EP.17 王者の真価
「ドレイク盗賊団に告ぐ! 抵抗せず、おとなしく投降しろ!」
ヨシュアの声が盗賊団のアジトに響く。
ヨシュアの横に立っているのはブレンダとカイル。
少し離れた後ろにエリック。
エリックのそのまたすぐ後ろにBランクパーティ『北限の輝き』のメンバー5人。
馬車3台は更に後方に停止しており、御者台にそれぞれ御者が待機していた。
一番豪華な馬車のドアが開いて、セバスチャン、マリーベルの順に下りてくる。
「もう一度だけ言う。おとなしく投降しろ!」
ヨシュアの最後通牒の途中に、石が投げられてきた。
「帰れ!」
「ギルドの犬め!」
「やれるもんならやってみろ!」
「無限大バカ!」
「誰が信じるか!」
「もう騙されねえぞ!」
アジトのあちらこちらから罵声が浴びせられる。
「仕方ないな……」
ヨシュアは右手で頭を掻いてから、大きく深呼吸をして柄に手を置いた。
と、同時にブレンダとカイルが左右に散る。
エリックが『北限の輝き』を一瞥し、5人をヨシュアのすぐ後ろまで出す。
ほぼ同時に、盗賊側にも動きがあった。
「よぉ、ヨシュア。随分偉くなりやがったなぁ」
ドレイクが単身、殊更ゆっくりと広場の真ん中に出てきた。
「ドレイクさん! いつまでこんなことしてるんですか。もう町に戻ってきてください」
ヨシュアの声色が少し変わった。
「そいつぁ無理な相談だな。戻ったところで捕まるのがオチだ」
「それは……オレがバルザックさんに話を通します!」
「ふん。ギルドマスターにも顔が利きますってか。あの弱虫ボウズが大した出世だ」
ドレイクは真顔のまま、ペッと唾を吐いた。
「こんなところで死んでいいんですか!?」
「死ぬのはオレと決まってるような言い方ぁ、気に食わねえな」
急に悪魔のような笑みを浮かべると、ドレイクは背中の大剣を抜いて両手に構える。
直後、ドレイクが前進。
一気に距離を詰めようとしたドレイクに、左右から飛び出した人影が襲い掛かる。
「くっ!」
右から来た男のハルバードを大剣で受け止めたところへ、左から来た女の剣が背中に斬りかかろうとしたその瞬間、女が後ろへ弾き飛ばされた。
見事な受け身で着地したブレンダは、左手に装着した盾弓を相手に向けて至近距離から矢を放つ。
「このッ!?」
パシッ!
「!!?」
ライナスはその矢を右手で掴むと、無造作に後ろに放り投げた。
そのまま、立ち上がったブレンダに急接近してローキックを放つ。
「ぐっ!」
呻き声をあげてブレンダが地面に倒れるところへ、ライナスが追撃を加える。
ガン!!
その間にカイルの盾が割り込んだ。
素早く後方へステップして距離をとるライナス。
ドレイクが動いた直後から、アジトのあちこちでも戦闘が始まっていた。
『北限の輝き』の5人がエリックと共に突っ込んだのだ。
*
「あんた……キング・ライナスか!?」
カイルが信じられないものを見たという顔で誰何する。
「なんのことだ?」
ライナスは素知らぬ顔で聞き返す。
「いや、間違いない。オレはゴーデールの闘技場で何度もあんたの試合を見たことがある。無敗のチャンピオン、キング・ライナスだ!」
「人違いだ」
「カイル、知っているのか?」
ヨシュアがカイルに声をかけると、カイルは興奮した様子で答える。
「知ってるさ、知ってるとも! 彼は闘技場で7年間負けなしの圧倒的王者だったんだ。10年以上前に急に姿を消したって噂が流れて……まさか、こんなところで盗賊になってたなんて」
シュッと風切り音がして、カイルの頭めがけてライナスの蹴りが飛んできた。
それを盾でガードするが、そのまま吹き飛ばされるカイル。
「おしゃべり野郎は嫌われるぜ!」
ヨシュアの後ろから、今度はドレイクが斬りかかる。
振り返って剣で受けるヨシュア。
ライナスは最初に蹴り飛ばしたブレンダの方へ走ると、立ち上がって応戦しようとするブレンダの脚の同じ場所へ再びローキック。
「イッ……」
激痛に顔を歪めてバランスを崩すブレンダ。
カーフキック気味に食らってしまった。
もちろん回復をかける余裕などまったくない。
ブレンダの状況を冷静に見極めたライナスは、ブレンダの痛めた脚を掴むと、援護に駆けつけようと近づくカイル目がけて放り投げる。
ドガッ!
二人まとめて地面に転がったところへ、更にライナスの追い討ち。
ドガッ! バキッ!
着用していた鎧が砕けるほどの衝撃で、気を失う二人。
ライナスは、二人を見下ろして気絶しているのを確認すると、二人の武器を回収。
そして、ドレイクとヨシュアの戦いをほんの僅かの間眺めてから、ふいとそのまま森の中へ消えていった。





