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転生したらゴーレムだったが全然動けない件  作者: くろイけ
序章:動けないゴーレム

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EP.04 はじめての友だち

[転生1156日目]


 ブン……起動。


(今度はいつだ!?)


 目覚めるなり豪は目を開き、周囲の状況を確認する。

 今回は昼らしい。

 既に何度か見たこの世界の太陽は、元の世界とあまり変わらなかった。


(雪はもうないな。ってことは少なくとも何ヶ月かは経ってるのか)


 豪が、意識のない間の時間経過に気づいたのは季節変化のためだった。

 最初に雪を見た時は、日替わりで季節が変わるような変化の激しい気候の世界なのかと考えた。

 だがどうやらそうではなかった。


 気づかせてくれたのは一匹のウサギだった。


(あいつ、今日も来るかな)


 豪はウサギの訪問を待ち焦がれていた。

 生き物を見ること、身近にいることの癒し効果は抜群だった。


(あ、来た!)


 左奥の草むらから、ぴょんぴょんと白いウサギが近づいてくる。


 最初に見た時は小さかったのに、今やもう立派な大きさに育っていた。


 いや、大きすぎるくらいだった。

 周囲の草木のサイズから考えると、人間の子供より大きいかもしれない。


 上の切歯が異常に発達して尖っていた。

 そしておでこからツノが一本生えている。

 最初はこのツノがなかったので、普通にウサギと思っていた。

 しかしツノが生えてきた時に、コイツはただのウサギじゃないとわかった。


 魔物、あるいはモンスターと呼ばれるような存在なのだろう。


 それでも豪にとっては唯一の、可愛いご近所さん。

 ウサ吉であることに変わりはなかった。


(よぉウサ吉、元気だったか? だいぶ大きくなりやがって)


 もちろん、しゃべれるわけではないし、ウサ吉には何も伝わらない。

 それでも話しかけずにはいられなかった。


 ウサ吉の方も久しぶりにこちらの目が開いているのを見たようで、すぐ近くまで来てくんくんと匂いを嗅ぐような仕草を見せる。


(なぁ、お前オレに魔力を分けてくれないか? それとも誰かそれが出来そうなヤツを知らないか?)


 豪は話しかけ続ける。


 二段目ゲージはあれから一度も変化なし。

 つまり、よくわからない赤文字が表示されているだけ。


 尚、残り時間表示の方は、今では6時間まで増えていた。

 但し、6時間はこれで3回目なので、これ以上増えない可能性が高かった。


 その一方で意識のない時間はどんどん長くなっていた。

 このままではあっという間に100年くらい過ぎてしまいそうだった。


(この遺跡、いつのものなんだ? 遺跡があるってことは人がいたんだよなぁ)


 何度目かの感想。

 そして、いつも同じ結論に辿り着く。


 そう、遺跡がこんなになるまで長い間、誰も訪れたことがないのだと。


 カツ、カツ……。


(ん? なんだ今の音?)


 ウサギがツノで豪の体を、もとい石像の体をツンツン突いていた。


(やっぱ、何も感じねぇなぁ)


 まだ、体の感覚は取り戻せていなかった。

 ただ、以前とは違ってなんとなくこの石像が自分の体であるという程度の認識はあった。

 VRゲームでただの映像を見せられている感覚とは明らかに違ったのだ。


 カツ、カツ……。


(ははは。可愛いヤツだなぁウサ吉。遊んでほしいのか?)


 カツ、カツ……。


 ウサ吉は豪の周囲を動き回りながら、あちこちを突いていた。


(コイツ、オレが動くかどうかを確認してるんだな)


 事実そういう風に見えた。


 その時、突然それは起こった。


 ゴアアアアアッ!!


 ウサギがやってきた草むらの方から獣の咆哮が聞こえたかと思うと、ガサガサと草を掻き分ける音と共に、巨大な熊が姿を現した。


(熊!? 熊のモンスターか。それにしてもでけぇなオイ。オレと同じくらいありそうだ)


 これは豪の身長ではなく石像の体高を豪が想定したものだった。


 約3メートル。


 実は現実のヒグマと比較するとそこまで巨大ではないのだが、豪は座った体勢なので実際よりも大きく見えてしまうのだった。


 クマモンスター――略してクマモンが四足歩行で突進してくる。


 ウサ吉が豪の後ろに回り込んで隠れる。


 豪は遺跡の壊れた壁に背をもたれるように座っているので、腰の部分に隙間があったのだ。


 グオァァァァッ!!


(のわっ! なんだよオイ! やめろ!)


 豪の目の前でクマモンが立ち上がり、両手を上にあげて威嚇する。


(オレは関係ねぇだろ、やめろバカ)


 ドガッ!


 クマモンが石像の胸を殴りつける。


 感覚がないので痛みもないが、振動は感じる。


(お、揺れてるぞ?)


 新しい刺激に豪は喜ぶ。

 触覚・痛覚はないが、振動は感じる。

 石像内部のセンサー的なものが生きてるのかもしれない。


 ドガッ!

 バギッ!


 クマモンの連打連打連打!


 ウサ吉は石像の腰の後ろあたりで身を縮めているが、豪には見えないし感じない。


(おい! やめろって言ってんだろ!)


 必死に抗議する豪だが、当然クマモンには何も届かない。


 とうとう業を煮やしたクマモンが石像の上に乗って、押し倒そうとする。


(バカ、お前なにしやがる……あっ!!!)


 ガガガガ、ドーン……。


 クマモンの重さのせいで、後ろの壁ごと押し倒されてしまった。

 壁も経年劣化でかなり脆くなっていたのかもしれない。


(ああっ! ウサ吉っ! おい、大丈夫か!?)


 ウサ吉がうまく脱出できたのか、そのまま下敷きになってしまったのか。


 確認したい。

 今すぐ体をどかしたい。

 クマモンをぶん殴りたい。


 だが、当然ながら動けないし何もできない。


 倒れた石像は仰向けになったまま。

 太陽の陽射しが眩しい。

 そこにクマモンがシルエットになって覆いかぶさってきた。


(くそ、コノヤロー。どけったらどけよ!)


 ピコーン!


 何か音が鳴った。


 見ると、二段目のゲージが表示されていた。

 僅か1ミリほどの長さの赤ゲージが――。

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