表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したらゴーレムだったが全然動けない件  作者: くろイけ
第二章:大賢者のゴーレム

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/35

EP.28 旧交

 ライナスは湖畔から少し離れた大木の上から、様子を窺っていた。


 水場を探して見つけた湖にリザードマンがいたため、このままでは豪たちを連れてくることができないと悩んでいたところへ、当の本人たちがやってきたのだった。


(どうしてここへ?)


 ウサ子とリザードマンが豪を先導しているのにも驚いた。


(リザードマンと話をしているのか?)


 声は聞こえなかったが、なにやらやりとりをしている様子だった。


 状況がわからないうちは動かない方がいい、とライナスは考えた。

 そうこうしているうちに、ウサ子がゴーレムの肩に乗った。


 何か動きがあるのか、と思ったら湖の中から50体近いリザードマンが現れたのだった。


(マズイ! 囲まれるぞ)


 すぐに木から下りて助けに行こうと思ったが、途中で思い留まった。


 ライナスが行っても、相手にできる数ではない。

 むしろゴーレムが守りに徹していれば、そっちの方が安全なのではないか。


 それに今のところは、リザードマンたちに敵意のようなものが感じられなかった。

 自分が行くことで、逆に警戒させてしまうかもしれない。


 そして、ライナスが考えた通り、リザードマンたちはゴーレムを取り囲んだものの、攻撃するどころか、各々がペタペタとゴーレムに触り始めた。


(なんだあれは? いったい何をしているんだ?)


 ウサ子はゴーレムの肩に乗ったまま、警戒するでもなくむしろ悠々としていた。


 !!?


 その時、偶然なのかそうでないのか、ウサ子と目が合った気がした。


(いや、偶然じゃない)


 再びウサ子が、はっきりとこちらを見た。


(ウサ子……)


 ウサ子は耳をピンと立てて、じっとライナスを見つめる。


「大丈夫なんだな、ウサ子」


 思わず小さく呟くライナス。


 キュー。


 ウサ子の声が聞こえた気がした。



 *



(なんだよ、なんなんだよお前ら。近い! 近いってば。こっち来んな!)


 50体近いリザードマンたちが、どんどんゴーレムの周りに集まってきた。

 気がつくと、ゴーレムの周囲をリザードマンたちが取り囲んでしまっていた。


(ウサ子、どういうことなんだよこれは!)


 キュー。


(キューじゃわかんねえよ)


 肩の上で、まったく動じる様子もないウサ子。


(おいおいおいおい、なんのつもりだ、やめろ。やめろってば!)


 槍を持っていない方の手で、リザードマンたちがゴーレムの体を触り始めた。

 ペタペタと、ゴーレムの腕やら胸やら腹やら背中やら脚やら。

 完全にアイドルの出待ち状態。


(なんか気持ち悪いんだけど。誰かこの状況を説明してくれ! マジでおかしくなるぞ)


 どちらかといえば、爬虫類も苦手な部類だった豪。

 突然大勢のトカゲに囲まれ、挙句触られるという状況に、脳が拒否反応を起こしていた。


 すると、急にリザードマンたちの圧が和らいだ。

 湖の方向に対して、左右に分かれるようにリザードマンたちがスッと移動。

 まるでモーゼの海割りのように目の前が開けた。


 開けた視界の先にある湖面に、新しい波紋がひとつ。


 ほどなくそこから、1体のリザードマンが現れた。

 今まで見た個体とは違う。

 鱗が剥げている部分が多く、全体的に色褪せて見えた。

 なにより、鼻先の両側から白くて長い髭が垂れ下がっていた。

 見たまんま予想するなら、長老的な個体と思われる。


 その長老がゴーレムの目の前までやってくると、立ち止まり口を開いた。


「ヒ……サシ、ブリ……ダナ。ゴ……レム、ヨ」


(なっ、なな、なんですとぉぉぉぉぉぉぉッ!!)


 大混乱の豪。

 なにがなにやらわけがわからなかった。


 リザードマンがゴゴゴ以外の言葉を発している。

 しかも、豪が直接理解できる言語だ。

 更に、ゴーレムに対して久しぶりと言っている。

 以前にも会ったことがあるということなのか。


 いったいどういうことなんだ?

 オレがこのゴーレムの中に定着する前のことか。

 でも、いったいなにをどうしたらリザードマンと知り合いになるんだ?


「ン? オマ、エ……チ、ガウ、ゴ……レム……ナノ、カ」


(違うも違わないも、全然わかりません一切覚えてません覚えてるわけがありません)


「マル、デ、ニ……ンゲン、ノヨウ……ナ、シ……コウ、ダナ」


(あんた、オレの考えてることがわかるのか?)


「ワカ、ル……フロ……レンス、サマ……ノ、オカ……ゲ」


 ――なんということだ。

 フロレンスとやらがどこの誰かは知らないが、天才かよ。


 ライナス以外に意思疎通できる相手が、まさかのリザードマンとは!


(オレは豪、ゴウだ。あんたの名前は?)


「ナ……マエ、ナイ。ワレ……ハ、ケン……ジャ。コノ……ムレ、ノ……オサ」


(ケン? 名前はないのにケン?)


「ソウ……デハ……ナイ。ケンジャ……ダ」


(ああ、賢者か。リザードマンの賢者が長をやってるのか?)


 リザードマンには個体に名前を付ける習慣がないのか。

 役割を示す賢者や長という概念だけがあるのだろう、と豪は理解した。


「ソウ……ダ」


(オレと昔に会ったことがあるのか?)


「オ……マエ、カ、ドウ……カ、ワカ、ラ……ナイ。フロ……レンス、サマ……ノ、ゴ……レム」


(うーん、そのブツ切れ口調もう少しなんとかならんのか。わかりにくい)


「ス……マ、ナイ」


(あ、いや、こっちこそすまん。仕方ないよな、人間の言葉話すのも久しぶりなんだろ?)


「ソウ、ダ。ダガ、オ……マエ、ノ、コトバ……ム、ズカシ……スギ、ル」


(ん? どういうことだ?)


 このままでは豪だけではなく、誰もがイライラしてしまうため、端折ることにする。


 リザードマン賢者である長老が言うにはこういうことらしい。


 200年以上前、大賢者フローレンス様がゴーレムと一緒にリザードマンを救ってくれた。

 以降、フローレンス様とゴーレムはリザードマンにとって救世主。

 長老は、当時まだ幼体だったが、フローレンス様に魔法を教えられ、賢者にまでなった。

 賢者は言語翻訳の魔法を使うことができる。

 また長老はゴーレムと意思疎通する「共感」スキルをフローレンス様から与えられたので、豪と意思疎通できる。

 ただ、普通のゴーレムは単純な受け答えをするだけなのに、豪は人間のように思考しているのが普通でなく、不思議だ。

 今はリザードマン語を無理矢理翻訳しているが、豪の言語が難解過ぎて魔法でも効率よく翻訳できない。

 今日、森でゴーレムを見たという報告を受けたので湖へ招くよう指示した。

 久しぶりに訪れてくれたゴーレムに、是非一族全員で感謝の意を伝えたかった。


 ざっとこんな感じだ。

 情報量が多すぎて、頭の中でちゃんと理解するのに四苦八苦した豪。

 本当はもっと掘り下げたいこともあったが、これが限界だった。

 あのたどたどしい日本語でのやりとりが、苦痛すぎたのだ。


 キューッ。


 一通り話が終わったところで、ウサ子が一声鳴くと、リザードマンたちに緊張が走った。


 長老がさっと手を横に上げて、リザードマンたちを制する。


(ライナス!)


 森の中から、ライナスが意識的にゆっくりと歩いてくるのが見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ