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転生したらゴーレムだったが全然動けない件  作者: くろイけ
序章:動けないゴーレム

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9/19

EP.09 誰か翻訳してくれ

[転生1165日目]


(うーん、なんか思ってたのと違う……)


 豪はわりと真面目に困っていた。

 

 場所は盗賊団のアジト。

 山の中腹にある洞窟の前だ。

 

 洞窟の中が頭目っぽいヤツの住居らしい。

 強奪した金品類などもそこにあると思われる。


 その洞窟に向かって左側に小屋が幾つかあって、そこに子分たちが住んでいた。

 思っていたよりも規模が大きく、全部で30人以上はいると思われた。


 ちなみに、昨夜から明け方まで夜通し宴が続いていた。

 そのせいか、もう太陽が真上にあるというのに、誰も起きてくる気配がない。


 少し先に見張りが二人立っているだけだった。


 豪はアジトのほぼ中央にある巨大な焚火の近くで、ずっと立たされっぱなし。

 宴会中は、頭目が隣に座って浴びるほど酒を飲んでいた。

 焚火を囲んで踊り狂う子分たち。

 物陰で淫らなことをするカップル。


 などをただじっと眺めていた。


 誰がなにを言っているのか、皆目わからなかった。

 もちろんゴーレムはしゃべれない。

 つまりコミュニケーション手段が存在しないのだ。


 盗賊とはいえ、せっかく大勢の人間がいるのに、完全なぼっち状態。

 これはなかなか精神的にくる状況だった。


(あいつが起きてきてくれたらなぁ)


 魔法を使える男だ。

 あいつが何か役に立つのではないかと、豪の直感が告げていた。

 そこに期待して、あえて盗賊についてきたのだ。

 決して、また魔法をゴチになるためではない。


 なにかしら、たとえ一方通行でも意思疎通なり命令なり、繋がる方法があるはずだった。

 そうでなければゴーレムなど存在価値がないに等しい。


 なんとしてでも、手掛かりを掴みたかった。



 *



「あ、ベックスさん、おはようございやす」


 ようやく起きて来たベニー(本名はベックス)に子分たちが挨拶をする。

 太陽はもう、真上からだいぶ傾いていた。


「もう少し静かにしゃべれ。頭に響く」


 ベニーがこめかみに手を当てながら顔をしかめる。


「す、すいやせん」


 ビビって小走りにその場を離れる子分たち。


「おいサジ、ドレイクは?」


 通りかかったサジを捕まえて、尋ねるベニー。


「まだ寝てやす。絶対に起こすなって言われてるんで、もう少し待ってください」


 洞窟に入る前のドレイクから直接言い渡されたサジは、洞窟前から離れないようにしながら、雑用をする子分たちに指示を出していたのだ。


「んだよあんちくしょう。自分だけ……」


 ベニーは不満を口にしながらも、小屋のひとつに向かって歩いて行く。


「あ、ケニーさんならさっき戻ってきやした。もう寝てるかもしれやせんが……」


「ちっ、どいつもこいつも……オレも二度寝するぞッ」


 そう宣言すると、ベニーは出て来たばかりの自分の小屋へ戻っていった。


 残されたサジはベニーがドアを閉めるのを見届けると、振り返って焚火跡の奥に立っている巨人を見上げた。


「まさか本当に持ち帰れるなんてなぁ……」


 感慨深げに呟きながら、暫く巨人を見つめていた。



 *



 日が暮れる頃になって、ようやくドレイクが洞窟から出て来た。


「よぉ、デカ丸! 今日からお前もオレたちの仲間だ。よろしくな!」


 言いながら、巨人の膝の上あたりをペシッと叩いたが、すぐに手首を押さえて顔をしかめた。


「ったく、硬すぎるだろデカ丸……」


 誰にも聞こえないように呟いているところへ、背後から人影が近づく。


「お頭、報告していいですか」


「おお、ケニーか。ご苦労だったな。で、どうだった?」


「逃げたヤツらは全員処分しました。あとあの貴族の連中なんですが……」


「ああ、もしかしてそっちも殺っちまったか?」


 不敵な笑みを浮かべながらドレイクが尋ねると、ケニーはゆっくり首を振る。


「いえ、ただ連中が落としていったモンを見つけたので」


 そう言うとケニーは、匂い袋のようなものをドレイクに差し出す。


「フン。女の持ちもんか。お! こりゃお前、サザビート商会の印じゃねぇか」


 袋の真ん中に大きく商会の紋章が刺繍されていた。


「はい。売れば価値があるかと思って」


「でかしたケニー! これであの馬車の中からぶん盗ったもんの価値も、かなり期待できるかもしれねえ」


 ドレイクたちが奪った品物は、子分に命じて複数の町で金に替えるのが慣例だった。

 基本的には全て金に換金する。

 但し、値打ちのわからないものは、「鑑定」できる人間を一味に加えるまで保管していた。


 町の鑑定士はあてにならない。

 そもそも鑑定士という職業自体が詐欺だ、というのがドレイクの持論だった。

 昔、酷い目にあわされた経験でもあるのだろう。


「しかし、やっぱりあの女だけでも捕まえとくんだったな」


 身代金がたっぷり貰えたに違いないと、ドレイクは臍を噛んだ。


「ですがお頭、あの燕尾服の男はやばいです。あいつには勝てる気がしません」


「なに? お前がそこまで言うのか。もし本当にそれほどのヤツなら、たかが貴族商人の護衛には不釣り合いだな」


 あの冒険者連中は、おそらくBランク程度だろう。

 それなら相場だ。

 しかし、弓ならAランク級のケニーが評価する人間がいるとなると話が違う。


「あの女の情報も調べておけ。お前んとこの若いヤツがいたろ、そいつを使え」


「ノックノックですか。わかりました」


 ノックノックは19歳の青年で、1年前に入った新メンバーだった。


 一礼をして去って行くケニーと入れ替わりに、ベニーがやって来た。


「おいドレイク、いつまで寝てやがんだコノヤロー」


 挨拶代わりに悪態を吐くのはいつものことだった。


「オレより後に起きてきたくせに偉そうにするなバカヤロー」


「バカはお前だ! オレは昼すぎに一回起きてんだよ。嘘だと思うならサジに聞いてみろ」


「そんなことよりおい、見ろよコイツを。カッコイイだろ、デカ丸はよぉ」


「お前、その名前はやめろってみんな言ってただろ」


「みんなじゃねえよ、お前とライナスだけだ」


「二人いればみんなも同然だ」


「どういう理屈だよバカ。だからお前はダメなんだ」


「ダメはお前だドレイク。こんな役立たずのデカいオモチャ拾ってきて、どうする気だ?」


「オモチャじゃねえ、デカ丸だ!」


 際限なく言い合いが続くのもいつものことなので、周囲は誰も気に留めない。


 唯一、巨人の中の人――豪だけは半ば呆れつつ、半ば諦めつつ、それでも何かを読み取ろうと必死に二人の様子を見ていたのだった。

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