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転生したらゴーレムだったが全然動けない件  作者: くろイけ
第三章:発現するゴーレム

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EP.60 とべ! ゴーレム

[転生1200日目]


 帰還したイボンヌたち一行を迎え入れ、ジャバ村は俄かに活気に溢れ出した。


 村始まって以来の、外部からの入村者というのがひとつ。

 村で最初に賢者修行に入ったイボンヌが、戻ったというのがひとつ。

 そして、豪たちが山から戻ったのがひとつ。


 三つの歓迎すべき出来事が一度に起こったのだから、盛り上がらないわけがない。


 そしていつものように、歓迎の祭の準備が始まっていた。





「そうなの。キャシーは元気にしてるのね。それは良かった」


 ちょうどイボンヌに、賢者の山でのことを話して聞かせていたところだった。


(おかげで、オレも真の能力に目覚めたってわけだ)


 得意気に話す豪。


「真の能力ねぇ……」


 なにやら意味ありげな表情で豪を見るイボンヌ。


 広場の反対側では、ライナスとウサ子がノックノックやエリックと話していた。


 二人の子供はというと、今まさに豪の両肩に乗っかったところだった。


「ゴーレム♪ ゴーレム♪」


 左肩で、なにやら歌っているのが女の子のジョシー。


「ゴーレムって中に人が入ってるの? 入ってないならどうやって動いてるの?」


 右肩で、延々と何かしゃべっている男の子がカル――っと。

 そのポジションで語りかけられると、妙に懐かしい気分になる。


(やれやれ、この子たちと話が通じなくて助かった)


 話せるとなったら、もう当分の間付きまとわれるのは明らかだった。


「そんなこと言って。本当は話したいんでしょう?」


 今度は悪戯っぽく微笑んでみせるイボンヌ。

 うーむ、改めて見ると全然イケる。

 あの女に似ている点を除けば、だが。

 これで60歳超えとは到底信じられない。


「失礼にもほどがあるわよ」


 褒めてるつもりなのに、イボンヌは微笑んだまま、目だけが笑っていない。

 ――めっちゃ怖い。


 それにしても賢者候補生ってのは、どいつもこいつも勝手に人の心の中を読むのが当たり前なのは、どうにかならないのか。

 覗きは軽犯罪法違反だし、迷惑防止条例違反でもあるんだぞ。

 まぁこっちでは何の意味もないけれども。


 つまりオレが言いたいのは、そっちの方がよっぽど失礼だろうってことだ。


「…………」


(って、そういうとこだけスルーすんなよ!)


「あら、なんのことかしら?」


(うひぃ。白々しいにもほどがあるわ)


「…………」


 いい感じに空気が冷えたところで、ジョシー乱入。


「ねえねえ、イボンヌ。イボンヌはゴーレムとお話できるの?」


「そうよ。賢者の修行をすれば、話せるようになるわよ」


 豪には意味がわからないはずのジョシーの言葉が、なぜか聞こえてきた。


(おいおい……マジかよ)


 豪の想像では、イボンヌが何かしたに違いない。


「ジョシーも賢者になる!」


「そんなに簡単じゃないわよ」


「できるもん! やるもん!」


「それじゃ、私の言うこと、ちゃんと聞ける? 約束、守れる?」


「聞く! 守る!」


「そう。わかったわ」


 したり顔で、軽く頷くイボンヌ。


(おいおい、これ完全に思う壺だったろ今の。恐ろしい。恐ろしいわ、さすが賢者候補生)


「人聞きの悪いこと言わないで」


(人聞きはともかく、あんた今なんかしただろ?)


「あなたもジョシーの話、聞きたかったでしょ」


(いや別に……)


「私の耳を通して、あなたに聞かせてあげただけよ」


(え、マジか。そんなことも出来るのか、賢者候補生)


「別に難しいことじゃないわ。共感ってそういうことでしょ」


(……それ、もしかして逆もできるのか)


「あら、やっぱりジョシーとお話したいんじゃない」


「イボンヌ!? ジョシー、ゴーレムとお話できるの?」


(やめろオイ。余計な面倒増やさないでくれ)


「賢者になれたらね」


「わかった。ジョシー、絶対賢者になる!」


 うん、完全に取り込まれてるわ。

 ってか今、完全にオレを利用したろ。

 やっぱこの女とはしゃべるのも危険ってことだな。

 よし、気を付けよう。


「ボクは賢者じゃなくて、勇者になる!」


 カルまで何故か宣言しはじめた。

 だから、オレに聞かせなくていいから!

 と、イボンヌの方を見たら、ジト目と視線がカチ合ってしまった。

 ひぃ、くわばらくわばら。





 遠くで微かに、花火のような音が聞こえた。


(なんだ、今の音は?)


 イボンヌがすっと立ち上がると、どこかへ行ってしまった。

 トイレかな?


 しかし、なんだか胸騒ぎがする。


「ゴウ」


 険しい表情のライナスが、近づいてきて耳打ちするように囁いた。


(どうしたんだ? もしかして今の花火の音か?)


「花火? なんのことだ? それより大変だ。近くで戦いをしているぞ」


(戦い? どこで? だれが?)


「そこまではわからん。ただ、方角からしてリザードマンの湖の方だな」


(なんだって!?)


 まさかリザードマンが戦っているのか?

 あんなおとなしい連中が?

 っていうか、相手は誰なんだよ!!


(ライナス、この子たちを下ろしてくれ)


「わかった。お前たち、大事な話があるから、ノックノックたちの方へ行っててくれるか?」


 ぶっきらぼうが過ぎるが、子供たちは空気を察したのか素直に従った。

 ライナスもゴーレムと話せるということは、早くも理解していた様子だ。


「じゃあね、ゴーレム!」

「また遊ぼうね」


 笑顔で手を振って、走り去る。

 なんだよ、あの女の子供とは思えない、良く出来たいい子たちじゃないか。


((ライナス! すごい魔力よ))


 ウサ子も察知済みか、そりゃそうだよな。


「ああ。かなりマズイな」


(え、そうなのか? リザードマンがピンチってことか?)


「それはわからないが……ウサ子、どう思う?」


((イボンヌに聞いた方が早いと思う))


 ウサ子が視線を向けた方向から、イボンヌとロレンツォが歩いてきた。





「そういうわけだから、急いで向かってちょうだい」


(は? いやいやいや。なんでそうなる?)


「話聞いてなかったの?」


(聞いてた。聞いてたけれども!)


「私たちがどんなに急いでも半日近くかかるわ。その点、あなたなら、ね?」


(ね? じゃなくて! 一人で行ってどうしろってんだよ!)


 リザードマンは長老しか話せないし、相手が人間だった場合はもっと悪い。

 向こうの言ってることもわからなけりゃ、こっちの話も当然通じない。

 行ったところで、状況を理解することすら難しいんじゃないのか?

 それともなにか。

 ただリザードマンに加勢して暴れまわっていいなら、話は別だが。


「そんなわけないでしょ、バカね」


(ぐっ……)


((ゴウ、それじゃアタシが一緒に行ってあげようか?))


「ダメだ! 危険すぎる!」


((でも、ライナス……))


(いや、いい。ライナスの言う通りだ。もしウサ子になにかあったら、オレはウサ吉に申し訳が立たない。だから一人でいくよ)


 ウサ吉の話は、もうだいぶ前に二人には話していた。


「やっとその気になったわね」


(それしか選択肢がないんじゃ、しょうがないだろ)


「ゴウ……すまん。オレも後から追いかける」


((アタシもライナスと一緒に行く))


(ああ、頼むよ。オレがもし失敗したらその後は任せる)


「なに弱気になってんのよ! シャンとしなさい!」


 ペシッ。


 イボンヌが、真顔でゴーレムのケツを叩いた。


(勝手なこと言うな。こちとらゴーレム初心者なんだぞ)


 若葉マークは付けてないけれども。

 もしあったらデカデカと目立つところに付けてるわ。


(ちなみにあんたはどうするんだよ)


「私は村に残るわ。万が一ってことがあるからね」


 ああ、そういうことか。

 湖の方が陽動で、こっちが本命の可能性もあるってわけね。

 確かに、それは理に適っている。


(一人で大丈夫なのか?)


「一人じゃないわ。エリックにノックノックもいるもの」


(ほんとに強いのかよ、あいつら)


「うーん、そうね。まぁエリックの方はそこそこやれるわ、たぶん」


(そこそこねぇ……)


 ということはノックノックとかいう若造はそうでもないと。

 エリックの方は、一応イボンヌ公認なわけね。


 まぁいいだろう。


「ゴウ、時間がない」


(わかった。じゃあちょっくら行ってくるわ)


「ゴウ様、どうかお気をつけて」


 おう、いたのかロレンツォ。

 片手を上げて、応える。


((ゴウ、頑張って))


(サンキュー、ウサ子)


「あなたなら出来るわ、きっと」


 イボンヌがゴーレムの胸に手をあてて、魔力を注ぎ込む。

 改めてゲージ5段階MAX!

 あざぁーす!


(行ってくる!)


 村に背を向け、豪は走り出した。

 さぁ、みなさんお待ちかねの、ランニングゴーレムタイムだ!





 出がけにイボンヌが色々と耳打ちしてくれたことを反芻する。


 正直なところ、半信半疑だったが、今現在、賢者に最も近い者が言うのであれば、信じるほかない。


 アルティメットゴーレムの走行速度は、セーフモードの実に2倍(体感)。

 魔力消費を気にしなければもっと出力は上げられる。


 だが、今試すべきはそれではない。


 よし、行くぞ!


 ゴーレム、飛行モード――ON!!


(おお!)


 視界の右下に鳥のようなアイコンが現れた。

 ホバーモードの時と同じ仕様だな、これは。

 モードチェンジの時に表示されるUIなのだろう。


 出力最大! マックパワー!!


 からのジャンプ!!


 ランニングゴーレムが、大きく高く跳び上がった。

 と、同時に背面に魔法陣が出現。

 背中に円盤状の魔法陣がくっついているのが、警戒機E-2Cを彷彿とさせる。


 両脚の踵部分にも、小さな魔法陣が出現。

 ゴーレムを空中に滞空させつつ、水平になった時には推進力に切り替わる。

 背面の魔法陣も、同様に浮力と推進力を統合するような働きをしているようだった。


 以上は、あくまでも豪が感じた魔力の流れによる推定。


 そして、ついに――ゴーレムが空を翔んだ!! 

 ビバ! フライングゴーレム!

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