第15話 ~アイ〇ビーバックは言わないのかよ!?~
はい、職場に復帰しました。正直体力が落ちているのでしんどかった……。
「ミッ……ショ…ン、失敗………じ…ばくそ………うちさ…ど……う………」
皆でフルボッコしてようやく倒したター〇ネーターことシュワちゃん|(仮)が小さく振動しながら不穏な予兆を告げる。が、その事に倒したと思っている佐夜達は気付いていない。
「………む? 皆の者、あやつの様子がおかしいぞ!?」
「「「「「!?」」」」」
だが戦闘に参加した者達の中に盲目の魔法使いがいて、そいつがシュワちゃんの自爆装置作動による急激なエネルギー増加に気が付き、皆に知らせる。
「まだ何かするのかそいつ!?」
「また何かする前にトドメを────」
と、皆がシュワちゃんに向かって止めを刺そうと急ぐ。
「ダメだ、みんな止まれ!! そいつ自爆する気だ!!」
「「「「「っ!!?」」」」」
だがこの手のやり口を知っている佐夜の静止で皆が止まる。
「サヤさん、どのくらいの範囲まで被害が出るか分かりますの!?」
「そこまでは分からない。ただ、ああいった奴を動かす程のエネルギーが低い訳がない。………多分、この闘技場くらいは軽く消し飛ぶかもな」
「嘘だろおい!?」
エミリアの問いに佐夜は詳しくは分からないと答える。だってアレの存在は映画の中でしか知らないし、映画での自爆するシーン(多分『3』の方?)の時はシャッターに潰されて爆破の規模がどのくらいなのかまでは表現されてないのだ。
「攻撃出来ないんだったら上空に上げればっ。────っ!?」
地上ではなく上空で爆発させれば被害は少ないだろうと佐夜は錬成術を使おうとするが自身の魔力が枯渇しかけているのに気付く。原因は先ほどの試合中にてイングに魔力を供給した所為だ。これでは爆発の安全圏まで飛ばす事が出来ないし、時間も無い。
「くそ、どうすれば─────」
と、何か策はないかと周りを見渡したその時、
ドゥ─────ン!!
「………は?」
佐夜の周りの視界が灰色になった。
≪……全く、仕方ないわね≫
「だ、誰!?」
すると脳内で誰かがテレパシーっぽい感じで会話してきてキョドる佐夜。だってこういう色の無い背景にちょっとしたトラウマがあるから。
≪話は後。とりあえず今、貴方の周りだけ時を止めたわ≫
「は? 時? どこのスタ○ド使いだよ!?」
≪ス○ンド関係無い。いいから早くあのサラって子の所に行きなさい。今の私じゃ精々10秒位しか止められないから≫
「まんまスタ○ドじゃないかよ、ったく……っ」
色々ツッコミたい所ではあるけど今は確かに呑気に会話している場合ではない。謎の声に従ってサラの元へ行く。狙いは当然魔力が尽きかけている佐夜の代わりに錬成術でシュワちゃんを(土を隆起させて)打ち上げる事だ。
ガシッ!
「───え、サヤさん? って何ですのこの光景!?」
灰色背景と共に時間停止で固まっていたサラの手を掴むとサラの色が戻り、時間が動き出した。
「色々聞きたい事があると思うけどそれは後。早くあいつに近付いてサラに錬成術であいつを打ち上げて欲しいんだ!」
「………分かりましたわ。ですが終わったらキッチリ説明して下さいませ」
「あいよ」
佐夜の真剣な表情に聞く暇がない事を悟ったサラは佐夜と離れて再び時が止まらない様(謎の声に従って)手を繋ぎ、シュワちゃんの元に走って行く。ちなみに手を繋いだ時何故かサラの顔が赤くなっていたが、佐夜は当然それどころじゃないので気付いていない。
ザッ─────
「サラ、頼んだ!」
「ええ、行きますわよ!!」
手を繋いだままシュワちゃんの元に到着し、錬成術を使う際両手を使うのでここで時止めを解除し(佐夜の意思ではまだ出来ないがこの時は解除出来た)、サラが錬成術で土を隆起させ、重量のあるシュワちゃんを急激に空へ上昇させる。
いきなりここへ現れた佐夜とサラにビックリする皆を余所にサラは魔力の続く限りシュワちゃんこと自爆ロボを爆破圏外まで上げる。一応、振動で落ちない様に広めに取っている。
「─────っ」
だがプログラムされているのかシュワちゃんは意地でも爆発に巻き込みたいのか300M上空辺りで無理矢理転がって落下してくる。
「───そう来ると思ったよ!」
その行動を読んでいたのか佐夜は先ほどの戦闘でシュワちゃんが弾切れで捨てたハンドガンを錬成術で魔力弾を撃てるように改造し、その銃口(多分威力が強いので使い捨て)を落下中のシュワちゃんに合わせる。
「……っけぇ!」
ドンッ!
無理矢理改造した銃からまるでレーザーみたいな光線が飛び出し一直線でシュワちゃんに向かう。
スカッ!
「え、嘘だろおい!?」
だが当たる直前でシュワちゃんのボディはサラの錬成術で上に伸びている土の出っ張りに当たって軌道が逸れ、僅かに佐夜の放った光線を回避してしまう。そして予想通りハンドガンは1回で壊れ2度目は撃てない。
その様子を見て他の者達も慌ててファイヤーボールなどの誘爆出来そうな魔法を放つが距離が空いているし、当たっても誘爆出来る程シュワちゃんのボディは軟じゃなかった。
その間にもシュワちゃんはドンドン落下してきて既に高度は100Mを切った。このままだと確実に爆発の規模に巻き込まれるだろう。
最早万事休すかと皆が思ったその時、
「……エミリア、これ借りるぞ」
「え……?」
誰かがエミリアの横を高速で通過し、その際エミリアの愛槍『グングニール』を(勝手に)借りる。
シュッ──────
「サヤ、よく頑張ったな。後は任せろ!」
「え………?」
そして巨大な柱の下で銃を何とか直そうとしている佐夜の元に着いたイングは佐夜の頭を撫で、そのままカゼノコロモ状態のまま土の柱を垂直に駆け上がる。
「正直これが無かったら最悪特攻しようと思ったがこれならイケるだろ。伸びろ【グングニル】!」
そして絶対に外さない距離まで近付いたイングは穂先をシュワちゃんに向けグングニルを高速で伸ばす。
イングがエミリアから勝手に借りたグングニルは伸縮機能があり、実際エミリアは過去にイングにその事を話していた故、イングは咄嗟にそれを借りたのだ。そしてその伸びる範囲は約300M。落下中のシュワちゃんの高度を合わせると400M弱はあり、ギリギリ地上への爆風は免れるかもしれない。
じゃあ、一番爆心地に近いイングは?
けど今はそんな事気にしている場合ではない。
「っ!?」
そしてグングニルがシュワちゃんに突き刺さり、そのまま再びその重いボディを遠くまで運んで行く。
「じゃあな。もう戻ってくんなよ」
「………(サムズアップ)」
槍の掴む部分を土柱に刺して固定し、シュワちゃんに別れを告げる。アンドロイドのシュワちゃんも最後何かを言おうとしていたが止めて、ただサムズアップをして起動を停止する。
「いやそこは『アイルビーバック』じゃねーのかよ!?」
地上から声は聞こえないが話すのを止めたのが見えた佐夜がツッコんだ。
その直後、
チュドォ──────ン!!!!!
「「「「「「っ!!?」」」」」」
「「「「「「ぅゎあああああああああああ!!!?」」」」」」
「「「「「「きゃあああああああああああ!!!?」」」」」」
凄まじい爆音と爆風、そして衝撃波が地上を襲い、爆発直前に退避していた地上の者達はその爆発の威力で悲鳴を上げる。
「イング……あの馬鹿野郎!」
「いつもいつも無茶するなぁとは思っていたけどここまでやるとはね」
「「馬鹿ー!」」
「………ここは逆フラグを建てて生存フラグを建てるべきっ」
アルケシスの面々も衝撃波に耐えながらイングの身を案じる。だってこの威力だ。皆より爆心地に近いイングがどうなったのか正直考えたくもない。
ゴゴゴゴゴゴゴゴggggg…………
「「っ、イング!!」」
爆発から30秒後、ようやく爆発が収まりサラの建てた土柱も綺麗さっぱり吹き飛んで何とか闘技場の形が保っている状況の中、イングの安否が気になり飛び出す佐夜とエミリアの2人。
しかしそこにあったのは爆発の際、壊れなかったグングニルが地面に刺さっているだけ。瓦礫等などは爆発で吹き飛んで周りがよく見えるので他には何もない。
そう何も無いのだ。
「「……………」」
もしかしてまだ上空にいるのかと上を見るも誰もいないし、何もない。
「「イング………」」
最悪な展開を想像し、2人は涙ぐむ。
「インg──────」
「おーい! イングの奴見つかったそうだぞー!」
「─────ゑぇ!!?」
「えええ!?」
最後に佐夜が叫ぼうとしたその瞬間、空気を読まないタックが大声で呼びかけて思いっきりズッコケた。これにはエミリアも動揺を隠せない。
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「……いやマンガかよ!」
確かにタックの言う通りイングはすぐに見つかった。
通常あの高さからの落下に加え、爆発の衝撃をモロに喰らえば無事では済まず、良くて五体満足で重症。その際地面に転がっている状態で発見され、誰がどう見たって「死んだか?」的な顔になる。
だが悲しいかな。昔のマンガやアニメみたいに地面にめり込む状況だとどうしてもギャグにしか思えず、そこまで重傷を負っている風には見えなかった。
実際救助されたイングの容体は『全身打撲』だったそうだが無事だそうな。
気が付けばもうクリスマスか……。それどころじゃないよ!




