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全てを奪われたヒロインは転生悪女に復讐する  作者: 鈴木べにこ


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22.嫌われた理由〜元ヒロイン3〜


 元ヒロインは呆れたように言った。



「乙女ゲームのカテリーナさん最悪じゃん!」



 その瞬間、カテリーナが感情を爆発させた。



「ライアスに近づくから!悪いんでしょ!?」



 カテリーナの姿に元生徒達がざわつく。


 元ヒロインだけは、ぱぁっと目を輝かせた。



「出ました本性ー!」



 ビシッとカテリーナを指差す。



「ライアスくんに近づく女は始末されても仕方ない!怖いですねぇ~!」


「ち、違う!」



 だが否定は弱々しい。


 元ヒロインは畳み掛ける。



「ライアスくん以外の攻略対象ルートでも何か最低で最悪なことしたんでしょ?」


「し、してないわよ!」



 否定したがカテリーナの泳ぐ目が全てを物語っていた。


 元ヒロインは観客席へ振り返る。



「さぁ皆さん!」



 芝居がかった仕草で両手を広げる。



「カテリーナさんは自分が破滅しないために、リリア・ナーシアスを排除しようとしました!ですが乙女ゲームの彼女は、自業自得で罰せられていたのです!」



 そして、静かに問いかける。



「皆さん思いませんか?ただ破滅しないように、正しく生きていれば良かったんじゃないかって。リリアをわざわざ排除しなくても、良かったんじゃないかって。」



 静まり返る会場。


 カテリーナに同情的だった一部の者たちも、今は複雑な顔をしていた。


 未来を知った恐怖。


 破滅を避けたい気持ち。


 それ自体は理解できる。


 だが――。


 だからといって、人を害していい理由にはならない。


 元ヒロインは静かに続けた。



「もちろんね、『未来で犯罪者になる予定でした』って言われたら怖いよ?しかも破滅エンド付き。」



 軽い口調。


 なのに、その言葉は妙に鋭かった。



「でもさぁ。」



 元ヒロインは首を傾げる。



「カテリーナさん、自分で未来変えてたじゃん。」



 領地問題を解決し。人脈を広げ。周囲の評価を高め。


 乙女ゲームにはなかった行動を、彼女は幾つもしてきた。



「なのに、悪役令嬢になる未来だけは絶対変わらないって思ってたの?」



 カテリーナの肩が唇を噛みながら俯く。



「それって結局、『私は悪事を働く人間です』って、自分で認めてるようなものじゃない?」


「ち、違っ・・・。」


「違わないよ。」



 元ヒロインは遮った。



「だって普通、人に毒を盛る未来なんて聞かされたら、そんな人間にならないように生きようって思うじゃん。」



 観客席の何人かが、無意識に頷いた。



「でもカテリーナさんは違った。『リリアがいたら私は乙女ゲームの悪役令嬢と同じ道を辿る』って考えた。だからリリアを追い詰めて学園から追い出そうとした。」



 元ヒロインはゆっくり言葉を落とす。



「そして、カテリーナさんが1番恐れてたのはーー。」



 一拍。



「ライアスくんを失うことだよね?」



 その瞬間、カテリーナの顔から血の気が引いた。


 図星だった。


 誰の目にも分かるほどに。


 元ヒロインは深くため息を吐く。



「恋する気持ちは分かるよ。好きな人を取られたくない気持ちも、嫉妬も、不安も。」



 それは人間らしい感情だった。



「カテリーナさんまるで世界を守る為、みたいな顔してリリアを追い詰めたけれど。」



 元ヒロインは冷たく笑う。



「結局やってたこと、ただの恋敵排除なんだよね。」



 元ヒロインは、まるで舞台の幕が上がる瞬間を告げる役者のように、大きく両手を広げた。



「そしてカテリーナさんは――」



 にっこりと笑う。



「集団を使って。」



 攻略対象たちを見る。



「取り巻きの攻略対象を使って排除は成功しました!パチパチパチ!」



 元ヒロインは拍手が会場内に響く。



「だって簡単だよね。王太子が警戒してる。公爵家の令息も警戒してる。有力貴族の子息たちも警戒してる。そんな中で、“平民の少女”がまともに信用されるわけない。」



 リリアは最初から不利だった。


 身分も。後ろ盾も。発言力も。


 何も持っていなかった。



「しかも周囲は、未来を知る優秀なカテリーナ様の味方。」



 元ヒロインはわざとらしく肩をすくめる。



「そりゃ勝てないよねぇ。」



 民衆は揺れる。


 若い女性が顔を青くする



「王太子様に敵なんて思われたら・・・。」

「もし私がその場にいたら、きっと私も『危険な子かもしれない』って思ってた・・・。」

「怖ぇ。」

「これ、誰でも加害者側になり得るってことか?」

「しかも本人たちは正義のつもりなんだろ?」



 空気が徐々に重くなっていく。


 そして観客席の後方から、ぽつりと声が漏れる。



「そのリリアって子、逃げ場なかったんじゃないか?」



 その一言で、さらに空気が沈んだ。


 身分差。権力差。人数差。


 それら全てが、最初からリリアを追い詰めていたのだと理解し始めたからだ。


 6人はだんだんと民衆の自分達に対する印象が徐々に悪くなっていく事を肌で感じとっていた。


 元ヒロインは、その空気の変化を感じ取ったのか、ゆっくりと笑った。



「はい、皆さん大事なポイントに気付き始めましたね~。」



 そして楽しそうに笑った。


 元ヒロインはウキウキしながら次のテーマへ行く。

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