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魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》  作者: 昼ライス
Season 2 ~覚醒者都市~

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第2話 ビル炎上

毎日20時投稿

夜。


冬の空気が、街の通りを静かに冷やしていた。


悠真のバイト先の飲食店。


店内は落ち着いた雰囲気だった。


客は数組だけ。


テーブルの上では湯気の立つ料理が静かに運ばれている。


厨房からは、フライパンの音が時折聞こえてくる。


悠真はカウンターの端に立っていた。


手持ち無沙汰。


グラスを拭きながら、店内を見回す。


特にやることはない。


店長がレジの横で腕を組んでいた。


ため息混じりに言う。


「今日は暇だな」


悠真も外を見る。


ガラス越しの夜の通り。


人通りはまばらだった。


「ですね」


店長が肩をすくめる。


「年末前の微妙な時期だからな」


「こういう日もある」


悠真は軽くうなずいた。


グラスを棚に戻す。


店内には、ゆったりした時間が流れていた。




繁華街から少し外れた通り。


夜の路地は静かだった。


店の明かりがまばらに漏れ、濡れたアスファルトに反射している。


男が一人、歩いていた。


足取りは重い。


ポケットに手を突っ込み、苛立ったように地面を蹴る。


立ち止まる。


ビルの壁を見上げる。


古い雑居ビル。


いくつかの窓には明かりがついている。


男は拳を握った。


その瞬間だった。


指先に、かすかな熱が走る。


男は眉をひそめる。


手を開く。


指の間から、小さな火が揺れた。


炎。


男の目が見開かれる。


慌てて手を振る。


だが炎は消えない。


むしろ、大きくなる。


揺れる赤い光が、男の顔を照らす。


男はしばらく炎を見つめていた。


やがて、口元がゆっくり歪む。


「……なんだよ」


低い笑い声が漏れる。


「これ」


もう一度、手を動かす。


炎が指先で踊る。


男はビルの壁に手を向けた。


炎が放たれる。


次の瞬間。


壁に火が走った。


乾いた音とともに炎が広がる。


男はそれを見て笑った。


「はは……」


炎はすぐに燃え広がり始めていた。


炎は、瞬く間に壁を這い上がった。


外壁の配線。


掲げられた古い看板。


そこに火が移る。


火は一気に勢いを増した。


ビルの一階。


小さな事務所の窓の内側で、何かが燃え始める。


パチパチと乾いた音。


男は一歩下がり、その様子を眺めている。


炎は窓の内側へ入り込み、カーテンに燃え移った。


赤い光が室内を照らす。


数秒後。


煙が窓から噴き出した。


通りを歩いていた人が足を止める。


「……え?」


次の瞬間。


炎が窓から吹き上がった。


悲鳴。


「火事だ!」


誰かが叫ぶ。


人々が慌てて離れる。


スマートフォンを取り出す者。


通報する声。


ビルの中では、警報音が鳴り始めていた。


火災報知器。


けたたましい音が夜の通りに響く。


窓の奥で炎が揺れている。


煙がどんどん濃くなっていく。


男はその光景を見上げていた。


炎が夜空を赤く染めている。


男の顔が、その赤い光に照らされていた。




都内某所。


地下施設。


HIVE管制室。


静かな室内に、モニターの光が並んでいた。


中央スクリーンに波形が流れている。


空間マナ観測データ。


規則的に動いていたラインが、ある瞬間から大きく跳ね上がった。


警告表示。


電子音が鳴る。


『マナ活性化反応を検知』


SARAの声が室内に響く。


モニターの表示が切り替わる。


日本地図。


一点が赤く点滅する。


関東。


東京。


さらに拡大。


繁華街の一角。


リゼリアが画面を見つめる。


指先でデータを操作する。


マナ波形。


反応パターン。


数秒。


「……元素型」


小さく呟く。


モニターに別の映像が映し出される。


夜の街。


燃え上がる炎。


雑居ビル。


煙が窓から吹き出している。


『火災発生を確認』


SARAの声。


リゼリアはわずかに眉をひそめた。


「覚醒者です」


画面に数値が表示される。


マナ出力推定。


「出力はDランク相当」


炎はすでに、建物の外まで広がり始めていた。




ARC本部。


作戦指揮室。


壁の大型モニターに、都内の地図が表示されている。


一点が赤く点滅していた。


繁華街の一角。


隊員が報告する。


「都内で火災発生」


「現地消防が出動中です」


別のモニターに現場映像が映る。


炎上する雑居ビル。


煙が夜空へ立ち上っている。


隊員が続ける。


「HIVEより連絡」


「マナ活性化反応を確認」


「覚醒者能力による火災の可能性」


室内の空気がわずかに引き締まる。


神谷一佐は腕を組んだまま画面を見ていた。


数秒。


「能力タイプは」


隊員が端末を確認する。


「元素型」


「炎系と推定」


一佐は短くうなずいた。


「消防と警察の活動を優先させろ」


「ARC部隊は周辺封鎖」


「覚醒者を確認次第、確保する」


「了解」


隊員たちが一斉に動き出す。


モニターの炎が、激しく揺れていた。




飲食店の裏口。


冬の夜気が静かに流れていた。


悠真はドアを押して外へ出る。


店の中の暖かい空気が背中から漏れる。


ドアが閉まる。


静けさ。


悠真は周囲を見回した。


人影はない。


手首を上げる。


スマートウォッチの画面が淡く光る。


通信が開く。


『マナ活性化反応』


SARAの声。


悠真は小さく呟く。


「場所は」


リゼリアの声が続く。


「都内です」


「火災が発生しています」


悠真は眉を寄せた。


「覚醒者ですか」


「元素型。炎です」


数秒の沈黙。


遠くで車の走る音が聞こえる。


悠真は短く息を吐いた。


「行きます」


スマートウォッチを操作する。


『HIVE転移座標設定』


SARAの声。


足元に光が走る。


青白い魔法陣が広がる。


空間が歪む。


次の瞬間。


悠真の姿は消えた。




HIVE格納庫。


広い空間の中央に、白と黄色の機体が直立していた。


魔導機兵。


ヴェスパー。


静止した装甲の表面に、整備灯の光が反射している。


その前方。


青白い魔法陣が展開された。


光が強くなる。


次の瞬間。


悠真の姿が現れる。


転移。


悠真は一歩踏み出し、機体を見上げた。


巨大な装甲。


蜂を思わせる流線型のフォルム。


数秒の静寂。


悠真が口を開く。


「HEX CODEを要求します」


管制室からリゼリアの声が返る。


「HEX CODEを受諾。承認します」


一瞬の間。


次の瞬間。


ヴェスパーの複眼バイザーが金色に光った。


『魂融合を開始します』


SARAの声。


光が広がる。


悠真の体が、淡い光に包まれる。


輪郭が崩れる。


光が機体へ吸い込まれていく。


格納庫の空気が静かに震えた。


数秒後。


ヴェスパーが動く。


足がわずかに動き、装甲が起動音を響かせる。


背部ユニットが展開する。


折り畳まれていた針状ユニットが開き、


四枚の光翼が形成された。


ヴェスパーが一歩踏み出す。


『転移魔法陣展開』


ハニカムドローンが格納庫から飛び出す。


六機の小型機が空中に展開する。


六角形の魔法陣が形成される。


青い光が広がる。


次の瞬間。


ヴェスパーの姿は光の中に消えた。




夜の街。


炎上する雑居ビルの前。


消防車が並び、赤色灯が回っている。


消防隊員たちがホースを伸ばし、水を放っていた。


白い煙が通りに流れる。


規制線の外には、人だかりができている。


窓からは黒い煙が吐き出されていた。


ビルの中から、かすかな叫び声が聞こえる。


「まだ人がいる!」


通りの端で、誰かが叫んだ。


「上の階だ!」


その瞬間。


空中に青白い光が走る。


空間が歪む。


六角形の魔法陣。


ハニカムドローンが描いた転移陣。


光の中心から、白と黄色の機体が現れた。


ヴェスパー。


機体は空中に出現したまま、静かに姿勢を変える。


その複眼が炎上するビルへ向いた。


「中にまだ人が!」


消防隊員の声。


次の瞬間。


ヴェスパーの背部ユニットが展開する。


四枚の光翼。


機体が加速する。


一直線にビルへ向かう。


炎と煙を突き抜け、開いた窓からそのまま内部へ突入した。


煙が充満したフロア。


視界はほとんどない。


焦げた匂いが空気に満ちていた。


炎が壁を這い、天井の配線が火花を散らしている。


その中へ、ヴェスパーが飛び込んだ。


床に着地する。


装甲に炎が触れ、すぐに弾かれる。


複眼センサーが煙の中を走査する。


『生命反応を検知』


SARAの声。


数メートル先。


倒れた机の影。


小さな影が震えている。


ヴェスパーはゆっくり近づいた。


机の陰に、小さな子供がいた。


床に座り込み、泣いている。


煙で目を押さえている。


子供が顔を上げた。


白い装甲の機体が、炎の中に立っている。


一瞬、動きが止まる。


ヴェスパーが膝をついた。


低い声。


「大丈夫」


子供が震えながら言う。


「ヒーロー……?」


ヴェスパーは短くうなずいた。


「助けに来た」


腕を伸ばす。


子供を抱き上げる。


天井の一部が崩れ落ちた。


燃えた梁が落下する。


ヴェスパーは体をひねり、それをかわした。


炎がさらに広がる。


ヴェスパーは窓へ向かって走る。


そしてそのまま窓ガラスを突き破り、夜空へ飛び出した。


夜風が煙を押し流す。


ヴェスパーは空中で姿勢を安定させた。


腕の中には、さっき救い出した子供がいる。


ビルの前。


消防隊員たちがホースを操作していた。


突然、上空から機体が降下してくる。


ヴェスパーはビルの前の路上へ降りた。


膝を軽く曲げ、衝撃を吸収する。


腕の中の子供をゆっくり地面へ降ろした。


消防隊員が駆け寄る。


「こっちへ!」


子供は振り返る。


ヴェスパーを見上げる。


「ありがとう……」


小さな声。


隊員が子供の肩を抱き、離れていく。


その背中を確認すると、ヴェスパーは再び空を見上げた。


ビルの上階。


炎はまだ勢いを増している。


窓から煙が噴き出していた。


『生命反応を複数確認』


SARAの声。


ヴェスパーはすぐに飛び上がる。


光翼が広がる。


再び炎のビルへ向かっていった。


ルの上階。


窓ガラスの向こうで炎が揺れている。


ヴェスパーは外壁すれすれを上昇した。


煙が夜空へ流れていく。


割れた窓の一つに近づく。


内部を確認する。


『生命反応三』


SARAの声。


ヴェスパーはそのまま窓を越えて中へ入った。


フロアの奥。


炎が廊下を塞いでいる。


床には煙が溜まり、視界は悪い。


人影が見える。


壁際で身を寄せ合う三人。


大人の男女と、年配の男性。


煙で咳き込んでいる。


ヴェスパーが近づいた。


三人が顔を上げる。


装甲の機体を見て目を見開いた。


ヴェスパーが声をかける。


「落ち着いてください」


低く、はっきりした声。


「今から脱出します」


三人はうなずくが、廊下の先を見る。


炎が道を塞いでいる。


ヴェスパーは数歩前に出た。


燃え上がる廊下の前に立つ。


振り返る。


「私の後ろを離れないでください」


背部の光翼がわずかに広がる。


次の瞬間。


機体が加速する。


炎を突き抜け、廊下の向こう側へ跳び出した。


ヴェスパーは振り返る。


手を上げる。


「今です。来てください!」


三人は煙の中を駆け出した。


ヴェスパーは廊下の先で立ち、周囲を警戒していた。


天井の一部が崩れ、火の粉が降ってくる。


梁が燃えている。


ヴェスパーは腕を上げた。


落下してきた木材を受け止める。


焼けた梁を横へ投げ捨てた。


「急いでください!」


三人は必死に走る。


年配の男性がふらついた。


足がもつれる。


その瞬間。


ヴェスパーが前に出る。


男性の腕を支える。


「大丈夫です」


「出口まで案内します」


女性が息を切らしながら言う。


「下の階は……?」


ヴェスパーは短く答えた。


「消防が到着しています」


「外へ出れば安全です」


煙がさらに濃くなる。


警報音がフロアに響いていた。


ヴェスパーは窓の方へ向かう。


ガラスの残った窓枠。


外には夜の空。


ヴェスパーが振り返る。


「一人ずつ外へ出します」


男性を抱え上げる。


背部の光翼が広がる。


次の瞬間。


ヴェスパーは窓から外へ飛び出した。


夜の空気が煙を押し流していく。


ヴェスパーはビルの外壁沿いに降下した。


腕の中には、救い出した男性。


地上では消防隊員たちが慌ただしく動いている。


ホースから放たれる水が炎へ叩きつけられていた。


ヴェスパーは路上へ降り立つ。


男性をゆっくり地面へ下ろす。


消防隊員がすぐに駆け寄った。


「こちらへ!」


男性は咳き込みながらもうなずき、隊員に支えられて離れていく。


ヴェスパーはビルを見上げた。


炎はまだ残っているが、先ほど救出した三人が最後の要救助者だった。


『生命反応、建物内に残存なし』


SARAの声。


ヴェスパーはわずかに視線を動かす。


次の瞬間。


『マナ反応を検知』


表示が切り替わる。


ビルの近く。


細い路地。


ヴェスパーの複眼がそちらへ向く。


『反応源、覚醒者の可能性』


ヴェスパーはすぐに動いた。


背部の光翼が展開する。


機体が空へ跳び上がる。


ビルの側面をかすめるように上昇し、そのまま進路を変える。


視線の先。


暗い路地裏。


ヴェスパーは一気に加速し、そこへ向かった。




細い路地裏。


ビルの裏側は、表通りの喧騒から切り離されたように静かだった。


遠くから消防車のサイレンが聞こえる。


炎の赤い光が、建物の壁を揺らしている。


男は路地の奥に立っていた。


腕を組み、ビルの方を見上げている。


炎が夜空を照らしていた。


男は小さく笑う。


「すげぇな……」


「本当に燃えるんだな」


指先に小さな炎を灯す。


火がゆらゆらと揺れる。


その時。


路地の奥に影が落ちた。


風が一瞬、吹き込む。


男が顔を上げる。


白と黄色の装甲。


ヴェスパーが路地の入口に降り立っていた。


男は目を細める。


「……ヒーローか」


炎が指先で揺れる。


男は肩をすくめた。


「早かったな」


男は壁にもたれたまま、ヴェスパーを見ている。


指先の炎がゆらゆらと揺れた。


ヴェスパーが一歩前に出る。


「火災は鎮圧されつつあります」


低く、はっきりした声。


「これ以上の被害は防げます」


男は鼻で笑った。


「へえ」


炎を軽く振る。


小さな火の粉が宙に散る。


「さっきのビル」


「あれ、俺がやった」


男は自分の手を見下ろす。


炎が指先で燃えている。


「覚醒者ってやつだ」


顔を上げる。


目は笑っていなかった。


「この力、便利だぜ」


ヴェスパーは動かない。


男は続ける。


「でもさ」


「覚醒者ってだけで」


「会社クビだ」


炎が少し強くなる。


男の声が低くなる。


「普通に生きろって?」


短い笑い声。


「無理だろ、もう」


男は手を上げる。


炎が大きく膨れ上がった。


「ヒーロー」


炎の光が路地を赤く染める。


「お前は、何守ってんだ?」


男の手から炎が噴き上がる。


赤い火柱が路地を照らした。


次の瞬間。


炎が一直線に放たれる。


ヴェスパーへ。


轟音。


火炎が空気を焼く。


ヴェスパーはその場から跳び上がった。


短い飛行。


炎が足元をかすめる。


背後の壁に火が走った。


ヴェスパーが着地する。


「これ以上、火を広げるな」


男は笑った。


「無理だな」


腕を振る。


今度は火球。


燃え上がる炎の塊が飛ぶ。


ヴェスパーは横へ動く。


火球が地面にぶつかり、爆ぜた。


路地のゴミ箱が燃え上がる。


男は楽しそうに炎を操っている。


「ほら、ヒーロー」


「止めてみろよ」


ヴェスパーは男を見据える。


次の瞬間。


背部の光翼が開いた。


機体が一気に加速する。


距離を詰める。


男の目が見開かれた。


男は反射的に腕を振った。


炎が広がる。


火の壁。


路地いっぱいに燃え上がる。


ヴェスパーは速度を落とさない。


そのまま突っ込む。


装甲が炎を押し分ける。


火が左右へ散った。


一瞬で距離が詰まる。


男の目が見開かれる。


「は——」


その瞬間。


ヴェスパーの左手が上がる。


掌が男へ向く。


ネクタルパルス。


低い衝撃音。


見えない衝撃が男を打った。


体が大きく揺れる。


炎が消える。


男は後ろへよろめく。


足がもつれる。


そのまま地面に倒れ込んだ。


動かない。


路地が静かになる。


遠くで消防車のサイレンが鳴っていた。


ヴェスパーは数歩近づく。


男の前で立ち止まる。


『生命反応、安定』


SARAの声。


男は完全に意識を失っていた。


路地の奥に、足音が近づいてくる。


複数。


武装した隊員たちが角を曲がった。


ARC部隊。


先頭の隊員が状況を確認する。


地面に倒れた男。


その前に立つヴェスパー。


炎はすでに消えている。


隊員が声を上げた。


「対象を確認」


数人の隊員が男へ近づく。


男の両腕を後ろへ回す。


金属の手錠が取り出される。


内側には小さな魔法陣刻印。


カチッ。


マナ拘束手錠が閉じる。


その瞬間。


男の指先にわずかに残っていた火の気配が消えた。


隊員が無線に報告する。


「覚醒者確保」


「Dランク元素型」


ヴェスパーはその様子を静かに見ていた。


消防車のサイレンがまだ遠くで鳴っている。


炎の赤い光が、街の空を揺らしていた。




路地を離れた上空。


ヴェスパーは夜の街を見下ろしていた。


炎上していたビルでは、消防隊が消火を続けている。


放水の白い水煙が、夜の空気に広がっていた。


赤色灯の光が道路を染めている。


『現場の生命反応、全員安全圏へ移動』


SARAの声。


ヴェスパーは静かにビルの様子を確認する。


窓から噴き出していた煙も、少しずつ落ち着き始めていた。


遠くで救急車のサイレンが聞こえる。


数秒。


ヴェスパーは空中で姿勢を変えた。


光翼がわずかに角度を変える。


『転移魔法陣展開』


ハニカムドローンが周囲へ展開する。


六機の小型機が空中に散開する。


六角形の魔法陣が形成される。


青い光が夜空に広がる。


次の瞬間。


ヴェスパーの姿は光の中に消えた。




都内某所。


地下施設。


HIVE格納庫。


青白い光が広がる。


転移魔法陣。


その中心に、ヴェスパーの機体が現れた。


光が収まる。


ハニカムドローンが周囲を旋回し、ゆっくりと機体へ戻っていく。


格納庫の照明が静かに機体を照らしていた。


数秒。


ヴェスパーの複眼がわずかに光を弱める。


『魂融合を解除します』


SARAの声。


機体の表面に淡い光が走る。


次の瞬間。


光が機体から離れる。


人の輪郭が浮かび上がる。


神谷悠真の姿が床に現れた。


魂融合解除。


悠真は軽く肩を回す。


少し息を吐く。


格納庫の静かな空気が戻る。


通信が入る。


リゼリアの声。


「お疲れさまです」


「救助はすべて完了しました」


悠真はうなずいた。


「よかった」


少しだけ、安心したように息を吐く。


遠くで整備機器の小さな駆動音が聞こえていた。




飲食店の裏口。


夜の空気はまだ冷たい。


青白い光が足元に広がる。


魔法陣。


次の瞬間。


悠真の姿がそこに現れた。


転移。


周囲を見回す。


路地は静かだった。


車の走る音が遠くから聞こえる。


悠真は軽く肩を伸ばす。


店のドアを押した。


暖かい空気が流れてくる。


店内は相変わらず静かだった。


客は数人。


店長がレジの前でスマートフォンを見ている。


ドアの音に顔を上げた。


「お、戻ったか」


悠真はエプロンを付け直す。


「すみません」


店長は手を振る。


「いいよいいよ」


「どうせ暇だし」


悠真は小さく笑った。


そのままカウンターへ戻る。


店内には、またゆったりした時間が流れていた。


いつもありがとうございます。


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本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


現在、別作品として

『不遇スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する』

というダンジョンファンタジーも連載しています。


意味不明と言われたスキル【球術】で戦う主人公と、鍛冶職の少女がダンジョンを攻略していく物語です。


もしよろしければ、そちらも覗いていただけると嬉しいです。

今後ともよろしくお願いします。

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