任されるオーナーの立場になり、さらに年月を重ねていく。


 誰よりも図太く。


 誰よりも長く。


 まるで雑草のように。


 長く生きた。





 元ヒロインは呆れた顔をした。



「なんかさぁ。」



 深いため息を吐く。



「復讐になってなくない?」



 リリアは肩をすくめた。



「そうかもね。全部奪ったつもりだったんだけど。」



 元ヒロインは頭を抱えた。



「普通はもっと絶望するじゃん。イカれてる。」


「相手が悪かったわね。」



 リリアは苦笑する。


 そして遠くを見つめながら呟いた。



「カテリーナは結局、最後までカテリーナだったのよ。」



 元ヒロインは再びため息をついた。



「まさか娼館での仕事が天職だったなんてね。力仕事でもさせときゃよかったよ。」


「そうね。ほんと、しぶとい女。」



 リリアは小さく笑ったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ