311・護衛兼ガイドな女官さんのつぶやき。
ルゥナ王女様のお輿入れのお供としてこの国にきてからもう何年だろう。
王子が成人され王太子となられたからもう……
魔王国と戦争が始まるまでは平穏そのものだった。
王妃となられたルゥナ様やお子さま方のお世話や警護が私の仕事だった。
なのに国に帰れと言われるなんて……
と思ったらアーリウムに行きたい宰相様のお子さまの警護だった。
王族の警護が私の仕事だったのに……
「あなたの仕事ぶりに不満があるわけじゃあないの。
でも結婚当初からずっと側に居てくれたのはもうあなただけになってしまって……
この国の人と結婚した人も居るし国に戻った人も居るけどあなたもそろそろ
仕事だけじゃあなく他の事も考えてみても良いんじゃあないかと思ったのよ。
私は時々帰省出来てるけどあなたは子供達に付いて居てくれたりしてほとんど
帰国してないんですもの。
あの子の護衛とガイドとして帰国してみない?
庶子だけど宰相の子だしなにより王太后様のお気に入りなのよ。
引退されても王は大事に思われてますからね。
ご機嫌は損ねたくないの」
王妃様もどうやらあの子がお気に召しておられるらしい。
アーリウムにあの子が興味を示したのも嬉しく思われたようだ。
帰省……確かにほとんど帰っていない。
実家は同母の弟が継いでいる。
でも、今更帰ったところで遠い親戚くらいに扱われるのがオチだろう。
それでも王妃様のご配慮なので有り難く拝命することにした。
弟は魔王国との戦争の間には時折見舞いの手紙を書いてくれた。
礼の一つくらい言ってもバチは当たらないと思う。
若君ヘンリー様・保護者代わりの執事氏あとは護衛でも付いてくるのかと
思ったら乳兄弟だという召使いの子供が3人……
「一応護衛は私が担当いたします。
ですがヘンリー様はこのお歳で魔術師なみですので護衛は不要でしょう。
むしろ要るのはお行儀の監督者でして。
多少の不作法はお目こぼし下さるようアーリウムの方々にお願いしたいです」
確かにこの執事氏は腕に覚えがありそうだ。
でも、こんな小さな子が魔術師なみって。
一緒に来た女の子が大人並みな回復魔法を使うのを見てしまった。
変人侯爵の獣舎でケンカした動物に向けて使ってたのだ!
あの歳で……
ヘンリー様も細かな魔法を使われている。
目立たず、そうして気付かせないようにさりげなく……
変人侯爵にも気に入られて馬やらうさぎ馬やら譲られていた。
挙句は王族の女性達からお召し出しがくるなんて!
庶子なんでしょ! この子って!
確かに認知されてるから跡継ぎ候補ってことになってるけど嫡子ができたら
ゴミ扱いする人までいるのよ……庶子って。
王太后様もお気に入りだって話だしアーリウムの王妃様にも気に入られたなんて
いったいどうしてなんだろう?
実家には帰らなかった。
弟が家族を引き連れて会いに来たからだ。
ヘンリー様は私達のために家族団欒の時間を持つようにと言ってくださった。
離れていたのでもう私は「家族」では無くなっているかもと思っていた。
でも弟は……弟の家族は……
もっと手紙を書けば良かった。
こんなに心配してくれてたなんて……
ヘンリー様が弟の子供達に絵本や紙芝居や盤ゲームを譲ってくださった。
目を輝かせる子供たち……アイリス王女もこんなふうに喜ばれていた。
身分なんて関係無く子供はやっぱりこういうモノが好きなのね。
私もなんだか自分の子供がいたら……なんてことを考えていた。
王妃様は仕事以外のコトも考えてみても良いんじゃあないかと言われた。
まあ子供はひとりじゃあできない。
アイリス王女の世話係のフェリシアも結婚したんだもんね。
最初、見習い扱いだったのは彼女も同じで同じ歳だったはず。
私もそういうことに目を向けてみても良いかもしれない。
オリーザに戻ったら王妃様に相談してみようかな。
フェリシアだって王妃様たちのお見合いパーティでお相手の宰相閣下のお目に
とまったそうだもの。
でもできたら強い男性が良いわよね。
実家って代々護衛職だったから強い人の方が好もしいもの。
でもそんなに都合良く「強い人」がその辺りをウロウロしてないわよねぇ……
ため息をつきながらそれでもちょっぴり前向きな気分になってるガイドな
女官さんなのでした。




