EP.31 森の三人組
[転生1181日目]
翌朝、もう一日だけと引き止める長老をなんとかなだめて、豪たちは砦を後にした。
見送りの時、リザードマンたちがまたペタペタしてきたのには参った。
リザードマンの手のひらは少しひんやりして、吸い付くようななめらかさだった。
そして、昨日補充してもらった魔力を、湖畔へ戻るホバー移動でまた消費してしまった。
(すまん、ライナス)
「大丈夫だ。魔力は有り余ってる」
懐の丸薬のことも含めての言葉かもしれないが、心遣いが豪の胸に沁みる。
ゴーレムの胸には、石だか金属だかの無機物が詰まっているのだが。
人間の村まで徒歩で約三日。
ゴーレムが走れば、おそらく二日かからなかったかもしれない。
だが、あえてゆっくりのんびりと進んだ。
豪とライナスとウサ子、三人で過ごすこの時間を、大切なものに感じたからだ。
マジックアブソーバーで魔力補給をしながら魔物狩り。
動物も一日一頭だけ狩り、夜に焼いて食う。
ただし、ゴーレムは見てるだけ。
火を囲みながら話をして、月明かりの下で寝る。
ただし、ゴーレムは見張り番。
ライナスは砦を出てから、やや饒舌になった気がした。
そしてウサ子は、かなり活発に二人から離れて動き回り、よく話した(鳴いた)。
豪は魔力ゲージの残量に注意しながら、ほんのちょっとだけの威力になるよう注意しながら、ちょいちょい魔法の練習をした。
魔法の属性の切り替えと出力調整のコツは掴めた気がする。
狩りでも移動中でも、三人のコンビネーションはもうバッチリだった。
*
[転生1183日目]
「そろそろのはずなんだが」
言うなりライナスはすぐ近くの木に登って、高いところから確認する。
当然のように、ウサ子はその肩の上。
「煙が見えるな」
おでこに手を当てて、遠くを見ながら言うライナス。
(じゃあそれだ。よかったな)
「ああ。距離はだいたい三時間ってとこだな」
言いながら、するすると木を下りてくる。
(うげ! まだ結構あるな。暗くなる前に着けるかな)
キュー。
「ウサ子が大丈夫って言ってるぞ」
(いやいや、翻訳係はリザードマンだけにしとけよ。ははは)
豪は冗談で笑い飛ばしたつもりだが、ライナスは真剣そのものだった。
キュッ。
なんだかウサ子が睨んでいるように見える。
(あー、いや、まあそうだな。たまには心が通じることもあるかもしれないな、うん)
居心地が悪すぎて、中途半端に肯定してしまったものの、直後に一層バツが悪い思いをするハメになる豪。
ゴーレムは余計なことを言わず、黙っておけばよかったと後悔する。
キューッ!
突然ウサ子が警告音を発した。
同時にライナスが動き出す。
どの方向かまで、瞬時に理解できたらしい。
あっという間にゴーレムだけ置き去り。
(おい待てよ! 忘れ物だぞー!)
自嘲気味に叫びながら、ゴーレムもライナスの走り去った後を追う。
すると茂みの向こうで、何やら揉めている気配。
(ジャジャーン、ゴーレム参上!)
悪ふざけ全開で茂みから出ると、ライナスが三人の人間と話していた。
が、茂みからゴーレムが飛び出したので三人が驚く(当然だ)。
「あ、あれは!!?」
「まさかッ」
「で、出たぁーッ!!」
そのままうわあああと叫びながら、全力疾走で逃げて行ってしまった。
「おいゴウ、出てくるときはもう少し考えてくれ」
ライナスが呆れて愚痴る。
(すまん、ちょっとふざけすぎた)
キューッ!
(いや、だってお前らがオレだけ置いて行くから……って、アレ?)
「なんだゴウ、お前もウサ子の言葉がわかるんじゃないか」
(いや、今のは……ん? 別にわかったわけじゃなくて、なんとなくだよなんとなく)
「それをわかるって言うんだ、ゴウ」
わからない。
わからないが、わかる気がする。
だが、やはりよくわからない。
(で、あの三人となに話してたんだ?)
「ああ、村のこととか。ゴウやウサ子も入れるか聞いてみたんだが……」
(どうだったんだ?)
「そこへお前が来てしまった」
(あああ!)
台無しじゃないか。
キュッ!
(だからごめんて。オレが悪かった)
言ってからまた気づいてしまった豪。
これはいったいなんなんだ?
気持ち悪い、と言ったら怒られるだろうが、ちょっと鳥肌ものだ。
もちろんゴーレムに肌などないのだが。
「とにかく行こう。少なくとも敵意は感じなかったから、行けば何とかなるだろう」
(だといいけど……)
キュッ。
お、おお。
三人は、村へと歩き出した――。





