EP.37 ロレンツォ語り
[転生1189日目]
豪たちがジャバ村に滞在して、一週間ほどが経過していた。
この間に、豪は主にロレンツォから、様々な情報を得ていた。
幾つかのやりとりを抜粋してみる。
*
(なぁ、この村ってどの辺にあるんだ?)
「うむ。そうですな。まずこの辺り一帯は、ボツヌ山脈と呼ばれておりますのじゃ。ゴーダムの北西部にあって、北にはパドキア、西にサジタリアと、三国の国境にまたがっておりますが、実際にはどこの国にも属さぬ無主地になりますのじゃ」
(へぇ、そんな都合のいい場所だったのか)
「はい。地形が険しいのもありますが、魔物の数も多く、昔から人の侵入を拒んでいるような場所でしたからな」
(まぁ確かに魔物は多かったな。バカでかい蛇とか、地面の下を掘って進む巨大ミミズみたいなヤツとか)
「なんと!巨大蛇に巨大ミミズですな。そんな魔物と遭遇してよくぞご無事で……」
(だってほら、オレはこんなだから別に平気っていうか)
「それでも、ライナス殿やウサ子殿もおられたのに! さすがは大賢者のゴーレム様じゃ」
(いい加減その呼び方やめてくんない? 大賢者とかオレ知らないし)
「ほっほっほ、そうでありましたな。これは失敬」
*
(魔物と言えば、リザードマンは知ってるか?)
「ふむ、山の奥の湖にいる連中ですな」
(やっぱ知ってんのか。じゃあもう少し仲良くしろよ)
「仲良く……ですと? あのトカゲどもと……でございますか?」
(共感持ち連れて行けよ。ちゃんと話し合えばわかるから)
「まさか、ゴウ様はあのトカゲどもともお知り合いなので?」
(ああ、ここに来る前に連中の村に一泊させてもらったんだ)
「なんと……あのトカ……リザードマンとゴウ様が一緒に……」
(あんた、知らないだろうから教えてやるけど、あのリザードマンたちもフローレンスの弟子なんだぞ)
「な、なななな、なんですとッ!!!?」
(なんでも湖が干上がりそうになってたのを助けてもらったんだとよ。それで湖の環境造りから一緒に3年近くやったって言ってたぞ)
「3年ッ? 3年も!? 我らの御先祖さまがご一緒できたのは僅か2年にも満たない期間じゃったというのに……」
(あらら、なんか悪かったな。知りたくない事実を無理矢理教えちまって)
「いえ、申し訳ございませぬ。つい興奮して我を忘れてしまいましたのじゃ」
(なに、意外と元気なじいさんでむしろ安心したよ)
「それではあのリザードマンどもも、魔法が使えるのですな」
(ああ、たぶんな。実際に見たのは長老の魔法だけだったが)
「そうですか。しかしこれは大変貴重な話をお聞きしました。今度適任の者を使者として向かわせましょうぞ」
(くれぐれも平和的に頼むよ。オレに言われたってことなら向こうも話を聞くと思う)
「わかりました。そう伝えておきますのじゃ」
*
(この村の連中って、元々はどこから来たんだ?)
「それはもちろん、ディアブロリッチ領マグナール出身の者たちにございます」
(ディアブロ……って、フローレンスの家のことか?)
「元々この辺り一帯はひとつの国だったのです」
(それがディアブロリッチ領?)
「ディアブロリッチ領マグナールです。このレムデール大陸でも五指に入る強大な国であった。それが他国の干渉で国を分割されることになり、フローレンス様の親御様はグランダム帝国に連行されてそのまま消息不明になってしまわれたのです」
(ちょっと待った。そのグランダムってのはどこのどいつだ?)
「この大陸の二大勢力のひとつ、グランダム帝国です。今はどうかは知りませぬが」
(うん、今も昔も知りませぬよオレはw てかあんたもそれ聞いた話だろうに)
「私も詳しくは存じませぬが、帝国が魔力を封じる呪具を使ってディアブロリッチ家の能力を無力化して捕らえたのだと、噂されていたようです」
(ますますよくわからんな。その辺、もっと詳しい人は誰かいないのか?)
「ディアブロリッチ家の者であればあるいは」
(いるのか!? もしかして!)
「いるにはいるのですが、今は山で修行に入っておりますのじゃ」
(は? 山で修行? なんの?)
「賢者になるための修行です。村で特に優秀な者に許可される修験道ですのじゃ」
(魔力養成どころじゃねえ。賢者育成村だったのか、ここは!)
*
そして今、豪とライナスとウサ子は準備万端で出発を待っていた。
「ゴウ様、本当に行かれるのですか?」
(ああ、直接話が聞きたいんだ)
ディアブロリッチ家の者に。
賢者になるための修行をしている者に。
賢者とは何なのか。
大賢者とは何なのか。
そしてフローレンスについても詳しく。
(あ、危ねえ危ねえ。そいつの名前聞き忘れてた)
「修行をしておるのは現在3名。ナナイとキャシーとイボンヌですじゃ」
(3人ともディアブロリッチなのか?)
「いえ、イボンヌです。イボンヌ・アジャーニ・ディアブロリッチ」
(そいつ今、何歳なの?)
「えーっと、確か……60と少しじゃったような……」
(なんだババアかよ。つまらん)
「ゴウ、お前もしかして女に興味があったのか?」
ライナスが意外そうに訊いてきたが、んなわけあるか!
(ねーよ。もしあってもこのオレに何ができるってんだよ!)
ライナスにも豪の苛立ちは通じたようで、やや申し訳なさそうに苦笑いをした。
キュッ。
そしてウサ子がライナスの肩から豪を睨む。
(おいおい、今のはライナスが完全に悪いだろうが。オレは何もしてねえ)
ウサ子はプイと顔を背けると、ライナスの首筋に鼻を近づけてくんくん。
(ちぇっ、これみよがしにイチャつきやがって)
「ゴウ様……よろしいですかな」
ロレンツォがおそるおそるといった様子で話しかけてくる。
(ああ、すまん。なんだっけ?)
「イボンヌは3人の中では一番修行歴が長い者になります。もしかするとだいぶ森の深く、あるいは山の最も険しい場所にいる可能性が高うございますので、どうかお気を付けください」
(あ、ああ、わかった。とりあえず教えてもらった賢者の洞窟とかいう場所へ行ってみるわ)
「ライナス殿もウサ子殿もくれぐれもゴウ様をよろしくお願いしますのじゃ」
なぜ自分がお願いされる側になるのかわからないが、面倒だから黙っている豪。
「わかった。では行ってきます」
キューッ。
ライナスとウサ子が先、豪が続くという隊列で出発する。
今回は山道になるため、ゴーレムが先頭だと何かあった時に後ろの方が危険、ということで順番が逆になったのだ。
これなら、もしライナスやウサ子に何かあった時は、豪が後ろからサポートできる。
ちょっと危険なハイキングの始まりだ。





