69・内容。
アスレチックの視察に来ていたデコボココンビを館に招待した。
勿論、ディナー付きでね。
学園の様子とか授業について聞いてみたかったんだ。
教科書のことも。
「それぞれ家の事情がありますから入学が随時になってます。
定期的に試験をして進級やクラス編成の仕直しをしています。
まあ、低学年の子供達はほとんど遊びですけど書き取りと簡単な計算なんかを
中心にしてますね」
「学園外に出かけることはほとんどありません。
庶子組は特に。親族の館があっても訪問するのは禁じられてるコトが多いです。」
庶子ってそんなに多いんですか?
「年によって違いますが多い年だと嫡子組の三倍くらいになったりします。
このところはほぼ同数くらいですね。
嫡子でも次男三男と下の子になると庶子と同じようなものなので早めに入学
なんてことになったりします。
だから区別が有って無いようなものでもあるんです。
跡継ぎ以外は予備で余分なのは変わりないですからね」
跡継ぎ以外は予備で余分ねぇ。
オレって今のところ跡継ぎ候補だけど宰相閣下が結婚して子供ができたら予備で
余分扱いになるんだよね。
まあ、ソレは仕方ないよね。出生が変則的だったんだもの。
アノ独身中年な宰相閣下も国のコトばかりじゃあなくて自分の幸せのコトも
考えるべきだと思うんだよ。
おばあさまも色々心配されてるみたいだしね。
まだオレは幼児だから保護者がいないと外出すらままならないけど一応中身は
成人だった前世の記憶持ちだからね。
多少のお金も動かせるようになってきたから成人の16歳になれば宰相家に
迷惑をかけずに生きて行けそうな気がしているんだよ。
まあ、気がしてる……だけなんだけどね。
教科書っていつからあの内容なんでしょう?
「ええと……もう三十年くらいはあのままですね。
ソレがどうかしましたか?」
学園の方から紹介された辞書の編纂要員とそのご友人たちとお話をさせて
いただいたんですが内容を理解していない子が多いと感じてました。
皆さんもう引退されてますが新人たちの教育経験があるそうです。
卒業後に即戦力でなくても教科書の内容を理解できていて欲しいと。
でもオレの前世の世界だとアレだと十二歳くらいまでの学習内容なんですよ。
卒業の十五歳ならもっと高度な内容だったんです。
コノ世界と前世の世界で人間の能力がそう違うとも思えません。
教科書の内容とか授業内容とかで改善できることがありそうな気がしたんです。
「う~ん……確かに内容の変更とかは考えたことがなかったですねぇ。
頂いたカルタの諺とかトランプ遊びでの計算とかはあっという間にどの子も
上達しましたが……教科書のコトとなると途端にサッパリで……」
「上級の特に嫡子たちは社交の予行ということで来てますから勉学にはみんな
重きを置いていないのが実情です。
まあ、学園で習ったことが実際に役に立つかというと保証はできませんからね。
でも上級の教科書の内容をほとんどの子が理解していないというのは我々も
気付いていなかった訳ではないんです。
色々なコトを試しているんですがなかなか成果が出なくて……」
生徒と一番接している先生が何も気付いていない訳も無かったね。
さて、コレはどうしたものだろう?
授業の見学……なんて無理だよねぇ……