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転生したらゴーレムだったが全然動けない件  作者: くろイけ
第二章:大賢者のゴーレム

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EP.55 ワイルドビースト

(それじゃあ、本当にあの時森で、オレたちを捕まえようとした女じゃないんだな?)


 イボンヌがいくら違うと言っても、なかなか信じられない豪。

 見た目の違いが、髪の長さくらいしかないのだから仕方がない。


「だから何度も言わせないで。あなたが言ってるのはおそらくマリーベルね」


「そうだ! あの女は確かそういう名前だった!」


 ライナスが思い出したように手を叩く。


「あの子たちの母親よ」


(なんだって?)

「なに!」

((えーっ?))


 ここでまたイボンヌが、今度は声を殺してくっくっくと笑う。


 子供らは一旦豪から引きはがされて、今はロレンツォとキケが相手をしていた。


 言われてみれば、確かに似ている。

 つまりそれは、このイボンヌに似ているということでもある。


「なんだかややこしいな」


(奇遇だな。オレもそう思ってたところだ)


「あの、ライナスさん……お久しぶりです」


 若い男の方が近づいてきて、深く頭を下げた。


「お前……まさか、ノックノックか?」


 ライナスの顔が、みるみる驚きと喜びに溢れていく。


「はい。ご無沙汰してます。こんなところで会えるなんて……本当に良かった」


 思わず涙が零れるノックノック。


「どこぞの貴族のおぼっちゃんかと思ったぞ」


 笑いながらノックノックの頭をわしゃわしゃするライナス。

 ノックノックって誰だ?と思いながらも見守る豪。

 盗賊団の若いのにこんなのいたっけ?


「デカ丸も一緒だったんですね。よかった」


 ノックノックの口から懐かしい言葉を聞いて、思わずライナスと豪は顔を見合わせる。


「はははは」

(はははは)


 大爆笑。


 よくわからないまま、おどおどするノックノック。

 実はエリックのことを、どう言おうかとものすごく悩んでいたのだ。

 どう取り繕っても、盗賊団討伐の現場指揮官だった事実は消えない。

 悩んだが答えが出ず、結局自分には過ぎた役だと諦めることにした。


「はははは」


 ノックノックも、すぐに乾いた愛想笑いで参加した。



 *



「おい! またあいつらが来るぞ!」


 ヨシュアが野獣(ワイルドビースト)に警告する。


 ジェシカは湖畔の光景に夢中で、集中を切らしていた。

 ヨシュアの声で我に返ると、慌てて気配と臭いを探る。


「後ろにも行った!」


 ジェシカの警告に、ヨシュアが手で了解の合図を返す。


「2人は少々厄介ですね。手伝っていただけますか?」


 珍しくセバスチャンが助力を求めてきた。


「もちろんです。カイル! ブレンダ!」


 それぞれマリーベルを中心に、四方を固める位置に展開する。

 前回の戦闘と同じ配置なので、問題ない。


「ファントムには手加減無用です!」


 マリーベルが鋭く言い放つ。

 それは即ち、迷うことなく殺せという指示だった。


「おお!」

「やった!」

「了解」

「オッケー」

「わかりました」


 野獣(ワイルドビースト)たちは、緊張と歓喜で体が震えた。

 先の戦闘で、ギリギリの命のやり取りに目覚めてしまったようだった。





「リベンジマッチだ。行くぞ、影召喚!」


「影召喚!」


 モグラの影人形(シャドウゴーレム)4体と、セミのが3体。


 7体が野獣(ワイルドビースト)に一斉に襲いかかった。


「強化!」


 モグラの影人形(シャドウゴーレム)が強化された。

 強化されても見た目は一切変わらない。

 それが一種の(トラップ)になるのだった。


 一度敗北を喫しているので、モグラは本気だった。



 *



「コイツら、なんか違う!」


 ジェシカが仲間に注意を促す。

 剣で斬りつけても、刃が通らないのだ。


「本当だ。前よりしぶといね」


 フランツもすぐに同意する。


「私の銃じゃ、もう限界」


 サラがお手上げ宣言。

 ダメージが通らなくなっていたのだ。

 魔力をチャージする余裕があれば、話は違うのだが。


「サラ! こっちは弱い!」


 ジェシカがサラを手招く。


「はいはい。ザコ係は任せて」


「ふんぬぅ~ッ! サム、今だ!」


 スパイクが両腕で1体の影人形(シャドウゴーレム)を後ろから羽交い絞めにしていた。


「ナイスパイク! 獣化!」


 サムがみるみる変身して、アルマジロになった。

 「獣化」スキルにより、特定の獣の性質を顕現させることが可能になるのだ。

 といっても、実際の見た目は着ぐるみ風で、非常に愛らしかった。


 肥大して硬質化した前腕部と鋭い爪で、脱出しようともがく影人形(シャドウゴーレム)を正面からひたすら殴りつける。


 ドゴバキ、ドガバゴガギッ!


 影人形(シャドウゴーレム)の胴体にヒビが入った。


「よし! 獣化!」


 今度はスパイクがゴリラに変身する。

 影人形(シャドウゴーレム)を羽交い絞めにしたままパワーMAX!


 バギバギバギボギ。


 影人形(シャドウゴーレム)を両腕で完全に押しつぶして、胴体から真っ二つにしてしまった。

 すぐに消滅する影人形(シャドウゴーレム)


「まず1体!」


 サムが叫ぶ。


「どんどん行くぞ、サム!」


「おう!」


 サムがその場でぴょんと跳び上がると、体を丸めて球状になる。

 それをスパイクゴリラが、恐ろしいまでに発達した腕を振りかぶって、思い切り打つ!


 バゴッ! シュルルルルル――。


 超高速回転のサムが、別の影人形(シャドウゴーレム)にヒット!

 当たって跳ね返ったサムが、そのまま影人形(シャドウゴーレム)へ打撃の連打。


 すっとかがんで影人形(シャドウゴーレム)の両脚を掴むと、大車輪投げの要領でスパイクの方へ投げ飛ばす。


 待ち構えたスパイクゴリラが、両拳を握りしめて真上から叩きつける!


 ドゴムッ!!


 地面に叩きつけられ、原形をとどめぬほどバラバラになった影人形(シャドウゴーレム)が消滅する。


「2体目!」


 スパイクが指2本を空へ突き上げ、意気揚々と宣言。


 それを見届けたフランツとサラも、意を決して獣化。

 フランツは山羊に、サラはマングースになった。


 野獣(ワイルドビースト)は、ジェシカを除く4人全員が「獣化」スキル持ちなのだ。

 (ジェシカはもともと犬人族なので、スキルとは無関係に変身可能)


 獣化した野獣(ワイルドビースト)はAランクに匹敵する強さだった。



 *



「くそ! なんだアレは?」


「ゴリラにヤギにアルマジロ? あとなんだありゃ?」


「どっちにしろ紛らわしいな!」


 ヤツらの変身した姿が、ファントムのコードネーム風で、ややこしいことこの上ない。


「お前のじゃ、もう相手にならんな」


「あんたのもやられたろうが! 獣化スキルなんてレアもん集めやがって、ふざけんな」


「こうなったら仕方がない、影巨人(シャドウジャイアント)!」


 モグラが影人形(シャドウゴーレム)の巨大バージョンを召喚。


 サイズが約3倍、各種ステータスも3倍だが、一度に出せるのは1体だけだった。

 (影人形(シャドウゴーレム)と同時召喚可能)


「強化!」


 更にそれを「強化」でステータス1.5倍。

 念には念を入れるのが、モグラのやり方だった。


 影巨人(シャドウジャイアント)が巨体の割に素早い動きで、野獣(ワイルドビースト)を次々と殴り飛ばしていく。


「いいぞ、やれやれ!」


 セミの影人形(シャドウゴーレム)が、ダメージを受けた野獣(ワイルドビースト)の追撃に回る。


 あっという間に形勢が逆転した。


 モグラは、湖畔にじっとしているリザードマン集団を警戒しながら、背後を取られないよう位置取りを計算しつつ、野獣(ワイルドビースト)の注意を完全に引き付けておく。


 セミにはもう自由にやらせることにした。

 死なない程度に援護しとけばいいだろう、と考えていた。


 *



「ふん、どうやら騎士団は役に立ってくれたようだな」


 斥候からの報告を聞いたオースティンは、満足そうに笑った。


 騎士団を先行させて、スコルピオンズは小休止していたのだ。


 それにしても、まさか湖にリザードマンの群れがいたとは。

 一緒に進んでいれば、共倒れになっていたかもしれない。

 もし先行していようものなら、自分たちが今のデイルたちの立場だったのだ。


「いいか、相手はリザードマンだ。わかってるな!」


 改めて部下に確認を促す。

 ターゲットは手配中の女ではないのか、という疑問が表情に出かけた者もいたが、口答えなどもってのほかだった。


「パーカー、スクロールは何本ある?」


「ハッ、火属性は50本であります!」


 パーカーは今回の出征時に、オースティン自ら指名した副官だった。


「少ないな。雷属性は?」


「ハッ、同じく50本であります!」


「ふん、まぁ何とかなるか……イスマイルはどこだ?」


「お呼びでございますか、団長」


 すぐ近くに待機していたイスマイルが、立ち上がる。

 彼はスコルピオンズの中でも相当優秀な、Aランク相当の兵士だった。


「魔法が使えるヤツをまとめておいてくれ。オレが合図を出すから、その後は任せる」


「ハッ!」


 すぐに立ち去って、兵の選別に動いたイスマイルの動きを目で追いながら、オースティンもようやく腰を上げる。


「よぉし! スコルピオンズ、戦闘準備!」


「おお!!!」


 総勢21人の戦闘狂が、湖畔へ進軍を開始した。

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