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転生したらゴーレムだったが全然動けない件  作者: くろイけ
序章:動けないゴーレム

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EP.11 迎撃!ワイルドベア

 突然周囲が殺気立ち、慌ただしさを増していった。


 子分たちがアジトの入り口付近にバリケードのようなものを作り始めたので、さては敵襲かとようやく事の重大さに気づいた豪。


(これってもしかして何か攻めてくる感じなのか。人間? それとも魔物?)


 どっちにしろ危険なのだが、豪としては心構えが異なる。


 頭目らしき男が何か言ってるが、相変わらず全くわからない。


(ん? あっちへ行けってこと?)


 しきりに洞窟の方を指差して、交通整理のようなジェスチャーでもう片方の手を動かしている。


(とりあえず動いてみて反応を見るか)


 豪が洞窟の方へゆっくり歩き出すと、リーダーの顔が笑ったので正解だと判断した。


(この体じゃ中に入れってこともないだろうし、敵が来るってんならアレか。洞窟の入り口を守れってな感じかな)


 そう推測して洞窟の前で外向きに立ち塞がるようにすると、リーダーが親指を立ててニンマリしていた。



 *



「お頭、やはり三頭です。もうすぐそこまで来ています」


 偵察から戻ったケニーがドレイクに報告する。


「わかった。おい! もうすぐ来やがるぞ!」


 ドレイクが全員にハッパをかけると、ほぼ同時に奥から足音と咆哮が聞こえてきた。


 ゴアァァァァァッ!!

 ガアァァァァァッ!!

 グオァァァァァッ!!


 まだ距離があるにもかかわらず、身も竦むような三重奏が鳴り響く。


 その声がみるみる近づいてくる。


「弓!」


 ドレイクの合図で、まずは弓で攻撃。

 子分たちの弓の腕前はピンキリだったが、それでも数打ちゃなんとかの世界。


 矢の雨を掻い潜って姿を見せたワイルドベア三頭が、加速して突進してくる。


 二頭の背中に矢が突き立っているのは、おそらくケニーの手柄だ。


「ちぃっ、次! ベニー!」


氷結(フリーズ)!」


 ドレイクの合図を待っていたベニーがすぐさま魔法を放つが、走って接近してくる標的に氷結(フリーズ)を使用するのは実は非常に難易度が高く、この場合も実際失敗してしまった。


「なにやってんだテメェ! 寝ぼけてんのか!?」


 ドレイクの怒号が飛ぶ。


火球(ファイヤーボール)!」


 すぐに次の手を打つベニー。

 今度は真ん中のワイルドベアの顔面に命中。

 当たったワイルドベアは急ブレーキで立ち上がると、顔面を掻きむしるようにして叫ぶ。


 グオァッ!!


 そこへ再び矢の雨が降り注ぐ。

 立ち上がったワイルドベアに数十本の矢が突き立つ。


 グオァァァァァッ!!


 しかしその間にも、残り二頭が勢いそのままに突っ込んできていた。


 ドガァァァッ!!!


 何の効果もなく破壊され吹き飛ぶバリケード。


「ベニー!」


火球(ファイヤーボール)!」


 食い気味に放ったベニーの火球がもう一頭の左肩に命中。

 ワイルドベアがバランスを崩して転倒する。


「よし! 倒れたヤツに集中だ!」


 ドレイクは子分たちを倒れたワイルドベアに誘導すると、自分は突っ込んでくる最後の一頭の正面に躍り出た。


「ライナス!」


 叫ぶやいなや、ドレイクの隣にライナスが立つ。


「行け!」


 ダッシュしたライナスが加速すると、そのまま飛び上がってワイルドベアの顔面に蹴りをブチ込む。


 ギャァァァァ!


 もんどり打ってひっくり返るワイルドベア。

 額が割れて出血している。


 そこへ右から回り込んだドレイクが横から大剣で斬りつける。


 ガシュッ!


 肩口で剣が止まってしまう。


「しまった!」


 ドレイクが思わず声を漏らしたところへ、ワイルドベアが振り向きざまに腕を振るう。


 ガシッ!


 それを両手で受け止めるライナス。


「すまん」


 ドレイクはワイルドベアの胴体に足で踏ん張ってなんとか剣を抜くと、そのままライナスが受け止めているワイルドベアの腕に剣を振り下ろす。


 ザシュッ!


 ワイルドベアの右前脚が切り落とされた。


 ゴガァァァァァ!!


 絶叫が響く。


 ヴォアアアアアアアアアッ!


 すると、今までとは異質な響きの声が、森の奥から聞こえた。


「なんだ今のは!?」


 ドレイクが周囲を見回す。

 他の子分たちもそわそわと、落ち着きなくなる。


 三頭のワイルドベアはいずれもまだ絶命していない。


 だが、明らかにさっきの声は別のモノの声だった。


 ドドドドド!!


 物凄い地響きと共に何かが近づいてくる。


「レッドベアだぁぁぁぁぁッ!!!」


 サジの絶叫が響くと、一気にパニックが広がる。


「落ち着け! まずはワイルドベアを片付けろ! 急げ!」


 若干動揺を隠しきれないドレイクの号令だったが、子分たちも状況のヤバさを理解したのか、目の前の敵に集中しはじめた。


「来たぁぁぁぁッ!!!」


 再びサジの絶叫。


 ドドドドドドド!!


 急激にクレッシェンドする音と共に、真っ赤な巨体が姿を現した。


 ワイルドベアより一回り大きく、真っ赤な体毛に覆われた、凶悪な顔のクマだった。


「一旦引け! 引けぇぇぇぇッ!!」


 ドレイクもレッドベアの姿を目の当たりにして、即座に退却を指示。


 レッドベアはワイルドベアより遥かに狂暴な希少種だった。

 森で出会ったら死を覚悟するべし、という格言があるほど。


 子分たちが蜘蛛の子を散らすように森の中へ逃げ込む。


 ドレイクもその場を離れようと踵を返したその瞬間、何かが横を駆け抜けていった。


 なにか巨大な、しかし目にも止まらぬ速さのもの。


 思わず振り返って、すれ違ったソレを視認した時、ドレイクは自分の目を疑った。


「……デカ丸!?」


 走るゴーレム。

 ランニングゴーレムアゲイン!


 ドゴッ!!


 そのままレッドベアと真正面から激突したと思った次の瞬間、レッドベアが声もなく崩れ落ちた。


 倒れ込んだ地面に真っ赤な血が広がっていく。

 辺り一面に、生臭い血の匂いが充満していった。


「なんだ今の……」

「倒したのか?」

「どうやったんだ?」

「見えなかったぞ」

「ワンパンだよ、ワンパン」

「レッドベアの腹に穴が開いてる」

「デカ丸、すげぇ」


 おそるおそる森から出て、デカ丸に近づく子分たちが口々にしゃべり出した。


「お前ら! ワイルドベアを忘れるなよ!」


 ドレイクが叫ぶと、慌てて半死半生のワイルドベアにトドメを刺す子分たち。


「やった! 勝ったぞぉー!」

「デカ丸、ばんざーい!」

「お頭、ばんざーい!」


 ドレイク含め、全員がゴーレムを囲んで勝利の喜びを分かち合った。

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