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転生したらゴーレムだったが全然動けない件  作者: くろイけ
序章:動けないゴーレム

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EP.10 ひと狩り行こうぜ

(おい、お前らいったいなにやってんだよ。もう夜になっちまうぞ)


 オッサン二人の罵り合いを目の前で見せつけられながら、その内容は一切わからず、ぼーっと突っ立っているだけの存在、それが豪だった。


 とにかく言葉がわからないことには、どうにもならない。


(ここが異世界だというなら、普通なにかあるだろそれ系のスキルが)


 自動翻訳とか言語理解とかそういう感じの。


(転生ボーナスくらいないのかよ。翻訳だけでいいってのに)


 落ち込みながらも、まだなにか可能性はないか考える。


 異世界なら神様みたいなのがいて、豪のような転生者のことは見守っているはずだ。

 ご都合主義でもなんでも、こんなに困っているんだから手を差し伸べるべきだろ。


 だが、この三年超のことを考えると全く期待できなかった。

 むしろ神様がいるなら、引きずりだしてぶん殴ってやりたい。

 もっと真面目に仕事しろ、と。


(せめてチュートリアルはもっと分かりやすくしてくれないと……鬼畜仕様すぎる)


 自らの職業に重ねて愚痴る豪。


 とはいえ、完全な孤独よりは遥かにマシだった。

 なにより今、ここにこうしているのは豪自身の選択の結果だ。


(言葉はわからなくとも、何か情報なりヒントなり掴むんだ。ここで)


 幸い、時間はいくらでもある。

 ゴーレムに寿命はないのだ――たぶん。


 豪は持久戦を覚悟して、腰を据えることにした。



 *



[転生1168日目]


「よし、デカ丸! こっちへ来い!」


 ドレイクが叫びながら、手招きをする。

 おそらくアレが合図なのだと判断した豪は前進開始。


 動き出したゴーレムに驚いたイノシシの親子が、一斉に反対側へ走り出した。


 だがその先には、網を持った盗賊たちが待ち構えていた。


「今だッ!」


 ドレイクの合図で、網を持った子分たちがイノシシの前を塞ぐように広がる。


 ボフッ!

 ブヒッ、ブヒッ。


 見事に網に突進して捕まるイノシシ。

 その瞬間、子分たちがイノシシを囲むように周り込み、完全に網で囲う。


 ゴーレムはすぐ後ろで停止して、イノシシの退路を塞ぐ。


「やった!」


 サジが思わず歓声を上げた。


「どうだベニー。デカ丸だってちゃんと役に立つだろうが」


「いや、こんなもん誰でもできるだろ。わざわざデカイのを使う意味がわからねえ」


 ドレイクが鼻高々に自慢すると、呆れた顔でベニーが諭す。


「バカヤロー、デカ丸がいるから追い立て役がいらねえんじゃねえか。人手の節約だ」


 ベニーは頭を振ってライナスを見る。


 ライナスはそれには特に反応せず、手に持った網の端をケニーに預けると、捕獲した中から二頭のウリ坊を取り出した。


「コイツらは逃がしていいな?」


 ドレイクの許可を求めた。


「ああ、食うのは親だけで充分だ」


 一瞬満足げな表情を見せると、すぐに素に戻って淡々とその場を離れるライナス。

 両手に一頭ずつウリ坊を抱えたまま。


 食料調達の狩りでは、極力親だけを狙う。

 それがドレイク盗賊団のルールだった。


 情けなどではなかった。

 充分に育ってから、改めて捕まえるというだけの話だ。


(へぇ、ちゃんと理屈がわかってる盗賊団だな)


 たとえ言葉がわからなくても、目の前で起きている事実を解釈することは出来た。

 この狩りについてもジェスチャーで指示された通りに動いただけだった。

 ノンバーバルコミュニケーションを思いついた盗賊団に感謝。


 尚、ゴーレムのジェスチャーはイマイチうまく伝わらなかった。

 仕方なく、「頷く」「首を振る」の二択でなんとかした。


 重要なのは、ゴーレムが意思を持っているということを知ってもらうことなのだから。


 ちなみに「〇」と「✕」のジェスチャーは全く通じなかった。

 どうなってるんだ、異世界。



 *



[転生1170日目]


 昼食後の、ちょうど眠気がやってくる時間帯だった。


「例の調査の件はどうなってる?」


 ちょうど通りかかったケニーを見つけたドレイクが声をかけた。


「まだ何も。パックは一度来たきりです」


 パックというのはノックノックが飼っているフクロウの名前だ。

 アジトの場所を記憶させているので、遠隔地から情報を届けるのに利用できた。

 足にメモを巻いて飛ばすのだ。


 最初の連絡には「女の名前はマリーベル・サザビート」とだけ書いてあった。

 もちろん、それは既にドレイクに報告済みだ。

 つまりドレイクは、その後新しい情報がないか訊いたのだった。


「まさかバレたんじゃねえだろうな」


「それはないと思います。ノックノックになにかあればパックが戻って来るはずです」


「ああ、確かに。あの鳥は賢い」


 パックの賢さはドレイクもよく知っていた。

 ノックノックが盗賊団に入る時の試験で、パックの特技を見せられたからだ。


「必要なら、もう一人出せますが」


「いや、いい。二人管理する方が大変だろう」


「……はい」


 こうしたところは、妙に鋭くて迷いがないのがドレイクだった。

 だからこそ、この規模の盗賊団を維持できているのかもしれない。


「お頭ぁ~~~~ッ」


 遠くから、かなり切迫したサジの声が聞こえた。


 ドレイクが立ち上がると、食事中の子分たちも雰囲気を察して立ち上がる。


「大変だぁお頭! ワイルドベアが来やす……そ、それも三頭」


 全力疾走してきたらしいサジの報告は、一瞬で空気を凍りつかせた。

 サジはまだぜえぜえ言いながらも、ほかの子分に指示を出していた。


「ワイルドベア三頭だと!? おい、ケニー!」


「確認してきます!」


 ケニーは、傍らに置いていた矢筒を肩にかけながら走り出した。


 森の中はケニーの庭だった。

 元狩人であり、Aランク冒険者に匹敵する弓の名手。

 夜目も利き、気配を断つのも抜群に上手い、狩りのプロフェッショナルがケニーなのだ。


「どうするドレイク?」


 ベニーが深刻そうな顔で方針を尋ねる。


「もちろん迎え撃つ。オレたちにゃ、デカ丸がいるんだぜ?」


 不敵にニヤリと笑ったドレイクは、その視線をデカ丸に向けた。

 ベニーも立ったまま、同じ方向を見る。


 周囲の子分たちもみな、期待と不安の混じった目で一斉にデカ丸を見つめた。


(ん? なに? なんかあったのか? てかこっち見んな!)

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