18.帝国からの選択〜王太子2〜
あの日から一週間。
王都の空気は、明らかに変わっていた。
さらに食糧の流通は不安定になり、商人は姿を消し、街はどこか落ち着かない沈黙に沈んでいる。
王城の中だけが、異様な重さを抱えていた。
そしてある手紙が秘密にライアスの元に届いた。
「助けてほしい・・・?」
手紙の内容にライアスは眉をひそめる。
差出人は魔塔の次期塔主、アルベルト。
しかし隣にいたカテリーナは、その手紙を一瞥しただけで——
「ライアス様に任せるわ。私は関係ないもの。」
そう言って、あっさりと押し返した。
「おい、カテリーナ!」
ライアスの声が低くなる。
だが彼女は振り返りもしない。
「魔塔の問題でしょ?私が関わる理由がないわ。」
その一言は、あまりにも軽かった。
そしてライアスは父である王に頼み、王から魔塔へアルベルトの正式な救済要請を出した。
だが返ってきた答えは『拒否』だった。
ただ一言。
『魔塔の判断により処理する』
アルベルトは魔塔の魔法使い達の魔力がこのまま戻らなければ処刑。
それだけが決定事項として突きつけられた。
ライアスは頭を抱えた。
「何が起きている。」
国の状況は悪化の一途を辿る。
帝国との交易は止まり、物価は上がり、民は不安に揺れていた。
そして夜。
ライアスの夢に、必ず同じ少女が現れる。
『どうして・・・私、何もしてないのに・・・。』
泣いている。
ただ泣いている。
その声だけが、頭から離れない。
「・・・やめろ・・・。」
目覚めるたびに、冷や汗が背を伝う。
そん中ある日、帝国からの使者からライアス宛に書簡が届いた。
王城の謁見の間。
封を切った瞬間、空気が凍る。
「ふざけているのか。」
そこに書かれていたのは——
『カテリーナ王太子妃の“真実”を公表せよ。さもなくば処刑せよ。』
『ライアン王子を帝国へ人質として差し出せ。拒否すれば戦争を開始する。』
ライアスが息を呑む。
「戦争・・・?狂っているのか!」
ライアスはすぐにカテリーナの私室へ向かった。
「カテリーナ!!」
ドアが勢いよく開かれ、ライアスの声が鋭く響く。
「真実とは何だ!!」
カテリーナは目を見開いた後、首を傾げる。
「知らないわよ・・・何を言っているの?」
「知らないで済む話じゃない!!」
机を叩く音が響く。
「帝国が名指ししているんだぞ!!真実とは何だ!!」
カテリーナは後ずさる。
「やめて・・・やめてよ・・・知らないわよ!」
カテリーナはライアスの背中をぐいぐい押す。
「私の部屋から出てって!!」
扉が閉ざされた。
鍵のかかる音。
ライアスは拳を握りしめたまま立ち尽くす。
「・・・どういうことだ。」
その問いに答える者は誰もいない。
そしてその夜。
ライアスは書簡と睨めっこしながらどうすればいいのか考えた。
「・・・到底受け入れられない!」
唇を噛み締めて覚悟を決める。
「俺は!どんな事をしても2人を守る!」
ライアスは書簡をビリビリに破いた。
その時ーー王都全体に、声が響いた。
『妻と息子を守りたいなら、私が協力しよう。』
若い女の声だった。
瞬間、視界が崩れる。
光が溢れ、地面が消える。
ライアスが次に目を開けたとき——
そこは王城ではなかった。
巨大な円形闘技場。
コロシアムの観客席。
数えきれない程の人数が観客席にいた。




