EP.24 新たな力
[転生1176日目]
近づいてみると、思った以上に大きな穴が開いていた。
盛り上がっているのだから、地中から地上に開いた穴だ。
豪は音を立てないよう注意して、ゆっくりと穴を覗き込む。
夜中だし、穴の中だし、当然何も見えないと思いきや、ゴーレムは夜目が効くのだ。
そのせいか、昼間より夜間の方が若干魔力の減りが早い気がした。
ズリュッ、パグンッ!
(は? なに!?)
突然視界が真っ暗になった。
夜目ではどうにもならない状況。
またあの闇の中に戻ったのかと、一瞬パニックに落ちかける豪。
いや、でもゲージは青と赤、ちゃんと見えている、と気を取り直す。
「どうした、ゴウ」
ライナスの声が上の方から聞こえてきたので、完全に安心した。
だが、今度は体を下へ下へと引っ張られる感覚。
かなり強い力だった。
(もしかして穴に引きずり込まれようとしてる?)
「ゴウ! そいつは巨大ミミズだ! 気を付けろ!」
(と、言いましてもですね。今更何を気を付けろと)
察するに、穴を覗き込んだ時に頭をパクリとやられたのだろう。
手で頭を触ろうとしたら、やはり何かがいた。
(なんだっけ、確かギガワームとか言ったか? ワームって虫だっけ? いや、確かあいつもワームって言ったような――ミミズ!!!)
うん、まぁぐちゃぐちゃ系よりは大丈夫。
耐性はある。
子供の頃は、釣りのエサによく使ったし。
あのどろどろの土の中から何十匹も捕まえて、クロレラのケースに入れて川まで持ってったんだから、今更なにが怖いもんか。
ゴーレムの頭を咥えこんでいるものの頭を両手で掴み、そのまま後退してミミズを引きずり出そうとする豪。
「ゴウ、そのまま下がれ! いいぞ!」
相変わらず、ライナスの声だけはよく聞こえる。
そのまま後退していくと、やがてズルッ、ズルッと大きなモノを引きずるような音がした。
(よし、それならここはゴーレムパワーで――フンッ!)
左手で頭を、右手でその少し下を掴んで思い切り左方向に振り回した。
ズルッ、ブオンッ!
ダダーーーン。
地面が揺れた。
「よし、そのまま抑えてろ!」
ライナスの声がした直後――。
明るくなった。
ミミズが、っていうかこれミミズなのか?
クリーチャー映画で見たことがあるような感じのバカでかいヤツ。
両端が頭で、丸い口にギザギザの歯があるバケモノ。
「大丈夫か、ゴウ」
ライナスが剣についた黒いモノを拭いながら近づいてきた。
バケモノミミズが三等分されていた。
そして、どれもまだ動いていた。
やっぱキモいな。
動いてはいたけれども、生きているわけではなく、無事口を放してくれたらしい。
ズン! ズン! ズン!
三つとも踏んで潰してやった。
ハイ、これでおしまいっと。
キューッ!
(え、ウソ!?)
予想外のウサ子の警告。
ライナスがウサ子を抱いて、木の上まで登っていく。
(おい、オレは?)
木の上から、無言で先を指差すライナス。
ボコボコボコボコ……。
土が大きく盛り上がりながら、こっちに迫ってきていた。
(マジかよ、まだいたのか!)
キューッ!
(え!?)
木の上を見上げると、ライナスがまた別な方角を指していた。
そちらからもボコボコボコが!
(二匹……いや、全部で三匹か)
ゴーレムに向かって、三方向からボコボコボコが近づいてくる。
さっきのヤツが、やられる前に仲間を呼んだのかもしれない。
(しょーがねーなあ)
豪は覚悟を決めて、走り出した。
ミッドナイト・ランニングゴーレム!
「おい! どこへ行くんだ! ゴウ!」
(ちょっと離れたとこまで。お前らはそこにいろ)
ライナスを、というより主にウサ子を危険に晒すわけにはいかなかった。
一度守ると決めた以上、それが最優先。
だから、ウサ子のいる場所から離れることが第一。
ミミズどもはゴーレムを狙っているようなので、それを利用しない手はない。
野宿する前に通ったところにあった、見通しがよい場所まで出る。
(ここならまぁいいか)
ボコボコボコ。
ボコボコボコ。
ボコボコボコ。
ちゃんと三匹とも、追ってきているようだ。
問題はどうやって倒すか。
全部地上に出てきてくれたらいいんだが。
(そういえば地中の生物って、耳が目の代わりなんじゃなかったっけ?)
だから大きな音が苦手だったような記憶があった。
あまり自信はないけれども。
試しに、力いっぱい地面を踏みつけてみた。
ドンッ! ドン、ドンッ!
ボコボコボコ。
ボコボコボコ。
ボコボコボコ。
変化なし。
(ダメか……)
ミミズがかなり近づいてきた。
(このゴーレム、戦うための装備とか武器とかはないのかよ)
もちろん何の反応もなし。
うーん、土の中に通る攻撃っていうと――雷とか!?
(魔力で動くんなら魔法使えたりしないのかな?……雷!? サンダー!!)
ピカッ、ゴロゴロゴロ……。
突然、頭上に稲光が走り、雷鳴が轟く。
そして、赤ゲージの左下に稲妻っぽいアイコンが出現!
(マジか! あるのか? でもどうすりゃいいんだ? ええい! 適当だ!)
ゴーレムの右手を頭上に高く上げ、人差し指を立てる。
バチバチバチ!
その指に雷が落ちる。
落ち続ける。
電流のように稲妻が天と指を接続した。
稲妻のアイコンのアウトラインが派手に点滅し始めた。
(サンダーブレイカー!!)
叫びながら指を振り下ろすと、チャージされた稲妻が指先から一気に放出される。
バリバリバリバリ!!!
稲妻が三又に分岐して、接近する盛り上がりの先頭部分にそれぞれ着弾すると、物凄い音を立てながら煙が上がる。
プスプス……。
ミミズどもが止まった。
(ほんとにできた……いや、やってしまった……)
ただし最後の叫びは、思い出すと恥ずかしいので忘れてしまいたかった。
つい勢いで言ってしまっただけなのだ。
むしろ完全に同じ技名にしなかった理性を褒めて欲しい。
(待てよ、雷が出来たなら……ファイヤー!)
ゴーレムの掌を上に向けると、焚火のような火が発生した。
(ファイヤーストーム!)
そのまま掌を前方に向けると、火炎放射のように前方に炎が放出された。
(やべー、カッコイー! 超楽しい、マジか!)
豪は有頂天になりかけていた。
自分が、異世界で、ゴーレムだけれども、まさかの魔法が使えるなんて!
(神様ありがとう!!)
すっかり手の平返し。
(んじゃんじゃ次はアレだ。オレが食らったヤツ。フリーズ!だっけ?)
何も起きなかった。
(アレ? 違ったっけ? コールド!)
やはり何も起きなかった。
(おっかしいなぁ。氷は無理なのかな。じゃあ次は)
ブッ――。





