320・国境地帯。
最長老様の故郷には転移陣で飛ぶはずだった。
もっとも直接ではなくその領地の領都の神殿に行くはずだったのだけれど。
「魔力切れだそうです。
領主の方が便利に使いすぎたとかで……断れなかったんですね。
一番近いのは実はお隣の宰相家の領地の神殿なんです。
そちらから行ってもらうことになりました」
神殿の転移陣は神殿の物で領主の物ではない。
あくまでもお願いして使わせて貰う物なのだ。
もっとも神殿以外でも転移陣が設置されている街は有る。
王都とか旧都とかね。
これらは行政側の物なので仕事の為に使われる。
お隣の領地だと神殿以外には設置されてなかったんだ。
領主の権威で神殿の転移陣を使いまくったらしい。
なんともお行儀の悪い限りだね。
代わりの転移陣が宰相家の領地と聞いたので付いて行かせてもらうことにした。
まあ、ハッキリ言って好奇心だね。
宰相家の領地は商都の侯爵様の領地の端にある飛び地な領地と旧都の近郊のもの、
そうして国の北西に位置している広さだけは一番広い所。
そこはまだ行ったことが無かったんだよ。
「地味も肥えては居ませんし人口も多くはないですね。
今の時期は何も生えていないただ広いだけの土地です。
産業というほどもモノもありません。
むしろ他の領地からの利益を廻して維持してるような所なんです。
廻りの他の貴族の領地も似たようなものですね」
なかなか難物な所みたいだね。
ココの産物って何か有りましたか?
「丈の低い穀物・セタルですね。
そんなに収量も多くないので地元で消費してしまいます。
大体麦と混ぜてパンにしてますよ。
言うなれば麦の節約の為に入れる増量材ですね。
あとは蕪も作ってますがコレはオビスの餌用なので産物ってほどじゃあないです。
あ! オビスは多いですよ。
でも消費地から遠いので乳をチーズに加工してます。
オビスの毛とか肉の燻製・干し肉とかも作ってますけど廻り中が同じですからね。
大した利益にはなってないですね」
そんなに大変なのか……
でも他の領地の利益をも廻して維持してるのは何故です?
「国境が近いですからね。
今は特に北の国を警戒してますし。
あの国が雪に閉ざされれば春までは安心して居られるんです。
雪に慣れてる北の国でも雪の中の行軍は困難です。
宰相閣下も雪が降るのを心待ちにされてると思いますよ」
なるほど……北の領地は何処もそういう備えの為のモノなんだな。
それでも住んでいる人は居る。
何か産品を増やせれば他の領地から利益を廻さなくても良くなるかもしれない。
フフフ……オレには強い味方が有るんだよ。
そうスタークさんが完成させた「植物大百科」だ!
まあ、コレ一冊で全部解決! とは行かないだろうけどね。




