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転生したらゴーレムだったが全然動けない件  作者: くろイけ
序章:動けないゴーレム

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EP.05 ゴーレム、大地に立つ

(ゲージが、ついた!)


 豪は心臓が高鳴った(そのようなものはたぶんないけれども)。

 同時に激しい怒りが湧き上がった。


 この赤ゲージがエネルギー源なら今がその時だ。


(コノヤロー! 起きろオレ! 立て!!)


 その時、豪の全神経が石像と完全に繋がった。


 視界を遮るクマモンのシルエットが大きく揺らぐと、視点が高くなる。


 石像が立ち上がったのだ。


 ゴアァァァァァッ!!


 起き上がる石像から転がり落ちて怒り心頭のクマモンが襲い掛かって来た。


(テメー、ウサ吉になにしてくれてんだコノヤロー!!!)


 豪は全力で右フックをクマモンの顔面に横から叩き込んだ。


 バゴン!!


 視界に血飛沫が飛び散り、クマモンの頭が胴体から離れて遥か遠くへ飛んでいった。


 首から間欠泉のように血が噴き出しているのを無視して、豪は振り返る。


(ウサ吉!!)


 だが地面に視線を落とした瞬間、全てを察した。


(――ごめん。ごめんよ……)


 石像が跪いて両手を地面についた。


 豪は号泣していたが、ゴーレムは静かに停止しているだけだった。



 ピコーン!


 また音がして、赤ゲージが3ミリぐらいに伸びた。


(おい、まさか……そんな……やめてくれ)


 豪はなぜ赤ゲージが溜まったのかを理解した。


 石像は、倒した魔物の魔力を吸収するのだ。


 最初の1ミリは、自ら押し潰したウサ吉の分。

 次の2ミリは、クマモンの分。


(なんてこった……くそ!)


 あらゆる思考を感情が拒否した。



 *



 ようやく落ち着いた豪は、状況を整理する。


 倒した魔物から動力源を補給する。

 この世界の現実を考えると非常に理に適った仕様だ。


 おそらくこの世界には魔物がうようよいるのだろう。


 であればそれらを倒すことで、いつでも動力の補給が可能となるのだ。

 ほとんど永久機関のようなものである。


 ただ、石像にはもともと豪のような意識はなかったのだ。

 本来は何か目的があって作られ、制作者の命令で動いていたはず。

 だが制作者に捨てられ、放置されたまま、やがてエネルギー切れになったのだ。


 それがこの石像――ゴーレムの正体だ。


 確証はないが、おそらくそれが真実だと豪は推察した。


 豪は穴を掘ってウサ吉の亡骸を埋め、そこら辺の木を一本倒して、その上に突き刺した。


(吸血鬼じゃないんだから……作ったヤツ、性格悪すぎるだろ)


 制作者への恨みは一生忘れないからな、と豪は心に決めた。


 普段ならそろそろ残り時間が気になる頃だったが、赤ゲージが復活した途端に時間表示は消えてしまっていた。


 つまり、あの時間表示はスリープモードのような特殊状態で表示されるものだったらしい。


 赤ゲージがあるうちは普通に動けるということなのだろう。


 そして、赤ゲージはまだ3ミリから減っていないように見える。


 相当、燃費がいいゴーレムだ。


(せっかくだからこの辺を散歩でもするか)


 ゴーレムに転生して初めて、豪は自分の足でこの世界を歩き回ることにした。



 *



 森の中のようだった。

 見当もつかないほど広大な森。


 一方の遺跡は、思っていたよりも小規模だった。


 遺跡というより寧ろ、屋敷跡と言った方がいいかもしれない。 


 何か手掛かりになるようなものはないかと、近辺を探したが成果なし。


 唯一、瓦礫の下に魔法陣のような模様がある場所があったが、ゴーレムにどうにかできる代物ではなかったので諦めたのだった。


 瓦礫や廃材から推測するに、研究施設っぽい何かがあった。

 あるいは魔法を使った実験のようなものをしていたのではないかと思われる。


 やはり、ゴーレム制作者が住んでいた、あるいは仕事をしていた場所だったのだろう。


 事実、ゴーレムのパーツのような残骸が幾つか見つかった。

 もしかしたら他のゴーレムがいた可能性もゼロではない。


 しかし今となっては全てが想像の域を出なかった。


 結論――成果はゼロ。


 ただ、この場所にはなんとなく離れがたい雰囲気があった。

 豪にはなんの縁も、記憶もないにも関わらず、だ。


 豪はここを「ゴーレムの家」と命名した。


 そして改めて見える範囲で自分の体を点検したが、長年外に晒されていたわりに、状態は悪くなかった。


 埃だらけだし、蔦が絡まったり苔が生えていたりしている部分はあるものの、見方によっては味があるともいえる。

 動きも問題なし。


 ただ材質というか、なにでできているのかは全く不明。

 石像などと最初は言っていたが、明らかに石ではなかった。


 どちらかと言えば金属。

 なんとか合金、みたいなイメージだ。

 この世界固有のものか、制作者オリジナルの素材なのかもしれない。


 あとはこのゴーレムの機能面だが、さすがにノーヒントでは全くわからず。


 マニュアルのようなものでも置いていってくれたら良かったのに、と豪は思ったが、あったとしても豪に読めたかどうかは怪しい。


 果たして今この状況は、制作者が意図したものなのかどうか。


 考えても無駄なのはわかっている。

 もし制作者に会う機会があったら文句のひとつも言ってやろう、と豪は思った。



 日も傾いてきた頃、豪はもう一度ウサ吉の墓の前に立った。


 ゴーレムのデカくて不器用な手で作った墓はあまりにも雑で無様な形だったが、こればっかりは豪にもどうにもならなかった。


(ウサ吉、ごめんよ。そして本当にありがとう。成仏しておくれ)


 しばらく佇んだ後、くるりと向き直ると、クマモンの死骸はガン無視して歩き出す。 


(さて、それじゃそろそろ行きますか)


 ここで赤ゲージが消えるまで待っていても始まらない。

 ウサ吉のくれた最初の一歩を、無駄にするわけにはいかないのだ。


 豪は旅に出ることにした。


 この世界のことを少しでも知るために。

 そして新たな出会いを求めて――。

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