33.地獄の入り口〜悪役令嬢と攻略対象5〜
コロシアムで全ての真実が暴かれた日から。
王国は変わった。
いや、正確には人々の6人を見る目が変わったのだ。
リリア・ナーシアスを盗作犯だと信じていた者達。
リリアを学園追放したことを当然だと思っていた者達。
リリアを知らなかったがコロシアムでの真実を知ってしまった者達。
そんな人々が、今度は6人へ怒りの矛先を向け始めた。
そして何より、十日後には帝国の労働者として連れて行かれる。
その事実が民衆の恐怖と怒りを爆発させていた。
元生徒達も矛先が自分達に向かないように息を潜めていた。
ライアスは王宮から出ることすら困難になった。
護衛を引き連れて外へ出れば。
「お前のせいだ!!」
石が飛ぶ。
「王太子失格!!」
「責任を取れ!!」
泥を投げつけられる。
腐った野菜をぶつけられる。
以前なら兵士達が即座に逮捕しただろう。
だが今は違う。
兵士達ですらライアスを見る目が冷たい。
口には出さない。
しかし思っている。
全部お前のせいだと。
ライアス自身も否定できなかった。
夜になれば執務室に抗議文が届く。
一日百通。二百通。三百通。
増え続ける。
そのほとんどが罵倒だった。
『死んで償え』
『王族失格』
『リリア嬢に土下座しろ』
『お前達のせいで人生が終わった』
ライアスは全て読んだ。
眠れなくなった。
食事も喉を通らなくなった。
鏡を見るたびに、自分が知らない老人のような顔が映っていた。
カテリーナはさらに酷かった。
街を歩けば。
「盗作女!!」
「泥棒!!」
「全部お前が始めたんだろ!!」
罵声が飛ぶ。
石が飛ぶ。汚物が投げられる。
以前は憧れの眼差しを向けていた少女達まで、今では軽蔑の目を向けていた。
王宮の使用人達も同じだった。
表面上は礼儀正しい。
だが誰も笑わない。
誰も話しかけない。
孤立していた。
カテリーナは叫ぶ。
「私だけじゃないじゃない!」
だが誰も聞かない。
むしろ。
「まだ責任逃れするのか。」
そんな目を向けられるだけだった。
ルイスは屋敷に閉じこもった。
娼館送りの主犯。
その噂は王都中へ広がっていた。
「最低だ。」
「女を売った男。」
「人間じゃない。」
屋敷の壁に落書きされる。
窓ガラスが割られる。
門に汚物が投げ込まれる。
夜になれば怒鳴り声が響く。
「出てこい!!」
「謝罪しろ!!」
「地獄へ落ちろ!!」
両親さえも彼を避けた。
使用人達も目を合わせない。
ルイスは部屋で一人膝を抱えるしかなかった。
ノアの商会は崩壊した。
長年築き上げた信用が数日で消えた。
「申し訳ありません。」
「今後のお取引は・・・。」
その言葉ばかりだった。
従業員達も去っていく。
広かった商会は空っぽになった。
机の前に座るノア。
誰もいない。
静かだった。
だがその静けさが何より苦しかった。
「リリア嬢の発明を盗作した物を売ってたんだろ!」
「卑怯者!」
「こんな物いらない!」
以前商会で売っていた商品を屋敷にたくさん投げ込まれる。ガラスが割れる。
使用人達は白い目をノアに向けながら片付ける。
屋敷にも居場所はなかった。
セドリックとアルベルトも同じだった。
街を歩けば視線を浴びる。
石を投げられる。
罵倒される。
店へ入ろうとすれば。
「お帰りください。」
酒場へ行けば。
「席はありません。」
明らかな嘘だった。
空席だらけなのに。
誰も二人を受け入れなかった。
「お前達のせいで!」
「許せねぇ!」
数人のごろつきに囲まれる2人。
「あの、すまないが通してくれないか?」
アルベルトが出来るだけ相手を刺激しないようにする。
「うるせぇ!お前等なんて消えちまえ!」
「やっちまえ!」
逃げる間もなく2人は数人に身体中を殴られ蹴られ地面に転がされる。
当然、助ける人もいない。
「くっ・・・!」
「なんで・・・っ。」
これが地獄の入り口なら、これからどうなるのだろうと2人は痛む身体を抑え、唇を噛み締めるしかできなかった。




