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転生したらゴーレムだったが全然動けない件  作者: くろイけ
第一章:血みどろゴーレム

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EP.15 洞窟の告白

 その夜、ドレイクは洞窟の中でベニーと二人、作戦会議をしていた。


「問題は偵察が戻ってくる時間だな」


 ベニーが難しい顔でぶどう酒を(あお)る。


「それはサジに任せるしかねえ。あいつのスキルに賭ける」


 ドレイクは熊の干し肉をクチャクチャやりながら、こちらもぶどう酒を呷る。


神足(しんそく)か。まぁこの山ん中じゃ、あいつより速く移動できる人間はそうはいねえ」


 サジのスキル「神足」は長距離移動に特化した移動スキルだ。

 スタミナ消費を抑え、あらゆる悪路も高速で駆け抜ける。

 まさに偵察役にうってつけなのだった。


「ただ、万が一のことも一応考えとかなきゃいけねえ」


「そんときゃお前、自慢のデカ丸の出番だろ」


「いや、デカ丸は使わねえ」


 静かに、しかし断固とした口調でドレイクが告げる。

 それを聞いたベニーが、信じられないという顔をする。


「なんでだよ。こういう時のためのデカ丸だろうが」


「バカヤロー。あいつらはデカ丸を狙ってるんだぞ。そこにわざわざハイどうぞって差し出すヤツがあるか」


「いや、そりゃそうかもしれねえが、最大の戦力を使えないんじゃ……勝ち目はあるのか?」


 最後の方は、やや弱気の虫が顔を出したベニー。


「お前の魔法頼みだ。ガハハハハ!」


 ドレイクの冗談にも、ベニーはまったく笑えなかった。


「お頭」


 そこへケニーが気配を忍ばせて入ってきた。


「おう、ケニー。例の話か?」


「はい」


 ケニーはベニーに軽く頭を下げると、小さな焚火を挟んで二人の前に立つ。


「で、なにかわかったか」


「ノックノックが裏切ったかもしれません」


「なにッ!?」


 ドレイクとベニーの二人の声がハモった。


「どういうことだ? 説明しろ」


 ドレイクが険しい表情でケニーに命じる。


「デカ丸のことが向こうにバレたのは、ノックノックからだと思います」


「なんでそう思うんだ?」


 ドレイクが続きを促す。


「念のため、周囲2キロぐらいまでの区間を調べて、向こうの偵察がいた痕跡がないか確認してきたんですが……」


「なかったんだな」


「はい。そうなると、こちらの情報を流せる人間は限られます」


「くそっ! だからあんな新人、入れるのは反対だったんだ!」


 ベニーが八つ当たり気味に怒り出した。


「なに言ってんだ。お前が若い下っ端が必要だって言ったんだろうが」


「それは言ったかもしれねえが、あいつじゃなきゃいけねえ理由もねえ」


「なら入団試験の時にそう言いやがれ!」


 ドレイクが半ば呆れながら吐き捨てた。

 ベニーは不貞腐れて黙り込むと、そのままぶどう酒をがぶがぶやり出した。


「まぁ話はわかったが、それだけじゃ裏切ったかどうかわからねえな」


 ドレイクが再びケニーの方を向いて、疑問を呈した。


「はい。ですからあいつの荷物を調べてきました」


 アジトの小屋に置いていった個人の荷物を、全てひっくり返して確認したのだった。


「なにかあったのか?」


「これを……」


 ケニーがドレイクに手渡したのは、冒険者ギルドの登録証だった。


「Cランク? あの歳で? しかもこれがあるってことはまだ現役じゃねえか」


 冒険者を辞める場合は、登録証をギルドに返却する義務があるのだった。


「はい」


「身分の詐称になっちまうなぁ……」


 ドレイクは洞窟の天井を見上げながら、大きく溜息をついた。


「しかし、こんな目立つもんどこに隠してやがったんだ?」


「あいつのリュックの底です。二重底になっていました」


「ふぅ~ん。まぁその程度か。舐められたもんだなぁ」


 少し考える仕草の後、ドレイクはケニーに告げた。


「わかった。あとはお前に任せる」


「はい」


 ケニーは一礼すると、そのまま静かに立ち去った。


「いいのか、おい」


 ベニーもさすがに心配になったようだ。


「構わんさ」


 どこか寂し気なドレイクに、ベニーはそれ以上何も言わず、またぶどう酒を口に運んだ。



 *



「お頭、話があります」


 ケニーが出て行って5分もしないうち、今度はライナスがやってきた。


「おう、なんだお前か。珍しいじゃねえか」


 ドレイクが知る限り、ライナスが自分から洞窟の中に来たのは初めてだった。


「…………」


 しかしライナスは、やや遠めの位置に立ち止まったまま黙していた。


「どうした?」


「あの、申し訳ないんですが、お頭と二人きりにしてほしいんです」


 それを聞いてベニーが驚いた。


「え? なんだ、オレが邪魔ってことなのか?」


 まさかあのライナスに、そんなことを言われるとは思ってもいなかった。


「すみません。お頭とだけ話したいんです」


 ベニーに向かって深く頭を下げるライナス。


「ベニー、いいじゃねえか。オレもたまには内緒話がしてみてえ」


 ハハハと笑いながらベニーを宥めるドレイク。


 ベニーの方も、別に腹が立つというわけではなく、あのライナスがこんな夜にドレイクと二人だけでどんな話をするのか、興味が湧いただけだった。


「しょうがねえな。んじゃ続きはまた明日な」


 ベニーはそう言うと、ぶどう酒を一本手土産にしながら洞窟を出て行った。


 すれ違い際にも、ライナスは深く一礼するのを忘れなかった。


「それで、いったいどんな話があるってんだ?」


 ベニーの後ろ姿が見えなくなると、ドレイクも興味津々顔で尋ねる。


「実はデカ丸のことなんです」


「デカ丸? そういや、なんか今日一日お前らずっとイチャついてたな」


 珍しい組み合わせだなと思いつつ、実は気になって観察していたドレイク。


「デカ丸としゃべれるようになりました」


「はぁ? お前なに言ってんだ?」


「本当なんです。それで、あいつの名前はゴウって言うらしいです」


「名前はデカ丸だろうが。お前が反対してたのは知ってるが、ゴウはねえ。それはねえな」


 自ら命名した名前に、頑としてこだわるドレイク。


「いえ、あいつが自分でそう言ったんです。オレはゴウだ、って」


 ドレイクの表情が、頑固親父からエロ親父に変わった。


「……テメェ、もう少し詳しく聞かせろ」


 ライナスが解放されたのは、真夜中になってからだった。

次回更新は7/6(月)になります。

引き続きよろしくお願いします。

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