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305・風になれ!。

 弟が産まれた。

カワイイ。猿みたいだけど(笑)。

お乳を貰ってあとはほとんど寝てるだけだった。

ボクもこんなだったんだろうか。


見えているのかコチラを見つめている。

ボクのことを。

父上にも母上にも見えないのに! 


多分ボクはもう死んでいるんだと思う。

ある日目覚めたらベッドから出ることが出来るようになっていた。

なんで? と思ったら父上も母上も館の皆も泣いていた。

だから納得したんだ。

でもボクは館から出られなかった。

死んだら神様のところに行くのだと神官様は言ってたのに。


時々、館に妙なモヤモヤが入ってくることがある。

あっち行け! って気持ちを込めて腕を振るとポンと弾けて消えてしまう。

アイツらは嫌いだ! 

きっと良くないモノなんだと思う。

弟にまつわり付こうとするだけで許せない! 


乳母達や母上が見ていない時なんかに弟と遊ぶ。

ニコニコと機嫌の良い弟。

ボクのことが分かってるみたいだ。

でも撫でてもやれないし抱っこもして上げられない。

ごめんね……


弟が産まれて1年になろうとする頃、父上が何処からか1枚の絵を持ち帰られた。

小馬に乗ってるボクの絵! 

誰が描いたんだろう? 

モデルになった覚えは無いんだけど。

小馬に乗った覚えも無い。


でも楽しげな絵だった。

お供はオモチャの兵隊と侯爵様の所の動物達。

なんだろう? オモチャの兵隊のように造ったモノだろうか? 


皆が寝静まった時間にその絵を眺めていたら絵から小馬が出てきた! 

見る間に大きくなったんだ! 

小馬より大きかった。

これならボクが乗っても大丈夫だと思う。

でも絵とは色が違う……なんだか蒼白い色だ。

ちょっと怖い気がした。

でも優しい目をしていた。


「乗って良いんだよ。

このは君を迎えに来たんだ。

乗れば神様のところに案内してくれる。

もう地上ここに居るのは限界に近いからね。

無理に地上に居ると君はあの黒いモヤモヤのようになってしまう。

その前に神様の所に行かないといけないんだよ」


いつの間にか館の人ではない人が居た。

黒いローブを着たどこかで会ったことのあるような気のする人……

誰だろう? 


神様の所に行くなら父上や母上……弟にもう一目会ってから行きたいと思った。

そう言うとローブの人は頷いてくれた。

眠っている両親の部屋、そうして弟の部屋。

壁も自在に通り抜けられるんだよ、今のボクは。


弟はなぜか起きていた。

まだ歩けなかったのにヨチヨチと歩いて近づいてくる。

なぜだかこの馬に触れさせてはイケナイ気がした。

ごめんね……もうサヨナラなんだよ。


泣き出す弟の声に父上が飛んできた。

そうして抱き上げてコチラを見て驚いていた。

見えたみたいだね。

お別れを言ったけど声までは聞こえないみたいだ。

なので頭を下げた。

そうしてローブの人の指し示した壁に向かって蒼い馬を進める。


壁は消えて白い花の咲く草原が広がっていた。

向こうにリボンのようなキラキラと光る川が見えた。

あの向こうが神様の居られる所だろうか。

軽快に蒼い馬は走っていく。


風になった気がした。

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