表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全てを奪われたヒロインは転生悪女に復讐する  作者: 鈴木べにこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
37/73

36.眠り姫〜ヒロインと元ヒロイン2〜

 帝国城の最上階。


 黒を基調とした豪奢な部屋の中央に置かれた大きなベッドで、リリアは静かに眠っていた。


 長いピンクの髪がシーツの上に広がり、その寝顔はまるで人形のように美しい。


 その傍らには元ヒロインが腰掛けていた。


 指先でそっとリリアの髪を梳き、愛おしそうに見つめている。



 すると――


 バンッ!!


 勢いよく扉が開いた。



 入ってきたのは、見る者を圧倒するほど整った容姿の男だった。


 漆黒の髪。漆黒の瞳。身に纏う衣装までも黒一色。


 帝国の頂点に立つ男――帝王ルシウスである。



「リリアは起きたか!?」



 大股で近付こうとした瞬間、元ヒロインが冷たい視線を向けた。



「帝王様、お静かに。」


「あっ・・・す、すまん。」



 ルシウスは慌てて足を止める。



「だが早く目を覚ましたリリアに会いたいのだ・・・!」



 その必死な様子に、元ヒロインは呆れたように肩を竦めた。



「今頃どのルートを彷徨っているのでしょうね。」



 そう言って眠るリリアを見下ろす。



「異世界でも、お母様と幸せに過ごせているといいのですが。」



 ルシウスは拳を握り締めた。



「我慢ならん・・・!」



 怒りを押し殺すような声。



「あの者達を今すぐ八つ裂きにしてやりたい!」



 元ヒロインはため息を吐く。



「そんなことをしたら嫌われますよ。」


「むぅ・・・。」


「これはリリアの復讐なんです。」



 ルシウスは悔しそうに顔を歪めた。



「せめて我に過去へ戻る魔法が使えれば!」


「私ならできますけどね。」



 元ヒロインはあっさりと言う。


 ルシウスの目を見開いた。



「本当か!?」


「ええ。」



 しかし元ヒロインは首を横に振る。



「でもリリアは望みません。」


「なぜだ?」


「起きてしまったことを無かったことにはしたくないそうです。」




 静かな声だった。



「辛い過去も、苦しい記憶も、全部含めて今の自分だからと。」



 ルシウスは黙り込む。


 そして眠るリリアを見つめた。



「・・・リリアらしいな。」



 しばらくの沈黙の後、ルシウスは小さく尋ねる。



「リリアはあとどれくらいで目を覚ましそうだ?」



 元ヒロインは肩を竦めた。



「さぁ。」


「わからぬのか?」


「闇の力の副作用ですよ。」



 元ヒロインは苦笑する。



「乙女ゲームのヒロインの宿命、というやつみたいですです。」


「宿命・・・。」


「一日の大半を異世界の乙女ゲームの世界で過ごしてますからね。」



 ルシウスは大きくため息を吐いた。


 そしてそっとリリアの頬に触れる。



「早く目覚めておくれ。」



 その声音は、帝国を統べるものの声ではなかった。


 ただ一人の男の願いだった。



「愛しい人よ・・・。」



 元ヒロインはルシウスのその言葉に顔をしかめる。


 ルシウスは元ヒロインの顔をじっと見つめた。



「まあ。」


「?」


「リリアに瓜二つであるお前もそれなりに可愛いと思うぞ。ペットみたいで。」



 元ヒロインの額に青筋が浮かぶ。



「うるさい。」


「褒めたのだぞ!?」


「余計なお世話です。」


「なぜ怒る!?」


「本当にうるさい。」



 元ヒロインはそう言いながらも、眠るリリアの髪を優しく撫でた。


 ルシウスもまた、その隣で静かに彼女の目覚めを待ち続けるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ